Title:  西行筆躬恒集  ----第一丁表  ----第一丁裏  ----第二丁表  Book:  躬恒集上  0001:15370  延喜の御時にみつしところにさふ  らひしにつかさめしのころ  ともにをくれたりしかは御らむ  せさせよとおもひてあるをむな  くら人のもとにやりし いつくともはるのひかりはゝかなくに またみよしのゝやまはゆきふる  0002: みな人はゝなのころもをきる中に  ----第二丁裏 ひとりそおいししつみはてぬる  0003: いまゝてにいてたゝぬみはもゝしきの みやのさくらをみてやゝみなむ  0004: わひゝとのおもふこゝろをちるはなに そへてくもゐにふきつけよかせ  0005:  中秋 人しれぬねをやなくらむあきはきの はなさくまてにしかのこゑせぬ  0006:  はしめのふゆ  ----第三丁表 かみなつきもみちのいろはふくかせと たきのみつとそおとしはてぬる  0007:  あはぬ恋 あはむとはおもひわたれとふしかはの つゐにすますはかけもみえしを  0008: おもひつゝまたいひそめぬわか恋を おなしこゝろに人はしらなむ  0009: みぬ人のこひしきやなそおほつかな たれとかしらむゆめにみるとも  ----第三丁裏  0010:  あひての恋 わかれてはのちそわひしきにこりえの そこともしらぬありかとふみは  0011:15380 ひたすらにわすれもそするわすれくさ みすやあらまし恋はしぬとも  0012: ひさかたのくもゐはかりにあひしより そらにこゝろはなりにしものを  0013: ひさにこぬ人をまつにやあへぬらむ ときはのこひとわれはなりぬる  ----第四丁表  0014:  ゑき十三年十月十一日たいりの  きくあはせにおほせによりて  たてまつる三首 きくのはなこきもうすきもいまゝてに しものをかすはいろもみましや  0015: はつしくれふりそめしよりきくのはな こかりしいろそまたまさりける  0016: もとよりのいろにはあれときくのはな かたへはうつすところからかも  ----第四丁裏  0017:  ゑき十四年二月十八日おほせに  よりてたてまつるいつみの大将の  四十賀の屏風四帖うちより  てうしてつかはすにかくれいの  うた やまたかみくもゐにみゆるさくらはな こゝろのゆきておらぬひそなき  0018: おほあらきのもりのしたくさしけりあひ てふかくもなつのなりにけるかな  ----第五丁表  0019: すみのえのまつをあきかせふくからに こゑうちそふるおきつしらなみ  0020:  おなし十三年ないしのかみの  屏風のうた あたらしくわれのみやみむきくのはな うつらぬさきにこむ人もかな  0021:15390  おなし十五年さい院の御屏風  のうた かをとめてたれおらさらむむめのはな あやなしかすみたちなかくしそ  ----第五丁裏  0022: ふるゆきにいろはまかひぬむめのはな かにこそにたるものなかりけれ  0023:  をむなともむめのはなみつゝ  わかなつむ はるのきるころもかたしきたかためか ならはぬくさにわかなつむらむ  0024:  人きのもとにあり あつさゆみはるのやまへをさりかたみ このもとことにこゝろをそやる  ----第六丁表  0025:  ゑき十七年御屏風の哥 みつのおものふかくあさくもみゆるかな もみちのいろそふちせなりける  0026: ちよをふるまつにかゝれるこけみれは としのをなかくなりにけるかな  0027:  のにこたかゝりす 人のこもかるときくまてをみなへし もとことになくすゝむしのこゑ  0028:  たかる  ----第六丁裏 をやまたのをくてのいねをかりつみて まもるかりいほにいくよへぬらむ  0029:  もみちゝる おしめともつゐにちりぬるもみちゆへ かせふくことにものおもふかな  0030:  ゑき十二年女二のみやの御屏風  のわかなへ ゆくさきはまたとをけれとなつ山の このしたかけはたちうかりけり  ----第七丁表  0031:15400  しはす このまよりかせにまかひてふるゆきも はるくといへははなかとそみる  0032:  内御屏風の哥子日 ねたくわれねのひのまつにならましを あなうらやまし人にひかるゝ  0033:  はなつみ うくひすはいたくなゝきそうつりかに めてゝわかつむはなゝらなくに  0034:  くさあはせするところ  ----第七丁裏 さくらはなわかやとにのみありとみは なきものくさはおもはさらまし  0035:  三月つくる日 けふくれてあすになりなはふちのはな かけてのみこそはるをゝもはめ  0036:  六月はらへ そらみえてなかるゝみつのはやけきも はらふる事をかみもきくらむ  0037:  七月七日  ----第八丁表 なぬかひのはやくれなゝむ久かた のあまのかはきりたちわたるへく  0038:  七日夕 ひこほしのつまゝつよひのあきかせに われさへあやな人そこひしき  0039:  八月十五日 いつこにかこよひの月のみえさらむ あかぬは人のこゝろなりけり  0040:  いねほしたり  ----第八丁裏 かけてほすやまたのいねをかそへつゝ おほくのとしをつみてけるかな  0041:15410  しはす あつさゆみはるたちしよりとし月の いるかことくもおもほゆるかな  0042: よふことりはるのむなしくすきゆけは こゝろほそかるねをもなくかな  0043: おほあらきのもりのしたなるかけくさは いつしかとのみひかりをそまつ  ----第九丁表  0044: ゆめにたにうれしとおもはゝうつゝにて わひしきよりはなをまさりなむ  0045: かくわふる人はむかしもありやせし よをしりそめのかみにとはゝや  0046: すくしこしとしをいくらとかそふれは ゆひいとなくもおいにけるかな  0047: みやこにてはるをはたゝにすくしきて いつちとかりのなきてゆくらむ  ----第九丁裏  0048:  あきになりてよろこひやし  たりけむ けふよりはうれしきみをもきくのうへに あまつそらよりをけるしらつゆ  0049: よにはねをわひてなくたにあるものを うれしきにさへおつるなみたか  0050:  おほみゆきのゝちたてまつるうた ふなをかのみゆきのゝちはよるへなみ しつむとわひしものおもひもなし  0051:14520 ちよをへてみゆきあるへきふなをかの  ----第十丁表 まつならぬみもおいそかなしき  0052:  ていしのみかとのおほゐに行  幸せさせたまへるときのうた  あきのみつにうかふ このかはにもみちとうきてさしかへり みはけふよりそみなれそめぬる  0053: あきのなみいたくなたちそおもほえす うきゝにのりてゆく人のため  0054:  あきのやまにのそむ  ----第十丁裏 けふなれはをくらのやまのもみちはも そらさへてりてみえわたるらむ  XXXX:15424 秋霧の晴るまに/\見渡せば 山の錦は織果てゝけり  0055:  紅葉おつ みつのおものからくれなひになるまゝに あきにもあへすおつるもみちか  0056: かせにちるきしのもみちはのちつひに たきのみつこそおとしはてつれ  0057:  のこりのきく きくのはなけふをまつとてきのふ  ----第十一丁表 おきしつゆさへきえていまさかりなる  0058: きみかためこゝろもしるくはつしもの おきてのこせるきくにそありける  0059:  つるすにたてり たつのいるかたにそありけるしろたえの あまのぬれきぬほすとみつるは  0060:15430 うらわきてかせやふくらむおきつなみ おなしところにたちかへりつゝ  0061:  たひのかり  ----第十一丁裏 としことにともひきつらねくるかりを いくたひくるとゝふ人そなき  0062: ふるさとをおもひやりつゝくるかりの たひのこゝろはそらにそあるらし  0063: あきことにくるかりかねはしらくもの たひのそらにやよをつくすらむ  0064:  やまのかひにさるなく わひしらにましらなゝきそあしひき のやまのかひあるけふにやはあらぬ  ----第十二丁表  0065: こゝろあらはみたひといふたひなくこゑを いとゝものふわれにきかすな  0066:  かもめなれたり なれてこしおきのかもめはつけなくに のちのこゝろをいかてしりけむ  0067: すにをれはいさこのいろにまかふとり てにとるはかりなりにけるかな  0068:  いりえのまつおいたり  ----第十二丁裏 ふかみとりいりえのまつもとしふれは かけさへともにおいにけらしな  0069: おいにけるまつそしるらむあるかはの みゆきもかくはあらすやありけむ  0070:15440  おなし院のうたあはせの左  かたにてよめる さかさらむものとはなしにさくらはな おもかけにのみまたきみゆらむ  ----第十三丁表  0071: きつゝのみなくうくひすのふるさとは ちりにしむめのはなにさりける  0072: わかこゝろはるのやまへにあくかれて なか/\しひをけふもくらしつ  0073: はなさくらいかてか人のをりてみぬ のちこそまさるいろもいてこめ  0074: いもやすくねられさりけりはるのよは はなのちるのみゆめにみえつゝ  ----第十三丁裏  0075: ふるさとにかすみとひわけゆくかりは たひのそらにやはるをすくらむ  0076: うつゝにはさらにもいはしさくらはな ゆめにもちるとみえはうからむ  0077: めにみえてかせはふけともあをやきの なひくかたにそはなはちりける  0078: はるふかきいろこそなけれやまふきの はなにこゝろをまつそゝめつる  ----第十四丁表  0079: かけてのみゝつゝそしのふむらさきの いくしほそめしふちのはなそも  0080:15450 けふのみとはるをおもはぬ時たにも たつことやすきはなのかけかは  0081: みやまいてゝまつはつこゑはほとゝきす 夜ふかくまたむわかやとになけ  0082: むらさきにあふみつなれやかきつはた そこのいろさへかはらさるらむ  ----第十四丁裏  0083: わかきゝて人にはつけむほとゝきす おもふもしるくまつこゝになけ  0084:  恋 なみたかはいかなるみつになかるらむ なとわかこひをけつ人のなき  0085: たれによりおもひみたるゝこゝろとも しらぬそ人のつらきなりける  0086: 人のうゑとおもひしものをわか恋は なしてやきみかつれなかるらむ  ----第十五丁表  0087: うつゝにもゆめにも人によるしあへは くれゆくはかりうれしきはなし  0088:  へい中将の家のうたあはせに  はしめのはる はるたちてなをふるゆきはむめのはな さくほともなくちるかとそおもふ  0089:  中のはる はかなくてはるひとつきはすきにけり はなのさかりはすきかてにせよ  ----第十五丁裏  0090:15460  はてのはる とまるへきものならなくにはかなくも ちるはなことにたくふこゝろか  0091:  はしめのなつ やまかつのかきねにさけるうのはなは たかしろたえにころもかけしそ  0092:  中のなつ ほとゝきすおちかへりなけわきもこか うちたれかみのさみたれのそら  0093:  はしめはあき  ----第十六丁表 としことにあふとはすれとたなはたの ぬるよのかすそすくなかりける  0094: たちとまりみてをわたらむもみちはゝ    〔脱〕 あめと〔ふると〕もみつはまさらし  0095: かせにちるあきのもみちはのちつひに たきのみつこそおとしはてつれ  0096: そよみなくみるきみ〔な〕れとひこほしの けふまちてたる〔こゝち〕のみして  0097: あきのよのおほろにみゆるつきよりは もみちのいろそてりまさりける ----第十六丁裏  0098: かりてくるやまへのとりをあきゝりの たつたひことにそらにこそみれ  0099: かけをたにみせすもみ〔ち〕はちりにけり みなそこにさへなみかせやふく  0100:15470 ゆきやらぬこゝろやなにそ秋のゝの みちはちとせもあらしとおもふを  0101:  十五夜月 あはちにてあはとくもゐにみしつきの ちかきこよひはところからかも  ----第十七丁表 あしろきのなかひをやせむはかなくて もみちのかけにひをくらしつゝ  0103: あきのゝをわけゆくつゆにうつりつゝ わかころもてはゝなのかそする  0104:  せいれうてむのみなみのつまに  みかはみつめくりてたりまつ延喜十  九年九月十三夜そのえむせ  させたまへりそのこゝろのたい  あり人々うたゝてまつる もゝしきのおほみやなからやそしまを  ----第十七丁裏 みるこゝちするあきのよのつき  0105: あけぬれはつれなくなりぬおみなへし 人しれすこそおらむとおもふに  0106: かはかみにしくれのみふるあしろきは もみちさへこそおちまさりけれ  0107:  内御屏風に なかれゆくもみちのいろのふかけれは たつたのかはゝふちせともなし  0108: さゝのはにおくはつしものよをさむみ  ----第十八丁表 しみはつくともいろにいてめや  0109: かみなつきしくれにぬるゝもみちはゝ たゝわひ人のたもとなりけり  0110:15480 ふゆのいけにすむにほとりのつれもなく したにかよはむ人にしらすな  0111: よをさむみをくはつしもをはらひつゝ くさのまくらにあまたゝひねぬ  0112: くろかみのしろくなりゆくみにしあれは まつはつしもをあはれとそみる  ----第十八丁裏  0113: をとにのみきゝてやみにしきくのはな ゆめにもいろはみえすなりにき  0114: あたなりとわれをはきくのはなしもそ うつろふいろはこさまさりける  XXXX:15485  かうへをめくらすうた ます鏡そらなる影にむかひゐて 見る時にこそ知らぬおきなに逢ふ心ちすれ  0115: あこそかのおちかた人にものまうす そこにしろくさけるはなにの はなそも  0116:XXXXX〔国歌大観本になし〕 ますかゝみそこなるかけにむか ひゐてみるときにこそしらぬおきな  ----第十九丁表 にあふこゝちすれ  0117: きみかさすみかさのやまのもみち はのいろかみなつきしくれのあめに そめるなりけり  0118: くさきすらはるにはなへてあふ さかのせきにいろ/\あるをは 人もしいはむことのかたさよ  0119: はつせかはふるかはのへにとしを へてふたもとあるすきまたもあ ひみむおもかはりせて  ----第十九丁裏  0120:15490  なかうた わきもこか   きるなつころも しろたえに さけるかきねの うのはなの   ときになるらし あしひきの   やまほとゝきす さとにいてゝ なくさみたれの たまのをの   よはみしかくて たまくしけ   あけやすけれや ゆめにたに わかおもふ人を あくまてもみむ  0121:  内にたてまつる ちはやふる   かみなつきとや はつしくれ くもりもあへす けふよりは   もみちとゝもに  ----第二十丁表 ふるさとの   よしのゝやまの やまおろしも さむくひことに なりゆけは   たまのをとけて こきちらし   あられみたれて しもこほり いやかたきしく にはのおもに  むら/\みゆる ふゆくさの   うへにふりしく しらゆきの つもり/\て  あらたまの   としをおほくも すくしつるかな  ----第二十丁裏  Book:  躬恒集下  0122:  延喜十三年十月九日おほせにより  てたてまつる女一宮の御もきにたて  まつらせたまふ御さうすくの  ものかたにをみつへてにくする  れうのうた なかれいつるやまをしおもへはよしのかは ふかきこゝろのたえむものかは  0123:  また わたつみのかみそしるらむおなしくは あまのかるもをわれにかさなむ  ----第二十一丁表  0124:  すさく院のをみなへし合の  うた つまこふるしかそなくなるをみなへし おのかすむのゝはなにはあらすや  0125:  をみなへしといふ五もしをくの  かしらにすへてよめる             〔脱〕 をゝぬきてみるよしもかな〔な〕からへて たへやとあきのしらつゆのたま  0126: をりつれはみてあきのひはなくさめつ なへてこのはなしらせすもかな  ----第二十一丁裏  0127: あはぬよもあふよもいをしまたねゝは ゆめのたゝちはあれやしぬらむ  0128:  こしヘまかる人にをくる きみかゆくみちもたひちのみやこには またくかへるのやまそありてふ  0129: もみちはやたもとなるらむかみなつき しくるゝことにいろのまされる  0130:15500  ひらのやま かくてのみわれおもふひらの山さらは  ----第二十二丁表 みもいたつらになりぬへらなり  0131:  うちやま わたつうみのなみうちやまはゝまにいてゝ ひろひもをかむ恋わすれかひ  0132:  ひえの山 なつならぬくさとりかへしうへしたに ひえのやますもおひにけるかな  0133:  みなせかは をちかたにわたりかねてそかヘりぬる みなせかはりてふちになれゝは  ----第二十二丁裏  0134:  さひかは むかしよりありのまにわかすさひかは ぬれ/\もなをほりやしてまし 〔『国歌大観本』では〕 〔昔より有の随まに有らせぬは〕 〔我すさびかは人の心を〕  0135: めにみえてこゝろにしむはむめのはな ふきすきてゆくかせにさりけり  0136: あおやきのいとめもみえすはることに はなのにしきをたれかをるらむ  0137: はるかすみたちなからよをあかしては かりとゝもにそなきてかへりし  ----第二十三丁表  0138: むめのはないろはめなれてふくかせに にほひくるかそとこめつらなる  0139: はるのたつけふうくひすのはつこゑを なきてたれにかまつきかすらむ  0140:15510 はるたちてひはへぬれともうくひすの なくはつこゑはけふそきゝつる  0141: おいぬれはかしらはしろくうのはなを おりてかさゝむみもまかふかに  0142: なつくさはしけくひことになりゆけは  ----第二十三丁裏 かれにし人はみえぬわかやと  0143: としのふるそつもれるゆきにあとたえて 人かよひちもみえぬわかやと  0144: としことにとゝめかねてはちるはなの さきにもたゝぬくひをするかな  0145: くるとしのゆきとしらすはさくらはな ちるもいとかくおもはましやは  0146:  あつまへゆく人にやる あしからのやまちはみねとわかれゆく  ----第二十四丁表 こゝろのみこそゆきてかよはめ  0147: さくらはなちりなむのちはみもはてす さめぬるゆめのこゝちこそすれ  0148: すかのねのなかきひなれとさくらはな ちるこのもとはみしかゝりけり  0149: はるのひはくれやしぬらむはなをゝきて かへることこそものうかりけれ  0150:15520  むまのけつるふち                 に むらさきのいろのふかきはみなそこの みえつるふちのはなにさりける  ----第二十四丁裏  0151:  いかるかにけ ことそともきゝたにわかすわりなくも 人のいかるかにけやしなまし  0152:  ゆふかみ こひすれはやせこそすらめものゝをの ゆふかみしかくおもほゆるかな  0153:  あしふち をそきむまはあしふちならてあふれ ともこゝろのみこそさきにたちぬれ  0154:  かけふち われをたにあひやはまたぬさもつらき  ----第二十五丁表 はなかけふちるあすもひはあり  0155:  あを このめはるときになるまてなはしろの あをたにいまたつくらさりけり  0156:  かすけ たなはたにわかゝすけふのからころも たもとのみこそひちてかへらめ  0157:  月をみて あくるまてこよひの月をみてもあらて ねてあかすらむ人のこゝろよ  0158: かへるかりくもゐはるかにきくときは  ----第二十五丁裏 たひのそらなる人をしそおもふ  0159: をみなへしいろにもあるかななつむしを もとにやとしてたれをまつらむ  0160:15530  をみなへしのおほかるところにて をみなへしおほかるのへをみるときそ わかおいらくはくやしかりける  0161: あきのゝによるもやねなむをみなへし はなのなをのみおもひかけつゝ  0162:  われをしりかほに人にいふなと  ----第二十六丁表  いひ侍けるをむなに あしひきのやまにおひたるしらかしの しらすや人をくちきなりとも  0163:  つきのおもしろきに ひるなれやみそまかひなる月かけを けふとやいはむきのふとやいはむ  0164:  あはちのそうのにむはてゝ京に  のほりてそのころかねすけの  中納言の家にて ひきてうへし人はむへこそおいにけれ  ----第二十六丁裏 まつのこたかくなりにけるかな  0165:  もとよりのとくいに侍けれはかね  すけの卿にたてまつるなつきを  つらゆきしてつたへさすとて  つかはす 人につくたよりたになしおほあらきの もりのしたなるくさのみなれは  0166:  しふゐの  うるふ三月あるつこもりの日 つねよりものとけかりつるはるなれと  ----第二十七丁表 けふのくるゝはあかすそありける  0167:  これひらのあそむのとひこ  たふうた さをしかのしからみふするあきはきは したはやうへになりかへるらむ  0168:  たいしらす ひさかたのあまつそらなる月なれと いつれのみつにかけなかるらむ  XXXX:15539 〔人のこゝろを(如元)〕  0169:15540  しらに やまふかみ人にもみえぬすゝむしは  ----第二十七丁裏 あきわひしらにいまそなくなる  0170:  ひくらし ことのねはあきのしらへにきこゆ也 たかくせめあけてかせそひくらし  0171:  しをり よひのまにわかおもひつるあきのよは あけしをにしに月のみゆらむ  0172:  ちゝこくさ はなのいろはちゝこくさにてみゆめれと ひとつもえたにあるへきはなし  ----第二十八丁表  0173:  かりやすくさ うくひすはこゝろはこゝてはるをたに かりやすくさすとひかへりゆく  0174:  わかれのうた かたかけのふねにやのれるしらなみも たつはわひしくおもほゆるかな  0175:  あめふる日人にをくる ころもてそけさはぬれたるおもひねの ゆめちにさへやあめはふるらむ  ----第二十八丁裏  0176:  雑歌 きみゝてはありぬへしやとこゝろみに たゝまくもうきからにしきかな  0177: おほそらをなかめそくらすふくかせの をとはすれともめにしみえねは  0178: いつらなるやまにあるらむかりかねの をときゝたかくきこゆなるかな  0179:15550 かみなつきもみちのときはやまとにて  ----第二十九丁表 からくれなゐにみゆるさほやま  0180: おもふともあひもおもはすおもふとき おもふ人をはおもはさらなむ  0181: したひものとけしはかりをたのみにて たれともしらす恋もするかな  0182: おふれともこまもすさめぬあやめくさ かりにも人のこぬかわひしき  ----第二十九丁裏  0183: あらたまのとしのよとせをなましひに みをすてかたみわひつゝそすむ  0184: いたつらにおいぬへらなりおほあらきの もりのしたなるくさはならねと  0185: なけきのみおほえのやまはちかけれと いまひとさかをこへそかねつる  0186: ことさらにしなむ事こそかたからめ  ----第三十丁表 いきてかひなきものおもふみは  0187: けふくれてあすかのかはのかはちとり いまいくとせかなきわたるらむ  0188:  よをうらみて山てらにまかる  人につかはす よをうしとやまにいる人山なから またうきときはいつちゆくらむ  0189:15560 あきたちていつしかとのみまちしかと  ----第三十丁裏 あひてぬるよはたゝひと夜のみ  0190: きりけくてわかころもてはぬれぬとも をりてをゆかむあきはきのはな  0191: ひさかたのつきをさやけみもみちはの こさもうすさもわきつへらなり  0192: うちはへてやすきいもねすきり/\す あきのよな/\なきつゝそふる  0193:  九月九日  ----第三十一丁表 おいはみのからきものなりけふはしも ぬれにもぬれむきくのしらつゆ  0194:  やまこえ ともにわれかへるやまちのもみちはの をのかちり/\わかるへらなり  0195: あきゝりもはれぬあしたのおほそらを みるかことくもみえぬきみかな  0196: あきのゝにひくらしつるをゝみなへし  ----第三十一丁裏 よるやとまらむはなのなたてに  0197: おきのはをそよとつけすはあきかせを けふかくふくとたれかしらまし  0198: あきはきの中にたちいてゝましりなむ われをは人はゝなとやはみぬ  0199:15570 もとのいろはいつれなるらむしらつゆの したにうつろふわかやとのきく  0200: かみなつきちゝにうつろふきくのはな  ----第三十二丁表 いつれかもとのいろにはあるらむ  0201: ふちのはなちりなむのちもかけしあらは うつろふころのあるかひはあらむ  0202: ことさらにみにこそきつれさくらはな みちゆきふりとおもはさらなむ  0203: たまほこのみちゆきふりにやまさくら おるとやわれをはなのおもはむ  0204: つきみつゝをるすへもなきわかやとに  ----第三十二丁裏 いとゝもきなくほとゝきすかな  0205:  四月に山のゆきをみて しらゆきもまたきえはてぬやまさとは いつはかりかはなつをしるらむ  0206: つきみつゝまつとしらすやほとゝきす こよひしほかになかはうらみむ  0207: としをへておもひ/\てあひぬれは つきひのみこそうれしかりけれ  ----第三十三丁表  0208: よとゝもにひとをわすれぬむくひにや けふはうれしくあひみそむらむ  0209:15580 みつゝわかなくさめかねつさらしなの をはすてやまにてりし月かも  0210: あまのかはふねさしわたすさをしかの しからみふするあきはきのはな  0211: くらへみむわかこゝろもてと秋はきの はなのいろにはいつれまされり  ----第三十三丁裏  0212: あらたまのとしふりつもるやまさとに ゆきはなれぬるわかみなりけり  0213: ときはなるまつをはおきてあちきなく あたなるやまのさくらをやみむ  0214: おしめともとゝまらなくにやまさくら ゆきとのみこそふりてやみぬれ  0215: ちりぬともかけをやとめむふちのはな いけのこゝろのあるかひもなく  ----第三十四丁表  0216: わかやとのいけのふちなみさきしより やまほとゝきすまたぬひそなき  0217: ほとゝきすなくさみたれのみしかよは 月かけさへそともしかりける  0218: さみたれのたそかれときの月かけの おほろけにやはわか人をまつ  0219:15590 みよしのゝやまのこゝろはけふやしる いつかはゆきのふらぬひはありし  ----第三十四丁裏  0220: わかやとの秋はきのはなさくときそ おのえのしかもこゑたてゝなく  0221:  七月七日人にをくる うちはへてすむめる人はたなはたの あふよはかりはかしもせよかし  0222: あきのゝのはなのいろ/\とりそへて わかころもてにうつしてしかな  0223: たちかへりまたもみにこむもみちはを  ----第三十五丁表 おとしなはてそやまかはのたき  0224: きくのはなみつゝあやなくなをもあらて 人のこゝろにうつろふなゆめ  0225: やまたかみめつらしけなくふるゆきの しろくやならむとしつもりなは  0226: やまのははまたとをけれと月かけ をゝしむこゝろそまつさきにたつ  ----第三十五丁裏  0227: ひさかたのつきひとおとこひとりすむ やとにさしいれ人のなたてに  0228: みるほとにいかにせよとか月かけの またよひのまにたかくなるらむ  0229:15600 さみたれの月のほのかにみゆるよは ほとゝきすたにさやかにをなけ  0230: いらぬまにこむといひしかはこよひこそ わひておしけれなつのよのつき  ----第三十六丁表  0231: あたらしくてる月かけにほとゝきす ふるこゑしるくなきわたるかな  0232: はなとのみゆきのみゆるはふゆなれと こゝろのうちやはるによるらむ  0233: としふかくふりつむゆきをみるときそ こしのしらねはすむこゝちする  0234: ふるゆきとかつしりなからにほはねと なかこすしてはゝなとこそみれ  ----第三十六丁裏  0235: ゑたのうへにゆきをゝきなからくらふとも たれかはむめにあらすとはいはむ  0236: ゆきのうへにおもふこゝろはいちしるく つれなき人のめにもみえなむ  0237: よそにたゝみてやかへらむやまさくら はなのこゝろもよのましらぬに  0238: あおやきのはなたのいとをよりあはせ            〔脱〕 てたえすもなくかうくひ〔す〕のこゑ  ----第三十七丁表  0239:15610  ゑきの御時にみふのたゝみねか  おほやけの御つかひにてものへ  まかるに大井河のもとにまかり  あひてものなといひかくるに  たゝみねのいそきてまかりけれは  よみ侍る      〔脱〕 とゝむれと〔と〕ゝめかねつゝおほゐかは いせきをこへてゆくみつのこと  0240:  しのひて御ことひかせたまふを  ----第三十七丁裏  きゝて あきかせのふくもしらすはしらくもの あまつしらへをいかてきかまし  0241:  七月八日のよ人にあひてわかる  とて たなはたのあかぬわかれのけさよりも よさへあかさぬわれはまされり  0242: ゆきめくりいまこむあきをこひそへて こよひはかりはあひやしなまし  -----第三十八丁表  0243:  ひをけにむかふ ゆめにたにみはこそあらめうつみひ のおきゐてのみそあかしはてつる  0244:  ひはしを ふゆすきはなけをかれなむものゆへ にきみかてにはたなるゝへらなり  0245:  朱雀院なりける鶴のしに  たるをみて あしたつのよさへはかなくなりにけり  ----第三十八丁裏 けふやちとせのかきりなるらむ  0246:  わかれをゝしむ きみをゝもふこゝろを人にこゆるきの いそのたまもやいまもからまし  0427:  さほかけ いつれともおもほえなくにおほつかな いさほかけにてひとめみしかは  0248:  くれのをも  ----第三十九丁表 いつしかもまつゆふくれのおもかけに みえつゝみえぬ事のわひしさ  0249:15620 おりたちてうゑすはありともをやまた のあきのかりにはあはむとそおもふ  0250:  人のいゑのほとりの山のゐ すきかてに人はとまれとやまのゐの たよりとおもへはあさくそありける  0251:  十月紅葉たきにおつ  ----第三十九丁裏 もみちはのおちくるたきはかけてのみ たゝぬにしきをほすかとそみる  0252: かせにちるもみちのいろはかみなつき からくれなひのしくれこそふれ  0253: さみたれのよはくらくともほとゝきす さやかにたにもなきてこぬかな  0254: ほとゝきすひとこゑなきていぬるよは いかてか人のいをやすくねむ  ----第四十丁表  0255: おもひをはまつのみとりにそめしかと 又ハ〕 〔ら〕 はこかくすりのあるかひもなし  〔『国歌大観本』では下の句が〕  〔 花のがりのみ行く心哉  〕   〔したがって『伝西行本』は『西本願寺本』〕  〔     くすり送る歌        〕  〔 わかるゝかくるしきこともやまなくに 〕  〔 なにかくすりのあるかひもなし    〕  〔の下の句の誤字か〕  0256: あきかせのふきぬときけはいてゝこし いゑちのみこそこひしかりけれ  0257:  延喜十七年廿一日おほせにより  てたてまつる御屏風のうた  ゆきのうちのすきのき ゆきのうちにみゆるときはゝみはの山 やまのしるしのすきにそありける  ----第四十丁裏  0258:  おなしとしいせのさい宮の御  れうにくに/\のなあるところ  ところをかゝせたまへる御  屏風のうためしありしかは  すゝかやまたてまつりし をとにきくいせのすゝかのやまかはの はやくよりわかこひわたるかな  0259:15630  まとかた あつさゆみいるまとかたにみつしほの  ----第四十一丁表 ひるあひかたみよるをこそまて  0260:  あしろのはま しほみてはいりえのみつもふかやまの あしろのはまによせよおきつなみ  0261:  うはせかは うはせかはしたのこゝろもしらなくに ふかくも人のおもほゆるかな  0262:  はりかの からころもぬふはこかのゝあをやきの  ----第四十一丁裏 いとよりかくるはるはみにこむ  0263:  たけかは もみちはのなかるゝときはたけかはの ふちのみとりもいろかはりけり  0264:  わたらひ たまくしけふたみのうらにすむあまの わたらひくさはみるめなりけり  0265:  はみつ  ----第四十二丁表                〔は〕 ことさらにわれはみつらむこさゝ〔か〕ら さしてこふへき人はなくとも  0266:  うきしま いさやはたみのうきしまにとまりなむ しつみつゝのみよをふれはうし  0267:  なかはま なかはまにゐてしほたるゝほとゝきす さつきはかりはあまにさりける  0268:  のにのそみて  ----第四十二丁裏 をみなへしいかにおもはむあきのゝに ひとよそねにしはなのなたてに  0269:15640  おなしとし九月廿日あふみの  かみのをこせたるふみにいヘる  やうあそむあしたにほうわう  いしやまにもうてさせたまへ  しけふのうちにきたれ屏風  さうしにところ/\にたかひ  ----第四十三丁表  たるをよのうちにかくへしその  そのたいもみつからかくへきなり  とありにはかなる事なれと  おとろきてまかれるみかと  ひとよはとまらせたまふて  みのひ御ふねにてかへらせ  たまへるところに御さうけ  の事ともありすなはちうた  ----第四十三丁裏  をたてまつる いつみにてしつみはてぬとおもひしを けふそあふみにうかふへらなる  0270:  その御屏風のうたところ/\の  たいのおもむきにしたかへり あしひきのやまへのみちはいかなれや ゆくもみれともすきかてにする  0271: われよりもさきにさきにしまつなれは  ----第四十四丁表 みとりのゝちにあらはさらめやは  0272: あまのゝるたなゝしをふねあともなく おもひし人にあひみつるかな  0273: もしほやくあまのたくひのけふりこそ おもはぬかたにたちのほるらし  0274: やまさとにとしはふれともたきつせの はやくわかみし人たにもこす  ----第四十四丁裏  0275: したにのみもえわたれともうちはへて わかおもひをはけつひともなし  0276: もみちゝるあきならねともさをしかは やまのねたかくいまもなかなむ  0277: むらさきのいろしこけれはふちのはな まつのみとりもうつろひにけり  0278: かへるかりくもちのたひにふるときは なにをかくさのまくらとはせむ  ----第四十五丁表  0279:15650  雑の哥これもたいのおもむきに  よる さらしなのやまよりほかにてる月も なくさめかねつこのころのそら  0280: きりのうちのみやまかくれのもみちはゝ ひのひかりにそいろはみえける  0281:  ゆきのうちにおもひをのふと  いふたい左近中将にかはりて  ----第四十五丁裏 ほかにもやゆきはふるらむいまゝてに はるこぬやとはゝなとたにみむ  0282:  延喜十八年八月十三日左大臣  の家に八かうするに仏ほう  そうといふとりのなきけれは  よみてたてまつるなかうた あしひきの   やまにすむらむ このとりは たえにやはなく いかなれは   しけきはやしも  ----第四十六丁表 おほかるを   たかきはやしも あまたあれと はねうちはふき とひすきて   はるなつふゆの ときもあるを  きみかあきしも もみちはの からくれなゐに ふりいてゝ   なくねをさとに きかせそめつる  0283: やまにすみまれにきこゆるとりなれと さとにもきみかあきよりそなく  0284: その人もきみはつけしもせしものを  ----第四十六丁裏 いかてかとりのかねてしりけむ  0285:  とのゝ御かへし左衛門そうみな  もとのなかたゝを御つかひにて のりをおもふこゝろしふかくいりぬれと さとゝもとりにみゝそありけむ  0286:  しはすのつこもりのよなのおにを おにすらもみやこのうちとみのかさを ぬきてやこよひ人にみゆらむ  ----第四十七丁表  おなしとし九月廿四日殿上人  紅葉みにいきけるに左近の少将  二人にかはりて いつしかとまつしるしなしもみちはの をのかちり/\なりやしなまし  0288: みやひとのかすはしりにきをみなへし いつことゝはゝいかゝこたへむ  0289:15660  やまをたつぬるみちにそうのいへ  ----第四十七丁裏  ありもちはにちりしきたり  せさいにおはなかせになひきて  人のまねくにゝたり少将むまより  おりてよむ 人しれぬやとになうへそはなすゝき まねけはとまるわれにやはあらぬ  0290:  そうにかはりてかへし いまよりはうへこそまさめはなすゝき ほにいつるあきと人とまりけり  ----第四十八丁表  0291:  きくのはなさきたるところに  よるとまりて人々みる きくのはなあきのゝなからうつろはゝ よふかきいろをこよひみましや  0292:  おなしとしの十月にきくのはなの  えむみやすところたちのし  たまふにをみなへしのもとに  きくのありみつのほとりにかけ  うつりたり  ----第四十八丁裏 きくのはなおしむこゝろはみなそこの かけさへいろのふかくもあるかな  0293:  おなし月の十九日めのとの命婦  もみちみにいてたりけるを  かへるとてもみちひとゑたおり  てたてまつるこのうたをそへ  たり けふのいろのさしいてゝらすふなをか のもみちはいとゝあかくそありける  ----第四十九丁表  0294:  のにいてたりける人のいりにお  そくかへれは かたるをもきかまほしきにあきのゝの はなみにいにし人のこぬかな  0295:  人のむすめのもきるときに このはるそえたさしそむるゆくすへは ちとせをかねておもふひめまつ  0296:  七日あしたに人にをくる きみにあはてひとひふつかになりぬれ  ----第四十九丁裏 はけさそひこほしのこゝちするかな  0297:  かへし           つらゆき あひみすてひとひもきみにとひれぬは たなはたよりもわれそまされる  0298:  おなしとしの二月とをとふみの  かみのせむに左近の少将にか  はりて わかるともきみをしらねはあしたまて ちるはなをのみおしみけるかな  ----第五十丁表  0299:15670  かつらさくらふちのはなを  みたれあひたり かつらよりかをうつしつゝさくらはな なをうしろにもふちそさきける  0300:  くれのはるひむかしくにへゆく  人にわかれおしみてをくる はるさめにきみをやりてはあふさかの せきのなたてにこひやわたらむ  0301: はるくれてさひしきやとはつれ/\と  ----第五十丁裏 にはしろたえにはなそちりける  0302: 人めをもいまはつゝましはるかすみ のにもやまにもなはたゝはたて  0303: ちくさにもしもにもうつるきくのはな ひとついろにそつきはそめける  0304: 脱〕 色毎にみつ菊の花よると云て〕 おほつかなくはあらぬいろかな  0305: ひともとのきくにはあれともつゆしもそ わけてこと/\いろはそむらし  ----第五十一丁表  0306: いまゝてにあふさかやまのもみちはの ちらぬはせきやさへてとめける  0307: きくのはなおりてよふけぬしらつゆも わかてなからもをきやしつらむ  0308: しろたえのいもかそてしもあきのゝに ほにいてゝまねくはなすゝきかな  0309:15680 さやかにもてれる月かなきくのはな ひるみることそよるもみえける  ----第五十一丁裏 あきのゝにはなみにくれはしらつゆに しとゝにもわかぬれにけるかな  0311: いかにしてけふをとゝめむおしとおもふ はなのみちりてひはくれにけり  0312: はるかすみたちいてゝのへにこしかとも おひてわかなはつみこゝちなり  0313: さくらはなのとかにおらむふくかせを さきにたてゝもはるはゆかなむ  ----第五十二丁表  0314: はるくれはふくかせにさへさくらはな にはもはたらにゆきはふりつゝ  0315: むめかえにゆきのふれゝはいつれをか はなとはわきておりてかさらむ  0316:  宮うちにてほとゝきすをきゝて ひさかたのそらちかけれはほとゝきす くもゐのこゑのとをからぬかな  0317: うくひすのなくきゝしかはむめのはな  ----第五十二丁裏 さけりとみしはゆきにそありける  0318: としことになけとしるしもなきもの をくれゆくはるをなによふことり  0319:15690 にこりえにおふるたまものみかくれて われこふらくをしる人そなき  0320:               〔のみ〕 おほゐかはせきてしからみかけてけり おもふこゝろはとゝめかねつも  0321: ともかくもけふこそきかめのちはいかに  ----第五十三丁表 あすともしらぬみをはたのまむ  0322:  おもひをやすむ みをわふるなみたはいまもいつみなる たかしのうらにみつるしほなり  0323: むめのはなたゝにやはみるはるさめに なのかりのみゆくこゝろかな  0324: なみたゝはおきのたまもゝよりくへく おもふかたよりかせもふかなむ  ----第五十三丁裏  0325: あしたつはけふしもふれるいろなれは なくこゑさへはさむきなりけり  0326:  いなはのかみのくたるに ひとひたにみぬはこひしきゝみかいなは としのよとせをいかてすくさむ  0327: ほとゝきすよふかきこゑは月まつと おきていをねぬ人そきゝける  0328:15699  左まのかみのいゑにてみかは  ----第五十四丁表  のかみのむまのはなむけせし  によめる なにしおへはとをからねとも宮ちやま こえむたむけのぬさにせよきみ 〔脱〕 〔くすり贈るとて〕  ----第五十四丁裏  End:  底本::   著名:   西行筆躬恒集 解説   編纂者:  渡部 清   発行所:  六興出版   初版発行: 昭和四十九年八月   再発行:  昭和五十七年二月  入力::   入力者:  新渡戸 広明(info@saigyo.net)   入力機:  Sharp Zaurus igeti MI-P1-A         Sharp Zaurus MI-E21   編集機:  IBM ThinkPad X31 2672-CBJ   入力日:  2004年04月04日-2004年04月13日  校正::   校正者:  新渡戸 広明(info@saigyo.net)   校正日:  2004年04月14日-2004年04月16日  $Id: mitune.txt,v 1.15 2020/01/20 00:07:46 saigyo Exp $