Title 正信偈念佛和讚 【一右】  Subtitle 【正信念佛偈】  Description 歸命无量壽如來 南无不可思議光 法藏菩薩因位時 在世自在王佛所 【一左】 覩見諸佛淨土因 國土人天之善惡 建立无上殊勝願 超發希有大弘誓 【二右】 五劫思惟之攝受 重誓名聲聞十方 普放无量无邊光 无礙无對光炎王 【二左】 清淨歡喜智慧光 不斷難思旡稱光 超日月光照塵刹 一切羣生蒙光照 【三右】 本願名號正定業 至心信樂願爲因 成等覺證大涅槃 必至滅度願成就 【三左】 如來所以興出世 唯説彌陀本願海 五濁惡時羣生海 應信如來如實言 【四右】 能發一念喜愛心 不斷煩惱得涅槃 凡聖逆謗齊廻入 如衆水入海一味 【四左】 攝取心光常照護 已能雖破无明闇 貪愛瞋僧之雲霧 常覆眞實信心天 【五右】 譬如日光覆雲霧 雲霧之下明无闇 獲信見敬大慶喜 即横超截五惡趣 【五左】 一切善惡凡夫人 聞信如來弘誓願 佛言廣大勝解者 是人名分陀利華 【六右】 彌陀佛本願念佛 邪見憍慢惡衆生 信樂受持甚以難 難中之難无過斯 【六左】 印度西天之論家 中夏日域之高僧 顯大聖興世正意 明如來本誓應機 【七右】 釋迦如來楞伽山 爲衆告命南天竺 龍樹大士出於世 悉能摧破有无見 【七左】 宣説大乘无上法 證歡喜地生安樂 顯示難行陸路苦 信樂易行水道樂 【八右】 憶念彌佗佛本願 自然即時入必定 唯能常稱如來號 應報大悲弘誓恩 【八左】 天親菩薩造論説 歸命无礙光如來 依修多羅顯眞實 光闡横超大誓願 【九右】 廣由本願力廻向 爲度羣生彰一心 歸入功徳大寳海 必獲入大會衆數 【九左】 得至蓮華藏世界 即證眞如法性身 遊煩惱林現神通 入生死薗示應化 【十右】 本師曇鸞梁天子 常向鸞處菩薩禮 三藏流支授淨教 焚燒仙經歸樂邦 【十左】 天親菩薩論註解 報土因果顯誓願 往還廻向由他力 正定之因唯信心 【十一右】 惑染凡夫信心發 證知生死即涅槃 必至无量光明土 諸有衆生皆普化 【十一左】 道綽决聖道難證 唯明淨土可通入 萬善自力貶勤修 圓滿徳號勸專稱 【十二右】 三不三信誨慇懃 像末法滅同悲引 一生造惡値弘誓 至安養界證妙果 【十二左】 善導獨明佛正意 矜哀定散與逆惡 光明名號顯因緑 開入本願大智海 【十三右】 行者正受金剛心 慶喜一念相應後 與韋提等獲三忍 即證法性之常樂 【十三左】 源信廣開一代教 偏歸安養勸一切 專雜執心判淺深 報化二土正辨立 【十四右】 極重惡人唯稱佛 我亦在彼攝取中 煩惱彰眼雖不見 大悲无倦常照我 【十四左】 本師源空明佛教 憐愍善惡凡夫人 眞宗教證興片州 選擇本願弘惡世 【十五右】 還來生死輪轉家 决以疑情爲所止 速入寂靜无爲樂 必以信心爲能入 【十五左】 弘經大士宗師等 拯濟无邊極濁惡 道俗時衆共同心 唯可信斯高僧説 【十六右】  Subtitle 【淨土和讚】  Description 〔●此印は三首引〕 初重 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛  ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛  ●南无阿彌陀佛 【十六左】  0001: 一  彌陀成佛のこのかたは   いまに十劫をへたまへり   法身の光輪きはもなく 下 世の盲冥をてらすなり 【十七右】  南无阿彌陀佛  南无阿彌陀佛   南无阿彌陀佛  南无阿彌陀佛   南无阿彌陀佛 【十七左】  0002:  智慧の光明はかりなし   有量の諸相こと%\く   光曉かふらぬものはなし 上 眞實明に歸命せよ 【十八右】 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛  南无阿彌陀佛 ●南无 三番 ●阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛 【十八左】 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿 【十九右】  0003:  解脱の光輪きはもなし 入   光觸かふるものはみな   有无をはなるとのべたまふ 上 平等覺に歸命せよ 【十九左】  南无阿彌陀佛  南无阿彌陀佛  南无阿彌陀佛  南无阿彌陀佛  南无阿 【二十右】  0004:  光雲无礙如虚空   一切の有礙にさはりなし   光澤かふらぬものぞなき 上 難思議を歸命せよ 【二十左】 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛 三重 ●南无阿彌陀佛 【二十一右】 ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛  ●南无阿彌陀佛 ●南无阿彌陀佛  ●南无阿彌陀佛 【二十一左】  0005:  清淨光明ならびなし   遇斯光のゆゑなれば   一切の業繋ものぞこりぬ 下 畢竟依を歸命せよ 【二十二右】  南无阿彌陀佛  南无阿彌陀佛   南无阿彌陀佛  南无阿彌陀佛   南无阿彌陀佛 【二十二左】  0006:  佛光照曜最第一   光炎王佛となづけたり   三塗の黒闇ひらくなり 中 大應供を歸命せよ 【二十三右】  願以此功徳  平等施一切  同發菩提心  往生安樂國 【二十三左】  0007: 二  道光明朗超絶せり   清淨光佛とまうすなり   ひとたび光照かふるもの 中 業垢をのぞき解脱をう 【二十四右】  0008:  慈光はるかにかふむらしめ   ひかりのいたるところには   法喜をうとぞのべたまふ 中 大安慰を歸命せよ 【二十四左】  0009:  无明の闇を破するゆへ   智慧光佛となづけたり   一切諸佛三乘衆 上 ともに嘆譽したまへり 【二十五右】  0010:  光明てらしてたへざれば 入   不斷光佛となづけたり   聞光力のゆへなれば 上 心不斷にて往生す 【二十五左】  0011:  佛光測量なきゆへに   難思光佛となづけたり   諸佛は往生嘆じつゝ   彌陀の功徳を稱ぜしむ 【二十六右】  0012:  神光の離相をとかざれば   无稱光佛となづけたり   因光成佛のひかりをば 中 諸佛の嘆ずるところなり 【二十六左】  0013: 三  光明月日勝過して   超日月光となづけたり   釋迦嘆じてなをつきず 上 无等等を歸命せよ 【二十七右】  0014:  彌陀初會の聖衆は   算數のおよぶことぞなき   淨土をねがはんひとはみな 下 廣大會を歸命せよ 【二十七左】  0015:  安樂无量の大菩薩   一生補處にいたるなり   普賢の徳に歸してこそ 中 穢國にかならず化するなれ 【二十八右】  0016:  十方衆生のためにとて   如來の法藏あつめてぞ   本願弘誓に歸せしむる 中 大心海を歸命せよ 【二十八左】  0017:  觀音勢至もろともに   慈光世界を照曜し   有縁を度してしばらくも 下 休息あることなかりけり 【二十九右】  0018:  安樂淨土にいたるひと   五濁惡世にかへりては   釋迦牟尼佛のごとくにて 下 利益衆生はきはもなし 【二十九左】  0019: 四  神力自在なることは   測量すべきことぞなき   不思議の徳をあつめたり 上 无上尊を歸命せよ 【三十右】  0020:  安樂聲聞菩薩衆   人天智慧ほがらかに   身相莊嚴みなおなじ 中 他方に順じて名をつらぬ 【三十左】  0021:  顏容端政たぐひなし   精微妙躯非人天   虚无之身无極體 上 平等力を歸命せよ 【三十一右】  0022:  安樂國をねがふひと   正定聚にこそ住すなれ   邪定不定聚くにゝなし 上 諸佛讚嘆したまへり 【三十一左】  0023:  十方諸有の衆生は   阿彌陀至徳の御名をきゝ   眞實信心いたりなば 上 おほきに所聞を慶喜せん 【三十二右】  0024:  若不生者のちかひゆへ   信樂まことにときいたり   一念慶喜するひとは 中 往生かならずさだまりぬ 【三十二左】  0025: 五  安樂佛土の依正は   法藏願力のなせるなり   天上天下にたぐひなし 中 大心力を歸命せよ 【三十三右】  0026:  安樂國土の莊嚴は   釋迦无礙のみことにて   とくともつきじとのべたまふ 上 无稱佛を歸命せよ 【三十三左】  0027:  已今當の往生は   この土の衆生のみならず   十方佛土よりきたる 上 无量无數不可計なり 【三十四右】  0028:  阿彌陀佛の御名をきゝ 入   歡喜讚仰せしむれば   功徳の寳を具足して 下 一念大利无上なり 【三十四左】  0029:  たとひ大千世界に   みてらん火をもすぎゆきて   佛の御名をきくひとは 上 ながく不退にかなふなり 【三十五右】  0030:  神力无極の阿彌佗は   无量の諸佛ほめたまふ   東方恆沙の佛國より 中 无數の菩薩ゆきたまふ 【三十五左】  0031:  自餘の九方の佛國も   菩薩の往覲みなおなじ   釋迦牟尼如來偈をときて 中 无量の功徳をほめたまふ 【三十六右】  0032:  十方の无量菩薩衆   徳本うへんためにとて   恭敬をいたし歌嘆す 中 みなひと婆伽婆を歸命せよ 【三十六左】  0033:  七寳講堂道塲樹   方便化身の淨土なり   十方來生きはもなし 下 講堂道塲禮すべし 【三十七右】  0034:  妙土廣大超數限   本願莊嚴よりをこる   清淨大攝受に 下 *首歸命せしむべし 【三十七左】  0035:  自利利他圓滿して   歸命方便巧莊嚴   こゝろもことばもたへたれば 中 不可思議尊を歸命せよ 【三十八右】  0036:  神力本願及滿足   明了堅固究竟願   慈悲方便不思議なり 中 眞无量を歸命せよ 【淨土和讚以下略】 【三十八左】  Subtitle 【正像末和讚】  Description 【正像末和讚前略】  0025: ●五十六億七千萬   彌勒菩薩はとしをへん   まことの信心うるひとは   このたびさとりをひらくべし 【三十九右】  0026:  念佛往生の願により   等正覺にいたるひと   すなはち彌勒におなじくて   大般涅槃をさとるべし 【三十九左】  0027:  眞實信心うるゆへに   すなはち定聚に入ぬれば   補處の彌勒におなじくて   无上覺をさとるなり 【四十右】  0028:  像法のときの智人も   自力の諸教をさしおきて   時機相應の法なれば   念佛門にぞいりたまふ 【四十左】  0029:  彌陀の尊*となへつゝ   信樂まことにうるひとは   憶念の心つねにして   佛恩報ずるおもひあり 【四十一右】  0030:  五濁惡世の有情の   選釋本願信ずれば   不可稱不可説不思議の   功徳は行者の身にみてり 【正像末和讚以下略】 【四十一左】  Subtitle 【高僧和讚】  Description 〔晨朝〕  0001: ●本師龍樹菩薩は   智度十住毘婆娑等   つくりておほく西をほめ   すゝめて念佛せしめたり 【四十二右】  0002:  南天竺に比丘あらん   龍樹菩薩となづくべし   有无の邪見を破すべしと   世尊はかねてときたまふ 【四十二左】  0003:  本師龍樹菩薩は   大乘无上の法をとき   觀喜地を證してぞ   ひとへに念佛すゝめける 【四十三右】  0004:  龍樹大士世にいでゝ   難行易行の道おしへ   流轉輪廻のわれらをば   弘誓のふねにのせたまふ 【四十三左】  0005:  本師龍樹菩薩の   おしへをつたへきかんひと   本願心にうけしめて   つねに彌佗を稱ずべし 【四十四右】  0006:  不退のくらゐすみやかに   ゑんとおもはんひとはみな   恭敬の心に執持して   彌佗の名*稱すベし 【高僧和讚以下略】 【四十四左】  Subtitle 【正像末淨土和讚】  Description 【正像末淨土和讚前略】 〔御日中〕  0050: ●南无阿彌陀佛の廻向の   恩徳廣大不思議にて   往相廻向の利益には   還相廻向に廻入せり 【四十五右】  0051:  往相廻向の大慈より   還相廻向の大悲お?   如來の廻向なかりせば   淨土の菩提はいかゞせん 【四十五左】  0052:  彌佗觀音大勢至   大願のふねに乘してぞ   生死のうみにう?みつゝ   有情をよほうてのせたまふ 【四十六右】  0053:  彌陀大悲の誓願を   ふかく信ぜんひとみはみな   ねてもさめてもへだてなく   南无阿彌佗佛をとなふべし 【正像末淨土和讚中略】 【四十六左】  0057:  他力の信心うるひとを   うやまひおふきによろこべば   すなはちわが親友ぞと   教主世尊はほめたまふ 【四十七右】  0058:  如來大悲の恩徳は   身を粉にしても報ずベし   師主知識の恩徳も   ほねをくだきても謝すベし 【已上正像末法和讚 五十八首】 【四十七左】  Subtitle 改悔文  Description もろ/\雜行雜修自 力のこゝろをふりすてゝ一心に 阿彌陀如來我等が今度 の一大事の後生御たすけ 侯へとたのみもうして候 【四十八右】 たのむ一念のとき往生一定 御助け治定とぞんしこのうへ の稱名は御恩報謝とぞんじ よろこびまふし候この御こと わり聽聞まふしわけ候こと 御開山聖人御出世の御恩 【四十八左】 次第相承の善知識のあさから ざる御勸化御思ありかたくぞん し候このうへはさだめをかせらる る御おきて一期をかぎり まりもうすべく候 【四十九右】  Subtitle 【御文第五帖第一通 末代无智の御文】  Description 末代无智の在家止住の男女たらん ともからはこゝろをひとつにして阿彌陀 佛をふかくたのみまいらせてさらに餘のかた へこゝろをふらず一心一向に佛たすけたまへと まうさん衆生をばたとひ罪業は深重たり ともかならす彌陀如來はすくひまします 【四十九左】 べしこれすなはち第十八の念佛往生の誓願 のこゝろなりかくのごとく決定してのうへには ねてもさめてもいのちのあらんかぎりは 稱名念佛すべきものなりあなかしこ/\  Subtitle 【御文第五帖第二通 八万法藏の御文】  Description それ八万の法藏をしるといふとも後世を 【五十右】 しらざる人を愚者とすたとひ一文不知の 尼入道なりといふとも後世をしるを智者 とすといへりしかれば當流のこゝろはあな がちにもろ/\の聖教をよみものしり たりといふとも一念の信心いはれをしら ざる人はいたづら事なりとしるべしされば 【五十左】 聖人の御ことばにも一切の男女たらん身は 彌陀の本願を信ぜずしてはふつとたすかる といふことあるべからずとおほせられたりこの ゆへにいかなる女人なりといふとももろ/\の 雜行をすてゝ一念に彌陀如來今度の 後生たすけたまへとふかくたのみ申さん 【五十一右】 人は十人も百人もみなともに彌陀の報土 に往生すベき事さら/\うたがひあるベ からざるものなりあなかしこ/\  Subtitle 【御文第五帖第三通 在家尼女房の御文】  Description 夫在家の尼女房たらん身はなにのやう もなく一心一向に何彌陀佛をふかくたのみ 【五十一左】 まいらせて後生をたすけたまへと申さん 人をばみな/\御たすけあるベしとおもひ とりてさらにうたがひの心ゆめ/\あるべからす これすなはち彌陀如來の御ちかひの他力 本願とは申すなりこのうへはなを後生の たすからんことのうれしさありがたさを 【五十二右】 思はゞたゞ南无阿彌陀佛/\と となふべきものなりあなかしこ/\  Subtitle 【御文第五帖第四通 抑男子女人の御文】  Description 抑男子も女人も罪のふかゝらんともがらは 諸佛の悲顯をたのみてもいまの時分は 末代惡世なれば諸佛の諸佛の御ちからにては中々 【五十二左】 かなはざる時なりこれによりて阿彌陀如來 と申奉るは諸佛にすぐれて十惡五逆の 罪人をわれたすけんといふ大願をおこし まし/\て阿彌佗佛となり給へりこの 佛をふかくたのみて一念御たすけ候へと申 さん衆生をわれたすけずば正覺ならじと 【五十三右】 ちかひまします彌陀なれば我等が極 樂に往生せんこと更にうたがひなし此 ゆへに一心一向に阿彌陀如來たすけ給へ とふかく心にうたがひなく信じて我身の 罪のふかき事をばうちすて佛にまかせ まいらせて一念の信心さだまらんともがら 【五十三左】 は十人は十人ながら百人は百人ながらみな 淨土に往生すべき事さらにうたがひなし このうへにはなをなを/\たうとくおもひたてまつ らん心のおこらんときは南无阿彌陀佛 /\と時をもいはず所をもきらはず 念佛申べしこれをすなはち佛恩報謝の 【五十四右】 念佛と申なりあなかしこ/\  Subtitle 【御文第五帖第五通 信心獲得の御文】  Description 信心獲得す【と】いふは第十八の願をこゝろうる なりこの願をこゝろうるといふは南无阿彌陀佛 のすがたをこゝろうるなりこのゆへに南无と歸 命する一念のところに發願廻向のこゝろ 【五十四左】 あるベしこれすなはち彌陀如來の凡夫に 廻向しましますこゝろなりこれを大經に は令諸衆生功徳成就ととけりされば 无始以來つくりとつくる惡行煩惱をのこ るところもなく願力不思議をもつて消 滅するいはれあるがゆへに正定聚不退のくら 【五十五右】 ゐに住すとなりこれによりて煩惱を斷ぜず して涅槃をうといへるはこのこゝろなり此義 は當流一途の所談なるものなり他流の人に 對してかくのごとく沙汰あるべからざる所なり 能/\こゝろうべきものなりあなこしこ/\ 【五十五左】  Subtitle 【御文第五帖第十通 聖人一流の御文】  Description 聖人一流の御勸化のおもむきは信心を もて本とせられ候そのゆへはもろ/\の 雜行をなげすてゝ一心に彌陀に歸命す れば不思議の願力として佛のかた より往生は治定せしめたまふそのくらゐを 一念發起入正定之聚とも釋しそのうへの 【五十六右】 稱名念佛は如來わが往生をさためたまひ し御恩報盡の念佛とこゝろうべきなり あなかしこ/\  Subtitle 【御文第一帖第三通 獵漁の御文】  Description まづ當流の安心のおもむきはあな がちにわがこゝろのわろきをも 【五十六左】 また妄念妄執のこゝろをもとゞめ よといふにもあらずたゞあきないをもし 奉公をもせよと獵すなどりをも せよかゝるあさましき罪業にのみ 朝夕まとひぬる我等ごときいた づらのものをたすけんとちかひまし 【五十七右】 ます彌陀如來の本願にてまし ますぞとふかく信じて一心にふた ごゝろなく彌陀一佛の悲願にすが りてたすけましませとおもふ こゝろの一念の信まことなればかな らず如來の御たすけにあづかる 【五十七左】 ものなりこのうへにはなにとこゝろ へて念佛まうすべきぞなれば往生は いまの信力によりて御たすけあり つるかたじけなき御恩報謝のた              【報】 めにわかいのちあらんかぎりは執 謝のためとおもひて念佛まうす 【五十八右】 べきなりこれを當流の安心決定したる 信心の行者とは申ベきなりあなかしこ/\   文明三年十二月十八日  Subtitle 【御文第二帖第六通 掟の御文】  Description 抑當流の他力信心のおもむきをよく聽 聞して決定せしむる人これあらばその信心の 【五十八左】 通をもて心底におさめおきて他宗他人に 對して沙汰すべからずまた路次大道われ /\の在所にてもあらはに人をもはゞからず これを讚嘆すべからずつきには守護地頭方 にむきてあれは信心をえたりといひて疎畧 の儀なくいよ/\公事をまつたくすべし又 【五十九右】 諸神諸佛善薩をもおろそかにすベからず これみな南无何彌陀佛の六字のうちに こもれるがゆへなりことに外には王法をもつて おもてとし内心には他力の信心をふかくたくはへて 世間の仁義をもつて本とすへしこれすな はち當流にさだむるところの掟のおもむき 【五十九左】 なりとこゝろうベきものなりあなかしこ/\   文明六年二月十七日書之  Subtitle 【御文第四帖第十二通 毎月兩度の御文】  Description 抑毎月兩度の寄合の由來はなにの ためぞといふにさらに他のことにあらず 自身の往生極樂の信心獲得の 【六十右】 ためなるがゆへなりしかれば往古より いまにいたるまでも毎月の寄合と いふことはいづくにもこれありといへ どもさらに信心の沙汰とてはかつて もてこれなしことに近年はいづくにも 寄合のときはたゞ酒飯茶なんど 【六十左】 ばかりにてみな/\退散せりこれは 佛法の本意にはしかるべからざる次第 なりいかにも不信心の面々は一段の不審 をもたてゝ信心の有无と沙汰すべき ところになにの所詮もなく退散せしむる 条しかるベからずおぼへはんべりぬよく/\ 【六十一右】 思案をめぐらすべきことなり所詮 自今已後にをいては不信心の面々はあひ たがひに信心の讚嘆あるべきこと肝 要なり それ當流の安心のをもむきといふは あながちにわが身の罪障のふかきに 【六十一左】 よらずたゞもろ/\の雜行のこゝろを やめて一心に何彌陀如來に歸命して 今度の一大事の後生たすけたまへと ふかくたのまん衆生をばこと/\くたすけ たまふベきことさらにうたがひあるべ からずかくのごとくよくこゝろへたる人は 【六十二右】 まことに百即百生なるべきなりこのうへ には毎月の寄會をいたしても報恩 謝徳のためとこゝろへなばこれこそ眞實の 信心を具足せしめる行者ともなづく べきものなりあなかしこ/\   明應七年二月廾五日書之 【六十二左】     毎月兩度講衆中へ         八十四歳  Subtitle 【御文第五帖第十六通 白骨の御文】  Description 夫人間の浮生なる相をつら/\觀ずるに おほよそはかなきものはこの世の始中終 まほろしのごとくなる一期なりさればいまだ 【六十三右】 万歳の人身をうけたりといふ事をきかず 一生すぎやすしいまにいたりて たれか百年の形躰をたもつべきや我や さき人やさきけふともしらずあすとも しらずをくれさきだつ人はもとのしづく すへの露よりもしげしといへりされば 【六十三左】 朝には紅顏ありて夕には白骨となれる 身なりすでに旡常の風きたりぬれば すなはちふたつのまなこたちまちにとぢ ひとつのいきながくたえぬれば紅顏むな しく變じて桃李のよそほひをうしなひ ぬるときは六親眷屬あつまりでなげき 【六十四右】 かなしめども更にその甲斐あるべからず さてもあるベき事ならねはとて野外 にをくり夜半のけふりとなしはて ぬればたゞ白骨のみのこれりあはれといふも 中/\をろかなりされば人間のはかなき 事は老少不定のさかひなればたれの人も 【六十四左】 はやく後生の一大事を心にかけて阿彌 陀佛をふかくたのみまいらせて念佛 まうすべきものなりあなかしこ/\  Subtitle 【御文第四帖第十五通 大坂建立の御文】  Description 抑當國攝州東成郡生玉の庄内 大坂といふ在所は往古よりいかなる 【六十五右】 約束のありけるにやさんぬる明應第五の 秋下旬のころよりかりそめながらこの 在所をみそめしよりすでにかたのごとく 一宇の坊舎を建立せしめ當年ははや すでに三年の歳霜をへたりきこれ すなはち往昔の宿縁あさからざる因縁 【六十五左】 なりとおぼへはんべりぬそれについてこの 在所に居住せしむる根元はあながちに一生 涯をこゝろやすくすごし榮花榮耀を このみまた花鳥風月にもこゝろをよせず あはれ無上喜提のためには信心決定の 行者も繁昌せしめ念佛をもまうさん 【六十六右】 ともがらも出來せしむるやうにもあれかしと おもふ一念のこゝろざしをはこぶばかりなり またいさゝかも世間の人なんども偏執の やからもありむつかしき題目なんども 出來あらんときはすみやかにこの在所に をひて執心のこゝろをやめて退出すベき 【六十六左】 ものなりこれによりていよ/\貴賤道俗を ゑらはつ金剛堅固の信心を決定せしめん ことまことに彌陀如來の本願にあひかなひ 別しては聖人の御本意にたりぬベき もの歟それについて愚老すでに當年は 八十四歳まで存命せしむる条不思議なり 【六十七右】 まことに當流法義にもあひかなふ歟の あひだ本望のいたりこれにすぐへからざる もの歟しかれば愚老當年の夏ごろより             【腹】 違例せしめていまにをひて本復のすがた これなしついには當年寒中にはかならず 往生の本懷をとくべき条一定とおもひ 【六十七左】 はんべりあはれ/\存命のうちにみな/\ 信心決定あれかしと朝夕おもひはんべり まことに宿善まかせとはいひながら述懷の こゝろしばらくもやむことなしまたはこの 在所に三年の居住をふるその甲斐とも おもふベしあひかまへて/\この一七ヶ日 【六十八右】 報恩講のうちにをひて信心決定ありて 我人一同に往生極樂の本意をとげ たまふべきものなりああかしこ/\   明應七年十一月廿一日よりはじめて   これをよみて人々に信をとらす   べきものなり 【六十八左】  Subtitle 【御文第四帖第八通 八ヶ条の御文】  Description 抑今月廿八日の報恩講は昔年よりの  流例たりこれによりて近國遠國の 門葉報恩謝徳の懇志をはこぶ ところなり二六時中の稱名念佛今古 退轉なしこれすなはち開山聖人の法流 【六十九右】 一天四海の勸化比類なきがいたす ところなりこのゆへに七晝夜の時節に あひあたり不法不信の根機にをひては 往生淨土の信心獲得せしむべきものなり これしかしながら今月聖人の御正忌の 報恩たるベししからさらんともがらに 【六十九左】 をひては報恩謝徳のこゝろざしなきに にたるもの歟これによりてこのころ眞宗の 念拂者と号するなかにまことに心底より 當流の安心決定なきあひだあるひは 名聞あるひはひとなみに報謝をいたす よしの風情これありもてのほかしかる 【七十右】 べからざる次第なりそのゆへはすでに 万里の遠路をしのぎ莫太の辛勞を いたして上洛のともがらいたつらに 名聞ひとなみの心中に住すること口惜 次第にあらずやすこふる不足の所存と いひつべしたゞし无宿善の機にいたり 【七十左】 てはちからをよばすしかりといへとも 无二の懺悔をいたし一心の正念に おもむかばいかでか聖人の御本意に達せ ざらんものをや 一諸國參詣のともがらのなかにをひて 在所をきらはずいかなる大道大路又 【七十一右】 関屋渡の舩中にてもさらにその はゞかりなく佛法方の次第を顯露に 人にかたることしかるべからざる事 一在々所々にをひて當流にさらに沙汰 せざるめづらしき法門を讚嘆しおな じく宗義になきおもしろき名目なん 【七十一左】 とをつかふ人これおほしもつてのほかの 僻案なり自今已後かたく停止 すベきものなり 一この七ヶ日報恩講中にをひては一人も のこらず信心未定のともがらは心中を はゝからず改悔懺悔の心をおこして 【七十二右】 眞實信心を獲得すべきものなり 一もとより我安心のをもむきいまだ決定 せしむる分もなきあひだその不審を いたすべきところに心中をつゝみてありの まゝにかたらざるたぐひあるベしこれをせめ あひたづぬるところありのまゝに心中を 【七十二左】 かたらずして當塲をいひぬけんとする 人のみなり勿躰なき次第なり心中を のこさすかたりて眞實信心にもとづく べきものなり 一近年佛法の棟梁たる坊主達我信 心はきはめて不足にて結句門徒同朋は 【七十三右】 信心は決定するあひだ坊主の信心不足の よしをまうせばもつてのほか腹立せしむる条 言語道斷の次第なり已後にをひては 師弟ともに一味の安心に住すべき事 一坊主分の人ちかころはことのほか重杯の よしそのきこえあり言語道斷しかる 【七十三左】 べからざる次第なりあなかちに酒をのむ 人を停止せよといふにはあらず佛法に                【やゝ1】 つけ門徒につけ重杯なればかならずやも すれば醉狂のみ出來せしむるあひだしかる べからずさあらんときは坊主分は停止 せられてもまことに興隆佛法ともいひつ 【七十四右】 べき歟しからすば一盞にてもしかるべき歟 これも佛法にこゝろざしのうすきによりて のことなればこれをとゝまらざるも道理か ふかく愚案あるべきものなり 一信心決定のひとも細々に同行に會合の ときはあひたがひに信心の沙汰あらば 【七十四左】             【源】 これすなはち眞宗の綮昌の根元なり 一當流の信心決定すといふ躰はすなはち 南无阿彌陀佛の六字のすかたとこゝろう べきなりすでに善導釋していはく 言南无者即是歸命亦是發願廻向之 義言阿彌陀佛者即是其行といへり 【七十五右】 南无と衆生が彌陀に歸命すれば阿彌陀 佛のそのをよくしろしめして万善 万行恆沙の功徳をさづけたまふなり このこゝろをすなはち阿彌陀佛是其行と いふこゝろなりこのゆへに南无と歸命する 機と阿彌陀佛のたすけまします法とが 【七十五左】 一躰なるところをさして機法一躰の 南无阿彌陀佛とはまうすなりかるがゆへに 阿彌陀佛のむかし法藏比丘たりしとき 衆生佛にならずはわれも正覺ならじと ちかひましますときその正覺すてに成し たまひしすがたこそいまの南无阿彌陀佛 【七十六右】 なリとこゝろうべしこれすなはちわれらが 往生のさだまりたる證拠なりされば 他力の信心獲得すといふもたゞこの 六字のこゝろなりと落居すべきものなリ そも/\この八ヶ条のをもむきかくのごとし しかるあひだ當寺建立はすでに九ヶ年に 【七十六左】 をよベり毎年の報恩講中にをひて 面々各々に隨分信心決定のよし領納 ありといへども昨日今日までもその 信心のをもむき不同なるあひだ所詮 なきもの歟しかりといへども當年の 報恩講中にかぎりて不信心のとも 【七十七右】 がら今月報恩講のうちに早速に 眞實信心を獲得なくば年々を 經といふとも同篇たるべきやうにみえ たりしかるあひだ愚老が年齡すでに 七旬にあまりて來年の報恩講をも 期しがたき身なるあひだ各々に眞實に 【七十七左】 決定信をゑしめん人あらば一は聖人 今月の報謝のため一は愚老がこの 七八ヶ年のあひだの本懷ともおもひ はんベるべきものなりあなかしこ/\   文明十七年十一月廾三日 【七十八右】  Subtitle 太子七高僧之御忌日并本願寺御代之御忌日  Description   聖徳太子 二月廾二日   龍樹菩薩 十月十八日   天親菩薩 三月三日   源空上人 正月廾五日   曇鸞和尚 五月廾六日   道綽襌師 四月廾七日   善導大師 三月廾七日   源信和尚 六月十日 ----------------------------------------   親鸞聖人 弘長二年十一月廾八日        御入滅滿九十歳 二 信如上人 正安二年正月四日        遊  六十二才 三 覺如上人 觀應二年正月正月廾九日        遊  八十二才 四 善如上人 康應元年二月廾九日        遊  五十七才 五 綽如上人 明徳四年四月廾四日        遊  四十四才 【七十八左】 六 巧如上人 永享十二年十月十四日        遊  六十二才 七 存如上人 長祿元年六月十八日        遊  六十二才 八 蓮如上人 明應八年三月廾五日        遊  八十五才 九 實如上人 大永五年二月二日        遊  六十八才 十 證如上人 天文廾三年八月十三日        遊  三十九才 十一顯如上人 文祿元年十一月廾四日        遊  五十才 十二准如上人 寛永七年十一月卅日        遊  五十四才 十三良如上人 寛文二年九月七日        遊  五十一才 十四寂如上人 享保十年七月八日        遊  七十五才 十五住如上人 元文四年八月六日        遊  六十七才 十六湛如上人 寛保元年六月八日        遊  二十七才 十七法如上人 寛政元年十月廾四日        遊  八十三才 十八文如上人 寛政十一年六月十四日        遊  五十六才 十九本如上人 文政九年十二月十二日        遊  ■■■■ ---------------------------------------- 東 十二教如上人 慶長十九年十月三日        遊  五十七才 十三宣如上人 万治元年七月廾五日        遊  五十七才 十四琢如上人 寛文十一年四月十四日        遊  四十二才 十五常如上人 元祿七年五月廾二日        遊  五十四才 十六一如上人 元祿十三年四月十二日        遊  五十二才   十七眞如上人 延享元年十月二日        遊  六十三才 十八從如上人 寳暦十年七月十一日        遊  四十一才 十九乘如上人 寛政四年二月廾二日        遊  四十九才 ---------------------------------------- 【七十九右】 弘化三丙午歳六月     江戸人形町通        吉田屋又三郎 東都     同淺艸御藏前        藤屋宗兵衞 書林     同福井町三丁目        三河屋鉄藏  End  底本::   書名:  正信偈念佛和讚   著者:  親鸞 蓮如   發行:  東都書林   初版:  弘化三丙午歳六月  入力::   入力者: 新渡戸 廣明(info@saigyo.net)   入力機: Sharp WS003SH   編集機: IBM ThinkPad X31 2672-CBJ   入力日: 2007年06月13日-06月27日  校正::   校正者:   校正日:  $Id: syousinge.txt,v 1.17 2020/01/20 00:07:46 saigyo Exp $