天地明察 三十四度九十八分六十七秒


そういえば、北極出地の数値が他にもあったなぁ。と思い確認。京都梅小路。
現在の、京都府京都市下京区 梅小路公園辺りは、北緯34度59分12.1秒  東経135度44分43.5秒。

====(文庫)「天地明察」下初版P265L15より引用
「な、何をしているのです?」
「北極出地の予測です」
『三十四度八十七分十二秒』

====(文庫)「天地明察」下初版P266L3より引用
 泰福は、おずおずと受け取り、眉間に皺を寄せて算出している。
『三十四度九十八分六十七秒

====(文庫)「天地明察」下初版P267L1より引用
『三十四度九十八分六十七秒』
泰福もぽかんとなっている。

新渡戸もぽかんとなった。

小田原、不明地、犬吠埼、三厩でさんざん現代記法(360度60分60秒)を使って表記していたのに、何の断りも、解説もなく360度100分100秒表記になっている。確かに「貞享暦」でもこのような表記が見られるのだが、あくまで計算値の表記であり、観測値の表記ではない。くどいようだが、16xx年当時、「秒」単位の測定はできるはずがないのだ。こともあろうに1度10,000分割だぞ。1800年の伊能忠敬の象限儀でさえ周天360分割の1度を60分割して(正確にいうと対角線目盛を使って)「分」単位まで読み取るのがやっとだった。

1度を10,000分割した象限儀があるなら見せてほしいものだ。現在展示中の映画のセット「伊能忠敬象限儀」がそうなの?見物しに行かなくっちゃ。

100分100秒表記を見つけてうれしくなっちゃったのは想像に難くないが、周天365.25分割を見過ごしているので、当時としてはまったくナンセンスな数値。

貞享暦 渋川春海 貞享元年(1684) 【さくっと翻刻してみた。乞誤謬指摘。新渡戸】
東北大学付属図書館Link  東北大学デジタルコレクション 和算資料データベース
諸州北極出地之度数
【38ウ】
 奥州津軽 四十二度 [冬至晝三十七刻夜六十三刻]
           [夏至晝六十三刻夜三十七刻]
   南部 四十度
 武江 三十六度   [夏至晷一尺六寸五分]   【新渡戸注:武江:武蔵国江戸のこと】
           [冬至晷一丈三尺二寸]
 能州七尾 三十九度
 紀州熊野 三十四度
 皇都   三十五度半強
 土州高知 三十三度半
 肥州長崎 三十二度半 [冬至晝四十一刻夜五十九刻]
            [夏至晝五十九刻夜四十一刻]
 薩州鹿児島三十一度
 對州   三十六度少
【39オ】
 朝鮮   三十八度少
 琉球   二十七度
【以下略】

ほらね。1度半(強少)の精度しかない。さらに周天365.25分割だから、各所現代の値より1度程度多め。

====以下文庫本「天地明察」(上)初版P245L11より引用
『朝鮮三十八度、琉球二十七度、西土北京四十二度強、南京三十四度』


たぶん「貞享暦」からの引用だろうが、何故ここで気づかない?北京と南京の誤差だけが妙に大きい。どこからパクってきた?

ソウル 北緯37度34分 東経126度59分
那覇市 北緯26度12分 東経127度40分
北京  北緯39度54分 東経116度23分
南京  北緯32度03分 東経118度46分

それはそうと・・・どれどれ、34.9867degrees を WolframLink さんに聞いてみよう。
wolfram02
クリックすると拡大します。


34 degrees 59 arc minutes 12 arc seconds

北緯34度59分12秒 恐ろしいほど正確に現代の梅小路公園じゃぁねーか。

おおちゃくもん!自分で計算しろ。俺。
ウオッちずLink 」「地名・公共施設による検索」で「梅小路公園」と入力したときの画面。
ume
クリックすると拡大します。


中央の経緯度 北緯34度59分12.1秒  東経135度44分43.5秒
この位置へのリンク http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=135.74542727778&latitude=34.986707083333Link Link

全部出てるやんけ!


6/22 追記:
暦の会 第372回 暦と初歩の天文学のおはなし Link Page-4~ 「冲方丁『天地明察』の科学的誤り」2012年2月18日 石原幸男氏 指摘済でした。
北極星(Polaris、こぐま座α星)は、2012年には赤緯89°19′.1にある。
つまり北極からは41′ほど離れている。これは満月1個(視直径32′)よりも大きい。
しかし、2等星という大きな星がこんなに北極に接近したのは有史以来稀なのである。
渋川春海が貞享暦を作った頃には北極から2°.5 ほど離れていた。
だから一度測っただけでは測定がどんなに正確であったとしても最大2°.5 の誤差がある。

冲方君、秒単位のピンポイントでパクったのが裏目に出たね。ご愁傷様。

6/29 追記:
「天地明察」深読みLink (某大学レポート課題) 冨田博之先生Link
タイムスタンプが無いので何時の文書か不明だが、pdfのプロパティによると、2010/06/27 9:37:42 作成 9:38:01 更新 となっている。この pdf は、dvips で生成されている。これは、元データが TeX で作成されていることを示唆している。さすが物理・計算機の先生。7/3追記:6/27のタイムスタンプが追加されました。
1.周天度
2.北極星と地軸のズレ、地球自転の遠心力 新渡戸:んーそこまで考えが及ばなかったなぁ
3.『(旧) 日本測地系』と『世界測地系』(『日本測地系2000』) 新渡戸:確かに。
4.1秒測定の疑問
5.「光行差 新渡戸:そこまでやるか!?

んー、深読みだ。冲方君、重ねて、ご愁傷様。

 

— posted by nitobe at 10:11 pm   commentComment [0] 

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