Title 河内名所圖會  Book 河内名所圖會卷之一  Book 河内名所圖會卷之二  Subtitle 2091 龍池山弘川寺 弘川村にあり眞言宗  Description 本尊藥師佛 役行者作座像長弐尺五寸 地藏堂 本堂の傍にあり  Figure 2094-2095 弘川寺  西行塚にて                籬島 萍の花にも見へて水の泡  Description 大師堂 弘法大師自作の像を安す長弐尺五寸許 鎭守 本堂の左にあり八所權現を祭る 西行堂 西行上人の尊像を安す文覺上人の作 西行上人ノ墳 本堂より弐町許奧にあり塚上に石標あり圓位上人墓      墳の廻り凡て拾五間高サ弐間餘古松樫椿の類數十株あり      塚前に石燈爐表石に西行上人之墓と鐫ず      寶暦四年甲戌十一月刻す 規櫻 堂前にあり楠黨隅屋與市が樹しとぞ 【中略】 花之庵 似雲法師の住れし所也一名春雨亭西行塚の東にあり連歌所      ともいふ二疊敷西に圓窓あり都て此ほとりに櫻を多く樹      たりある櫻の下に石表あり                似雲 苅そへてあたにななしそ山柴にましる櫻の下枝也とも 似雲墓 花の庵山下弐町許にあり 大黒石 山上五六町にあり 夫當山は寂莫たる山寺にして鐘聲白雲に和し清馨山翠を度り清淨人 世にあらざるの雲龕なり曾て西行上人もこゝに住給ふて風あらき柴 の庵は常よりも覺そ物はかなしかりけるなどと讀給ひし山亭も空し く夜るの風の戸を開き山猿所々に聞て紙を剪魂を招くの人もなし抑 此寺は天智帝四年役小角三十二歳の時此地に初て一宇を草創し藥師 の靈像を本尊とす天武帝の御時は龍池に祈雨ありければ必驗あり於 是勅願寺となりて金堂講堂寶塔鐘樓數箇の子院嚴重たり且五ツの靈 泉山奧にあり一は瑠璃水二は隱水三は三天水四は赤龍水五は白龍水 と号聖武帝の天平九年行基大士本尊の靈應を感じ給ひこゝに安居す る亊一夏也光仁帝の寶龜中には沙門光意此山に住して修學し履歴の 亊元享釋書に見へたり奧院の舊蹟は本堂より坤の方に五輪石塔婆あ り弘仁三年には弘法大師登臨して伽藍を一新し三密の教法を修練し 給ふ後鳥羽院上皇御不豫の時當山空寂上人に其祈を仰付らる御平愈 の後車駕をめぐらし當山に行幸し給ふ其折の御製に                後鳥羽院 山深みこのはの下の隱し水なかれの末は瀧つ瀬の音 其より弐百餘歳を歴て寛正癸未の年に至ツて國中大に亂れて戎馬紛              【よゑん2】 紜たり時に嶽山落城に火ありて餘熖寺に罹て卒に焦土となるこれよ      【とさう2】 り先西行法師斗擻の時登山臨水し此幽境を視てこゝに年所を歴たり 建久九年三月望幡然として西に歸る豫末期を知て和歌を詠じて逝す 蕭洒風標こゝに五百餘歳騒人墨客韻艷せずといふ亊なし近頃似雲法 師こゝに庵をむすぶ姓は松井藝州廣嶋の人也和歌を嗜て世に鳴る曾 て藤亞相實蔭卿の門子となる煙霞を友とし脱白已來三十年嚢裡の詠                  【つくお2】 藻幾千万首なる亊をしらず寛延の初泉州踞尾常樂庵に寓して筆削し て廿卷たり題して年竝草といふ此山に藏む餘韻剩芳万世に郁々たり 曾て石山寺普門大士を祷て靈感を得て西行の古墳を占得たり碑を立 記を作ッて後生に示す又文覺上人の手刻の西行肖像を獲て一堂を締 構して禮供する亊久し寶暦三年初夏病に罹て七月八日溘然として庵                 【うつみ1】 裡に逝す遺骸を西行上人の古墳の側に瘞右を彫て歳月を識す 以上 寺説大意  西行上人の古墳を尋て 尋得て袖になみたのかゝる哉ひろ川寺にのこる古つか  こたひ此吉墳に印の右をたて侍とて其人にかはりて 世々をへて苔はむすとも人の名のくちぬしるしや石にのこらん  印の石を立し人は難波に住る樋口何某なり 長秋和歌集 圓位聖歌ども判こひ侍りし其年は文治也河内の弘川といふ山寺にて 煩ふ亊ありとて急ぎつかはしたりしかはかぎりなくよろこひいひ遣 して後二月十六日に南に隱れ侍りける  かの上人先キのとしに櫻の歌多く讀けるに おなしくは花のもとにて春死んそのきさらきの望月の頃  遂にこの日終りとけけるに哀れに有かたくおほへてと云云 里諺云 長秋の詠藻に慥に弘川寺とあるを據として似雲法師弘川へ數度詣せ られしかど其古憤しれすせんかたなく石山寺の大悲尊に祷り又空し く歸りさまに山林より十二三計なる童出て曰此山中に行墳とて古き 塚あり自案内せんとて先キに立行ク本堂より二町斗奧に一堆のとこ ろありこれ行塚なりと教て山中へ入ルいつの頃にか西の字を忘れて 行塚とばかりいひならはしけるぞや然れば入寂の地はこゝに極りぬ れども其塚の有所を觀音に祷りて示現を蒙るなるへしさもあるべき 亊也とぞしらる 【以下略】  Book 河内名所圖會卷之三  Book 河内名所圖會卷之四  Book 河内名所圖會卷之五  Book 河内名所圖會卷之六  Figure 6444-6445  Description  「家集」                西行 白雲をつはさにかけて行雁の門田の面に友したふ也  End  底本の親本::   書名:  河内名所圖會   發行:  享和元年   著者:  秋里籬島   畫 :  丹羽桃溪  底本::   書名:  河内名所図会   発行日: 平成二年二月十八日   発行所: 合資会社 柳原書店  入力::   入力者: 新渡戸 広明(nitobe@saigyo.net)   入力機: SHARP Zaurus MI-E21   編集機: IBM ThinkPad X31 2672-CBJ   入力日: 2006年03月25日 $Id: zue_kawachi.txt,v 1.6 2020/01/06 03:45:05 saigyo Exp $