2000年夏
北海道では「寒い」を「しばれる」といいます。
湖が全面結氷するのは、晴天の(放射冷却の激しい)
風のない(波のない)しばれる(厳寒の)夜。
淡水の場合3cmの厚みがあれば人間が乗って歩いても大丈夫。
アイヌの人たちは万一の落水に備えて2m程度の竿を持って歩いたとの事。
全面結氷後、雪が降ると、たくさんの動物の足跡を見ることが可能。
人にしろ動物にしろ湖の対岸へショートカットする事が可能になるのです。
氷も固体ですから温度によって伸縮します。無論氷点下での話。
全面結氷した湖の氷は昼間太陽光に暖められて膨張します。
夜、冷却されて収縮しますが、寒さが厳しくなってくるに従い、
中央部に亀裂を生じます。亀裂で生じた水面がまた結氷します。
翌日、再び暖められて膨張。亀裂部分の氷は厚さが薄いため、
破壊され押し出されてしまうという訳。
これをくり返して出来るのが「御神渡り」。
諏訪湖の「御神渡り」(下段はTOP)
http://www.icon.pref.nagano.jp/usr/ro-suwa/omiwatari.html
http://www.icon.pref.nagano.jp/usr/ro-suwa/index.html
屈斜路湖の「御神渡り」(下段はTOP)
http://www.sip.or.jp/%7Etrout/kussyaroko01.html
http://www.sip.or.jp/%7Etrout/welcome.html
昔の人は、夜、神様が湖面を渡って行かれた跡と見たのでしょう。
「御神渡り」の規模でその年の作況を占う地方もあるとの事。
よく全面結氷を待ったしばれる夜の風景を思い出します。
波一つない湖面に対岸の町の灯や星や月が映っているのです。
そんな、静かな湖面のような心で生きたいと思っていますが、
なかなかそうはゆかないのが凡夫たる所以。
普段の私の心は迷いや悩みで風が吹き波打っている湖面でしょう。
あるときは、心に亀裂が走り真っ二つに裂け、
その周辺がザクザクになっている「御神渡り」のような日もあります。
修行不足。
私が選んだ夏の一首はこれです。
「夏歌」より
> 池上夏月といふことを
>
> かげさえて月しも殊にすみぬれば夏の池にもつららゐにけり
>
さすが西行法師。ただものではない。
以上。
追伸:
参考までに、他にも、
「夏歌」より
> 夏の月の歌よみけるに
>
> なつの夜も小笹が原に霜ぞおく月の光のさえしわたれば
>
> 山川の岩にせかれてちる波をあられとぞみる夏の夜の月
>
「羇旅歌」より
> 天王寺へまゐりたりけるに、松に鷺の居たりけるを、月の光に見て
>
> 庭よりも鷺居る松のこずゑにぞ雪はつもれる夏のよの月
>
というような「夏に冬を見る歌」があります。
最初は「庭よりも〜」を一首にしようと思ったのですが、
指定範囲外反則なので止めました。
皆様、涼んでいただけましたでしょうか?
2000年夏の宿題として西行MLに提出:2000年7月18日 新渡戸広明