Title  伝西行筆 中務集 (出光美術館所蔵)  Description  なかつかさか       しふ  ----  *一頁空白  ----  0001:  ねのひ のへにいてゝけふひきつれは ときわかぬまつのすゑにもは るはきにけり  0002:  いへのはなみるところ の山のもみるへきものをわか やとのはなをなかめてひは くれにけり  0003:  はなをおしむところ ふちのはなさくをみすてゝ ゆくはるはうしろめたくやお ほえさるらむ  ----  0004:  山さとのほとゝきすなく 山さとにまれになきけるほと ときすまたともなかぬこゑを きくかな  0005:  たのほとりにかりしたり そてひちてうゑしはるよ りまもるたをたれかはしらて かりにきつらむ  0006:  九月九日きくのわたに  おもてのこふをむな  あり おいにけるみにはしるしも  ---- しらきくのつゆのなたてに なりぬへきかな  0007:  さきのさい宮の五十の  かしたまふ屏風のわかな わかなつむのとしめをかむ きみかためちとせのはるをわ れそつむへき  0008:  つるあそふところ きみといへはいのちをゆつるあ したつはくものなかをや おもひやるらむ  0009:  はまつらにまつおほく  ----  おひたり はまちかくなみたつまつはいろ かへてよにすみのえにおふ るなりけり  0010:  はまにかひゝろふ あさりするはまへのちかきなみ たてゝけふはかひある心ち こそすれ  0011:  三条のまちきみのかに  中納言のつかうまつる屏風  にはなみてあそふと          ころ  ---- あかてけふかへるとおもへとは なさくらをるへきはるそ つきせさりける  0012:  いけにのそきたるまつに  ふちかゝれり きみをおもふあたしこゝろも なきものをいけのふちなみ まつこえにけり  0013:  たちはなにほとゝきす          なく いろかへぬはなたちはなに ほとゝきすちよをならせる こゑきこゆなり  ----  0014:  のにかりしたる をみなへしかりのたよりを きゝしまにあまたのとしの あきはへにけり  0015:  やりみつのつらにきく  さけりをとこふみかく  ところ なかれつゝかけもみるへくみ きはなるきくにこひしき人 はならなむ  0016:  としのうちにはるたつひ  ゆきふるにむめのはな          さけり  ---- ふるゆきのしたにゝ ほへるむめのはなしのひにか けてはるはきにけり  0017:  むらかみのせむたいの御か  りのひのやくところ はるはかくのをのみやくとお もふまになへてのくさきいかて もゆらむ  0018:  はなをゝしむところ  にかりなく とゝまらぬはなおしむまに いとゝしくかへるかりさへなき わたるらむ  ----  0019:  きしにふちさけり かはきしにおいたるまつにふち なみのかゝれとゝしのつきぬ なりけり  0020:  五月五日ゐなかいへに  をむなともゐていとくり  さうふつけなとしたり あやめくさてひきのいとをて にかけてなかきひくらし ひとそこひしき  0021:  たまもるにへにひとしの  はむをしらてねたり  ---- まもりくる山たのいねにまとふ にはゆめとそしかのねをは きゝける  0022:  むらかみのせむたいの御とき  屏風にところ%\のなを  かゝせたまへるよしの山 よしのやまゆきにはあとも きえにしをかすみそはるの しるへなりける  0023:  あすかゝは さためなきなにはたてれと あすかゝははやくわたりし せにこそありけれ  ----  0024:  いそのかみ いそのかみふるきわたりを きてみれはむかしかさしゝ はなさきにけり  0025:  ふしみ さくらはなちりかふそらは くれにけりふしみのさとに やとやからまし  0026:  もるやま ひとめのみもるやまになくよ ふことりしのひにたれを まつねなるらむ  ----  0027:  すま もしをやくけふりになるゝ すまのあまはあきたつきり もわかすやあるらむ  0028:  さほやま はつかりのよふかゝりつるこゑに よりけさゝほやまそおもひや らるゝ  0029:  しかすかのわたり ゆけはありゆかねはくるし しかすかのわたりにきてそ おもひたゆたふ  0030:  うきしま  ---- たのまれぬこゝろからにやうき しまにたちよるなみの とまらさるらむ  0031:  なこそのせき みちのくにのなこそのせきに きにけりときく/\なをもこ えぬべきかな  0032:  又御屏風のうたをきの  したにしかなく 人しれすをきのしたなる さをしかもほにてぬあきや ねをはたつらむ  ----  0033:  とこなつ うちはへてみるとこなつに あかぬかなひことにまさる いろのみゆれは  0034:  十月つこもり ほとちかくきぬなるものをいか なれははるにもあはてとし のゆくらむ  0035:  むらかみのせむたいの御  とき屏風のうたゐなか  のいゑにをとこまらうと  きたり むめかゝをとめてきつれは めつらしきうくひすならぬ  ---- こゑもきくかな  0036:  きしのこゑ はるかすみあさたつのへにたつ きしのしのはぬねにや人 のしるらむ  0037:  ちかき山さくら わかやとゝはるの山へのつまなれは ほかのはなともおもほえぬかな  0038:  四月みあれひく きみをたにいのりおきては うちむれてたちかへりなむか ものかはなみ  ----  0039:  五月五日 しるくかもにほふなるかな あやめくさけふこそたまにぬく ひなりけれ  0040:  いつみ したくゝるみつにあきこそ かよふらしむすふいつみのて さへすゝしき  0041:  あきあか月はなみる  ところ ありあけのひかりにまさるを みなヘしなかきよにみむ つゆにぬれつゝ  ----  0042:  野もみちみるところ けふおらぬ人もさそはむもみち はによのまふくかなこから しのかせ  0043:  ふゆこほりたるいけ こほりぬるいけのみきはゝ みつとりのはかせになみもさ はかさりけり  0044:  ゆきふるものへゆくひと ゆきふかくゆきあつまれほと ほけれとみちにてはるにあひ ぬへきかな  ----  0045:  寸尺院のわか宮の御  もきの屏風の子日 こまつはらのへにいつれとゝもな はぬはるのかすみもたちまし りけり  0046:  むめのはなみるところ むめのはなにほふもとをも みつるかなかをたつねてもと はむとそおもふ  0048:  みちゆくほとにほとゝ  きすなく うちはへてまちくるみちの  ---- ほとゝきすたゝひとこゑやきゝ てやみなむ  0049:  かみまつるところ いのるをもきくたよりには うのはなのかきねもぬさと かみやみるらむ  0050:  はつかりたひゝときく はつかりのたひのそらなるこゑ きけはわかみをおきてあは れとそきく  0051:  やりみつにもみちうきて  なかる  ---- もみちはもおちつもりゐるたに みつにあきのふかさそこゝに みえける  0053:  たきにゆきふる たきのいとはみなとちつらむ よしのやまゆきのたかさに おとをかへつゝ  0054:  み屏風にまつにふちかゝ  れり うとからてかゝれるふちは はなゝからまつにこゝろはたかは さらなむ  0055:  さくら  ---- あさからはちとせまてさ けさくらはなはなもかはら しはるもたえすは  0056:  みちゆくひとほとゝきす  をきく ゆくみちもはるけきものを ほとゝきすこゑにこゝろのとま りぬるかな  0057:  みな月はらへするところ きみかためいのるこゝろはみな かみもなかるゝことくけふや しるらむ  ----  0058:  せむさいうゑたるところ つゆはみなおとさてほりつ をみなへしうゑはいつれ のあきかみさらむ  0059:  屏風のうたあきはな  みる はなのいろにあかぬかぎりし かへらすはやとゝもあきの のやはなりなむ  0243:  たいなし なかきよをいかてあかして をみなへしあさかほなれは  ---- つゆけかるらむ  0244: はるかなる山なか/\にまつむしの そらにとふ人みえにけるかな  0245: 山のはゝいけのそこにもみえ なゝむいるとも月のかくれさ るへく  0246: うしとおもふこゝろのてまの なきときはつらさかくれぬ ものにさりける  0247: 人つまとなきつゝあかすよな/\ はいたつらにのみなりぬへき             かな  ----  0248: ひくるれはまつぬるはきは さをしかのなくこゑにたに おとろきやする  0249: こひしきもこゝろつからのわさ なれはをきところさへもて そわつらふ  0250:  ひさしくわつらふころ ひくらしのなつのひくらし くるしくてなとかくなかき いのちなるらむ  0251:  月のさはく心 あまのかはめつらしきことおほ  ---- かりとよひそこのころさわく てふなる  0060:  み屏風いけのほとりのや  なき みなそこにかけのうつれるあ をやきはなみのよりけるあとゝ こそみれ  0061: はまにちかくたちつるはるのかす みともやくすみかまのけふり をそみる  0062: よとゝもにもしほやきつゝたか ためにひにもみつにもいれる わかみそ  ----  0063: うのはなのさかりにのみや 山かつのかきほもしるくひ とのみるらむ  0064: としことにかみをそいのる さかきはのいろもかはらて をらむとおもへは  0065:  たかうなほるところ つちわくるはるきてみれは くれたけのこもれるはるのほと もしられぬ  0066: ふくかせにみたれぬきゝの あをやきはいとゝなみさへよれ  ---- はなりけり  0067:  まつのしたにみつやれり いにしへのころもたはみゆく みつにわれまつかけもけふこ そはみれ  0068:  いとうの右大臣との五十  のか中宮のしたまふに  むらかみのせむわうの  めしけるにこうはい ふくかせにゝほひかはらぬむ めのはなたかそめかけし いろにかあるらむ  ----  0069: みなそこのいろさへかはるこまつ はらちよにちよそふのへにき にけり  0070: きしちかくまつにかゝれりふぢ なみは・・・  0072: ・・・いくしほにかはいろ まさるらむ  0073: さみたれのよもあけかたに なけきかなものおもふことや あきになるらむ  0074: さはみつにかけのかたふく山 ふきはかはつのこゑをあはれ とやきく  ----  0075: 山ふきのはなのさかりはかはづ なくゐてにやはるもたちと まるらむ  0076: しらなみのをるかとみえて をちかたのきしのまに/\さ けるうのはな  0078:  みつあきらの少将のも  とにうたあはせするよ  むめ にほふかのしるへならすは むめのはなくらふやまにもを りやまとはむ  ----  0079: くりかへしとしへてみれと あをやきのいとはふりせぬ みとりなりけり  0080:  おなし少将のむすめの  いかにねのひあたりたり  けれは一条の大将にこも  のなとしてたてまつるに はるさむみそらのけしきは つゝめともけふのこまつをなを そひきつる  0081:  すさくゐむの御とき  うたゝてまつる  ---- いまさらにおいのたもとに かすかのゝひとわかくなるわかな つむかな  0082:  こらむしてひき/\に  わかないれて正月七日  少将をつかひにて かすかのにおほくのとしは つみつれとおいせぬものはわか なゝりけり  0083:  おほむかへりこと としつめとおなしさまなる わかなにもけふたにゝすや  ---- あらむとすらむ  0084:  女一のみやの御いかにすは  まなとしてまつらせ  たまふに なみたてゝたつのかけさへみ ゆるかなちとせかすまふしるし なるへし  0085: みなそこにかけをみせつゝ あしたづのきみにちとせは へたてさりけり  0086: くもゐにてきみをみるへき たつなれはちとせもいとそ  ---- はるなかりけり  0087:  人のうふやの七夜 ちとせまてきみありそう みのかけみれはこまつもいまそ おいはしめける  0098:  ものへいく人にあふき  やるとて きみかゆくふなちにそふ るあふきにはこゝろにかなふかせ そふきける  XXXX  おなしさまなる人に  まくらやるとて れかるらむ人のこゝろはこれを  ---- さへあたなるくさのまくらと おもふな  XXXX  こしへゆく人に こしやまにゆきふりつみ てさむくともかならすあふき のかせをれするな  0099:  したかふのとのかみになり  てくたるに ゆきふかくはるともみえぬこ しちにもときしるむめは はなさきにけれ  0100:  かへりこと むめのはないろはゆきにもかよ ふめりかへるやまちをきみは  ---- とはなむ  0102:  ふこのかみのめにてくたり  しひと又ちくこへゆく  にやるおなしやうにて わかれゆくきみかたもとをいの りにときゝしみちにもゆく 心かな  0103: てにかゝるあふきのか せをそふるかなふなちをゆ かむきみかためとて  0093: かせふけはおもほゆるかなす みのえのきしのなみにもあらぬ  ---- きみさへ  0094:  ものへゆくひとに ときのまもあまたゝひのみか なしきはきみかゆくへもみち にそありける  0095:  これはものへゆく人の  あめふれはとゝまるとて なくなみたそらにみてはや おほそらにけふしもあめの ふりとゝめつる  0096:  かへし こきませてなみたもあめも ふりつるはいつれによりて  ---- きみとまるらむ  0097:  こしへいくひとにあふき  やるとて しらやまのゆきのなこりはさむ くとも・・・  0088: きみかゆくゝもちおくれぬあ したつはいのるこゝろのしるへ なりける  0089:  あきものへゆくひとに かせよりはたむけにちらすも みちはもあきのわかれはきみ にやはあらぬ  ----  0090:  さぬきにてかけあきら もみちはのにしきにみゆるうら/\ はなみのあやをやたちか さぬらむ  0091:  かへし いろふかきもみちそめけるうら/\ はみちくるしほにかすやまし けむ  0092:  たいにのくたるに おいぬともなをゆくすゑそ にのらるゝちとせまてにもい きのまつはら  0093:  かせふくひものへゆく          人に  ---- かせふけはおもほゆるかな すみのえのきしのなみにも おいぬきみさへ  0104:  ゑにあはれたるところに  しくれふるをとこき  たり かみな月そらのしくれは ふるさとにきみたつねたる そらもかはらす  0105:  ほうしふかき山にゐ  たるところ あとたえてにりにしひより  ---- ふしのやまたきのおとにも 人のきこえぬ  0106:  人のいへのまへよりかは  なかれたりむまとゝめ  たるところ いかてかはすきてゆくらむ かはなみのたちとまらるゝ やとのまへより  0107:  たひゆくひとあり ゆくひとにそふるこゝろのあ やしくもしるへなきこと まとはるゝかな  ----  0108: ゆくをたゝおもひやらなむか りかねのかよふこゑたにき かぬくもゐを  0109: たつときくそらをなかめて はるかすみかひのわ かれそかなしかりける  0110:  あさりしたるところ あさりしてかひありとおもふ みをはまにたのみてくると 人やみるらむ  0111: みをすてゝそらかつくともた  ---- くなはをなかくゝるひとあら しとそおもふ  0112:  あれたるいへにもみちゝり  いれるところ そらさえてかけもかくれぬふ るさとはもみちはさへそとま らさりける  0113:  ゑにたなはた さよふけていまわたるらむあま のかはかけこそみえねみつは まさらし  0114:  中宮のひゐなあそ  ひにつくれるくるま  ----  七月七日 たなはたはけふはあふせと きくものをみつとはかりやみて かへりなむ  0115:  れいけいてんの女御中宮  にたてまつらせたまふ  ひゐなのもにあして  にて しらなみにそゐてそあきも たちくらしみきはのあし もそよといふなり  0116: たなはたのこゝろやそらにかよ  ---- ふらむけふたちわたるあまの かはきり  0118:  三条の女御なてしこ  あはせに かきほなる山となてしこ いろふかきけふやへといふ人を またまし  0119: なてしこのはなのかけする かはなみはいつれのかたに こゝろよすらむ  0120: なてしこのはなさきそむる あきのゝにけふひくらしの こゑそきこゆる  ----  0121:  むらかみのせむわうの御  ときのきくあはせにす  はまにつるきくあり たつのゐるみきはのきくに しらなみのをれとつきせぬ かけそみえける  0122: うくひすのうつれるやとのむ めのはなかをしるへにて人  ---- はとはなむ  0123:  きたのみやのうちに  たてまつらせたまふ  あふきに きみかてにまかするあきのかせ なれはなひかぬくさはあら しとそおもふ  0124: そてのうらのなみふきかへす あきかせはくものうへまて すゝしからなむ  0125:  七月七日一品のみやの  御このまけものゝれう  ----  中将たてまつるあして  のぬひものに あまのかはかはへすゝしきたな はたにあふきのかせをなをや かさまし  0126:  とうくむの天上人あふ  きたてまつるとて こよなくそけふはすゝしき たもとよりあふくかせさへ あきになりつゝ  0127:  中宮の御さうしかゝせ  たまふおくに みれとなをのへにかれせぬ  ---- たまさゝはゝたのゝつゆはいつも かれせし  0128:  御かへし きえぬまをうきことにするた まさゝのつゆはかせふくほとそ ひさしき  0129:  ほりかはの中納言ゐむふた  きのところにめしたりける  ころ おくやまのしけりをわけて なくしかをいかてともしの 人たつぬらむ  0130:  こいせのこかうたかきて  ひとにつかはす  ---- なき人のことのはうつるみつ くきはかきもやられすそて そぬれける  0131:  人のさうしかゝするを  くに われよりはひさしかるへき あとなれとしのはぬ人はあは れともみし  0132:  むらかみの御ときに又みや  のおほせことありてよ  たいきといふ又みやありや  といふといれさせたまふ  ---- よゝをへておちくるたきの しらいとにぬけるたまとは あはやみゆらむ  XXXX つきもせすおちくるたきのし らいとはむすひしあはやかす をしるらむ  0133:  たけ ゆきをおもみえたはなひけと くれたけのしたにかよはぬ よこそみえけれ  0134:  人かよはしたるをとこ こひわたるきみをみしには  ---- あらねはやおもひやまれて けふもこひしき  0135:  かへし ・・・  0138:  ・・・ いつそやもしもかれしかと わかやとのむめをわすれぬは るはきにけり  0139:  ひとまつとむめとをとり  ませて さためなくあたなるはなを みるよりはときはにちらぬ まつをやはみぬ  0140:  かへし  ---- すみのえのわかみなりせはと しふともまつよりほかの いろをみましや  0141:  あめふるとて人のこねは ふるによりさはるこゝろもうき ものをあめのみつらくおもほ えぬかな  0142:  こうはいにつけて ・・・  0143:  ・・・ うくひすのやとのはなたにいろ こくはかせにもあてゝしはし またなむ  0144:  又 あてしとてまもれとかせの  ---- ふきつゝもあるにもまさるかを いかにせむ  0145:  みのむしつけるえたにつ  けて うつろはぬはなのあたりを たつねつゝいひれかむしをあは れとそみる  0146:  かへし ちりかたのはなのあたりはいとゝ しくむかしうつろふいろと こそみれ  0147:  みやの御もきにうたよ  みつかうまつりしたりしを  ----  みて左大将 よしの山たきのいとさへとち つれとはやくしリにしこゑは わすれす  0148:  みしかきくきをねなから  ひきて つゆしけきあさちかはらのは なみれはみしかきほとにあき をしるかな  0149:  御かへりこと あさちふのしたにさきける はなのいろをむしたにことに たつねさりけり  ----  0150:  しりたりけるをとこのはや  ういきけるところに又いき  けるに みるひとのそてをあやなくぬら すかなのなかのみつのふかきは かりに  0151:  かれたるかはつをおかせて  人の かれにけるかはつのこゑをはる たちてなとかなかぬとおもひけ るかな  0152:  かへし たれかゝくこゑをなきてはし のひけむよるかへりてはなをや  ---- たのみし  0153:  はやうみしいへのさくら  をこはこにいれて としをへてをりける人もと はなくにはるをすくさぬはなを みよきみ  0154:  かへし あけくれにとはぬはかりをたまく しけそらなるはなはいつかわ するゝ  0155:  さくらの又はえたるえ  たのあかきえたにつけて はるすきてあきはまたこぬほと なれははなかもみちかえこそ  ---- みわかね  0156:  又人 あふとみしゆめをたのみて はるのひのくれかたきをも なけきつるかな  O157  かへりこと こゝろしてあはましものを ゆめにてもいかておもな くみえわたりけむ  0158:  又ひと たのめともむなしきそらを なかめつゝしのひにそてのぬ れぬひそなき  0159:  かへし  ---- あはれともおもふこゝろのそらな るはなかむとひとをきけはなり けり  0160:  五月にまゆみのもみち  につけて しくれをはまちもつけてや 山のはのおのれまたきにもみ ちそめけむ  0161:  かへし ときかねてうつろふえたの あたりには人にしられぬあ きやきにけむ  0162:  又 きみこふるなみたもそてに もりぬれはわれよりほかに  ---- 人やしるらむ  0163:  かへし れかこふるなみたちつゝもみに そひてうしろめたくもゝらす なるかな  0164:  (又ひと) みのうへも人のこゝろもし らぬまはことそともなく ねをのみそなく  0165:  かへし きみたにもことそとしらぬな みたをはいかにしりてかあは れとおもはむ  0166:  又ひと  ---- はかなくておなしこゝろに なりにしをおもふかことはお もふらむやそ  0167:  かへりこと わひしさをおなし心ときく からにわかみをすてゝきみそ かなしき  0168:  又人 さはみつの心をしれるきみ ならはつねよりまさるけふそ といはまし  0169:  かへし まさるらむみきはのほとは しらねともまとをはまへそ  ---- おもひいてつる  0170:  おもふことあるころひとに ありしよりみたれまさりて あまのかるものおもふみとも きみはしらしな  0171:  あるひと かくしつゝよをやつくさむみち のくのあふくまかはゝいかゝわ たらぬ  0172:  かへし あふくまをわたりもはてぬも のならはかはなか/\にわれ いかにせむ  0173:  きたるにかへしたれは人  ---- あきかせになひく心はくすの はのふきかへさるゝをりそわ ひしき  0174:  かへし 心よりふくにもあらぬあき かせにかへるこのはをうらみ さらなむ  0175:  又人さくらをゝりて 人しれぬわかみなりせはや となからはなみにこともいはま しものを  0176:  かへし はなみにといひかてらにて 人しれすをるともかせに  ---- ちらさすもかな  0177:  あるひとのしのひてもの  いふにほとゝきすのな  けは こよひこそしてのたをさも きゝつめれいまやさ月のそらに しられむ  0178:  かへし ほとゝきすなきわたるともさみ たれのそらとひとゝききゝも なさなむ  0179:  かたらふひとのものいひて うつゝともゆめともわかてあけぬ るをいつれのよにか又はあふへき  ----  0180:  かへし ゆめにてもおもひしわかぬもの ならはみてわすれなむことの わひしさ  0182:  ことをかりて人に としをへてきゝならし つることのねをてにならしつる あきそうれしき  0183:  かへし おとにのみきゝつることのおとれ はやならしそむるにあはれそ ふらむ  0184:  かたゝかへに人のもとに  いきたるにはきにあさ  かほかゝりてさいたるを  ----  をりてかれより はつあきのはきのあさかほあさ ほらけわかれしひとのそてかと そおもふ  0185:  かへし そてのてもみえやはしけむ あさかほのひるうつろひしわかれ なりしを  0186:  よへの月みけむやと人  のいひたるに いつとてもあはれとおもふをね ぬよるの月はおほろけなく/\ そみし  0187:  人のこむとてこねは  ---- ちきりけむひをもすくさぬ たなはたはわかと・・・  0188:  かへし たなはたのちきりけむひは すくすともたとふへしやはこと もゆゝしく  0189:  又 ゆゝしともおもはさりけり たなはたのわすれぬなかのあ らまほしさに  0190:  あきころ月あかきに  人に こひしさはおなしこゝろに あらすともこよひの月をき みゝさらめや  0191:  かへし さやかにもみるへき月をわれ はたゝなみたにくもるをりそ おほかる  0192:  としころありて人にわ  かれて ころもたになかにありしは うとかりにすたれのうちのこへ そこひしき  0193:  かへし うちとなくなりもしなまし たますたれたれとし月を へたてそめけむ  ----  0194:  又人に しくれにもつゆにもあらて きみこふるわかころもてのぬ るゝころかな  0195:  かへし こさまさるもみちならねは ぬるなれといろのふかさもしら れさりけり  0196:  あきいたくかせふくに  ひとに あきはきのいろつくたにも あるものをこゝろほそくもか せのふくかな  ----  0l97  かへりこと いねかてになるへきほとの かせのおとはおきのはならぬ みにもしみけり  0198:  たれにかあらむ又ひとに あきのよのゆめちとおもはゝ いたつらにゆきてかへるもう らみさらまし  0199:  かへし ゆきかへるみちにをられぬ こゝろにはまとひしわれも たれをうらみむ  ----  0200:  あめのふるよ人のき  たるに 月よにもこぬよひあまた すきにしをあめもよにこ しとおもひけるかな  0201:  人に そてしきてふしゝま くらをおもひいてて月み ることにねをもなくかな  0202:  七月七日 いむといへはしのふものからよも  ---- すからあまのかはこそうらや まれける  0203:  又ひとに たかさこのおのへにたてる まつたにもをれはをりつるわ れとしらなむ  0204:  かへし たかさこのまつはおれとも しもかれにしほるゝは なをしるひとそなき  0205:  かとさしていつみのかみ  ----  したかふのあそむのか  きをへたてゝあるを  むめをこなたの人の  いりてとりたるといふを  きゝてむめをやりたれは  したかふ ゐせきにもさわらてみつ のもるときはまへのむめにも のこらさりけり  0206:  かへし いつみにもさはらすいかにもり にけむせきのふるくひゝ まもあらぬに  ----  0207:  又したかふ いつみかはあらぬまかきのし まちかみなみの(こえつゝ)もるとこそきけ  0208:  又かへし うらこふるなみのおとせはも らぬよりしまきのかせそ ふきかへさるゝ  0209:  みつあきらの少将 こたかくてあめもされらぬみ かさやまかけにかくれぬ人は あらしな  0210:  おなしところにて  ----  かけあきらこうはいを  をりて つねかくうらみてすくすは るなれとむめにやあかすの ちもまたれむ  0211: まちてぬるはるとそきゝし はるかすみかくさむゝめにお とらましやは  0212:  又たれにかあらむ おもふとちまとひてをれは むめのはなこゝろにいろやふ かくなるらむ  O213  おなし少将いゑにゐて  ----  二月十日月あかきに はるのよのよゐゝなからもなか らへむとおもふこゝろもいのち たえすは  XXXX  きさらきまてむめの  はなさかさりけるところ しるらめやかすみのそらを なかめつゝはなもにほはぬはる をなけくと  0214:  あしてにておまへのむ  めのきのもとにたかとも  しりかたけれはきの  えたににひつけてとる  ----  ひともやあるとまちしに  かへし このはるをのふるこゝろのはし めよりちとせすくるまておも ふやはきみ  0215:  人にかはりてあるをむな  おなしせうさうに いかにせむたえまかちなるいは はしをたのみれたらむことの かたさよ  0216:  かへし かつらきのつらきくめちに いはゝしのそなたもたゆる こゝろとそきく  ----  XXXX  かへし ことつくるきみかつらきのかみ よりもたえまはわれそれたし わひぬる  0217:  かへし たえまなくわたさましかは かつらきのかみもとけてそ れかたのまゝし  0218:  人にかはりて おとろかてあらましものを みもはてぬひるまのゆぬのこ ひしかるらむ  0219:  又人のれうに  ---- まつ人のとほたあうみこそ わひしけれなこそのせき にいまはさはらし  0220:  あめふるよ人のものなと  いひてたちぬるをおも  ふ心あるひとにかはりて をやみせぬあめにしほれて とこなつはこよひふしぬと きくはまことか  0221:  七月七日 ほしまよふほとをまつと てたなはたのやすきそら なきくもゐなりけり  ----  0222: けふのなとしらぬ人なき たなはたのいまさへさらに よをふかすらむ  0223: こよひこそかせもすゝしく あまのかはなにたちわたる きみもまちけれ  ----  *二頁空白  ---- なかつかさかしふは  こにもはへれとそれは上下   してうたすくなく        はへりて  これはうたもおほくかはり はへりたれはかきうつし  はへりておきはへらむとて     いかなるにかひかこと       なといひはへれは    よのつねにはへり      本に本とのみ       はへる本にて    その本のまゝも     うるさくはへりて        さのみも  本かりはへらねは又   こゝろえてかきたる     やうにや人み         はへらむ           と    いとよしなき      ものにかゝり         そめはへりて       はへるはへりに          はへる         となむ          はへる           はへり  ----  *一頁空白  ----  End  底本::   中務集(出光美術館所蔵)  底本::   著名:  中務集 (伝西行筆)   発行所: 二玄社   初版:  平成4年10月30日 発行  入力::   入力者: 新渡戸 広明(info@saigyo.net)   入力日: 2001年09月12日-2001年09月16日  校正::   校正者:   校正日: