筑紫の歌の比較
1。有朋堂書店「山家和歌集・拾遺愚草・金槐和歌集」 大正15年11月23日発行
山家和歌集 巻下雑 P189
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> 筑紫にはらかと申すいをのつりをば十月一日に
> しはす
> おろすなり師走にひきあげて京へはのぼせ侍り
> そのつりの繩はるかに遠くひきわたしてとほる
> 船のこの繩にあたりぬるをばかこちかゝりてか
> うけがましく申してむつかしく侍るなりその心
> を詠める
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> 腹かつるおほわた崎のうけ繩に心かけつゝすぎむとぞおもふ
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> 伊勢島やいるゝつきてすまふ波にけこと覺ゆるいりとりの蜑
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> 磯菜つみて波かけられて過ぎにける鰐の住みける大磯の根を
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2。岩波文庫「新訂山家集」 昭和3年10月05日第1刷発行
羇旅歌 P117
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> 筑紫に、はらかと申すいをの釣をば、十月一日におろす
> なり。しはすにひきあげて、京へはのぼせ侍る。その釣
> の繩はるかに遠く曳きわたして、通る船のその繩にあた
> りぬるをばかこちかかりて、がうけがましく申してむつ
> かしく侍るなり。その心をよめる
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> はらか釣るおほわたさきのうけ繩に心かけつつ過ぎむとぞ思ふ
>
> いせじまやいるゝつきてすまうなみにけことおぼゆるいりとりのあま
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> 磯菜つみて波かけられて過ぎにけり鰐の住みける大磯の根を
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3。富山房 尾山篤次郎校注 「西行法師全集」 昭和20年10月20日再版発行より
山家和歌集下(上)雑 P174
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> つくしに、はらかと申すいをの釣をば、十月一日にお
> ろすなり。師走に引上げて、京へは上せ侍る。その釣
> りの繩はるかに遠く引渡して、通る船のその繩にあた
> りぬるをばかこちかゝりて、かうけがましく申して、
> むつかしく侍るなり。その心をよめる。
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> はらか釣る大和田崎の浮け繩に心かけつゝすぎんとぞ思ふ
>
> いせじまやいるゝつきてすまふ波にけごと覺ゆるいりとりの蜑
>
> 磯菜つみて波掛けられて過ぎにける鰐のすみける大磯の根を
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4。朝日新聞社 伊藤嘉夫校注 「山家集」 昭和20年12月30日発行より
山家集下 雑 P221
> いを
> 筑紫に、はらかと申す魚の釣をば十月ついたちにおろすなり。師走
> にひきあげて、京へは上せ侍る、その釣りの繩、はるかにとほくひ
> きわたして、とほる舟のその繩にあたりぬるをば、かこちかかりて
> がうけがましく申してむづかしく侍るなり。その心をよめる
>
> はらかつるおほわださきのうけなはに心かけつつすぎむとぞ思ふ
>
> いせしまやいるるつきてすまうなみにけことおぼゆるいりとりのあま
>
> いそなつみて波かけられてすぎにけりわにのすみけるおほいそのねを
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5。ひたく書房 伊藤嘉夫・久曾神昇編 「西行全集」第一巻 昭和56年2月16日発行より
纂校山家集 雑 P149
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> つくしに、はらかと申すいをのつりをば、十月ついたちにお
> ろすなり。しはすにひきあげて、京へはのぼせ侍る、そのつ
> りのなは、はるかにとほくひきわたして、とほるふねのその
> なはにあたりぬるをば、かこちかかりてがうけがましく申し
> てむづかしく侍るなり。その心をよめる
>
> はらかつるおほわださきのうけなはに心かけつつすぎむとぞ思ふ
>
> いせしまやいるるつきてすまうなみにけことおぼゆるいりとりのあま
>
> いそなつみて波かけられてすぎにけりわにのすみけるおほいそのねを
>
6。新潮社 後藤重郎校注 「山家集」 平成10年9月10日第7刷より
下 雑 P409
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> つくし はらか いを
> 筑紫に、腹赤と申す魚の釣をば、十月一日
> しはす
> に下ろすなり。師走に引き上げて、京へは
> のぼ はる
> 上せ侍る、その釣の繩、遙かに遠く引きわ
>
> たして、通る舟のその繩に当りぬるをば、
> かうけ
> かこちかかりて、高家がましく申して、む
> よ
> つかしく侍るなり。その心を詠める
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> 腹赤釣る おほわださきの うけ繩に 心かけつつ 過ぎんとぞ思ふ
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> あま
> 伊勢島や いるるつきて すまふ波に けことおぼゆる いりとりの海士
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> いそなつ
> 磯菜摘みて 波かけられて 過ぎにける わにの住みける 大磯の根を
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- 長洲町立腹赤小学校 熊本県玉名郡長洲町腹赤125
腹赤の名前の由来
奈良時代にできた「肥後風土記」などによれば神話の時代の「景行天皇」が九州を回られたときに、有明海を渡って今の腹赤付近に上陸されました。
このとき、近くの住民が腹の赤い 「にべ」という魚を献上したため、この浜を「腹赤(はらあか)の浜」というようになったといわれています。
この「はらあか」がなまって「はらか」になったものと思われます。
学校の近くの「名石宮=めいしぐう」という神社には、天皇が腰掛けられたという岩があります。この岩にかけた海水のしずくをつけると、「いぼ」が治るという言い伝えがあるそうです。