Title　　 　サムカシムチユウシユウ　カゲツシユウともいふへし　　 　0001　　 　ハナ　サムジユウロクシユ　　 なにとなく　はるになりぬと　きくひより　ココロにかかる　みよしののヤマ　　 　0002　　　 ヤマさむみ　はなさくへくも　なかりけり　あまりかねても　たつねきにける　　 　0003　　　 よしのヤマ　ヒトにココロを　つけかほに　はなまつみねに　かかるしらくも　　 　0004　　 さかぬまの　はなにはくもの　まかふとも　くもとははなの　みえすもあらなむ　　 　0005　　 いまさらに　はるをわするる　はなもあらし　をもひのとめて　けふもくらさむ　　 　0006　　 しらかはの　こすゑをみてそ　なくさむる　よしののヤマに　かよふココロを　　 　0007　　 をしなへて　はなのさかりに　なりにけり　ヤマのはことに　かかるしらくも　　 　0008　　 よしのやま　こすゑのはなを　みしひより　ココロはみにも　そはすなりにき　　 　0009　　 あくかるる　こころはさても　ヤマさくら　ちりなむのちや　みにかへるへき　　 　0010　　 はなにそむ　こころのいかて　のこりけむ　すてはててきと　おもふわかみに　　 　0011　　 ねかはくは　はなのしたにて　はるしなむ　そのきさらきの　もちつきのころ　　 　0012　　 ほとけには　さくらのはなを　たてまつれ　わかのちのよを　ひととふらはは　　 　0013　　 チヨクとかや　くたすみかとの　いませかし　さらはをそれて　はなやちらぬと　　 　0014　　 なみもなく　かせをおさめし　しらかはの　きみのをりもや　はなはちりけむ　　 　0015　　 かさこしの　みねのつつきに　さくはなは　いつさかりとも　なくやちるらむ　　 　0016　　 よしのヤマ　かせこすくきに　さくはなは　ヒトのをるさへ　をしまれぬかな　　 　0017　　 ちりそむる　はなのはつゆき　ふりぬれは　ふみわけまうき　しかのヤマこえ　　 　0018　　 はるかせの　はなのふふきに　うつもれて　ゆきもやられぬ　しかのやまこえ　　 　0019　　 よしのやま　たにへたなひく　しらくもは　みねのさくらの　ちるにやあるらむ　　 　0020　　 たちまかふ　みねのくもをは　はらふとも　はなをちらさぬ　あらしなりせは　　 　0021　　 このもとに　たひねをすれは　よしのやま　はなのふすまを　きするはるかせ　　 　0022　　 みねにちる　はなはたになる　きにそさく　いたくいとはし　はるのヤマかせ　　 　0023　　 あたにちる　こすゑのはなを　なかむれは　にはにはきえぬ　ゆきそつもれる　　 　0024　　 かせあらみ　こすゑのはなの　なかれきて　にはになみたつ　しらかはのさと　　 　0025　　 はるふかみ　えたもゆるかて　ちるはなは　かせのとかには　あらぬなるへし　　 　0026　　 かせにちる　はなのゆくゑは　しらねとも　をしむココロは　みにとまりけり　　 　0027　　 ちるはなを　をしむココロや　ととまりて　またこむハルの　たねになるへき　　 　0028　　 をしまれぬ　みたにもよには　あるものを　あなあやにくの　はなのココロや　　 　0029　　 うきよには　ととめをかしと　はるかせの　ちらすははなを　をしむなりけり　　 　0030　　 もろともに　われをもくして　ちりねはな　うきよをいとふ　ココロあるみそ　　 　0031　　 をもへたた　はなのなからむ　このもとに　なにをかけにて　わかみすみなむ　　 　0032　　 なかむとて　はなにもいたく　なれぬれは　ちるわかれこそ　かなしかりけれ　　 　0033　　 なにとかく　あたなるはなの　いろをしも　ココロにふかく　をもひそめけむ　　 　0034　　 はなもちり　ヒトもみやこへ　かえりなは　ヤマさひしくや　ならむとすらむ　　 　0035　　 よしのヤマ　ひとむらみゆる　しらくもは　さきをくれたる　さくらなるへし　　 　0036　　 ひきかへて　はなみるはるは　よるはなく　ツキみむあきは　ひるなからなむ　　 　0037　　 　ツキ　ハチガツジユウゴヤ　サムジユウロクシユ　　 かそへねと　こよひのツキの　けしきにて　あきのナカはを　そらにしるかな　　 　0038　　 あきはたた　こよひひとよの　ななりけり　をなしくもゐに　ツキはすめとも　　 　0039　　 さやかなる　かけにてしるし　あきのツキ　とよにあまれる　いつかなりけり　　 　0040　　 うちつけに　またこむあきの　こよひまて　ツキゆへをしく　なるいのちかな　　 　0041　　 おひもせぬ　ジユウゴのとしも　あるものを　こよひのツキの　かからましかは　　 　0042　　 　くもりたるジユウゴヤを　　 ツキまては　かけなくくもに　つつまれて　こよひならすは　やみにみえまし　　 　0043　　 　クガツジユウサムヤ　　 くもきえし　あきのナカはの　そらよりも　ツキはこよひそ　なにをへりける　　 　0044　　 こよひはと　こころえかほに　すむツキの　ひかりもてなす　きくのしらつゆ　　 　0045　　 　のちのクガツに　　 ツキみれは　あきくははれる　としはまた　あかぬココロも　そふにそありける　　 　0046　　 　ツキのうたあまたよみはへりしに　　 あきのよの　そらにいつてふ　なのみして　かけほのかなる　ゆふつくよかな　　 　0047　　 うれしとや　まつヒトことに　をもふらむ　ヤマのはいつる　あきのよのツキ　　 　0048　　 あつまには　いりぬとヒトや　をもふらむ　みやこにいつる　ヤマのはのツキ　　 　0049　　 まちいてて　くまなきよるの　ツキみれは　くもそココロに　まつかかりける　　 　0050　　 はりまかた　なたのみをきに　こきいてて　あたりをもはぬ　ツキをなかめむ　　 　0051　　 わたのはら　なみにもツキは　かくれけり　みやこのヤマを　なにいとひけむ　　 　0052　　 あまのはら　をなしいはとを　いてれとも　ひかりことなる　あきのよのツキ　　 　0053　　 ゆくすえの　つきをはしらす　すききぬる　あきまたかかる　かけはなかりき　　 　0054　　 なかむるも　まことしからぬ　ここちして　よにあまりたる　ツキのかけかな　　 　0055　　 つきのため　ひるとおもふか　かひなきに　しはしくもりて　よるをしらせよ　　 　0056　　 さためなく　とりやなくらむ　あきのよは　ツキのひかりを　おもひまかへて　　 　0057　　 ツキさゆる　あかしのせとて　かせふけは　こほりのうへに　たたむしらなみ　　 　0058　　 きよみかた　をきのいはこす　しらなみに　ひかりをかわす　あきのよのツキ　　 　0059　　 なかむれは　ほかのかけこそ　ゆかしけれ　かはらしものを　あきのよのツキ　　 　0060　　 ヒトもみぬ　よしなきヤマの　すゑまても　すむらむツキの　かけをこそをもへ　　 　0061　　 みにしみて　あはれしらする　かせよりも　ツキにそあきの　いろはありける　　 　0062　　 あきかせや　あまつくもゐを　はらふらむ　ふけゆくままに　ツキのさやけき　　 　0063　　 なかなかに　くもるとみえて　はるるよの　ツキはひかりの　そふここちする　　 　0064　　 よもすから　つきこそそてに　やとりけれ　むかしのあきを　おもひいつれは　　 　0065　　 つきをみて　ココロうかれし　いにしへの　あきにもさらに　めくりあひぬる　　 　0066　　 いつくとて　あはれならすは　なけれとも　あれたるやとそ　ツキはさひしき　　 　0067　　 ゆくゑなく　ツキにココロの　すみすみて　はてはいかにか　ならむとすらむ　　 　0068　　 なかなかに　ココロつくすも　くるしきに　くもらはいりね　あきのよのツキ　　 　0069　　 みつのをもに　やとるツキさへ　いりぬるは　なみのそこにも　ヤマやありける　　 　0070　　 ありあけの　ツキのころにし　なりぬれは　あきはよるなき　ココちこそすれ　　 　0071　　 いとふよも　ツキすむあきに　なりぬれは　なからへすはと　をもひなるかな　　 　0072　　 なにことも　かはりのみゆく　ヨノナカに　をなしかけにて　すめるツキかな　　 　0073　　 ヨノナカの　うきをもしらて　すむツキの　かけはわかみの　ココちこそすれ　　 　　 　Subtitle　　 　こひ　サムジユウロクシユ　　 　0074　　 ゆみはりの　つきにはつれて　みしかけの　やさしかりしは　いつかわすれむ　　 　0075　　 しらさりき　くもゐのよそに　みしツキの　かけをたもとに　やとるへしとは　　 　0076　　 つきまつと　いひなされつる　よひのまの　こころのいろを　そてにみえぬる　　 　0077　　 あはれとも　みるヒトあらは　をもはなむ　ツキのおもてに　やとすこころを　　 　0078　　 なけけとて　ツキやはものを　をもはする　かこちかほなる　わかなみたかな　　 　0079　　 おもひしる　ヒトありあけの　よなりせは　つきせすみをは　うらみさらまし　　 　0080　　 かすならぬ　ココロのとかに　なしはてし　しらせてこそは　みをもうらみめ　　 　0081　　 あやめつつ　ヒトしるとても　いかかせむ　しのひはつへき　たもとならねは　　 　0082　　 けふこそは　けしきをヒトに　しられぬれ　さてのみやはと　をもふあまりに　　 　0083　　 みのうさの　をもひしらるる　ことはりに　をさへられぬは　なみたなりけり　　 　0084　　 ものをもへは　そてになかるる　なみたかは　いかなるみをに　あふせありなむ　　 　0085　　 もらさしと　そてにあまるを　つつままし　なさけをしのふ　なみたなりせは　　 　0086　　 けさよりそ　ヒトのココロは　つらからて　あけはなれゆく　そらをうらむる　　 　0087　　 ことつけて　けさのわかれは　やすらはむ　しくれをさへや　そてにかくへき　　 　0088　　 きえかへり　くれまつそてそ　しをれぬる　をきつるヒトは　つゆならねとも　　 　0089　　 あふまての　いのちもかなと　をもひしは　くやしかりける　わかココロかな　　 　0090　　 なかなかに　あはぬをもひの　ままならは　うらみはかりや　みにつもらまし　　 　0091　　 さらにまた　むすほほれゆく　ココロかな　とけなはとこそ　をもひしかとも　　 　0092　　 むかしより　ものおもふヒトや　なからまし　ココロにかなふ　なけきなりせは　　 　0093　　 なつくさの　しけりのみゆく　をもひかな　またるるあきの　あはれしられて　　 　0094　　 あはれとて　とふヒトのなと　なかるらむ　ものをもふやとの　をきのうはかせ　　 　0095　　 くれなゐの　いろにたもとの　しくれつつ　そてにあきある　ここちこそすれ　　 　0096　　 けふそしる　をもひいてよと　ちきりしは　わすれむとての　なさけなりけり　　 　0097　　 ひにそへて　うらみはいとと　をほうみの　ゆたかなりける　わかなみたかな　　 　0098　　 なにはかた　なみのみいとと　かすそひて　うらみのひはや　そてのかはかむ　　 　0099　　 ひをふれは　たもとのあめの　あらそひて　はるへくもなき　わかこころかな　　 　0100　　 かきくらす　なみたのあめの　あししけく　さかりにものの　なけかしきかな　　 　0101　　 いかにせむ　そのさみたれの　なこりより　やかてをやまぬ　そてのしつくを　　 　0102　　 さまさまに　をもひみたるる　ココロをは　きみかもとにそ　つかねあつむる　　 　0103　　 みをしれは　ヒトのとかには　をもはぬに　うらみかをにも　ぬるるそてかな　　 　0104　　 ヒトはうし　なけきはつゆも　なくさます　さはこはいかに　すへきココロそ　　 　0105　　 かかるみに　をふしたてけむ　たらちねの　をやさへつらき　こひもするかな　　 　0106　　 とにかくに　いとはまほしき　よなれとも　きみかすむにも　ひかれぬるかな　　 　0107　　 ものをもへとも　かからぬヒトも　あるものを　あはれなりける　みのちきりかな　　 　0108　　 むかはらは　われかなけきの　むくひにて　たれゆへきみか　ものををもはむ　　 　0109　　 あふとみし　そのよのゆめの　さめてあれな　なかきねふりは　うかるへけれと　　 　0110　　 あはれあはれ　このよはよしや　さもあらはあれ　こむよもかくや　くるしかるへき　　 　　 　Subtitle　　 　ゾウジヨウ　ヒヤクナナジユッシユ　　 　0111　　 なにとなく　せりときくこそ　あはれなれ　つみけむヒトの　ココロしられて　　 　0112　　 はらはらと　をつるなみたそ　あはれなる　たまらすものの　かなしかるへし　　 　0113　　 わひひとの　なみたににたる　さくらかな　かせみにしめは　まつこほれつつ　　 　0114　　 よしのヤマ　やかていてしと　をもふみを　はなちりなはと　ヒトやまつらむ　　 　0115　　 こからしに　このはのをつる　ヤマさとは　なみたさへこそ　もろくなりけれ　　 　0116　　 つくつくと　ものををもふに　うちそへて　をりあはれなる　かねのをとかな　　 　0117　　 あかツキの　あらしにたくふ　かねのをとを　ココロのそこに　こたへてそきく　　 　0118　　 とふヒトも　をもひたえたる　ヤマさとの　さひしさなくは　すみうからまし　　 　0119　　 たにのまに　ひとりそまつも　たてりける　われのみともは　なきかとをもへは　　 　0120　　 まつかせの　をとあはれなる　ヤマさとに　さひしさそふる　ひくらしのこゑ　　 　0121　　 ヤマさとは　たにのかけひの　たえたえに　みつこひとりの　こゑきこゆなり　　 　0122　　 ふるはたの　そはのたつきに　ゐるはとの　ともよふこえの　すこきゆふくれ　　 　0123　　 みくまのの　はまゆふをふる　うらさひて　ヒトなみなみに　としそかさなる　　 　0124　　 いそのかみ　ふるきをしたふ　よなりせは　あれたるやとに　ヒトすみなまし　　 　0125　　 ふるさとは　みしよにもにす　あせにけり　いつちむかしの　ヒトゆきにけむ　　 　0126　　 かせふけは　あたにやれゆく　はせおはの　あれはとみをも　たのむへきよか　　 　0127　　 またれつる　いりあひのかねの　おとすなり　あすもやあらは　きかむとすらむ　　 　0128　　 いりひさす　ヤマのあなたは　しらねとも　こころをかねて　おくりおきつる　　 　0129　　 しはのいほは　すみうきことも　あらましを　ともなふツキの　かけなかりせは　　 　0130　　 わつらはて　ツキにはよるも　かよひけり　となりへつたふ　あせのほそみち　　 　0131　　 ひかりをは　くもらぬツキそ　みかきける　いなはにかかる　あさひこのたま　　 　0132　　 かけきえて　はやまのツキは　もりもこす　たにはこすゑの　ゆきとみえつつ　　 　0133　　 あらしこす　みねのこのはを　わけきつつ　たにのしみつに　やとるツキかけ　　 　0134　　 ツキをみる　ほかもさこそは　いとふらめ　くもたたここの　そらにたたよへ　　 　0135　　 くもにたた　こよひはツキを　まかせても　いとふとてしも　はれぬものゆへ　　 　0136　　 くるはるは　みねにかすみを　さきたてて　たにのかけひを　つたふなりけり　　 　0137　　 こせりつむ　さわのこほりの　ひまたえて　はるめきそむる　さくらゐのさと　　 　0138　　 はるあさみ　すすのまかきに　かせさえて　またゆききえぬ　しからきのさと　　 　0139　　 はるになる　さくらのえたは　なにとなく　はななけれとも　むつましきかな　　 　0140　　 すきてゆく　はかせなつかし　うくいすよ　なつさひけりな　むめのたちえに　　 　0141　　 うくいすは　ゐなかのたにの　すなれとも　たみたるねをは　なかぬなりけり　　 　0142　　 はつはなの　ひらけはしむる　こすゑより　そはゑてかせの　わたるなるかな　　 　0143　　 おなしくは　ツキのをりさけ　ヤマさくら　はなみぬよるの　たえまあらせし　　 　0144　　 そらはるる　くもなりけりな　よしのヤマ　はなもてわたる　かせとみたれは　　 　0145　　 はなちらて　ツキはくもらぬ　よなりせは　ものをおもはぬ　わかみならまし　　 　0146　　 なにとなく　くむたひにすむ　ココロかな　いはひのみつに　かけうつしつつ　　 　0147　　 たにかせは　とをふきあけて　いるものを　なにとあらしの　まとたたくらむ　　 　0148　　 つかはねと　うつれるかけを　ともにして　おしすみけりな　ヤマかはのみつ　　 　0149　　 おとはせて　いはにたはしる　あられこそ　よもきのまとの　ともになりけれ　　 　0150　　 くまのすむ　こけのいはやま　おそろしみ　むへなりけりな　ヒトもかよはぬ　　 　0151　　 さとひとの　おほぬさこぬさ　たてなめて　むまかたむすふ　のへになりけり　　 　0152　　 くれなゐの　いろなりなから　たてのほの　からしやひとの　めにもたてぬは　　 　0153　　 ひさきおいて　すすめとなれる　かけなれや　なみうつきしに　カセわたりつつ　　 　0154　　 をりかくる　なみのたつかと　みゆるかな　すさきにきぬる　さきのむらとり　　 　0155　　 うらちかみ　かれたるまつの　こすゑには　なみのをとをや　かせはかくらむ　　 　0156　　 しほかせに　いせのはまをき　ふせはまつ　ほすゑをなみの　あらたむるかな　　 　0157　　 さもとゆく　ふなヒトいかに　さむからむ　くまやまたけを　をろすあらしに　　 　0158　　 をほつかな　いふきおろしの　かささきに　あさつまふねは　あひやしぬらむ　　 　0159　　 いたけもる　あまみかときに　なりにけり　えそかちしまを　けふりこめたり　　 　0160　　 もののふの　ならすすさみは　をもたたし　あけそのしさり　かものいれくひ　　 　0161　　 　はつハルのあしたに　　 たちかはる　はるをしれとも　みせかほに　としをへたつる　かすみなりけり　　 　0162　　 　ハルきたりてなをユキさゆ　　 かすめとも　はるをはよその　そらにみて　とけむともなき　ゆきのしたみつ　　 　0163　　 　サムスイハルをつくといふことをボダイイムのサキさいグウにてヒトビトよみはへりしに　　 はるしれと　たにのほそみつ　もりそくる　いはまのこほり　ひまたえにけり　　 　0164　　 　ウミベカスミとモウスことをイセにてかむぬしともよみはへりしに　　 なみこすと　ふたみのまつの　みえつるは　こすゑにかかる　かすみなりけり　　 　0165　　 　ネノヒ　　 ハルことに　のへのこまつを　ひくヒトは　いくらのちよを　ふへきなるらむ　　 　0166　　 　わかなにはつねのあひたりしにヒトのもとへモウシつかはしはへりしに　　 わかなつむ　けふにはつねの　あひぬれは　まつにやヒトの　こころひくらむ　　 　0167　　 　ゆきのナカのわかな　　 けふはたた　をもひもよらて　かへりなむ　ゆきつむのへの　わかななりけり　　 　0168　　 　あめのナカのわかな　　 はるさめの　ふるののわかな　おゐぬらし　ぬれぬれつまむ　かたみたぬきれ　　 　0169　　 　わかなによせてをもひをのへはへりしに　　 わかなをふる　はるののもりに　われなりて　うきよをヒトに　つみしらせはや　　 　0170　　 　すみはへりしたににうくひすのこゑせすなりはへりしかはなにとなくあはれなるやうにをほえて　　 ふるすうとく　たにのうくひす　なりはては　われやかはりて　なかむとすらむ　　 　0171　　 　むめにうくひすのこゑのかをりてきこえはへりしに　　 むめかかに　たくへてきけは　うくひすの　こゑなつかしき　はるのあけほの　　 　0172　　 　たひのとまりのむめ　　 ひとりぬる　くさのまくらの　うつりかは　かきねのむめの　にほひなりけり　　 　0173　　 　さかにすみはへりしにみちをへたててはうのはへりしよりむめのかせにちりこしを　　 ぬしいかに　かせわたるとて　いとふらむ　よそにうれしき　むめのにおひを　　 　0174　　 　ききすを　　 をひかはる　はるのわかくさ　まちわひて　はらのかれのに　ききすなくなり　　 　0175　　 もえいつる　わかなあさると　きこゆなり　ききすなくのの　はるのあけほの　　 　0176　　 　かすみのうちのかへるかり　　 なにとなく　をほつかなきは　あまのはら　かすみにきえて　かへるかりかね　　 　0177　　 　かへるかりをチヨウラクジにて　　 たまつさの　はしかきかとも　みゆるかな　とひをくれつつ　かへるかりかね　　 　0178　　 　やなきかせにしたかふ　　 みわたせは　さほのかはらに　くりかけて　かせによらるる　あをやきのいと　　 　0179　　 　ヤマさとのやなき　　 やまかつの　かたをかかけて　しむるのの　さかゐにみゆる　たまのをやなき　　 　0180　　 　つとめてはなをたつぬといふことを　　 さらにまた　かすみにくるる　ヤマちかな　はるをたつぬる　はなのあけほの　　 　0181　　 　ひとりはなをたつぬ　　 たれかまた　ななをたつねて　よしのヤマ　こけふみわくる　いはつたふらむ　　 　0182　　 　はなをたつねてみるといふことを　　 よしのヤマ　くもをはかりて　たつねいりて　ココロにかけし　はなをみるかな　　 　0183　　 　くまのへまいりはへりしにやかみのわうしのはなのさかりにてをもしろかりしかはやしろにかきつけはへりし　　 まちきつる　やかみのさくら　さきにけり　あらくをろすな　みすのヤマかせ　　 　0184　　 　ジヨウサイモムイムのニヨウはうホウシヨウジのはなみられしにあめのふりてくれにしかはかへられにきマタのヒヒヨウエのつほねのもとへハナのみゆきをもひいてさせたまふらむとをほえてかくなむモウシさまほしかりしとてをくりはへりし　　 みるヒトに　ハナもむかしを　おもひいてて　コイしかるへし　あめにしをるる　　 　0185　　 　カヘし　　 いにしへを　しのふるあめと　たれかみむ　はなもそのよの　ともしなけれは　　 　わかきひとひとはかりなむをいにけるみはかせのわつらはしさにいとはるることにてとありしいとやさしくきこえはへりき　　 　0186　　 　ハナのしたにてツキをみて　　 くもにまかふ　ハナのしたにて　なかむれは　をほろにツキは　みゆるなりけり　　 　0187　　 　をいてはなをみるといふことを　　 をいつとに　なにをかせまし　このはるの　はなまちつけぬ　わかみなりせは　　 　0188　　 　ふるきのさくらにはなのところところさきたるをみて　　 わきてみむ　をいきははなも　あわれなり　いまいくたひか　はるにあふへき　　 　0189　　 　かきたえこととはすなりたりしヒトのハナみにやまさとへまてきたりしに　　 としをへて　をなしこすゑに　にほへとも　ハナこそヒトに　あかれさりけれ　　 　0190　　 　しらかはのはなのさかりにヒトのいさなひはへりしかはみにまかりてかへりしに　　 ちるをみて　かへるココロを　さくらはな　むかしにかはる　しるしなるらむ　　 　0191　　 　さはらひ　　 なをさりに　やきすてしのの　さわらひは　をるヒトなくて　ほとろとやなる　　 　0192　　 　ヤマふきいえのさかりたりといふことを　　 やまふきの　はなのさかりに　なりぬれは　ここにもゐてと　をもほゆるかな　　 　0193　　 　かはつ　　 ますけをふる　あらたにみつを　まかすれは　うれしかほにも　なくかはつかな　　 　0194　　 　はるのうちにほとときすをきくといふことを　　 うれしとも　をもひそはてぬ　ほとときす　はるきくことの　ならひなけれは　　 　0195　　 　サムガツツイタチたらてくれはへりしに　　 はるゆへに　せめてもものを　をもへとや　みそかにたにも　たらてくれぬる　　 　0196　　 　サムカのはしめのアキということを　　 さまさまの　あはれをこめて　こすゑふく　かせにあきしる　みやまへのさと　　 　0197　　 　はしめのあきのころなるをとモウすところにてまつのかせのをとをききて　　 つねよりも　あきになるをの　まつかせは　わきてみにしむ　ものにそありける　　 　0198　　 　たなはた　　 ふねよする　あまのかはせの　ゆふくれは　すすしきかせや　ふきわたすらむ　　 　0199　　 　ののわたりのあきかせ　　 すへはふく　かせはのもせに　わたるとも　あらくはわけし　はきのしたつゆ　　 　0200　　 　くさのはなみちをさいきる　　 ゆふつゆを　はらへはそてに　たまきえて　みちわけかぬる　をののはきはら　　 　0201　　 　ゆくみちのくさのはな　　 をらてゆく　そてにもつゆそ　しをれける　はきのえしけき　のちのほそみち　　 　0202　　 　すすきみちにあたりてしけしといふことを　　 はなすすき　ココロあてにそ　わけてゆく　ほのみしみちの　あとしなけれは　　 　0203　　 　ののはきにしきににたり　　 けふそしる　そのえにあらふ　からにしき　はきさくのへに　ありけるものを　　 　0204　　 　つきのまへのののはな　　 はなのいろを　かけにうつせは　あきのよの　ツキそのもりの　かかみなりける　　 　0205　　 　をみなへしつゆをひたるといふことを　　 はなのえに　つゆのしらたま　ぬきかけて　をるそてぬらす　をみなへしかな　　 　0206　　 　いけのほとりのをみなへし　　 たくひなき　はなのすかたを　をみなへし　いけのかかみに　うつしてそみる　　 　0207　　 　ツキのまへのをみなへし　　 にはさゆる　ツキなりけりな　をみなへし　しもにあひぬる　はなとみたれは　　 　0208　　 　ののはなむしをよみはへりしに　　 はなをこそ　のへのものとは　みにきつれ　くるれはむしの　ねをもききけり　　 　0209　　 　たのいへのむし　　 こはきさく　ヤマたのくろの　むしのねに　いほもるヒトや　そてぬらすらむ　　 　0210　　 　ひとりむしをきくといふことを　　 ひとりねの　ともにはならて　きりきりす　なくねをきけは　ものをもひそふ　　 　0211　　 　むかしモウシなれたりしヒトのよのかれてふしみにすみはへりしをたつねまかりてにわのくさふかかりしをわけいりはへりしにむしのこゑあはれにをほえてよみはへりし　　 わけている　そてにあはれを　かけよとて　つゆけきにはに　むしさへそなく　　 　0212　　 　むしのうたあまたよみはへりしなかに　　 あきかせに　ほすゑなみよる　かるかやの　したはにむしの　こゑみたるなり　　 　0213　　 よもすから　たもとにむしの　ねをかけて　はらひわつらふ　そてのしらつゆ　　 　0214　　 むしのねに　つゆけかるへき　たもととは　あやしやココロ　ものをもふへし　　 　0215　　 　あかツキはつかりをきく　　 よこくもの　かせにわかるる　しののめに　ヤマとひこゆる　はつかりのこゑ　　 　0216　　 　とをくちかくかりをきくといふことを　　 しらくもを　つはさにかけて　ゆくかりの　かとたのをもの　ともしたふなり　　 　0217　　 　よにいりてかりをきく　　 からすはに　かくたまつさの　ココちして　かりなきわたる　ゆふやみのそら　　 　0218　　 　きりのうちのしか　　 はれやらぬ　みヤマのきりの　たえたえに　ほのかにしかの　こゑきこゆなり　　 　0219　　 　ゆふくれのしか　　 しのはらや　きりにまかひて　なくしかの　こゑかすかなる　あきのゆふくれ　　 　0220　　 　あかツキのしか　　 よをのこす　ねさめにきくそ　あはれなる　ゆめののしかも　かくやなきけむ　　 　0221　　 　たのいほのしか　　 おやまたの　いほちかくなく　しかのねに　をとろかされて　をとろかすかな　　 　0222　　 　サムカのしか　　 なにとなく　すまはほしくそ　をもほゆる　しかあはれなる　あきのヤマさと　　 　0223　　 　つきをまちてしかをきく　　 かねつより　ココロそいとと　すみのほる　つきまつみねの　さをしかのこゑ　　 　0224　　 　たのうへのツキ　　 ゆふつゆの　たましくをたの　いなむしろ　かけすほすゑに　ツキそやとれる　　 　0225　　 　つきのまへにとほくのそむといへることをボダイイムのマえサイグウにてヒトビトよみはへりしに　　 くまもなき　ツキのひかりに　さそはれて　いくくもゐまて　ゆくココロそも　　 　0226　　 　かすかにまいりてつねよりもツキあかくあはれなりしにみかさのヤマをみあけてかくをほえはへりし　　 ふりさけし　ヒトのココロそ　しられぬる　こよひみかさの　ツキをなかめて　　 　0227　　 　ひろさわにてヒトビトツキをもてあそひはへりしに　　 いけにすむ　ツキにかかれる　うきくもは　はらひのこせる　みさひなりけり　　 　0228　　 　さぬきのゼムツウしのヤマにてうみのツキをみて　　 くもりなき　ヤマにてうみの　ツキみれは　しまそこほりの　たえまなりける　　 　0229　　 　ツキのまへのちるは　　 ヤマをろしの　ツキにこのはを　ふきかけて　ひかりにまかふ　かけをみるかな　　 　0230　　 　あきのうたともよみはへりしに　　 しかのねを　かきねにこめて　きくのみか　つきもすみけり　あきのヤマさと　　 　0231　　 いほにもる　ツキのかけこそ　さひしけれ　ヤマたはひたの　をとはかりして　　 　0232　　 をもふにも　すきてあはれに　きこゆるは　をきのはみたる　あきのゆふかせ　　 　0233　　 なにとなく　ものかなしくそ　みえわたる　とはたのをもの　あきのゆふくれ　　 　0234　　 おほかたの　つゆにはなにの　なるならむ　たもとにをくは　なみたなりけり　　 　0235　　 ヤマさとは　あきのくれにそ　オモヒしる　かなしかりけり　こからしのかせ　　 　0236　　 　あきものへまかりしみちにて　　 ココロなき　みにもあはれは　しられけり　しきたつさわの　あきのゆふくれ　　 　0237　　 　ひとりころもうつをきくといふことを　　 ひとりねの　よさむになるを　かさねはや　たかためにうつ　ころもなるらむ　　 　0238　　 　ヤマさとのもみち　　 そめてけり　もみちのいろの　くれなゐを　しくるとみえし　みヤマへのさと　　 　0239　　 　ジヤクネムコウヤにまいりてふかきヤマのもみちということをみやのほういむのオムあむしちにてよむへきよしモウシはへりしにまいりあひて　　 さまさまの　にしきありける　みヤマかな　はなみしみねを　しくれそめつつ　　 　0240　　 　あきのくれ　　 なにとなく　ココロをさへは　つくすらむ　わかなけきにて　くるるあきかは　　 　0241　　 　よもすからあきををしむといふことをきたしらかはにてヒトビトよみはへりしに　　 をしめとも　かねのをとさへ　かはるかな　しもにやつゆを　むすひかふらむ　　 　0242　　 　うつきのついたちになりてちりてのちはなををもふといふことを　　 あをはさへ　みれはココロの　とまるかな　ちりにしはなの　なこりとをもへは　　 　0243　　 　なつのうたよみはへりしに　　 くさしける　みちかりあけて　ヤマさとは　はなみしヒトの　ココロをそみる　　 　0244　　 　やしろのへむのうのはな　　 かみかきの　あたりにさくも　たよりあれや　ゆふかけたりと　みゆるうのはな　　 　0245　　 　ムゴムにハベりしコロホトトギスのはつこゑをききて　　 ほとときす　ヒトにかたらぬ　をりはしも　はつねきくこそ　かひなかりけれ　　 　0246　　 　ゆふくれのほとときす　　 さとなるる　たそかれときの　ほとときす　きかすかほにて　マタなのらせむ　　 　0247　　 　ほとときすをまちてむなしくあけぬといふことを　　 ほとときす　なかてあけぬと　つけかほに　またれぬとりの　ねこそきこゆなる　　 　0248　　 　ほとときすのうたよみはへりしに　　 ほとときす　きかぬものゆへ　まよはまし　はなをたつねし　ヤマちならすは　　 　0249　　 ほとときす　をもひもわかぬ　ひとこゑを　ききつといかか　ヒトにかたらむ　　 　0250　　 ききをくる　ココロをしらて　ほとときす　たかまのヤマの　みねこえぬなり　　 　0251　　 　あめのうちのほとときす　　 さみたれの　はれまもみえぬ　くもちより　ヤマほとときす　なきてすくなり　　 　0252　　 　さみたれのうたよみはへりしに　　 みつなしと　ききてふりにし　かつまたの　いけあらたむる　さみたれのころ　　 　0253　　 さみたれに　みつまさるへし　うちはしや　くもてにかかる　なみのしらいと　　 　0254　　 　はなたちはなによせてふるきををもふといふことを　　 のきちかき　はなたちはなに　そてしめて　むかしをしのふ　なみたつつまむ　　 　0256　　 　ゆふくれのすすみをよみはへりしに　　 なつヤマの　ゆふしたかせの　すすしさに　ならのこかけの　たたまうきかな　　 　0256　　 　うみのほとりのなつのツキ　　 つゆのほる　あしのわかはに　ツキさえて　あきをあらそふ　なにはえのうら　　 　0257　　 　あめののちのなつのつき　　 ゆふたちの　はるれはツキそ　やとりける　たまゆりすふる　はすのうきはに　　 　0258　　 　いつみにむかひてツキをみるといふことを　　 むすふてに　すすしきかけを　そふるかな　しみつにやとる　なつのよのツキ　　 　0259　　 　なつののくさを　　 みまくさに　はらのすすきを　しかふとて　ふしとあせぬと　しかをもふらむ　　 　0260　　 　たひのみちにくさふかしといふことを　　 たひひとの　わくるなつのの　くさしけみ　はすゑにすけの　をかさはつれて　　 　0261　　 　やまさとにあきをまつ　　 やまさとは　そとものまくす　はをしけみ　うらふきかへす　あきをまつかな　　 　0262　　 　ジユウガツはしめのころヤマさとにまかりたりしにきりきりすのこゑのわつかにしはへりしを　　 しもうつむ　むくらのしたの　きりきりす　あるかなきかの　こゑきこゆなり　　 　0263　　 　あかツキのちるは　　 しくれかと　ねさめのとこに　きこゆるは　あらしにたえぬ　このはなりけり　　 　0264　　 　みつのほとりのかれたるくさ　　 しもにあひて　いろあらたむる　あしのほの　さひしくみゆる　なにはえのうら　　 　0265　　 　ヤマのいへのかれたるくさ　　 かきこめし　すそののすすき　しもかれて　さひしさまさる　しはのいほかな　　 　0266　　 　しつかなるよのふゆのツキ　　 しもさゆる　にはのこのはを　ふみわけて　ツキはみるやと　とふヒトもかな　　 　0267　　 　ゆふくれのちとり　　 あはちしま　せとのしほひの　ゆふくれに　すまよりかよふ　ちとりなくなり　　 　0268　　 　さむきよのちとり　　 さゆれとも　こころやすくそ　ききあかす　かはせのちとり　ともくしてけり　　 　0269　　 　ふねのうちのあられ　　 せとわたる　たななしをふね　ココロせよ　あられみたるる　しまによこきる　　 　0270　　 　ふゆのうたともよみはへりしに　　 はなもかれ　もみちもちりぬ　ヤマさとは　さひしさをマタ　とふヒトもかな　　 　0271　　 たまかけし　たまのかつらも　おとろへて　しもをいたたく　をみなへしかな　　 　0272　　 ひとりすむ　かたやまかけの　ともなれや　あらしにはるる　ふゆのよのつき　　 　0273　　 つのくにの　あしのまろやの　さひしさは　ふゆこそわきて　とふへかりけれ　　 　0274　　 ヤマさくら　はつゆきふれは　さきにけり　よしのはさとに　ふゆこもれとも　　 　0275　　 よもすから　あらしのヤマに　かせさえて　おおゐのよとに　こほりをそしく　　 　0276　　 ヤマさとは　しくれしころの　さひしさに　あられのおとは　ややまさりけり　　 　0277　　 かせさえて　よすれはやかて　こほりつつ　かへるなみなき　しかのからさき　　 　0278　　 よしのやま　ふもとにふらぬ　ゆきならは　はなかとみてや　たつねいらまし　　 　0279　　 　ゆきのあしたきせむとモウすところにてヒトビトうたよみはへりしに　　 たけのほる　あさひのかけの　さすままに　みやこのゆきは　きえみきえすみ　　 　0280　　 　ヤマのいへにゆきふかしといふことを　　 とふヒトも　はつゆきをこそ　わけこしか　みちとちてけり　みやまへのさと　　 　0281　　 　よのかれてひむかしヤマてらにはへりしころとしのくれにヒトビトまうてきておもひのへはへりしに　　 としくれし　そのいとなみは　わすられて　あらぬさまなる　いそきをそする　　 　0282　　 　としのくれにこうやよりキヨウへモウしつかはしはへり　　 おしなへて　おなしツキひの　すきゆけは　みやこもかくや　としはくれぬる　　 　0283　　 　さうのゲハチジユウサムシユ　　 　いはひのうたよみはへりしなかに　　 わかはさす　ひらののまつは　さらにマタ　えたにやちよの　かすをそふらむ　　 　0284　　 きみかよの　ためしになにを　おもはまし　かはらぬまつの　いろなかりせは　　 　0285　　 　うちにかゐあはせあるへしときこえはへりしにヒトにかはりて　　 かひありな　きみかみそてに　おほはれて　こころにあはぬ　こともなきよは　　 　0286　　 ふくかせは　はなさくなみの　をるたひに　さくらかひよる　みしまえのうら　　 　0287　　 なみあらふ　ころものうらの　そてかひを　みきはにかせの　たたみおくかな　　 　0288　　 　シヨウアムガムネムロクガツついたちイムくまのへまいらせおはしますついてにすみよしへこかうありけりすギヨウしまはりてフツカかのやしろにまいりてみまはれはすみのえのつりとのあたらしくしたてられたりこサムジヨウのゐむのみゆきかみおもひいてたまふらむとおほえてつりとのにかきつけはへりし　　 たえたりし　きみかみゆきを　まちつけて　かみいかはかり　うれしかるらむ　　 　0289　　 　まつのしつえあらひけむなみいにしへにかいらすこそはとおほえて　　 いにしへの　まつのしつえを　あらひけむ　なみをこころに　かけてこそみれ　　 　0290　　 　すむケイテムわうしにこもりてすみよしにまいりてうたよみはへりしに　　 すみよしの　まつのねあらふ　なみのおとを　こつゑにかくる　おきつしほかせ　　 　0291　　 　むかしココロさしつかうまつりしならひによのかれてのちにもかものみやしろへまいることにてなむとしたかくなりてしこくのかたへすギヨウすとてマタかへりまいらぬことにてこそはとおほえてジムアムサムネムジユウガツトオカのよまいりてへいまいらせしにうちへもいらぬことなれはたなうのやしろにとりつきてたてまつりたまへとてココロさしはへりしにこのまのツキほのほのにつねよりもあはれにおほえて　　 かしこまる　してになみたの　かかるかな　またいつかはと　おもふあはれに　　 　　 　End　　 　*（イカケツ）　　 　　 　テイホン：：　　 　　チヨメイ：　　　　フッコクニッポンコテンブガクカン　サンカシンチユウシユウ　　 　　チヨシヤ：　　　　サイギヨウ　　 　　カンシユウ：　　　クボタ　ジユン　　 　　ハッコウシヨ：　　ニッポンコテンブンガクカイ　　 　　ハッコウ：　　　　シヨウワ46ネン10ガツ01ニチ　　 　ホンコク：：　　 　　ホンコクシヤ：　　ニトベ　ヒロアキ(info@saigyo.net)　　 　ニユウリヨク：：　　 　　ニユウリヨクシヤ：　ニトベ　ヒロアキ(info@saigyo.net)　　 　　ニユウリヨクビ：　　2000ネン08ガツ12ニチ-2001ネン01ガツ08ニチ