Title  山家集  Note  「digital西行庵」の入力に際して  底本に近づけるため、振り仮名の部分を入力し、漢字は傍記した。  濁点は除去した。  基本に忠実な翻刻に対してのみ行える処理である。  校注者の良識に感謝。  Book  山家集上  Subtitle  春  0001:6979    春2 朝3  たつはるのあしたよみける 年2    來1   思2 寢1 としくれぬ春くへしとはおもひねにまさしく見えてかなふ初夢  0002:6980     霞2                   曙4 山のはのかすむけしきにしるきかなけさよりやさは春のあけほの  0003:6981 春2立1      え1朝出3      霞2 音羽3 かな1 はるたつとおもひもあへぬあさいてにいつしかかすむおとは山哉  0004:6982        知1       年2      なり1 たちかはる春をしれとも見せかほにとしをへたつる霞成けり  0005:6984       いふこと2  家々翫春と云亊 門2   立1         宿2  宿2 かとことにたつる小松にかさられてやとてふやとに春はきにけり  0006:6985        はへり1  元日子日にて侍けるに 子1日1            千代2    年2 ねのひしてたてたる松にうゑそへんちよかさぬへきとしのしるしに  0007:6986      はるたつ2          いふこと2  山さとに春立つと云亊  里2                春2 たつ1 山さとはかすみわたれるけしきにて空にやはるの立を知るらん  0008:6987  難波3         はへり1  たつ1  なにはわたりにとしこしに侍りけるに春立こゝろを  よみける      春2     津1國2    浦2 かすみ1 いつしかとはるきにけりとつのくにの難波のうらを霞こめたり  0009:6988        方違5   志賀2里2  春になりけるかたたかへにしかのさとへまかりける             逢坂4   霞2  人にくしてまかりけるにあふさか山のかすみけるを  みて    今日2      逢坂4   霞2   立1       越1 わきてけふあふさか山のかすめるはたちおくれたる春やこゆらん  0010:6990  題2  たいしらす 春2知1   細水4      岩間3    絶1 はるしれと谷のほそみつもりそくるいはまの氷ひまたえにけり  0011:6991:續後撰一 霞2         思2     雪1消1  吉野3 かすますはなにをか春とおもはましまたゆききえぬみよしのの山  0012:6992      いふこと2  海邊霞と云亊を 藻鹽3燒1浦2     たち1 煙3     春霞5 もしほやくうらのあたりは立のかてけふりたちそふはるかすみかな  0013:6993  おなしこゝろ2   いふところ2  同心を伊勢にふたみと云所にて         松2      梢3      なり1 波こすとふたみのまつの見えつるはこすゑにかゝる霞成けり  0014:6994  ねのひ  子日 春2   野邊2        幾2  代1經1 はることにのへの小松をひく人はいくらの千よをふへきなるらん  0015:6995 ねのひ2  霞3       小松3 原2 子日する人にかすみはさきたちてこまつかはらをたなひきてけり  0016:6996 子1日1 霞3     野邊2いて1   聲2 ねのひしにかすみたなひくのへに出てはつ鶯のこゑをききつる  0017:6997  若菜3 初子3             まうし1  わかなにはつねのあひたりけれは人のもとへ申つか  はしける 若菜3摘1今日2初子3            心3 わかなつむけふにはつねのあひぬれはまつにや人のこころひくらん  0018:6998:續拾遺一  雪中若菜 今日2  思2     歸2   雪2  野邊2若菜3 けふはたゝおもひもよらてかへりなむゆきつむのへのわなゝりけり  0019:6999  若菜3  わかな 春日野4 年2     雪2   春2 若菜3 生1 かすかのはとしのうちにはゆきつみてはるはわかなのおふるなりけり  0020:7000  雨中若菜        若菜3         摘1 筐3 春雨のふるののわかなおひぬらしぬれ/\つまんかたみたぬきれ  0021:7001  若菜3            いふこと2  わかなによせてふるきをおもふと云亊を 若菜3摘1野邊2霞3 そ1    昔3  遠2 わかなつむのへのかすみにあはれなるむかしをとほくへたつとおもへは  0022:7002     若菜3 いふこと2  老人のわかなと云亊を   ゑ1 七種4    お1   年2 重2  摘1 若菜3 うつえつきなゝくさにこそをいにけれとしをかさねてつめるわかなに  0023:7003      懐】   若1   いふこと2  寄覺菜述懷と云亊を 若菜3   春2 野守3             知1 わかなおふるはるののもりに我なりてうき世を人につみしらせはや  0024:7004     懐】  寄鶯述懷 憂2      惜1  鶯4 うき身にてきくもをしきはうくひすの霞にむせふあけほのの山  0025:7005  閑中鶯      霞3  洩1 鶯のこゑそかすみにもれてくる人めともしき春の山さと  0026:7006  雨中鶯 鶯の1〕  春2          竹2 鶯はるさめ/\となきゐたるたけのしつくやなみたなるらん  0027:7007      谷2  鶯4   聲2  すみけるたにに、うくひすのこゑせすなりけれは 古巣3   谷2 ふるすうとくたにの鶯なりはては我やかはりてなかんとすらん  0028:7008   谷2 古巣3 いて1        忘2 鶯はたにのふるすを出ぬともわかゆくへをはわすれさらなん  0029:7009 鶯4     巣守3      谷2 岡2 うくひすは我をすもりにたのみてやたにのをかへはいててなくらむ  0030:7010 春2    我1  庵2 友2 なり1   出1                   古巣3  はるのほとはわかすむいほのともに成てふるすないてそ谷の鶯  0031:7011  きゝすを      若菜3    聞2   雉子3  野1 もえいつるわかなあさるときこゆなりきゝすなくのの春の明ほの  0032:7012      春2 若草4      原2 枯野3 雉子3 おひかはるはるのわかくさまちわひてはらのかれのにきゝすなくなり  0033:7014                  脱】           行1   雉子3    燒2   かな1 春の霞いへたちいててゆきにけんきゝすたつ野をやきてける哉  0034:7013 片2    移2     雉子3  羽音3    脱】 かた岡にしはうつりしてなくきゝすたつはおととてたかゝらぬかは  0035:7016  山家梅 香1       待1 里2  根1  散1 かをとめん人にこそまて山さとの垣ねの梅のちらぬかきりは  0036:7017       垣根3      由2 心せんしつかかきねの梅はあやなよしなくすくる人とゝめけり  0037:7018   春2 賤2  根1     梅2 香1   親2 このはるはしつか垣ねにふれはひてむめかかとめん人したしまん  0038:7019  嵯峨2住1       隔3    はへり1  さかにすみけるに、みちをへたてて房の侍けるより、      散1  梅の風にちりけるを 主2              餘所2      匂3 ぬしいかに風わたるとていとふらんよそにうれしき梅のにほひを  0039:7020      前2  いほりのまへなりける梅をみてよみける             衍】     谷2     吹1   入1 梅か香をたにふところにふきためていりこん人にしめよ春風  0040:7021          まうすところ2      梅2             はへり1  伊勢にもりやまと申所に侍りけるに、いほりにむめ        匂2  のかうはしくにほひけるを 柴2        梅2 匂2       方2   住家3かな1 しはのいほにとく/\むめのにほひきてやさしきかたもあるすみか哉  0041:7022  梅に鶯なきけるを 梅2 香1    聞1 鶯4   聲2        里2 むめかかにたくへてきけはうくひすのこゑなつかしき春の山さと  0042:7023       苔2             香1匂2 つくりおきしこけのふすまに鶯は身にしむ梅のかやにほふらん  0043:7024:新拾遺一         梅2  たひのとまりのむめ      草2 枕3  移香4   根1梅2 匂3 ひとりぬるくさのまくらのうつりかは垣ねのむめのにほひなりけり  0044:7025  古砌梅 何2   軒2     梅2   住1 なにとなくのきなつかしきむめゆゑにすみけん人の心をそしる  0045:7026       いふ1  山家春雨と云亊を、大原にてよみけるに                         ひと】 春雨4  軒2          人2 知1    住家3 はるさめののきたれこむるつれ/\にひとにしられぬ人のすみかか  0046:7027    帰】  霞中歸雁 何2          天2 原2霞3     歸2 なにとなくおほつかなきはあまのはらかすみにきえてかへるかりかね  0047:7028      歸2          越2 中山4 かりかねはかへるみちにやまよふらんこしのなかやま霞へたてて  0048:7029  帰】  歸雁 玉章4  端書4         飛1     歸2 たまつさのはしかきかとも見ゆるかなとひおくれつつかへるかりかね  0049:7030  山家喚子鳥  里2 誰2     喚子鳥5        住1  思2 山さとへたれをまたこはよふことりひとりのみこそすまんとおもふに  0050:7031  苗代 苗代4  水2 霞3       打樋3 上2 なはしろのみつをかすみはたなひきてうちひのうへにかくるなりけり  0051:7032        曇2  かすみに月のくもれるをみて 雲2   朧3     見1 くもなくておほろなりともみゆるかな霞かゝれる春のよの月  0052:7033:新古今十七  山家柳  賤2 片岡4       庵2     見1 玉2 小柳4 山かつのかたをかかけてしむるいほのさかひにみゆるたまのをやなき  0053:7035  雨中柳            亂2     濡1 なか/\に風のほすにそみたれける雨にぬれたる青柳のいと  0054:7034:新拾遣二十   乱】  柳亂風                         な】  渡2  佐保2河原3      風2     青柳4 見わたせはさほのかはらにくりかけてかせによらるゝあをやきのいと  0055:7036   辺】  水邊柳                        は1 水底4  深2               川柳5 みなそこにふかきみとりの色みえて風になみよるかわやなきかな  0056:7037  待花忘他 侍1   散1 心3  山櫻5        思2 まつによりちらぬこゝろをやまさくらさきなは花のおもひしらなん  0057:7038  独】  獨尋山花 誰1         吉野3        岩2 たれかまた花をたつねてよしの山こけふみわくるいはつたふらん  0058:7039  待花 今更4    忘2          待1  今日2暮2 いまさらに春をわするゝ花もあらしやすくまちつゝけふもくらさん  0059:7040:玉葉一      何3  山2 峯2           初2 おほつかないつれのやまのみねよりかまたるゝ花のさきはしむらん  0060:7041    なり】 空2    何處3    尋2   雲2  花2    なり1 そらにいてていつくともなくたつぬれはくもとははなの見ゆる成けり  0061:7042 雪2   谷2 古巣3      花2 ゆきとちしたにのふるすを思ひいててはなにむつるゝ鶯のこゑ  0062:7043  花の歌あまたよみけるに 吉野3        尋2    心3 よしの山くもをはかりにたつねいりてこころにかけし花をみるかな  0063:7044        花2      霞3      吉野3 山2 おもひやる心やはなにゆかさらんかすみこめたるみよしののやま  0064:7045:千載一      花2 盛3  なり1 山2        白雲4 おしなへてはなのさかりに成にけりやまのはことにかゝるしらくも  0065:7046    色2       吉野3 春2     峯2 まかふいろに花さきぬれはよしの山はるははれせぬみねのしら雲  0066:7047:續後拾遺二 吉2                     なり1 よし野山こすゑの花を見し日より心は身にもそはす成にき  0067:7048:新後撰二      心3     山櫻5      後2 あくかるゝこゝろはさてもやまさくらちりなんのちやみにかへるへき  0068:7049  見1                  苦2 花みれはそのいはれとはなけれとも心のうちそくるしかりける  0069:7050 白川4  梢3          吉野3 しらかはのこすゑをみてそなくさむるよしのの山にかよふ心を  0070:7057 白川4          花2     聞1 しらかはの春のこすゑの鶯ははなのことはをきくこゝちする  0071:0051:玉葉十八      花2    夜2      秋2 晝2 ひきかへてはなみる春はよるはなく月見るあきはひるなからなん  0072:7052:風雅十七  散1   曇2  世1     思2 花ちらて月はくもらぬよなりせは物をおもはぬわか身ならまし  0073:7053      花2  枝2 咲1 たくひなきはなをしえたにさかすれは櫻にならふ木そなかりける  0074:7054   分1   梢3   盡2       山2 身をわけて見ぬこすゑなくつくさはやよろつのやまの花のさかりを  0075:7055 櫻3   四方2山邊3          花2   心地3 さくらさくよものやまへをかぬるまにのとかにはなを見ぬこゝちする  0076:7056:千載十七                 ん】 花2   心3     殘2   捨1果1 はなにそむこゝろのいかてのこりけむすてはててきと思ふ我身に  0077:7058:續古今十七             死1        望月4  頃2 ねかはくは花のしたにて春しなんそのきさらきのもちつきのころ  0078:7059:千載十七                れ1      櫻3         我1後2 世1 ほとけにはさくらの花をたてまつるわかのちのよを人とふらはは  0079:7060                    さかり】 何2     有1     得1   櫻3 なにとかやよにありかたき名をえたる花もさくらにまさりしもせし  0080:7061     霞3        着1 山さくらかすみのころもあつくきてこの春たにも風つゝまなん  0081:7062      高嶺3 雲2 花2      七日3 おもひやるたかねのくものはなならはちらぬなぬかははれしとそ思ふ  0082:7063 のとか2心3     盡2   花2       待1 長閑なれこころをさらにつくしつゝはなゆゑにこそ春はまちしか  0083:7064 風越4  峯2     咲1    盛3      散1 かさこしのみねのつゝきにさく花はいつさかりともなくやちりけん  0084:7065        誘2       尋2     待1   散1 ならひありて風さそふとも山さくらたつぬるわれをまちつけてちれ  0085:7066 裾野3 すそのやくけふりそ春はよしの山花をへたつる霞なりける  0086:7067 今2        傳2    世1逃2   山2 住1 いまよりは花みん人につたへおかんよをのかれつゝやまにすまへと  0087:7068:玉葉二         おもひ1            頃2  しつかならんと思けるころ、花見に人々まうてきた  りけれは     群1    來1      櫻3  科2  あり1 花見にとむれつゝ人のくるのみそあたらさくらのとかには有りける  0088:7069           折2    山2    長閑3 花もちり人もこさらんをりはまたやまのかひにてのとかなるへし  0089:7070  かきたえ、こととはすなりにける人の、花みに山さ  とへまうてきたり、ときゝてよみける        梢3  匂2 年をへておなしこすゑににほへとも花こそ人にあかれさりけれ  0090:7071    下2  花のしたにて月をみてよみける 雲2      下2  眺2            なり1 くもにまかふ花のしたにてなかむれはおほろに月は見ゆる成ける  0091:7072         見1  春のあけほの花みけるに鶯のなきけれは     聲1 花の色や散にそむらん鶯のなくねことなる春のあけほの  0092:7073      友2 いふ1   ゐ1  春は花をともと云亊を、せか院の齋院にて人々よみ  けるに         年2      何2       暮2 おのつから花なきとしの春もあらはなににつけてか日をくらすへき  0093:7074      いふ1  老見花と云亊を       何2          待1   わかみ2 おもひいてになにをかせましこの春の花まちつけぬ我身なりせは  0094:7075:續古今十七      櫻3        咲1   見1  ふる木のさくらの、ところ/\さきたるをみて    見1老2         今2 わきてみんおい木は花もあはれなりいまいくたひか春にあふへき  0095:7076  屏風の繪を人々よみけるに、春の宮人むれて花みけ  る所に、よそなる人の見やりてたてりけるを 木1         櫻花5         香1 惜2 このもとは見る人しけしさくらはなよそになかめてかをはをしまん  0096:7077        衍】                 おもひいて2  山寺の花さかりなりけるに、昔を思出て 吉野3        尋2 いり1  春2   昔3 よしの山ほきちつたひにたつね入て花見しはるはひとむかしかも  0097:7078:玉葉二     はへり1  修行し侍けるに、花のおもしろかりける所にて 眺2   花2 名立3               暮2 なかむるにはなのなたての身ならすはこのさとにてや春をくらさん  0098:7079  熊野3        八上3 王1  くまのへまゐりけるに、やかみの皇子の花おもしろ          かき1  かりけれは、社に書つけける 待1   八上3 櫻3      荒2     三栖2 風2 まちきつるやかみのさくらさきにけりあらくおろすなみすの山かせ  0099:7080  清和2    ゐ1  せか院の花さかりなりけるころ、としたかのもとよ  りいひおくられける      來1    諸共4  眺2      櫻3 おのつからくる人あらはもろともになかめまほしき山さくらかな  0100:7081  返し 眺2   數2 入1       君2 宿2    經1 なかむてふかすにいるへき身なりせはきみかやとにて春はへぬへし  0101:7082          ほつしようし3                はへり1  上西門院の女房、法勝寺の花見侍けるに、雨のふり  てくれにけれはかへられにけり。又の日、兵衞のつ                  たまふ1  ほねのもとへ、花のみゆき思出させ給らんとおほえ  て、かくなん申さまほしかりしとてつかはしける   人2   昔3  思2    戀2 見るひとに花もむかしをおもひいててこひしかるへしあめにしをるゝ  0102:7083  返し 古4       雨2 誰2 見1花2   代1友2 いにしへをしのふるあめとたれかみんはなもそのよのともしなけれは             老1  わかき人々はかりなん。おいにける身は、かせのわ  つらはしさにいとはるゝ亊にてとありける、やさし   聞2  くきこえけり  0103:7084    降1              眺2  雨のふりけるに、花のしたにて車たててなかめける  人に 濡1   蔭2 頼2   も1    跡2  今日2 ある1 ぬるともとかけをたのみておそひけん人のあとふむけふにも有かな  0104:7085:千載十七           はへり1  世をのかれて東山に侍けるころ、白川の花さかりに         罷2   歸2  昔3 おもひいて2  人さそひけれはまかりて、かへりてむかし思出て      歸2 心3  櫻花5 ちるをみてかへるこころやさくらはなむかしにかはるしるしなるらん  0105:7086:玉葉二  山路落花 散1     初雪4      踏1分1   志賀2 越2 ちりそむる花のはつゆきふりぬれはふみわけまうきしかの山こえ  0106:7087  落花の歌あまたよみけるに 勅3    下2 帝3          畏2  花2 散1 ちよくとかやくたすみかとのいませかしさらはおそれてはなやちらぬと  0107:7088              君2       散1 浪もなく風ををさめし白川のきみのをりもや花はちりけん  0108:7089            思2    風2       眺2 いかて我このよのほかのおもひいてにかせをいとはて花をなかめん  0109:7090:續拾遺二     侍1 惜1  山櫻5 年をへてまつもをしむもやまさくら心を春はつくすなりけり  0110:7091 吉2  谷2     白雲4     櫻3  散1   るら2 よし野山たにへたなひくしらくもはみねのさくらのちるにやあらなん  0111:XXXX               谷2     散1 吉野山みねなる花はいつかたのたににかわきてちりつもるらん  0112:7092      木1  埋2     岩井3    氷3 山おろしのこのもとうつむ春の雪はいはゐにうくもこほりとそみる  0113:7093       吹雪3 埋3          志賀2山2 はる風の花のふゝきにうつまれてゆきもやられぬしかのやまみち  0114:7094 たち1 峯2           散1  嵐3 立まかふみねの雲をははらふとも花をちらさぬあらしなりせは  0115:7095 吉野3    具1 峯2   嵐3  雲2    見1 よしの山花ふきくしてみねこゆるあらしはくもとよそにみゆらん  0116:7096 惜2       世1     を1 をしまれぬ身たにもよにはあるものはあなあやにくの花の心や  0117:7097:玉葉二      留2     春風4  散1    惜2 うきよにはとゝめおかしとはるかせのちらすは花ををしむなりけり  0118:7098 諸共4      具1   ね1           そ1 もろともにわれをもくしてちりぬ花うきよをいとふ心ある身に  0119:7099 思2   花2 散1  木1   何2 おもへたゝはなのちりなんこのもとになにをかけにて我身すみなん  0120:7100:新古今二 眺2   花2     馴1   散1別3 なかむとてはなにもいたくなれぬれはちるわかれこそかなしかりけれ  0121:7101 惜1   思2        散1花2 をしめともおもひけもなくあたにちるはなは心そかしこかりける  0122:7l02 梢3     心3    か1     花2 恨2 こすゑふく風のこゝろはいかなせんしたかふはなのうらめしきかな  0123:7103      散1     思2       慕2 歎3 知1花2 いかてかはちらてあれともおもふへきしはしとしたふなけきしれはな  0124:7104 木1     今宵3 埋2      梢3 このもとの花にこよひはうつもれてあかぬこすゑをおもひあかさん  0125:7105 木1   旅寢3    吉野3 花2     着1 春風4 このもとにたひねをすれはよしの山はなのふすまをきするはるかせ  0126:7106 雪2 見1   櫻3  亂2   花2       夜1 ゆきとみえて風にさくらのみたるれははなのかさきる春のよの月  0127:7107 ちる花ををしむこころやととまりてまたこんはるのたねになるへき  0128:7108 春2   枝2     散1 はるふかみえたもゆるかてちる花は風のとかにはあらぬなるへし  0129:7109            嵐3        花2 あなかちに庭をさへはくあらしかなさこそ心にはなをまかせめ  0130:7110    散1   梢3      少2 あたにちるさこそこすゑの花ならめすこしはのこせ春の山風  0131:7111 心得4 こころえつたゝひとすちに今よりは花ををしまて風をいとはん  0132:7112    櫻3     白2  散1     晴2 吉野山さくらにまかふしら雲のちりなんのちははれすもあらなん  0133:7113   見1   情3       雲2 花とみはさすかなさけをかけましをくもとて風のはらふなるへし  0134:7114       行方3 知1   惜1 風さそふ花のゆくへはしらねともをしむ心は身にとまりけり  0135:7115     梢3             散1 春2  は1 花さかりこすゑをさそふ風なくてのとかにちらすはるにあわはや  0136:7116       いふ1  庭花似波と云亊を     梢3  花2      庭2     白川4  里2 風あらみこすゑのはなのなかれきてにはになみたつしらかはのさと  0137:7117  白川4   庭2  しらかはの花にはおもしろかりけるをみて      梢3               雪2 あたにちるこすゑの花をなかむれは庭にはきえぬゆきそつもれる  0138:7118            ころ3  高野にこもりたりけるこゝろ、草のいほりに花のち  りつみけれは     庵3          風2 ちる花のいほりのうへをふくならはかせいるましくめくりかこはん  0139:7119       いふ1 清和ゐ3  夢中落花と云亊を、せか院の齋院にて人々よみける  に    花2 散1    夢2     胸2 春風のはなをちらすと見るゆめはさめてもむねのさわくなりけり  0140:7120  風前落花  櫻3 枝2 山さくらえたきる風のなこりなく花をさなからわかものにする  0141:7121  雨中落花 梢3   雨2     散1  惜1 こすゑうつあめにしをれてちる花のをしき心をなににたとへん  0142:7122  遠山殘花 吉野3        白雲4  咲1     櫻3 よしの山ひとむら見ゆるしらくもはさきおくれたるさくらなるへし  0143:7123:新後撰一  花歌十五首よみけるに              花2        白雲4 よしの山人に心をつけかほにはなよりさきにかかるしら雲  0144:7124:玉葉一  寒2            餘2     尋2 來1 山さむみ花さくへくもなかりけりあまりかねてもたつねきにける  0145:7125                   ら】          花2 思2       心3 かたはかりつほむとはなをおもふよりそゝまたこゝろものになるらん  0146:7126      谷2 櫻3                 白2 おほつかなたにはさくらのいかならんみねにはいまたかけぬしら雲  0147:7127 花2    誰2          思2      心3 はなときくはたれもさこそはうれしけれおもひしつめぬ我こゝろかな  0148:7128 初花4         梢3       風2 渡2 はつはなのひらけはしむるこすゑよりそはへてかせのわたるなりけり  0149:7129;新續古今二      春2   はな1     年2 おほつかなはなは心の春にのみいつれのとしかうかれそめけん  0150:7130   今年3   櫻3                惜1 いさことしちれとさくらをかたらはんなか/\さらは風やおしむと  0151:7131     枝2          花2と1   青柳4 風ふくとえたをはなれておつましくはなたちつけよあをやきのいと  0152:7132        梢3             惜1 櫻3 ふく風のなめてこすゑにあたるかなかはかり人のをしむさくらに  0153:7133:新後撰二             色2 なにとかくあたなるはるのいろをしも心にふかくそめはしめけん  0154:7134 同2 身1珍2     惜1     變2     散1 おなしみのめつらしからすをしめはや花もかはらすさけはちるらん  0155:7135    ち1  谷2     咲1 みねにはる花はたになる木にそさくいたくいとはし春の山風  0156:7136      亂2    散1   岩離4    瀧2 山おろしにみたれて花のちりけるをいははなれたるたきとみたれは  0157:7137   散1  都3       山2 花もちり人もみやこへかへりなはやまさひしくやならんとすらん  0158:7138  散1     おもふ1           いふ1  ちりてのち花を思と云亊を        心3       散1        思2 青葉さへ見れはこゝろのとまるかなちりにし花のなこりとおもへは  0159:7139  すみれ 跡2   淺茅3      面2  分1 あとたえてあさちしけれる庭のおもに誰わけいりてすみれつみてん  0160:7140      ら1 畔2 誰ならんあしたのくろにすみれつむ人は心のわりなかるへし  0161:7141  さわらひ       き1        捨1 野1早蕨4  折1 なほさりにやますてしののさわらひはをる人なくてほとろとやなる  0162:7142  かきつはた ゐ】 沼水4     眞菰3 分2   咲1隔2        かな1 ぬまみつにしけるまこものわかれぬをさきへたてたるかきつはた哉  0163:7143  山路躑躅 に】 岩2   折1 躑躅3 手1   嶮2  山2 いはつたひをらてつつしをてにそとるさかしきやまのとりところには  0164:7144  つゝし山のひかりたり 躑躅3咲1  岩2  夕映3         名1 なり1 つつしさく山のいはかけゆふはえてをくらはよそのなのみ成けり  0165:7145  山ふき 岸近4             浪2 折1  山1 きしちかみうゑけん人そうらめしきなみにをらるゝやふきの花  0166:7146  吹2 花2さくさと4          手1     かな1 山ふきのはなのさかりになりぬれはこゝにも井てとおもほゆる哉  0167:7147:風雅三  かはつ 眞菅3   山田3 水2               蛙3 かな1 ますけおふるやまたにみつをまかすれはうれしかほにもなくかはつ哉  0168:7148        宿2  濁江4    住1 みさひゐて月もやとらぬにこりえにわれすまんとてかはつなくなり  0169:7149       ほとときす2いふ1  春のうちに郭公をきくと云亊を             ほとときす2               春2 うれしともおもひそわかぬ郭公はるきくことのならひなけれは  0170:7150   せ】              三津2まうす1  伊勢にまかりたりけるに、みつと申所にて、海邊暮   いふ1  と云亊を神主ともよみけるに    春2       船出3  浪2 花2     立1 すくるはるしほのみつよりふなてしてなみのはなをやさきにたつらん  0171:7151  三月一日たらてくれにけるによみける         物2 思2             暮1 春ゆゑにせめてもものをおもへとやみそかにたにもたらてくれぬる  0172:7152      思2             暮1 心地3 けふのみとおもへはなかき春の日もほとなくくるゝこゝちこそすれ  0173:7153            夕暮4 ゆく春をとゝめかねぬるゆふくれはあけほのよりもあはれなりけり  Subtitle  夏  0174:7154                        る】       衣3          心3  花2 慕2 かきりあれはころもはかりはぬきかへてこゝろははなをしたふなりけり  0175:7155  夏歌中に 草2     刈1   山2   花2 くさしけるみちかりあけてやまさとははな見し人の心をそしる  0176:7156     上】     へ1  みつのえのうの花 立田3 岸2                   卯1 たつた河きしのまかきを見わたせはゐせきの浪にまかふうの花  0177:7158       花】  よるのうのはな            卯1花2 夜2  晒2 布2 まかふへき月なきころのうのはなはよるさへさらすぬのかとそ見る  0178:7159  社頭卯花 かみ1 邊2  咲1 便3    木綿2       卯1  垣2 神かきのあたりにさくもたよりあれやゆふかけたりとみゆるうの花  0179:7160:新後撰十七  無言なりけるころ、郭公のはつこゑをきゝて ほとときす2   を1   初音3 郭公ひとにかたらぬおりにしもはつねきくこそかひなかりけれ  0180:7161              いふ1  たつねさるに郭公をきくと云亊を賀茂社にて人々よ  みける      卯月3 忌2 忌1   思2     來鳴2  かな1              こも2 ほとゝきすうつきのいみにいみめるをおもひしりてもきなくなる哉  0181:7162:玉葉三  ゆふくれの郭公 里2       時2 郭公5     顏2 さとなるゝたそかれときのほとときすきかすかほにてまたなのらせん  0182:7163  郭公 わか1 花橘6     ゑ1        待1 我やとにはなたちはなをうへてこそ山ほとときすまつへかりけれ  0183:7164        難2   郭公5         待1 たつぬれはきゝかたきかとほとときすこよひはかりはまちこゝろみん  0184:7165     心3        聲2     五1                       つき1 郭公まつこゝろのみつくさせてこゑをはをしむさ月なりけり  0185:7166  人にかはりて       知1      頼1     夜1明2 まつ人の心をしらはほとときすたのもしくてやよをあかさまし  0186:7167                いふ1  郭公をまちてむなしくあけぬと云亊を 郭公5     明2    顏2     鷄2 音1聞2                       り1 ほとゝきすきかてあけぬとつけかほにまたれぬとものねそきこゆなる  0187:7168      明2  夏2 夜1浦島4  子1 郭公きかてあけぬるなつのよのうらしまのこはまことなりけり  0188:7169  郭公歌五首よみけるに 郭公5  聞1    ゑ1             迷2 ほとゝきすきかぬものゆへまよはまし春をたつねぬ山路なりせは  0189:7170:續千載三 侍1   初音3    思2          郭公5 まつことははつねまてかとおもひしにきゝふるされぬほとゝきすかな  0190:7171                 欠】   お1 心3  具1      高間3 山2   越1 きゝをくるこゝろをくしてほとゝきすたかまのやまのみねこえぬなり  0191:7172 大井3                聲2 おほゐ川をくらの山のほとゝきすゐせきにこゑのとまらましかは  0192:7173 郭公5      越1 山路3      聲2 ほとときすそののちこえんやまちにもかたらふこゑはかはらさらなん  0193:7175:新後拾遺三  ほとゝきすを 郭公おもひもわかぬひと聲をきゝつといかゝ人にかたらん  0194:7176             ちきり1        聞1                心3 ほとゝきすいかはかりなる契にてこゝろつくさて人のきくらん  0195:7177        夜1聲2 郭公5         忘2 かたらひしそのよのこゑはほとゝきすいかなるよにもわすれんものか  0196:7178      花橘6               垣根3 ほとゝきすはなたちはなはにほふとも身をうの花のかきねわすれな  0197:7179        いふ1  雨中待郭公と云亊を      卯月3      なほ1を1      空2 郭公しのふうつきもすきにしを猶こゑおしむさみたれのそら  0198:7180  雨中郭公 五月雨4 晴間3     路1       鳴1 さみたれのはれまも見えぬ雲ちより山ほとゝきすなきてすくなり  0199:7181  山寺郭公人々よみける          籠2   初瀬3 山2 便3 郭公きくにとてしもこもらねとはつせのやまはたよりありけり  0200:7182           里2      立1歸2  五月つこもりに、山さとにまかりて、たちかへりけ  るを、郭公もすけなくきゝすててかへりし亊なと、    まうし1     遣2  人の申つかはしたりける返亊に 郭公5  名殘3    歸2               かな1 ほとゝきすなこりあらせてかへりしかきゝすつるにもなりにける哉  0201:7183  題不知     沼2 水嵩3 落2   菖蒲3 葺1 五1 空はれてぬまのみかさをおとさすはあやめもふかぬさ月なるへし  0202:7185        まうす1    葺1  高野の中院と申す所に、あやめふきたる房の侍りけ    櫻3  散1  るにさくらのちりけるかめつらしくおほえて、よみ  ける                      〔いふへかるらん〕    宿2 飾2  菖蒲3 櫻ちるやとをかされるあやめをははなさうふとやいふへなるらん  0203:7186     稚兒2  坊なるちここれをきゝて  【けふ】                        〔いふへかるらん〕 散1花2    菖蒲3 根1   藥玉4 ちるはなをけふのあやめのねにかけてくすたまともやいふへかならん  0204:7184             まうし3              遣2  さる亊ありて、人のもの申つかはしたりける返亊に、  五日 折2               筑摩3 沼2 菖蒲3 をりにあひて人にわか身やひかれましつくまのぬまのあやめなりせは  0205:7187                      〔しやうふ3〕  五月五日、山寺へ人のけふいる物なれはとて、しや  ふをつかはしたりける返亊に 西2   心3     菖蒲3        宿2 にしにのみこゝろそかゝるあやめ草このよはかりのやとと思へは  0206:7188     心3     菖蒲3 西2 思2 みな人のこゝろのうきはあやめ草にしにおもひのひかぬなりけり  0207:7190  さみたれ      〔は〕        間1眞菰3     空手3    五月雨4 みつたゝふいわまのまこもかりかねてむなてにすくるさみたれのころ  0208:7191 五月雨4 水2         蜘蛛手3   浪2 白絲4 さみたれにみつまさるらしうち橋やくもてにかゝるなみのしらいと  0209:XXXX     〔は〕 沼2 水2      石間3 通2 所1 五月雨はいわせくぬまのみつふかみわけしいしまのかよひともなし  0210:7192 小笹3  古里4 小野2  〔あと〕  澤2   五月雨4 頃2 こささしくふるさとをののみちのあてをまたさはになすさみたれのころ  0211:7193        雫3              五月雨4 ころ1 つく/\と軒のしつくをなかめつゝ日をのみくらすさみたれの比  0212:7194      小萱3 軒2 絲水4  玉2     五月雨4 ころ1 あつまやのをかやかのきのいとみつにたまぬきかくるさみたれの比  0213:7195 五月雨4 小田2早苗3      畔2   土2   濾1 さみたれにをたのさなへやいかならんあせのうきつちあらひこされて  0214:7196 五月雨4 頃2     荒小田4       水2 さみたれのころにしなれはあらをたに人もまかせぬみつたゝひけり  0215:7197                   はへり1  あるところにさみたれの歌十五首よみ侍しに、人にかはりて 五月雨4 干1         煙3     浦2 さみたれにほすひまなくてもしほ草けふりもたてぬうらのあま人  0216:7199   【川】 水無瀬3   通路4 水2滿1 船渡4    五月雨4 頃2 みなせ河をちのかよひちみつみちてふなわたりするさみたれのころ  0217:7200 廣瀬川5 渡3  沖2 澪2   水嵩3 深2      ころ1 ひろせかはわたりのおきのみをしるしみかさそふかきさみたれの比  0218:7201   【川】         岸2 沖2 見1       五月雨4 ころ1 はやせ河つなてのきしをおきにみてのほりわつらふさみたれの比  0219:7202 水2   難波3堀江3             五月雨4 みつわくるなにはほりえのなかりせはいかにかせましさみたれのころ  0220:7203 舟2          〔を〕       五目雨4 ふねすゑしみなとのあしまさほたてて心ゆくらんさみたれのころ  0221:7204 水底4  敷1          御津2眞菰3 刈1 來1 みなそこにしかれにけりなさみたれてみつのまこもをかりにきたれは  0222:7205              【ら】 五月雨4 小止2晴間3      水2 嵩2  眞菰3  舟2 さみたれのをやむはれまのなかれめやみつのかさほせまこもかるふね  0223:7206 五月雨4 佐野2舟橋4 浮1   乘1      渡2 さみたれにさののふなはしうきぬれはのりてそ人はさしわたるらん  0224:7207     晴1  數2 經1   沼2 眞菰3 水隱3 五月雨のはれぬ日かすのふるままにぬまのまこもはみかくれにけり  0225:7108 水2          勝間田4 池2改3   五月雨4 ころ1 みつなしときゝてふりにしかつまたのいけあらたむるさみたれの比  0226:7209 五月雨4     道2      小笹3 原2 *2 さみたれはゆくへきみちのあてもなしをさゝかはらもうきになかれて  0227:7210     山田3 畔2 瀧2   數2 重2  落1 五月雨はやまたのあせのたきまくらかすをかさねておつるなりけり  0228:7211 〔は〕  淀2     流2 木1  橋2渡2 五月雨4 ころ1 かわはたのよとみにとまるなかれきのうきはしわたすさみたれの比  0229:7212 思2   侮3     小川3  五月3    増2 おもはすにあなつりにくきこかはかなさつきの雨に水まさりつゝ  0230:7213  となりのいつみ     花2  宿2      泉3  末2      かな1 風をのみはななきやとはまち/\ていつみのすゑをまたむすふ哉  0231:7214       いふ1  水邊納涼と云亊を、北白川にてよみける        忘2  圓居3 梢3  蝉2               かな1 水の音にあつさわするゝまとゐ哉こすゑのせみの聲もまきれて  0232:7215  深山水鷄 そまひと2    暮2 宿2       いほり1 くひな2 杣人のくれにやとかるこゝちして庵をたゝく水鷄なりけり  0233:7216  題不知    夕下風6   涼2   楢2 木蔭3                            かな1 夏山のゆふしたかせのすゝしさにならのこかけのたたまうき哉  0234:7217  なてしこ     〔を〕 露2       淺茅3    撫子4 かきわけておれはつゆこそこほれけれあさちにましるなてしこの花  0235:7218  雨中撫子     園2 撫子4             夕立4 露おもみそののなてしこいかならんあらく見えつるゆふたちの空  0236:7219  夏野草      原2 小薄4      臥所3    鹿2思2 みまくさにはらのをすゝきしかふとてふしとあせぬとしかおもふらん  0237:7220       いふ1  旅行草深と云亊を    分1 夏野3  茂2 葉末3 菅2 小笠3 旅人のわくるなつのの草しけみはすゑにすけのをかさはつれて  0238:7221 雲雀3   大野3 茅原3夏2   涼2 木蔭3      ゆく1 ひはりあかるおほののちはらなつくれはすゝむこかけをたつねてそ行  0239:7222  ともし 照射3  火串3 松2      鹿目3合1   夏2 夜1 ともしするほくしのまつもかへなくにしかめあはせてあかすなつのよ  0240:7223  題不知   夜1篠2 小竹3 節2近2    程2  明1 夏のよはしののこたけのふしちかみそよやほとなくあくるなりけり  0241:7224 夏2              蚊遣火4   賤2 伏屋3 なつの夜の月みることやなかるらんかやりひたつるしつのふせやは  0242:7225  海邊夏月 露2   蘆2 若葉3  冱1 秋2     難彼江4 浦2 つゆのちるあしのわかはに月さえてあきをあらそふなにはえのうら  0243:7226             いふ1  泉にむかひて月をみると云亊を 掬2    泉3  澄1    手1     鏡3 むすひあくるいつみにすめる月影はてにもとられぬかゝみなりけり  0244:7227 掬2 手1涼2  影2 慕2   清水3 宿2 夏2 夜1 むすふてにすゝしきかけをしたふかなしみつにやとるなつのよの月  0245:7228  夏月歌よみけるに   夜1小笹3 原2 霜2〔お〕  光3  冱1 夏のよもをさゝかはらにしもそをく月のひかりのさえしわたれは  0246:7229    岩2 塞1  散1浪2 霰3 山川のいはにせかれてちるなみをあられと見する夏の夜の月  0247:7230  池上夏月 影2         澄1     池2 かけさえて月しもことにすみぬれは夏のいけにもつらゝゐにけり  0248:7231      いふ1  蓮滿池と云亊を を〕    宿2   隙2   池2 蓮3   咲1 おのつから月やとるへきひまもなくいけにはちすの花さきにけり  0249:7232  雨中夏月 夕立4  晴1    宿2   玉2  据1 蓮2 浮葉3                     〔う〕 ゆふたちのはるれは月そやとりけるたまゆりすふるはすのうきはに  0250:7233  涼風如秋            氣色3  先立3  深山邊4 里2               かな1 またきより身にしむ風のけしき哉秋さきたつるみやまへのさと  0251:7234       いふ1  松風如秋と云亊を北白川なる所にて人々よみて、又水      いふ1 聲に有秋と云亊をかさねけるに   〔お〕     石走4 松風のをとのみならすいしはしる水にも秋はありけるものを  0252:7235:續後撰四  山家待秋  里2      葛2葉1茂2 裏2吹1     待1                            かな1 山さとはそとものまくすはをしけみうらふきかへす秋をまつ哉  0253:7236  みなつきはらへ 禊3   幣2       瀬1   秋2    涼2 みそきしてぬさきりなかす河のせにやかてあきめく風そすゝしき  Subtitle  秋  0254:7237  山家初秋             梢3      知1 山邊3 里2 さま/\のあはれをこめてこすゑふく風に秋しるみやまへのさと  0255:7238  山居初秋  立1   告1  知1           氣色3 秋たつと人はつけねとしられけりみ山のすその風のけしきに  0256:7239      里2       いふ1  ときはのさとにて、初秋月と云亊を人々よみけるに  立1 思2  空2     〔わ〕 光3 〔わ〕 秋たつとおもふにそらもたゝならてはれてひかりをはけん三日月  0257:7240:新拾遺四          鳴尾3 まうす1  はしめの秋ころ、なるをと申所にて松風の音をきゝ  て 常2                 染1心地3 つねよりも秋になるをの松風はわきて身にしむこゝちこそすれ  0258:7241  七夕 急2〔お〕 庭2 小草3 露2踏1 優2  數2   思2 いそきをきてにはのこくさのつゆふまんやさしきかすに人やおもふと  0259:7242 暮1   今日2    七夕4  嬉2     露2        待1 くれぬめりけふまちつけてたなはたはうれしきにもやつゆこほるらん  0260:7243 天2  今日2七日3 長2 世1例3   引1忌1 あまの川けふのなぬかはなかきよのためしにもひきいみもしつへし  0261:7244  寄1 天2    夕2  涼2    吹1 船よするあまの河邊のゆふ暮はすゝしき風やふきわたるらん  0262:7245 待1   嬉2                 知1 まちつけてうれしかるらんたなはたの心のうちそ空にしらるゝ  0263:7246  蜘蛛2  くものいかきけるをみて               絲2   織女4       橋2 さゝかにのくもてにかけてひくいとやけふたなはたにかさゝきのはし  0264:7247    路2 遮2   いふ1  草花みちをさいきると云亊を 夕2  拂2  袖2 玉2消1 路2分1   小野2萩原4 ゆふ露をはらへはそてにたまきえてみちわけかぬるをののはきはら  0265:7248  野徑 末2 吹1  野1  渡2   荒2  分1 萩2 下露4 すゑ葉ふく風はのもせにわたるともあらくはわけしはきのしたつゆ  0266:7249       いふ1  草花得時と云亊を 絲薄5  縫1  鹿2 臥1野邊2綻3     藤袴5  かな1 いとすゝきぬはれてしかのふすのへにほころひやすきふちはかま哉  0267:7250  行路草花 お〕 ゆく1   【こ】     袖2         萩2 葉1  野邊2細道4 をらて行そてにも露そしほれけるはきのはしけきのへのほそみち  0268:7251  霧中草花 穗1出1  山2 裾2      籬3  籠1 圍2  霧2 ほにいつるみやまかすそのむらすゝきまかきにこめてかこふ秋きり  0269:7252  終日見野花 亂2 咲1野邊2萩原4 分1        染1   かな1 みたれさくのへのはきはらわけくれて露にも袖をそめてける哉  0270:7253  萩滿野 咲1添1    邊1           花2 さきそはん所の野へにあらはやは萩よりほかのはなも見るへき  0271:7254  萩滿野亭 分1 入1庭2     野邊2    盛3       見1 わけているにはしもやかてのへなれは萩のさかりをわかものにみる  0272:7255  野萩似錦 今日2知1  江1洗2 唐錦5  萩2咲1野邊2あり1 けふそしるそのえにあらふからにしきはきさくのへに有けるものを  0273:7256  草花を 茂2    原2 下2 尾花3出1 招2  誰2 慕2 しけりゆきしはらのした草をはないててまねくはたれをしたふなるらん  0274:7257  薄當道繁 花薄5         分1     見1道2 跡2 はなすゝきこころあてにそわけてゆくほのみしみちのあとしなけれは  0275:7258  古籬苅萱 籬3 荒1 薄3     苅萱4  繁2 野邊2 なり1 もの1 まかきあれてすゝきならねとかるかやもしけきのへとも成にける物を  0276:7259  女郎花 女郎花5     野邊2思2      露2  濡1 見1 をみなへしわけつるのへとおもははやおなしつゆにしぬるとみてそは  0277:7260 女郎花5     野邊2     袂3  露2 をみなへしいろめくのへにふれはゝんたもとにつゆやこほれかゝると  0278:7261  草花露重 今朝2  露2  【る】        上2  女郎花5   見1       〔を〕  〔お〕 けさみれはつゆのすかたにおれふしてをきもあからぬをみなへしかな  0279:7262       邊1   〔を〕    涙3   女郎花5 かな1 おほかたの野への露にはしほるれとわかなみたなきをみなへし哉  0280:7263  女郎花帶露 花2 枝1  白玉4 貫1   折1    女郎花5 かな1 はなかえに露のしらたまぬきかけてをる袖ぬらすをみなへし哉  0281:7264 お〕   袖2 濡1           立1 をらぬよりそてそぬれぬる女郎花露むすほれてたてるけしきに  0282:7265  水邊女郎花 池2 面2 影2          水2     女郎花5 かな1 いけのおもにかけをさやかにうつしてもみつかゝみ見るをみなへし哉  0283:7266      花2        池2          見1 たくひなきはなのすかたを女郎花いけのかゝみにうつしてそみる  0284:7267  女郎花水近    池2     枝2     思2 袖2 濡1 顏2 女郎花いけのさなみにえたひちてものおもふそてのぬるゝかほなる  0285:7268:新續古今十七  荻 思2                 葉1    夕2                     亂2 おもふにもすきてあはれにきこゆるは荻のはみたる秋のゆふ風  0286:7269 を〕      末2 原2 おしなへて木草のすゑのはらまてになひきて秋のあはれ見えけり  0287:7270  荻風拂露 牡鹿3伏1萩2  野邊2         〔を〕 上風4 をしかふすはきさくのへの夕露をしはしもためぬおきのうはかせ  0288:7271  隣夕荻風         知1    顏2 荻2〔お〕  秋2 あたりまてあはれしれともいひかほにをきのをとこすあきの夕風  0289:7272  秋歌中に                          暮2 吹わたす風にあはれをひとしめていつくもすこき秋の夕くれ  0290:7273:新古今四            〔ゑ〕       物2 悲2 おほつかな秋はいかなるゆへのあれはすゝろにもののかなしかるらん  0291:7274:續後撰五         思2       袂3 〔わ〕   夕暮4 なにことをいかにおもふとなけれともたもとかはかぬ秋のゆふくれ  0292:7275:風雅六 何2     悲2        鳥羽田3面2   夕暮4 なにとなくものかなしくそ見えわたるとはたのおもの秋のゆふくれ  0293:7276  野亭秋夜 寢覺2  長2 夜1     野1幾2秋2      經1 ねさめつゝなかきよかなといはれのにいくあきさてもわか身へぬらん  0294:7277:千載四  露を         何2      袂3 〔お〕 涙3 なり1 おほかたの露にはなにのなるならんたもとにをくはなみた成けり  0295:7278  山里4        秋2  やまさとに人々まかりてあきの歌よみけるに  里2 外面3 岡2 高2          秋蝉4 山さとのそとものをかのたかき木にそゝろかましきあきせみのこゑ  0296:7279:新勅撰四  人々秋歌十首よみけるに 玉2 貫1      武藏野4 草2 葉1 たまにぬく露はこほれてむさしののくさのはむすふ秋のはつかせ  0297:7280                野1               〔のに〕 穗1   篠2 小薄4 招2          女郎花5 かな1 ほにいててしののをすゝきまねくのみたはれてたてるをみなへし哉  0298:7281 花2   野邊2      來1 暮2  蟲2 音1 はなをこそのへのものとは見にきつれくるれはむしのねをもきゝけり  0299:7282:新後撰四       【ず】 お〕 葉1吹1過1     おと1 をきのはをふきすきてゆく風の音に心みたるゝ秋のゆふくれ  0300:7283       山2 霧2          鹿2 聲2 はれやらぬみやまのきりのたえ/\にほのかにしかのこゑきこゆなり  0301:7284       【え】      梢3  色2              山邊3 里2 かねてよりこすゑのいろをおもふかなしくれはしむるみやまへのさと  0302:7285:玉葉四                 【つき1】 鹿2 音1垣根3    聞1     澄1  秋2  里2 しかのねをかきねにこめてきくのみか月もすみけりあきの山さと  0303:7286:風雅六 庵2        淋2   山田3 引板2                      〔お〕 いほにもる月の影こそさひしけれやまたはひたのをとはかりして  0304:7287      庭2 小1 白2           夜1 わつかなるにはのこ草のしら露をもとめてやとる秋のよの月  0305:7288 何2   心3                 暮1 秋2 なにとかくこゝろをさへはつくすらんわかなけきにてくるゝあきかは  0306:7289  月   夜1  出1 【な】   影2     夕月夜5 秋のよの空にいつてふ名のみしてかけほのかなるゆふつくよかな  0307:7290 天2 原2月2     雲路3        吹1 あまのはらつきたけのほるくもちをはわきても風のふきはらはなん  0308:7291      待1    思2     端1    夜1 うれしとやまつ人ことにおもふらん山のはいつる秋のよの月  0309:7192                     【ね】           苦2   曇2  入1 なか/\に心つくすもくるしきにくもらはいりぬ秋の夜の月  0310:7293      嬉2       夜1     雲2 いかはかりうれしからまし秋のよの月すむ空にくもなかりせは  0311:7294 播磨潟5 灘2 〔お〕 漕1出1    思2    眺2 はりまかたなたのみをきにこきいてゝあたりおもはぬ月をなかめん  0312:7296      出1    嬉2   入1山2 端1 いさよはていつるは月のうれしくているやまのははつらきなりけり  0313:7297   面2       入1    池2底2  山2 水のおもにやとる月さへいりぬるはいけのそこにもやまやあるらん  0314:7298 慕2   心3     山2 端1    入1   夜1 したはるゝこゝろやゆくとやまのはにしはしないりそ秋のよの月  0315:7299 明1   宵2  空2 雲2           見1 あくるまてよひよりそらにくもなくてまたこそかゝる月みさりつれ  0316:7300 淺茅原5       玉2   光3       夜1 あさちはら葉すゑの露のたまことにひかりつらぬく秋のよの月  0317:7301   夜1  雪2         霰3  心地3 秋のよの月をゆきかとまかふれは露もあられのこゝちこそすれ  0318:7302  閑待月       入1影2      暮1        里2 月ならてさしいるかけのなきまゝにくるゝうれしき秋の山さと  0319:7303  海邊月 清見潟5  澄1    雲2    高嶺3 煙3 なり1 きよみかた月すむ空のうきくもは富士のたかねのけふり成けり  0320:7304  池上月      池2 面3  清2   宿2 みさひゐぬいけのおもてのきよけれはやとれる月もめやすかりけり  0321:7305  同し心を、遍照寺にて人々よみけるに 宿2     光3          言1  廣澤4  池2 やとしもつ月のひかりのをゝしさはいかにいへともひろさはのいけ  0322:7306 池2 澄1      浮雲4  拂2  殘2 水錆3 いけにすむ月にかゝれるうきくもははらひのこせるみさひなりけり  0323:7307  月似池           勝間田4          夜1 水なくてこほりそしたるかつまたの池あらたむる秋のよの月  0324:7308  名所月 清見潟5 沖2 岩2  白2           夜1 きよみかたおきのいはこすしら波にひかりをかはす秋のよの月  0325:7309     【所のな】    〔ほ〕 名1〔を〕   明石3 なへてなを心のなをやおしむらんあかしはわきて月のさやけき  0326:7310  海邊明月 難波潟5   光3    冱1 浪2     氷3   敷1 なにはかた月のひかりにうらさえてなみのおもてにこほりをそしく  0327:7311  月前遠望 隈2     光3       幾2雲居3 くまもなき月のひかりにさそはれていくくもゐまてゆく心そも  0328:7312  終夜見月 誰2     光3        思2  夜半2明1 な1かな1 たれきなん月のひかりにさそはれてとおもふによはのあけぬ成る哉  0329:7313  八月十五夜   端1出1 宵2       今宵3      夜1 山のはをいつるよひよりしるきかなこよひしらする秋のよの月  0330:7314 數2   今宵3 かそへねとこよひの月のけしきにて秋のなかはを空にしるかな  0331:7315 天2 川2名1流2        今宵3   殊2 澄1 あまのかはなになかれたるかひありてこよひの月はことにすみけり  0332:73l6      影2  著2    十夜2    五日3 さやかなるかけにてしるし秋の月とよにあまれるいつかなりけり  0333:7317        來1  今宵3   〔ゑ〕       かな1        〔む〕        〔を〕 うちつけにまたこん秋のこよひまて月ゆへおしくなるいのち哉  0334:7318     今宵3  夜1名1      雲2    澄1 秋はたゝこよひひとよのななりけりおなしくもゐに月はすめとも  0335:7319 を〕      年2      今宵3 おいもせぬ十五のとしもあるものをこよひの月のかゝらましかは  0336:7320  くもれる十五夜を     影2  雲2      今宵3    闇2 月見れはかけなくくもにつゝまれてこよひならすはやみに見えまし  0337:7321  月歌あまたよみけるに 入1        〔を〕   都3 【い】   端1 いりぬとやあつまに人はおしむらんみやこに出つる山のはの月  0338:7322 待1出1 隈2 まちいててくまなきよひの月みれは雲そ心にまつかゝりける  0339:7323    天2         更1 秋風やあまつ雲井をはらふらんふけゆくまゝに月のさやけき  0340:7324:風雅六 何處3  哀3          荒1  宿2 いつくとてあはれならすはなけれともあれたるやとそ月はさひしき  0341:7325 蓬3    荒1        昔3 よもきわけてあれたる庭の月みれはむかしすみけん人そ戀しき  0342:7326      哀3              色2 身にしみてあはれしらする風よりも月にそ秋のいろはありける  0343:7372 蟲2 音1     邊1    哀3  添1 むしのねにかれゆく野への草むらにあはれをそへてすめる月かけ  0344:7328:玉葉五 人2         末2         影2   思2 ひとも見ぬよしなき山のすゑまてにすむらん月のかけをこそおもへ  0345:7329 木1間1           淋2  添1 嶺2 松2    洩1 このまもる有明の月をなかむれはさひしさそふるみねのまつ風  0346:7330      影2  袖2 宿2 いかにせんかけをはそてにやとせとも心のすめは月のくもるを  0347:7331      賤2 伏屋3〔お〕         知1 過1 くやしくもしつのふせやとをとしめて月のもるをもしらてすきける  0348:7332                    眺2 あはれたる草の庵にもる月を袖にうつしてなかめつるかな  0349:7333:新古今十六               秋2  更2 月をみて心うかれしいにしへのあきにもさらにめくりあひぬる  0350:7334:續拾遺八 何2                 影2      かな1 なにこともかはりのみゆく世の中におなしかけにてすめる月哉  0351:7335:新古今十六           宿2         思2 出1 夜もすから月こそ袖にやとりけれむかしの秋をおもひいつれは  0352:7336         影2       變2     秋2 夜1 なかむれはほかのかけこそゆかしけれかはらしものをあきのよの月  0353:7337  〔へ〕          果2 ゆくゑなく月に心のすみ/\てはてはいかにかならんとすらん  0354:7338              〔を〕 月影のかたふく山をなかめつゝおしむしるしや有明の空  0355:7339              地1 なかむるもまことしからぬ心ちしてよにあまりたる月の影かな  0356:7340 行末4          來1 秋2     影2 ゆくすゑの月をはしらすすききつるあきまたかかるかけはなかりき  0357:7141:新後拾遺五      誰2 思2          今宵3 まことともたれかおもはんひとり見てのちにこよひの月をかたらは  0358:7342     晝2 思2          曇2  夜2 月のためひるとおもふかかひなきにしはしくもりてよるをしらせよ  0359:7343 天1 原2朝日山5              晝2 あまのはらあさひやまよりいつれはや月のひかりのひるにまかへる  0360:7344               秋2 夜2 有明の月のころにしなりぬれはあきはよるなき心ちこそすれ  0361:7345      時々4 雲2               なり1 なか/\にとき/\くものかゝるこそ月をもてなすかさり成けれ  0362:7546     嵐3 〔お〕              〔え〕 雲はるゝあらしのをとは松にあれや月もみとりの色にはへつゝ  0363:7347        嗚1  秋2 夜2  光3  思2 さためなく鳥やなくらんあきのよの月のひかりをおもひまかへて  0364:7348      〔わ〕        晝2       夜1 誰もみなことはりとこそさたむらめひるをあらそふ秋のよの月  0365:7349   冱1       明2 夜1 かけさえてまことに月のあかきよは心も空にうかれてそすむ  0366:7350 隈2           かり1  雲2       かな1                影2 くまもなき月のおもてにとふ雁のかけをくもかとまかへつる哉  0367:7351           苦2       澄1   夜1 なかむれはいなや心のくるしきにいたくなすみそ秋のよの月  0368:7352       吹1  荒2            光3 雲も見ゆ風もふくれはあらくなるのとかなりつる月のひかりを  0369:7353 諸共2         人2      洩1  笹2 庵3 もろともにかけをならふるひともあれや月のもりくるさゝのいほりに  0370:7354      雲2     晴1 夜1  光3    心地3 なか/\にくもると見えてはるゝよの月はひかりのそふこゝちする  0371:7355       面3       疾2 過1  嬉2 うき雲の月のおもてにかゝれともはやくすくるはうれしかりけり  0372:7356 過1    近2           見1 侘2 すきやらて月ちかくゆくうき雲のたゝよふみるはわひしかりけり  0373:7357 厭2       雲2   散1       離2 いとへともさすかにくものうちちりて月のあたりをはなれさりけり  0374:7358     嵐3     【ゝ】 光3   澄1秋2 雲はらふあらしに月のみかくれてひかりえてすむあきの空かな  0375:7359        光3         姨捨4  山2 戀2 くまもなき月のひかりをなかむれはまつをはすてのやまそこひしき  0376:7360  冴1 明石3 瀬戸2    氷3  上2    白波4 月さゆるあかしのせとに風ふけはこほりのうへにたゝむしらなみ  0377:7361:續後撰六 天2 原2   岩戸3      光3       夜1 あまのはらおなしいはとをいつれともひかりことなる秋のよの月  0378:7362 限2   名殘3      夜1        〔を〕 かきりなくなこりおしきは秋のよの月にともなふあけほのの空  0379:7363  九月十三夜       得1  澄1         菊2 白露4        顏2 こよひはと心えかほにすむ月のひかりもてなすきくのしらつゆ  0380:7364                 今宵3 名1                      〔お〕 雲きえし秋のなかはの空よりも月はこよひそなにをへりける  0381:7365              いふ1  後九月、月をもてあそふと云亊を     秋2加2   年2 月みれはあきくははれるとしはまたあかぬ心も空にそありける  0382:7366  月照瀧     那智2高嶺3     光3     瀧2   絲1 雲きゆるなちのたかねに月たけてひかりをぬけるたきのしらいと  0383:7367  久待月 出1   雲2 隱2      重2  待1 二村4 いてなからくもにかくるゝ月かけをかさねてまつやふたむらの山  0384:7368  雲間待月   夜1      端1     絶間3 待1 秋のよのいさよふ山のはのみかは雲のたえまもまたれやはせぬ  0385:7369  月前薄 惜1 夜1         入1  招2 花薄5  かな1 をしむよの月にならひて有明のいらぬをまねくはなすゝき哉  0386:7370 花薄5    光3       深2  〔ほ〕色2 染1 はなすすき月のひかりにまかはましふかきますをのいろにそめすは  0387:7371  月前荻    〔を〕〔ゑ〕  宿2   哀3 月すむとおきうへさらんやとならはあはれすくなき秋にやあらまし  0388:7372  月照野花     暮2 宿2  歸2   野邊2    盛3 月なくはくれはやとへやかへらましのへには花のさかりなりとも  0389:7373  月前野花 花2    影2       夜1   守2 鏡3 はなのころをかけにうつせは秋のよの月も野もりのかゝみなりけり  0390:7374  月前草花     花2     女郎花5   裳1   露2 月の色をはなにかさねてをみなへしうはものしたにつゆをかけたる  0391:7375 宵2     〔を〕 よひのまの露にしほれて女郎花ありあけの月のかけにたはるゝ  0392:7375  月前女郎花  冴1       女郎花5 霜2     花2 見1 庭さゆる月なりけりなをみなへししもにあひぬるはなとみたれは  0393:7377  月前蟲     淺茅3           置1 【夜】 月のすむあさちにすたくきり/\す露のおくにや秋をしるらん  0394:7378        〔を〕     小萩3 枝2 松蟲4  聲2 露なからこほさておらん月かけにこはきかえたのまつむしのこゑ  0395:7379  深夜聞蛬 我1   更1行1  思2   聲2 休2 わかよとやふけゆく空をおもふらんこゑもやすまぬきり/\すかな  0396:7380  田家月    玉2  小田2  筵3    穗末3 夕露のたましくをたのいなむしろかふすほすゑに月そすみける  0397:7381  月前鹿              夜1   峯2 小牡鹿4 たくひなき心ちこそすれ秋のよの月すむみねのさをしかの聲  0398:7382  月前紅葉 木1間1  明2           添1 眺2   かな1 このまもる有あけの月のさやけきに紅葉をそへてなかめつる哉  0399:7383  霧隔月 立田3    峯2      麓3  霧2 晴1   【は】 たつた山月すむみねのかひそなきふもとにきりのはれぬかきりそ  0400:7384  月前懷舊 古4   何2     思2 出1    曇2 夜1 いにしへをなににつけてかおもひいてん月さへくもるよならましかは  0401:7385:玉葉十八  寄月述懷         知1     影2     心地3 世の中のうきをもしらてすむ月のかけはわか身のこゝちこそすれ  0402:7386 世1  曇2              見1影2 待1 よの中はくもりはてぬる月なれやさりともとみしかけもまたれす  0403:7387 厭2                   【おもふなるかな】 いとふよも月すむ秋になりぬれはなからへすはとおもなるかな  0404:7388             思2        秋2 夜1 さらぬたにうかれてものをおもふ身の心をさそふあきのよの月  0405:7389:玉葉十八 捨1 往1 憂世3              留2 すてていにしうきよに月のすまてあれなさらは心のとまらさらまし  0406:7390            心3   誰2      〔を〕 あなかちに山にのみすむこゝろかなたれかは月のいるをおしまぬ  0407:7391     〔ゐ〕      常2  春日にまいりたりけるに、つねよりも月あかくてあはれ  なりけれは          知1      三笠3   眺2 ふりさけし人の心そしられぬるこよひみかさの月をなかめて  0408:7392  月明寺邊 晝2 見1   明1 【し】   時2  鐘2〔お〕 ひるとみゆる月にあくるを知らましやときつくかねのをとせさりせは  0409:7393    住吉4  〔ゐ〕  人々すみよしにまいりて、月をもてあそひけるに 片削4       間1 洩1  冱1  袖2  〔お〕 かたそきのゆきあはぬまよりもる月やさえてみそての霜にをくらん  0410:7394 なみ1    汀3  搖1寄1        住吉4  岸2   宿2 浪にやとる月をみきはにゆりよせてかゝみにかくるすみよしのきし  0411:7395  旅2  たひまかりけるとまりにて 飽1   都3     影2 あかすのみみやこにてみしかけよりも旅こそ月はあはれなりけれ  0412:7396        【も】      姿3  影2        都3  形見3 見しまゝにすかたにかけもかはらねは月そみやこのかたみなりける  0413:7397  旅宿思月   〔ほ〕      宿2     結2〔お〕草2 庵3 月はなをよな/\ことにやとるへしわかむすひをくくさのいほりに  0414:7399:玉葉八          安藝2   〔ゐ〕  心さすことありてあきの一宮へまいりけるに、たかと    浦2 まうす1  吹1止1   程2經1   苫2  みのうらと申所に、風にふきとめられてほとへにけり。とま  葺1  庵3     洩1來1 見1  ふきたるいほりより月のもりくるをみて 浪2〔お〕      明2   苫2洩1  影2 友2 なみのをとを心にかけてあかすかなとまもる月のかけをともにて  0415:7400  〔ゐ〕       明2  まいりつきて、月いとあかくてあはれにおほえけれ  は            【も】      旅2  【に】 出1     影2 哀3 もろともにたひなる空の月にいててすめはやかけのあはれなるらん  0416:7401  旅宿月      【見】       見1   思2   旅寢3 床2 あはれしる人みたらはとおもふかなたひねのとこにやとる月影  0417:7402          寢1浪2   袖2〔を〕  ちき1                          あり1 月やとるおなしうきねのなみにしもそてしほるへき契り有ける  0418:7403:新古今十 都3         思2   數2        なり1 みやこにて月をあはれとおもひしはかすよりほかのすさひ成けり  0419:7404  船中初雁         潮路3           聞1        【しほち】    【ほのかにそきく】 沖2   八重2      船2        初雁4 おきかけてやへのしほてをゆくふねはほかにそききしはつかりの聲  0420:7405:新古今五  朝聞雁                山2  越1 初雁4 よこ雲の風にわかるゝしのゝめにやまとひこゆるはつかりのこゑ  0421:7406:新拾遺五  入夜聞雁 烏羽4  書1玉章4             闇2 からすはにかくたまつさの心ちして雁なきわたる夕やみの空  0422:7407:新古今五  雁聲遠近                 【た】     翅3         門2  面2 友2慕2 しら雲をつはさにかけてゆく雁のかと田のおものともしたふなり  0423:7408  霧中雁               聲2  霧2 消1 玉章のつゝきは見えて雁かねのこゑこそきりにけたれさりけれ  0424:7409  霧上雁:                        【け】  色2     裏2   霧2 表3  雁2 空いろのこなたをうらにたつきりのおもてにかりのかゝるたまつさ  0425:7410  霧 鶉3  〔を〕     霧2      淋2  深草4  里2 うつらなくおりにしなれはきりこめてあはれさひしきふかくさのさと  0426:7411  霧隔行客    多2 睦言4    歸2      霧2 たち1                          隔2 なこりおほきむつことつきてかへりゆく人をはきりも立へたてけり  0427:7412  山家霧      霧2 下2  埋2    晴1  深山邊4 里2 たちこむるきりのしたにもうつもれて心はれせぬみやまへのさと  0428:7413      竹2 編戸3   霧2 晴1     明1 よをこめてたけのあみとにたつきりのはれはやかてやあけんとすらん  0429:7414  鹿    咲1萩2 古枝3           牡鹿3 したりさくはきのふるえに風かけてすかひ/\にをしかなくなり  0430:7415 萩2 枝1露2   吹1   牡鹿3    宮城野4 原2 はきかえのつゆためすふく秋風にをしかなくなりみやきののはら  0431:7416      妻2戀2     鹿2 涙3  野邊2  なる1 夜もすからつまこひかねてなくしかのなみたやのへの露と成らん  0432:7417            悲2   涙3  〔ほ〕小牡鹿4 聲2 さらぬたに秋はもののみかなしきをなみたもよをすさをしかのこゑ  0433:7418 山2颪3  鹿2音1        悲2   言1  ある1 やまおろしにしかのねたくふ夕暮にものかなしとはいふにや有らん  0434:7419 鹿2              悲2         かな1 しかもわふ空のけしきもしくるめりかなしかれともなれる秋哉  0435:7420 何2   住1     思2   鹿2        里2 なにとなくすまゝほしくそおもほゆるしかあはれなる秋の山さと  0436:7421  小倉3 麓3  住1はへり1鹿2  をくらのふもとにすみ侍けるにしかのなきけるをき  ゝて 牡鹿3  小倉3     近2        わか1 をしかなくをくらの山のすそちかみたゝひとりすむ我心かな  0437:7422  曉鹿 夜1殘2 寢覺3 きく1    夢野3 鹿2    鳴1            哀3 よをのこすねさめに聞そあはれなるゆめののしかもかくやなくらん  0438:7423  夕聞鹿 篠原4  霧2 しのはらやきりにまかひてなく鹿の聲かすかなる秋の夕くれ  0439:7424  幽居聞鹿 隣3   原2 暇屋3    夜1鹿2     物2  あり1 となりゐぬはらのかりやにあかすよはしかあはれなるものにそ有ける  0440:7425:新古今五  田庵鹿     【庵2】 小山田4 庵2         驚3          かな1 をやまたのいほちかくなく鹿の音におとろかされておとろかす哉  0441:7476:新後撰四    たつね1            鳴1      小野2  人を尋てをのにまかりたりけるに、鹿のなきけれは     聞1     住1       小野2 鹿のねをきくにつけてもすむ人の心しらるゝをのの山さと  0442:7427  獨聞擣衣      夜寒3     重2  誰1   擣1衣3 ひとりねのよさむになるにかさねはやたかためにうつころもなるらん  0443:7428  隔里擣衣        里2      〔ほ〕聞2  槌2〔お〕かな1 さよ衣いつくのさとにうつならんとをくきこゆるつちのをと哉  0444:7429:玉葉四      まうし1    伏見3  としころ申なれたる人の、ふしみにすむとききて、     罷2       庭2  たつねまかりたりけるに、にはのくさ【道も】見え      茂2    蟲2 鳴1  ぬほとにしけりて、 むしのなきけれは    入1袖2 哀3          庭2 虫2 わけているそてにあはれをかけよとて露けきにはにむしさへそなく  0445:7430  蟲2    はへり  むしの歌よみ侍けるに 夕2   玉2       〔お〕  小篠生4            かな1 ゆふされやたまをく露のこさゝふに聲はつならすきり/\す哉  0446:7431:續拾遺五    穗末3    刈萱4  下葉3 蟲2   亂2 秋風にほすゑなみよるかるかやのしたはにむしのこゑみたるなり  0447:7432 蛬5       野邊2     思2  袖2 きり/\すなくなるのへはよそなるをおもはぬそてに露のこほるゝ  0448:7433                      【め】    更1  野邊2蟲2 音1       濡1 袖2かな1 秋風のふけゆくのへのむしのねにはしたなきまてぬるゝそて哉  0449:7434 蟲2 音1   思2       袂3    野邊2 むしのねをよそにおもひてあかさねはたもとも露はのへにかはらし  0450:7435               〔と〕 野邊2     物2 悲2   答2     問1 のへになく蟲もやものはかなしきにこたへましかはとひてきかまし  0451:7437:玉葉四   夜1獨3     明1       虫2 秋のよをひとりやなきてあかさましともなふむしの聲なかりせは  0452:7436   夜1聲2                 明1 かな1 秋のよにこゑもやすますなく蟲を露まとろまてきゝあかす哉  0453:7438    〔を〕    招2              聲2 秋の野のおはなか袖にまねかせていかなる人をまつむしのこゑ  0454:7439      袂3    音1            白露4 よもすからたもとに蟲のねをかけてはらひわつらふ袖のしらつゆ  0455:7441       寒2    告1顏2 枕3     來1 鳴1なり1 きり/\す夜さむになるをつけかほにまくらのもとにきつゝなく也  0456:7442     〔わ〕    聞1       日數3  經1 蟲の音をよはりゆくかときくからに心に秋のひかすをそふる  0457:7443:五葉五     〔わ〕 蟲2 聲2   聞1我2   頼2 秋ふかみよはるはむしのこゑのみかきくわれとてもたのみやはある  0458:7444 蟲2   露2     袂3       心3   思2 むしの音につゆけかるへきたもとかはあやしやこゝろものおもふへし  0459:7446  獨聞蟲    寢1    〔ら〕蛬5   鳴1音1   物2おもひ1 ひとりねのともにはなれてきり/\すなくねをきけはもの思そふ  0460:7447  故郷蟲  深2 分1入1            あと1    聲2                       鈴蟲4 草ふかみわけいりてとふ人もあれやふりゆく跡のすゝむしのこゑ  0461:7448  雨中蟲 壁2〔お〕 小草3    蛬5       庭2 露2 かへにをふるこくさにわふるきり/\すしくるゝにはのつゆいとふへし  0462:7449  田庵聞蟲 小萩3   田1畔2      庵2守1 こはきさく山たのくろのむしのねにいほもる人や袖ぬらすらん  0463:7450  暮路蟲   具1  〔くす〕   過1    路2 夕2   聲2 〔お〕  〔わ〕                           蟲2 うちすくる人なきみちのゆふされはこゑにてをくるくつはむしかな  0464:7451  田家秋夕                外面3 小田2   暮2 なかむれは袖にも露そこほれけるそとものをたの秋の夕くれ  0465:7452                      秋2  暮2 ふきすくる風さへことに身にそしむ山田の庵のあきの夕くれ  0466:7453            まうし1               折2 菊2  京極太政大臣中納言と申けるをり、きくをおひたゝ      仕立2      〔ゐ〕 たまひ1  しき程にしたてて、鳥羽院にまいらせ給たりけり。           坪2          〔ゑ〕  鳥羽の南殿の東面のつほに、ところなきほとにうへ    たまひ1  きみしけ2       菊2  させ給たりけり。公重の少將、人々すゝめてきくも                由2  てなされけるに、くはゝるへきよしありけれは     宿2 坪2  菊2    ひしり1                    宮2 君かすむやとのつほをはきくそかさる仙のみやとやいふへかるらん  0467:7454  菊 幾2秋2 我2     九月4  九日4    八重2白菊4 いくあきにわれあひぬらんなかつきのこゝぬかにつむやへのしらきく  0468:7455  深2    花2          霜2〔お〕   思2 秋ふかみならふはななき菊なれはところをしものをけとこそおもへ  0469:7456  月前菊 籬2   何2               白1 ませなくはなにをしるしに思はまし月にまかよふしら菊の花  0470:7457:新古今四  秋2 物2      道2  あき、ものへまかりけるみちにて 心3      哀3       鴫2  澤2    暮2 こゝろなき身にもあはれはしられけりしきたつさはの秋の夕くれ  0471:7458  嵯峨2住1            まうす1  さかにすみけるころ、となりの坊に、申へきことあ           道2   葎3  りてまかりけるに、みちもなくむくらのしけりけれ  は たち1 隣3     垣2 添1     這1 ハ重葎5 かな1 立よりてとなりとふへきかきにそひてひまなくはへるやへむくら哉  0472:7459  題不知      紅葉3   染1   時雨3    空2 いつよりかもみちの色はそむへきとしくれにくもるそらにとははや  0473:7460  紅葉未遍     時雨3   染1       織1 錦3 いとか山しくれに色をそめさせてかつ/\おれるにしきなりけり  0474:7461  山家紅葉        【に】 染1      色1   〔ゐ〕時雨2     山邊3 里2 そめてけり紅葉のいろのくれなひをしくると見えしみやまへのさと  0475:7462       松蟲4  秋のすゑにまつむしをきゝて      聲2〔わ〕  松蟲4    末2     分1 さらぬたにこゑよはかりしまつむしの秋のすゑにはきゝもわかれす  0476:7463       枯1  野邊2     蟲2 音1    山里4                       殘2 こすゑあれはかれゆくのへはいかゝせんむしのねのこせ秋のやまさと  0477:7464        〔ゐ〕       いふ1  寂然、高野にまいりて、深秋紅葉と云亊をよみける  に      錦3     みやま2花2  嶺2 時雨3 さま/\のにしきありける深山かなはなみしみねをしくれそめつゝ  0478:7465:新勅撰五  紅葉色深 限3               飽1     小倉山5 かきりあれはいかゝは色のまさるへきあかすしくるゝをくらやまかな  0479:7466    葉1散1 時雨3 日數3經1 もみちはのちらてしくれのひかすへはいかはかりなる色にはあらまし  0480:7467  霧中紅葉     【秋】 錦3   秋2 梢3     かな1    闇2 にしきはるあきのこすゑを見せぬ哉へたつる霧のやみをつくりて  0481:7468            蔦2  いやしかりける家に、つたの紅葉のおもしろかりけ    見1  るをみて 思2       賤2 住家3かな1 紅葉3   這1 おもはすによしあるしつのすみか哉つたのもみちを軒にははせて  0482:7470  東3  罷2         奧2 はへり1                       社3  あつまへまかりけるに、しのふのおくに侍けるやし  ろの紅葉を      松2               朱2 玉垣4 ときはなるまつのみとりに神さひてもみちそ秋はあけのたまかき  0483:7471  草花の野路の紅葉 紅葉3  野原3 分1     花2     錦3 もみちちるのはらをわけてゆく人ははなならぬまたにしききるへし  0484:7472  秋のすゑに法輪にこもりてよめる   【何ゐ】      堰2    水2   秋2深2   程2 おほゐ河井せきによとむみつの色にあきふかくなるほとそしらるゝ  0485:7473               梢3  錦3 小倉山ふもとに秋の色はあれやこすゑのにしきかせにたゝれて  0486:7474      秋2 梢3  思2   小倉3 里2 〔へ〕                           居1 わかものとあきのこすゑをおもふかなをくらのさとにいゑゐせしより  0487:7475:新勅撰五       末2  思2          木枯3  風2 山さとは秋のすゑにそおもひしるかなしかりけりこからしのかせ  0488:7476  暮秋                   【ち】 暮1果1   形見3    見1紅葉3    木枯3  風2 くれはつる秋のかたみにしはしみんもみちこらすなこからしのかせ  0489:7477           山賤4          夕暮4 秋くるゝ月なみわくるやまかつの心うらやむけふのゆふくれ  0490:7478  夜すから秋ををしむ お〕   鐘2〔お〕     かな1  露2 結2 〔ふ〕                 霜2 をしめともかねのをとさへかはる哉しもにやつゆをむすひかぬらん  Subtitle  冬  0491:7479        夜2紅葉3    いふ1  長樂寺にて、よるもみちを思ふと云亊を人々よみけ  るに      惜1   吹1嵐3 かな1 時雨3 染1 梢3 夜もすからをしけなくふくあらし哉わさとしくれのそむるこすゑを  0492:7481  題不知 寢覺3    心3  侘1   時雨2〔お〕 悲2 ねさめする人のこゝろをわひしめてしくるゝをとはかなしかりけり  0493:7482           山里4          蛬5  十月はしめつかた、やまさとにまかりたりけるにき       聲2  り/\すのこゑのわつかにしけれはよめる 霜2   葎3     蛬5          聲2 しもうつむむくらかしたのきり/\すあるかなきかのこゑきこゆなり  0494:7483  山家落葉      宿2 木葉3 埋2          冬籠5  かな1 みちもなしやとはこのはにうつもれてまたきせさするふゆこもり哉  0495:7484  曉落葉 木葉3             山隱5   住1  思2 このはちれは月に心そあらはるゝみやまかくれにすまんとおもふに  0496:7485:續後撰八            聞1     〔へ〕木葉3 時雨かとねさめのとこにきこゆるは嵐にたえぬこのはなりけり  0497:7486  水上落葉        【木】 立田姫5 染1 木末3  〔を〕        山川4 たつたひめそめしこすゑのちるおりはくれなゐあらふやまかはの水  0498:7487  落葉 嵐3 掃1庭2 木葉3〔を〕       塵2 なり1思2 あらしはくにはのこのはのおしきかなまことのちりに成ぬとおもへは  0499:7488  月前落葉        木葉3 吹1   光3     影2   かな1 山おろしの月にこのはをふきかけてひかりにまかふかけを見る哉  0500:7489  瀧上落葉 凩4        葉1     村濃3      白絲4 こからしにみねの木のはやたくふらんむらこに見ゆる瀧のしらいと  0501:7490  山家時雨 宿2   柞3  柴2     慕2  染1 初2 やとかこふはゝそのしはの時雨さへしたひてそむるはつしくれかな  0502:7491:玉葉六  閑中時雨 お〕  〔お〕         山廻5 をのつからをとする人そなかりけるやまめくりする時雨ならては  0503:7492:續後撰八  時雨歌よみけるに      餘2   降1    誰2  知1 神無月5 あつまやのあまりにもふる時雨かなたれかはしらぬかみなつきとは  0504:7493  落葉留網代                        〔ゆる〕 紅葉3  網代3 布2  染1 もみちよるあしろのぬのの色そめてひをくゝりとは見えぬなりけり  0505:7494       いふ1  山家枯草と云亊を、覺範僧都房にて人々よみけるに       裾野3薄3 霜枯3  淋2     柴2   かな1 かきこめしすそのゝすゝきしもかれてさひしさまさるしはのいほ哉  0506:7495       いふ1  野邊寒草と云亊を雙林寺にてよみけるに 樣々4          野邊2   色2  霜枯3  【る】 さま/\に花さきけりと見しのへのおなしいろにもしもかれにけり  0507:7496  枯野草 分1   袖2    留2 置1 霜2     眞野2萩原4              〔お〕 わけかねしそてに露をはとゝめをきてしもにくちぬるまののはきはら  0508:7497     枯野3   淋2         心3 霜かつくかれのの草のさひしきにいつくは人のこゝろとむらん  0509:7497 霜枯3  脆2 碎2  荻2 葉1       風2〔お〕かな1 しもかれてもろくくたくるおきのはをあらくわくなるかせのをと哉  0510:7499:新拾遺六  冬歌よみけるに 難波江4 汀3  葦2 霜2冱1 浦2かせ1 朝2   かな1 なにはえのみきはのあしにしもさえてうら風さむきあさほらけ哉  0511:7500 玉2   花2 姿3       霜2 載3  女郎花5 たまかけしはなのすかたもおとろへてしもをいたゝくをみなへしかな  0512:7501     初雪4    咲1   吉野3 里2 冬籠4 山さくらはつゆきふれはさきにけりよしのはさとにふゆこもれとも  0513:7502:新古今六      〔へ〕         庵3        里2 さひしさにたえたる人のまたもあれないほりならへん冬の山さと  0514:7503  水邊寒草 霜2    色2     葦2 穗1淋2     難波江4 浦2 しもにあひていろあらたむるあしのほのさひしく見ゆるなにはえのうら  0515:7504  山家冬 玉2卷1 垣根3        淋2       やま1 たままきしかきねのまくす霜かれてさひしく見ゆる冬の山さと  0516:7505  寒夜旅宿  寢1 草2 枕3  霜2   有2あけ1 影2 旅ねするくさのまくらにしもさえてあり明の月のかけそまたるゝ  0517:7506:玉葉六  山家冬月 冬枯4         山里4    澄1     なり1 ふゆかれのすさましけなるやまさとに月のすむこそあはれ成けれ  0518:7507     峯2 木葉3 散1   麓3  里1 月いつるみねのこのはもちりはててふもとのさとはうれしかるらん  0519:7508:玉葉六  月照寒草 花2〔お〕露2 宿2       枯野3      なり1 はなにをくつゆにやとりしかけよりもかれのの月はあはれ成けり  0520:7509 氷3   沼2           光3 こほりしくぬまのあしはら風さえて月もひかりそさひしかりける  0521:7510:千載十六  閑夜冬月         葉1踏1分1 霜さゆる庭の木のはをふみわけて月は見るやととふ人もかな  0522:7511  庭上冬月 冱1     深2      水2    氷3 さゆと見えて冬ふかくなる月影はみつなき庭にこほりをそしく  0523:7512  鷹狩      木居2  鷹2 〔え〕  犬飼4  聲2 あはせつるこゐのはしたかそはへかしいぬかひ人のこゑしきりなり  0524:7513  雪中鷹狩        雉子3      羽1  鈴2 〔は〕                 〔お〕 かきくらす雪にきゝすは見えねともはをとにすゝをくわへてそやる  0525:7514     鳥立3    埋2           狩野3 ふる雪にとたちも見えすうつもれてとりところなきみかりのの原  0526:7516  庭雪似月 木1間1   影2           降1   白雪4    洩1 このまもる月のかけとも見ゆるかなはたらにふれる庭のしらゆき  0527:7517       りやうせん2          まうす1  雪のあした靈山と申所にて眺望を人々よみけるに                    消1 消1 たちのほる朝日の影のさすまゝに都の雪はきえみきえすみ  0528:7518  枯野3   降1  かれのに雪のふりたりけるを 枯1   茅2 上葉3       〔を〕  心地3 かれはつるかやかうはゝにふる雪はさらにおはなのこゝちこそすれ  0529:7520  雪の歌よみけるに      橇2 早緒3 著1   積2     越2 白雪4 たゆみつゝそりのはやをもつけなくにつもりにけりなこしのしらゆき  0530:7521  雪埋路     〔を〕 柴2 埋3   思2  山2 ふる雪にしほりししはもうつもれておもはぬやまに冬こもりぬる  0531:7522  秋2     〔ゐ〕  由2    〔ゐ〕  あきころ高野へまいるへきよしたのめてまいらさりける人の      雪2降1   まうし1  もとへ、ゆきふりてのち申つかはしける  深2        君2來1 紅葉3 錦3     路1 雪ふかくうつみてけりなきみくやともみちのにしきしきし山ちを  0532:7523  雪朝待人   宿2       道2         跡2   見1 わかやとに庭よりほかのみちもかなとひこん人のあとつけてみん  0533:7524    庵3            面白4  雪にいほりうつみて、せんかたなくおもしろかりけ       來1   詠1    思2 出1  り。いまもきたらはとよみけんことおもひいてて見    程2  鹿2 分1 通2  けるほとに、しかのわけてとほりけるを見て  來1 思2        鹿2  著1 人こはとおもひて雪をみる程にしかあとつくることもありけり  0534:7525  雪朝會友 跡2   駒2 行2         嬉2          〔へ〕 あととむるこまのゆくゑはさもあらはあれうれしく君にゆきにあひぬる  0535:7526:玉葉六      いふ1  雪埋竹と云亊を     園2 呉2たけ1伏1 塒3       雀3 かな2          〔を〕 雪うつむそののくれ竹おれふしてねくらもとむるむらすゝめ哉  0536:7527       かへりたち2        はへり1  賀茂臨時祭返立の御神樂、〔土御門〕内裏にて侍け  るに、竹のつほに雪のふりたりけるを見て                 【たけ1】      小忌2衣3         末葉3    白雪4 うらかへすをみのころもと見ゆるかな竹のうれはにふれるしらゆき  0537:7528  社頭雪 玉垣4  朱2 緑3  埋2   雪2       〔を〕 たまかきはあけもみとりもうつもれてゆきおもしろきまつのおの山  0538:7529  雪歌よみけるに 何2   暮1    〔お〕         深草4  里2 なにとなくくるゝしつりのをとまても雪あはれなるふかくさのさと  0539:7530     野路2やま1埋2   遠近4    旅2 空2         路1 雪ふれはのちも山ちもうつもれてをちこちしらぬたひのそらかな  0540:7531    山2苔2 =3    敷1       心地3 あをねやまこけのむしろの上にしく雪はしらねのこゝちこそすれ  0541:7532     心地3     里2     柴2    白雪4 うの花のこゝちこそすれ山さとのかきねのしはをうつむしらゆき  0542:7533 お〕   廻3  垣2 卯1        咲1 をりならぬめくりのかきのうの花をうれしく雪のさかせつるかな  0543:7534    君2夕2     庭2   跡2     哀3 とへなきみゆふくれになるにはの雪をあとなきよりはあはれならまし  0544:7535  舟中霰 瀬戸2  棚2  小舟3     霰3 亂2  風卷3 せとわたるたななしをふねこゝろせよあられみたるゝしまきよこきる  0545:7536  深山霰 そまひと2 假屋3     〔お〕     霰3 杣人のまきのかりやのあたふしにをとするものはあられなりけり  0546:7537        霰3  さくらの木にあられのたはしりけるを見て   〔おち〕       枝2     霰3 かな1    散1心地3 たゝはをかてえたをつたへるあられ哉つほめる花のちるこゝちして  0547:7538  月前炭竈       雲2     炭竈4  煙3         かな1 かきりあらんくもこそあらめすみかまのけふりに月のすゝけぬる哉  0548:7539  千鳥 淡路3 磯囘3     繁2 瀬戸2潮風4      夜1 あはち島いそわの千鳥こゑしけみせとのしほかせさえわたるよは  0549:7540        潮干3 夕暮4  須磨2 通2 千鳥 あはち島せとのしほひのゆふくれにすまよりかよふちとりなくなり  0550:7542      みきは1     〔汀〕 霜2        浦風4  思2 知1  鳴1千鳥3 しもさえて河ふけゆくうらかせをおもひしりけになくちとりかな  0551:7541      心3          河瀬3   友2具1 さゆれともこゝろやすくそきゝあかすかはせの千鳥ともくしてけり  0552:7543 や〕       風2     潮干3 □せわたるみなとのかせに月ふけてしほひるかたに千鳥なくなり  0553:7544  題不知     繪島3 浦2 澄1  浪2       今宵3 千鳥なくゑしまのうらにすむ月をなみにうつして見るこよひかな  0554:7545  氷留山水 岩間3  木1葉1        洩1   氷3 なり1 〔は〕 いわまゆくこのはわけこし山水をつゆもらさぬはこほり成けり  0555:7546  瀧上氷          結2   操1       白絲4 みなかみに水や氷をむすふらんくるとも見えぬ瀧のしらいと  0556:7547          いふ1  氷いかたをとつと云亊を 氷3   筏3  〔を〕     持1     保津2 越2 こほりわるいかたのさほのたゆけれはもちやこさましほつの山こえ  0557:7548  冬歌十首 花2 枯1紅葉3 散1  里2 淋2     訪1 はなもかれもみちもちらぬ山さとはさひしさをまたとふ人もかな  0558:7549    住1片2    友2   嵐3  晴1   山里4 ひとりすむかた山かけのともなれやあらしにはるゝ冬のやまさと  0559:7550 津1國2 葦2 丸屋3 淋2         訪1 つのくにのあしのまろやのさひしさは冬こそわけてとふへかりけれ  0560:7551 冱1      空2  鴛鴦2鳴1氷3     昆陽2 水2 さゆる夜はよそのそらにそをしもなくこほりにけりなこやの池みつ  0561:7552      嵐3        大2  淀2 氷3 よもすからあらしの山に風さえておほ井のよとにこほりをそしく  0562:7553 冱1   浦風4         千鳥3群1 さえわたるうらかせいかにさむからんちとりむれゐるゆふさきの浦  0563:7554  里2        淋2   嵐3 〔お〕 山さとはしくれしころのさひしさにあらしのをとはやゝまさりけり  0564:7555:新勅撰六 かせ】         【り衍】  冱1 寄1     氷3      浪2     唐崎4 風さえてよすれはやかてこほりつゝかへるなみなきしかのからさき  0565:7556 吉野3            花2  見1 訪2 入1 よしの山ふもとにふらぬ雪ならははなかとみてやたつねいらまし  0566:7557      淋2          煙3    〔を〕 山里4 やまことにさひしからしとはけむへしけふりこめたりおののやまさと  0567:7558  題不知  櫻3                 花2 山さくらおもひよそへてなかむれは木ことのはなはゆきまさりけり  0568:7559                  いふ1   たまひ1  仁和寺の御室にて、山家閑居見雪と云亊をよませ給  けるに   埋2   友2       〔お〕   深1邊1 ふりうつむ雪をともにて春きては日ををくるへきみ山への里  0569:7560  山家冬深 訪1          來1 路2     深山邊4 里2 とふ人ははつ雪をこそわけこしかみちとちてけりみやまへのさと  0570:7561  山居雪 年2    訪1            路1深2 住處3 としのうちはとふ人さらにあらしかし雪も山ちもふかきすみかを  0571:7562  世1    鞍馬3    はへり1    氷2  よをのかれてくらまのおくに侍けるに、かけひこほ              春2       はへる1  りて水まうてこさりけり、はるになるまてかく侍な    まうし1  りと申けるをきゝてよめる       〔る〕      氷2 筧3   〔ゑ〕思2     春2 待1 わりなしやこほりかけひの水ゆへにおもひすててしはるのまたるゝ  0572:7563         年2 暮2  みちのくににてとしのくれによめる           思2   旅2 空2  年2 暮1 つねよりも心ほそくそおもほゆるたひのそらにてとしのくれぬる  0573:7564  山家歳暮      柴2 編戸3      年2     待1渡2 かな1 あたらしきしはのあみとをたてかへてとしのあくるをまちわたる哉  0574:7565:玉葉十四  東山にて歳暮述懷 年2     營3   忘2 としくれてそのいとなみはわすられてあらぬさまなるいそきをそする  0575:7566  としのくれに、高野よりみやこなる人のもとにつか  はしける を〕         過1   都3     年2 暮1 おしなへておなし月日のすきゆけはみやこもかくやとしはくれぬる  0576:7568:新古今六  年2 暮2  としのくれに人のもとへつかはしける を〕   言1  慕2             年2 暮1 おのつからいはぬをしたふ人やあるとやすらふほとにとしのくれぬる  0577:7569  つねなきことによせて      昔3    言1   重3  年2〔お〕 迎2 いつかわれむかしの人といはるへきかさなるとしををくりむかへて  Section  山家集中  Subtitle  戀  0578:7570  聞名尋戀 會1       知1 帚木4  伏屋3    たつね1 あはさらんことをはしらてはゝききのふせやときゝて尋きにけり  0579:7571  自門歸戀 立1初1      錦木4  千束3     地1 たてそめてかへる心はにしききのちつかまつへき心ちこそせね  0580:7572  涙顯戀 覺束4                    濡1  かな1 おほつかないかにと人のくれはとりあやむるまてにぬるゝ袖哉  0581:7573  夢會戀            會1   現3    思2 なか/\に夢にうれしきあふことはうつゝに物をおもふなりけり  0582:7575 會1   亊2 限2   路1 覺1 わかれ1 あふとみることをかきれる夢ちにてさむる別のなからましかは  0583:7576     思2     現3     見1亊2      【れ】 夢とのみおもひなさるゝうつゝこそあひみしことのかひなかりけり  0584:7577  後朝          辛2   明1   ゆく1恨2 けさよりそ人の心はつらからてあけはなれ行空をうらむる  0585:7578 逢1   忍2     道芝4     先2 あふことをしのはさりせはみちしはの露よりさきにおきてこましや  0586:7579  後朝郭公      歸2     東雲4  添1     ほとときす2                           かな1 さらぬたにかへりやられぬしのゝめにそへてかたらふ郭公哉  0587:7580  後朝花橘      乞1     移香4  花橘6    今朝2 かさねてはこひえまほしきうつりかをはなたちはなにけさたくへつゝ  0588:7581  後朝霧      大方4  夜1     闇2       籠2 やすらはんおほかたのよはあけぬともやみとかいへる霧にこもりて  0589:7582  かへるあしたの時雨 託3   今朝2       時雨3 ことつけてけさの別をやすらはんしくれをさへや袖にかくへき  0590:7583  逢不遭戀      逢1     習3           恨2 つらくともあはすはなにのならひにか身の程しらす人をうらみん  0591:7584    唯2             後2 さらはたゝさらてそ人のやみなましさてのちもさはさもあらしとや  0592:7585  恨 漏1   袖2     包2   情3    涙3 もらさしとそてにあまるをつゝまましなさけを忍ふなみたなりせは  0593:7586:續後撰十三  再絶戀 唐2   離2        重2  物2 思2 から衣たちはなれにしまゝならはかさねてものはおもはさらまし  0594:7587  寄絲戀 賤2 女1裾2  絲2 露2   思3         かな1 しつのめかすそとるいとにつゆそひておもひにたかふ戀もする哉  0595:7588  寄梅戀 を〕   何2       花2       匂2 おらはやとなにおもはまし梅のはななつかしからぬにほひなりせは  0596:7589      一2 〔を〕 梅2 香1      染1   かな1 ゆきすりにひとえたおりしむめかかのふかくも袖にしみにける哉  0597:7590  寄花戀        見1  櫻3   風2      〔わ〕 つれもなき人にみせはやさくらはなかせにしたかふ心よはさを  0598:7591 花2 見1     隔3 はなをみる心はよそにへたゝりて身につきたるは君かおもかけ  0599:7592  寄殘花戀 葉1   散1          忍2       地1 はかくれにちりとゝまれるはなのみそしのひし人にあふ心ちする  0600:7593  寄歸雁戀      絶1         歸2   思2 つれもなくたえにし人をかりかねのかへる心とおもはましかは  0601:7594  寄草花戀 朽1   〔を〕       萩2 下枝3 くちてたゝしほれはよしや我袖もはきのしたえの露によそへて  0602:7595  寄鹿戀   戀2  目1   鹿2 音1羨3     〔を〕 つまこひて人めつゝまぬしかのねもうらやむ袖のみさほなるかは  0603:7596  寄苅萱戀 一方4  亂2              野邊2 ひとかたにみたるともなき我戀や風さたまらぬのへのかるかや  0604:7597  寄霧戀  霧2        思2   隱2    會1 夕きりのへたてなくこそおもほゆれかくれて君かあはぬなりけり  0605:7598  寄紅葉戀   涙3            紅葉3 わかなみたしくれの雨にたくへはやもみちの色の袖にまかへる  0606:7599  寄落葉戀 朝2   聲2         夜1  〔るゝ〕 あさことにこゑをとゝむる風の音はよをへてかゝる人のこゝろか  0607:7600  寄氷戀     諏訪2渡3          限3 春をまつすはのわたりもあるものをいつをかきりにすへきつらゝそ  0608:7601  寄水鳥戀   袖2        濡1    羨3       鴛鴦鳥4 わかそてのなみたかゝるとぬれてあれなうらやましきは池のをしとり  0609:7602     方2     まうす1     はへり1             里2  賀茂のかたにさゝきと申さとに、冬ふかく侍けるに、      詣1       いふ1詠1  隆信なとまてきて、山家戀と云亊をよみけるに 筧3         結2    細2  絶1 かけひにも君かつらゝやむすふらん心ほそくもたえぬなるかな  0610:7603         いふ1  賣人に付文戀と云亊を 思2   市2 中2   多2        付1 おもひかねいちのなかには人おほみゆかりたつねてつくるたまつさ  0611:7604  海路戀 波2凌2     何2        會1  路2 思2 なみしのくことをもなにかわつらはん君にあふへきみちとおもはは  0612:XXXX  松風増戀 磐代4   風2聞1      【こころ1】 いはしろの松かせきけは物おもふ人も心そむすほゝれける  0613:7605           年2〔閏〕 忌1  いふ1  九月ふたつありけるとし、潤月をいむ戀と云亊を人   詠1  々よみけるに 九月4      辛2    忌1    言1 なかつきのあまりにつらき心にていむとは人のいふにやあるらん  0614:7606  御生3 頃2 賀茂2〔ゐ〕  みあれのころ、かもにまいりたりけるに、精進憚戀     詠1  を人々よみけるに      御生3 程2 過2   〔ほ〕 ことつくるみあれのほとをすくしてもなをやうつきの心なるへき  0615:7607          いふ1     詠1  同社にて祈神戀と云亊を、神主ともよみけるに 天降4  神2     有1無1       ゆく1 見1                        〔へ〕 あまくたるかみのしるしのありなしをつれなき人の行ゑにてみん  0616:7608  月  待1        宵2 間1  色2 袖2 見1 月まつといひなされつるよひのまの心のいろをそてにみえぬる  0617:7609:千載十四 知1      餘所2       袂3  宿2 しらさりき雲ゐのよそにみし月のかけをたもとにやとすへしとは  0618:7610:玉葉十            思2     面3 あはれともみる人あらはおもひなん月のおもてにやとる心は  0619:7611  見1     世1 思2   持1 月みれはいてやとよのみおもほえてもたりにくゝもなる心かな  0620:7612 弓張4    外2    影2 優2        わすれ1 ゆみはりの月にはつれて見しかけのやさしかりしはいつか忘ん  0621:7613:新古今十三      忘2        なこり2   留2 おもかけのわすらるましき別かな名殘を人の月にとゝめて  0622:7614   夜1  涙3  喞2           窶2 秋のよの月やなみたをかこつらん雲なきかけをもてやつすとて  0623:7615 天2 原2冱1  空2 晴2   涙3 あまのはらさゆるみそらははれなからなみたそ月の雲になりける  0624:7616   思2      知1   夜1 ものおもふ心のたけそしられぬるよな/\月をなかめあかして  0625:7617       節2 咎2      得1      かな1 月をみる心のふしをとかにしてたよりえかほにぬるゝ袖哉  0626:7618 思2 出2 亊2 何時2 言1      堪1                      〔へ〕 おもひいつることはいつともいひなから月にはたえぬ心なりけり  0627:7619               〔は〕      山2         入1   〔を〕 あしひきのやまのあなたに君すまゝいるとも月をおしまさらまし  0628:7620:千載十五           思2      顏2    涙3 なけゝとて月やは物をおもはするかこちかほなるわかなみたかな  0629:7621 君2              巡2 逢1  影2 並2 きみにいかて月にあらそふ程はかりめくりあひつゝかけをならへん  0630:7622 白妙4  衣3            眞袖3 しろたへのころもかさぬる月かけのさゆるまそてにかゝる白露  0631:7623 忍】       〔よふ:ミセケチ〕 忍2   涙3                   夜1 しのひねのなみたたゝふる袖のうらになつますやとる秋のよの月  0632:7624 物2   袖2    宿2   濁2     水2 ものおもふそてにも月はやとりけりにこらてすめるみつならねとも  0633:7625 戀2    〔ほ〕  影2             涙3 こひしさをもよをす月のかけなれはこほれかゝりてかこつなみたか  0634:7626      涙3  池2 袖2 よしさらはなみたのいけにそてなれて心のまゝに月をやとさん  0635:7627         涙3  わか1く1 うちたえてなけくなみたに我袖の朽ちなはなにに月をやとさん  0636:7629                             【か】 世々經3 忘2     思2   袂3 よゝふともわすれかたみのおもひ出はたもとに月のやとるはかりそ  0637:7629             【り:衍】 涙3 〔ゑ〕 なみたゆへくまなき月そくもりぬるあまのはら/\とのみなかれて  0638:7630                 夜1     思2 袂3 あやにくにしるくも月のやとるかなよにまきれてとおもふたもとに  0639:7631        姿3  見1         曇2 おもかけに君かすかたをみつるよりにはかに月のくもりぬるかな  0640:7632        見顏3        闇2    ころ1 よもすから月をみかほにもてなして心のやみにまよふ比かな  0641:7633 秋2    思2        憂1面影4     出1 あきの月ものおもふ人のためとてやうきおもかけにそへていつらん  0642:7635          隈2         見1 悲2〔き:ミセケチ〕 へたてたる人の心のくまにより月をさやかにみぬかかなしさ  0643:7635 涙3 〔ゑ〕         流2  折2 晴1間1 なみたゆへ月はくもれる月なれはなかれぬをりそはれまなりける  0644:7636:新古今十四     〔を〕    思2 出1     窶2 くまもなきおりしも人をおもひいてて心と月をやつしつるかな  0645:7637  思2   隈2 拭2          見1   哉2 物おもふ心のくまをのこひうててくもらぬ月をみるよしもかな  0646:7638 戀2   思2 〔わ〕 眺2 こひしさやおもひよはるとなかむれはいとゝ心をくたく月影  0647:7639                     知1 ともすれは月すむ空にあくかるゝ心のはてをしるよしもかな  0648:7640:新後撰五      慰3            友2     ころ1 なかむるになくさむことはなけれとも月をともにてあかす比哉  0649:7641:新古今十四   思2                    哀3 ものおもひてなかむるころの月の色にいかはかりなるあはれそむらん  0650:7642:玉葉九 雨2      隙2 洩1           見1 哉2 あま雲のわりなきひまをもる月のかけはかりたにあひみてしかな  0651:7643            ち1     信田3 杜2  枝1  繁2 あきの月しのたのもりの千えよりもしけきなけきやくまなかるらん  0652:7644:新古今十二 思2      明2 夜1   盡1     怨2 おもひしる人ありあけのよなりせはつきせす身をはうらみさらまし  0653:7645:新古今十二  戀 數2     咎2   果1 知1 かすならぬ心のとかになしはてししらせてこそは身をもうらみめ  0654:7646             面影4  眞3     見1   哉2 うちむかふそのあらましのおもかけをまことになしてみるよしもかな  0655:7647  〔か〕              〔た〕      荒野3    住1   片2 やまゝつのあらのをしめてすみそむるかたゝよりなる戀もする哉  0656:7648 常盤3 〔ひ〕下柴4 刈1 ときは山しゐのしたしはかりすてんかくれておもふかひのなきかと  0657:7649      知1  人2      哀3  思2 なけくともしらはやひとのおのつからあはれとおもふこともあるへき  0658:7650:新古今十二 何2      〔を〕 なにとなくさすかにおしき命かなありへは人やおもひしるとて  0659:7651:續古今十二   〔ゑ〕今日2 物2 思2        逢1世1 なにゆへかけふまてものをおもはまし命にかへてあふよなりせは  0660:7652 怪2    知1        忍2     袂3 あやめつゝ人しるとてもいかゝせんしのひはつへきたもとならねは  0661:7653 涙川5         水脈2 なみたかはふかくなかるゝみをならはあさき人めにつゝまさらまし  0662:7654       目1   堰1          鳴瀧4 しはしこそ人めつゝみにせかれけれはてはなみたやなるたきの川  0663:7655:新千載十二       袖2 流2  涙川5      水脈2逢1瀬1 ものおもへはそてになかるゝなみたかはいかなるみをにあふせなりなん  0664:7656 憂2              叶2  年2 うきにたになとなと人をおもへともかなはてとしのつもりぬる哉  0665:7657      馴1 思2       怨2       積2 なか/\になれぬおもひのまゝならはうらみはかりや身につもらまし  0666:7658 何2          うらみ1      思2                逢1 なにせんにつれなかりしを恨けんあはすはかゝるおもひせましや  0667:7659      我2      〔い〕  〔ゑ〕   思2 むかはらはわれかなけきのむくひにて誰ゆへ君か物をおもはん  0668:7660:玉葉十一   憂1 思2 知1   〔わ〕〔お〕     涙3 身のうさのおもひしらるゝことはりにをさへられぬはなみたなりけり  0669:7661   經1     雨2 脚2   晴1     わか1 日をふれはたもとのあめのあしそひてはるへくもなき我心哉  0670:7662          雨2 脚2       物2 歎3 かきくらすなみたのあめのあししけみさかりにもののなけかしきかな  0671:7663 ものおもへともかからぬ人もあるものをあはれなりける身のちきりかな  0672:7665 〔ほ〕  情3         絶1     習3  〔とも1〕 なをさりのなさけは人のあるものをたゆるはつねのならひなれ共  0673:7666 何2   數2           怨2 なにとこはかすまへられぬ身の程に人をうらむるこゝろなりけん  0674:7667 憂1節2      知1涙3          慰3 うきふしをまつおもひしるなみたかなさのみこそはとなくさむれとも  0675:7668         亂2           束2 さま/\におもひみたるゝ心をは君かもとにそつかねあつむる  0676:7669            摧2   信田3 杜2  枝1 ものおもへはちゝに心そくたけぬるしのたのもりの千えならねとも  0677:7670      生2          親2  辛2 かゝる身におほしたてけんたらちねのおやさへつらき戀もするかな  0678:7671 覺束4  何2  〔い〕      責2 おほつかななにのむくひのかへりきて心せたむるあたとなるらん  0679:7672   亂2    〔の〕           言種4 かきみたる心やすめぬことくさはあはれ/\となけくはかりか  0680:7673:新古今十三   知1   咎2       怨2 顏2 身をしれは人のとかにはおもはぬにうらみかほにもぬるゝ袖哉  0681:7674      馴1     比2   疎2 怨2   〔を〕 なか/\になるゝつらさにくらふれはうときうらみはみさほなりけり  0682:7675     歎2     慰3       如何2 人はうしなけきはつゆもなくさますさはこはいかにすへき心そ  0683:7676 日1   恨2     大海4         我1 ひにそへてうらみはいとゝおほうみのゆたかなりけるわかおもひ哉  0684:7677             思2 いて1 さることのあるなりけりとおもひ出て忍ふ心をしのへとそ思ふ  0685:7678:新古今十四 今日2知1   出1  契2   忘2     情3 けふそしるおもひいてよとちきりしはわすれんとてのなさけなりけり  0686:7679                      【ま】 難波潟5 波2     數2       〔ま〕  乾2 なにはかたなみのみいとゝかすそひてうらみのひはや袖のかわかん  0687:7680    有1       訪1       思2 心さしありてのみやは人をとふなさけはなととおもふはかりそ  0688:7681      思2     言2 葉1問1 なか/\におもひしるてふことのははとはぬにすきてうらめしき哉  0689:7682    我2   外2  難2    〔を〕   生2 なとかわれことのほかなるなけきせてみさほなる身にむまれさりけん  0690:7683 汲1        〔お〕          底2 くみてしる人もあらなんをのつからほりかねの井のそこの心を  0691:7684      【に】    立1富士2    爭3       戀2    邊1ゆく1 けふりたつふしにおもひのあらそひてよたけきこひをするかへそ行  0692:7685 涙川5      水脈2底2       敢1 なみたかはさかまくみをのそこふかみみなきりあへぬわか心かな  0693:7687      波2    〔を〕   浦囘3 いそのまになみあらけなるおり/\はうらみをかつく里のあま人  0694:7686                     【し】 瀬戸口4    潮3  大淀4     〔し〕 せとくちにたけるうしほのおほよとみよとむとゝひのなき涙哉  0695:7688        【中2】    路1   中2        奧2 見1 あつまちやあひのなか山ほとせはみ心のおくのみえはこそあらめ  0696:7689             わかみ2淺間3       世1 いつとなくおもひにもゆる我身かなあさまのけふりしめるよもなく  0697:7690 播磨路4        關2据1    わかみ2               〔ゑ〕 はりまちやこゝろのすまにせきすへていかて我身の戀をとゝめん  0698:7691            慰3   問1言2 葉1 あはれてふなさけに戀のなくさまはとふことのはやうれしからまし  0699:7692   思2    夕暮4       明1  告1   鳥  聲2 ものおもへはまたゆふくれのまゝなるにあけぬとつくるしはとりのこゑ  0700:7693     夜頃3頼2  過1   然1 逢1 夢をなとよころたのまてすききけんさらてあふへき君ならなくに  0701:7694    言1  返2  打臥3  目1合1   夢2 見1 さはといひて衣かへしてうちふせとめのあははやはゆめもみるへき  0702:7695                        〔涙3:ミセケチ〕                         袂3 戀1         立1   忍2     わか1 こひらるゝうき名を人にたてしとてしのふわりなき我たもと哉  0703:7696 夏草4  茂2          待1       知1 なつくさのしけりのみゆくおもひかなまたるゝ秋のあはれしられて  0704:7697            時雨2   袖2  秋2   地1 くれなゐの色にたもとのしくれれつゝそてににあきある心ちこそすれ  0705:7698:新古今十四 哀3    訪1             宿2     風2 あはれとてとふ人のなとなかるらんものおもふやとの荻のうはかせ  0706:7699           思2     秋2 逢1 〔お〕 わりなしやさこそものおもふ袖ならめあきにあひてもをける露哉  0707:7701      邊1 葉1          頃2 秋ふかき野への草はにくらへはやものおもふころの袖の白露  0708:7700      來1世1蜑2   程2    難2  過1 いかにせんこむよのあまとなるほとも見るめかたくてすくるうらみを  0709:7702       涙3     三1瀬川3      渊2 ものおもふとなみたややかてみつせかは人をしつむるふちとなるらん  0710:7703 哀々5  此1世1縱2        來1世1斯2 苦2                     ん1 あはれ/\このよはよしやさもあらはあれこむよもかくやくるしかるへき  0711:7704 頼2   宵2     鐘2〔お〕物2思2 罪2 盡1 たのもしなよひあかつきのかねのをとものおもふつみもつきさらめやは  Book   本是以下カ下帖  Subtitle  雜  0712:7705:玉葉十五             打1  〔を〕哀3   鐘2 つく/\とものをおもふにうちそへておりあはれなるかねの音哉  0713:7706:新古今十八       昔3   〔ほ〕    存3   憂1   ある1              忍2 なさけありしむかしのみなをしのはれてなからへまうき世にも有哉  0714:7707 軒2   花2            忍2 のきちかきはなたちはなに袖しめてむかしをしのふなみたつゝまん  0715:7708   亊2 昔3  聞1    あり2      忍2                  〔ゑ〕  なにこともむかしをきくはなさけ有てゆへあるさまにしのはるゝ哉  0716:7709                   憂世3 知1 わか宿は山のあなたにあるものをなににうきよをしらぬこゝろそ  0717:7710      鏡3  上2   塵2 眼1立1   世1思2 くもりなうかゝみのうへにゐるちりをめにたててみるよとおもははや  0718:7711 存2              厭2     堪1 うきみ2                        〔へ〕 なからへんとおもふ心そつゆもなきいとふにたにもたえぬ浮身は  0719:7712 思2 出2 過1  方2 恥2   在1  憂1 おもひいつるすきにしかたをはつかしみあるに物うきこの世なりけり  0720:7713    仕2         籠2      許2  世につかうへかりける人の、こもりゐたりけるもと    遣2  へ、つかはしける 世1         秋2      水2 湛2 よの中にすまぬもよしやあきの月にこれるみつのたゝたふさかりに  0721:7714  五日、菖蒲を人のつかはしたりける返亊に 世1憂1          草2  根1  地1 よのうきにひかるゝ人はあやめくさ心のねなき心ちこそすれ  0722:7715  寄花橘述懷                           【い】 世1憂1 昔3          花2     思2〔い〕 よのうさをむかしかたりになしはててはなたちはなにおもひはてめや  0723:7716        おもひ1         立1  世にあらしと思たちけるころ、東山にて人々、寄霞     いふ1  述懷と云亊をよめる               世1        立1 そらになる心は春のかすみにてよにあらしともおもひたつ哉  0724:7717:新古今十八  同心を   厭2        留2〔お〕 數2     思出4 世をいとふ名をたにもさはとゝめをきてかすならぬ身のおもひてにせん  0725:7718      頃2    阿彌陀3 まうし1  いにしへころ、東山にあみた房と申ける上人の庵室       見1   何2  にまかりてみけるに、なにとなくあはれにおほえて  詠1  よめる                           【ひ】 柴2 庵2 聞1 悔2  名1   世1好2   住居3 しはのいほときくはくやしきななれともよにこのもしきすまゐなりけり  0726:7719:新撰拾遺十七  世1遁2  〔を〕          許2 言1  よをのかれけるおり、ゆかりありける人のもとへい  〔お〕  ひをくりける   中2 背2     言1   思2              〔お〕 世のなかをそむきはてぬといひをかんおもひしるへき人はなくとも  0727:7720:新古今十四         籠2   都3     許2  はるかなる所にこもりて、みやこなる人のもとへ月   ころ1    遣2  の比つかはしける     上2 空2           出1 月のみやうはのそらなるかたみにておもひもいては心かよはん  0728:7721:新古今十七    遁2     方2        鈴鹿3  世をのかれて伊勢のかたへまかりけるに、すゝか山  にて 鈴鹿3 憂2               ゆく1 すゝか山うき世をよそにふりすてていかになり行わか身なるらん  0729:7722:新古今十八  述懷                更2     世1厭2 なにことにとまる心のありけれはさらにしもまたよのいとはしき  0730:7723:新後撰十九          許2  後2 世1  侍從大納言成通のもとへ、のちのよの亊おとろかし  まうし1  申たりける返亊に               【世】 驚3   君2     長2〔夜〕    夢2 覺1 おとろかすきみによりてそなかき世のひさしきゆめはさむへかりける  0731:7724:新後撰十九  返亊           世1     語2 甲斐2 おとろかぬ心なりせはよの中を夢そとかたるかひなからまし  0732:7725:新後撰九  なかのゐんのうたいしん5       たまひ1         思2 立1由2  語2  中院右大臣出家おもひたつよしの亊かたり給けるに、         夜1   哀3    明1  月いとあかくてよもすからあはれにて、あけにけれ   歸2       後2       多2  はかへりにけり。そののちその夜のなこりおほかり   由2 〔お〕  しよしいひをくりたまふとて        眺2  契2〔お〕   睦言4  闇2 晴1 よもすから月をなかめてちきりをきしそのむつことにやみははれにき  0733:7726:新後撰九  返し 澄1        現3       闇2 すむといひし心の月しあらはれはこの世もやみのはれさらめやは  0734:7727  爲業4  常盤3 堂2      世1  ためなり、ときはにたう供養しける。よをのかれて         【した1】     住1はへり1       來1  山寺にすみ侍ける親しき人々まうてきたるときゝて、  言1遣2  いひつかはしける      變2         今日2常盤3 形見3 いにしへにかはらぬ君かすかたこそけふはときはのかたみなりけれ  0735:7728  返し 色】 色2變1        常盤木4          見1 いろかへてひとりのこれるときはきはいつをまつとか人はみるらん  0736:7729      樣2變1     奧2      住1  ある人、さまかへて仁和寺のおくなるところにすむ           尋2  ときゝて、まかりてたつねけれは、あからさまに京       歸2       後2 遣2  にときゝてかへりにけり。そののち人つかはしてか     〔ゐ〕    まうし1  くなんまいりたりしと申たりける返亊に      柴2             思2     里2 たちよりてしはのけふりのあはれさをいかゝおもひし冬の山さと  0737:7730  返亊        深2 入1   柴2     立1歸2 山里にこゝろはふかくいりなからしはのけふりのたちかへりにし  0738:7731      添1  この歌もそへられたりける お〕     捨1   經1     闇2   迷2 をしからぬ身をすてやらてふる程になかきやみにや又まよひなん  0739:7732  返し 世1捨1      闇2   迷2 よをすてぬ心のうちにやみこめてまよはんことは君ひとりかは  0740:7733  親2    數多3      同2  したしき人々あまたありけれは、おなし心に誰も         遣2  御覽せよとて、つかはしたりける返亊に又      晴1  闇2 悲2   君2     光3 見1 なへてみなはれせぬやみのかなしさをきみしるへせよひかりみゆやと  0741:7734   返2  又かへし 思1          導3   教2  道2 入1 おもふともいかにしてかはしるへせんをしふるみちにいらはこそあらめ  0742:7735  後2 世1     思2       見1  のちのよの亊、むけにおもはすしもなしとみえける    許2 遣2  人のもとへつかはしける 世1                闇2     【もの1】 よのなかに心ありあけの人はみなかくてやみにはまよはぬ物を  0743:7736  返し                    闇2 世をそむく心はかりはありあけのつきせぬやみは君にはるけん  0744:7737         世1       住1  ある所の女房、よをのかれて西山にすむときゝて、  訪2     住1荒2   樣2     影2  たつねけれは、すみあらしたるさまして、人のかけ               斯1 まうし1                  〔お〕  もせさりけり。あたりの人にかくと申をきたりける       言1        〔お〕  をきゝて、いひをくれりける 潮2   苫屋3 荒1     寄1    蜑2 知1 しほなれしとまやもあれてうき浪による方もなきあまとしらすや  0745:7738  返し 苫2 屋1波2  寄1 氣色3     住1憂1程2 見1 とまのやになみたちよらぬけしきにてあまりすみうきほとはみえにき  0746:7739          局3  世1背2  小倉3  侍賢門院中納言のつほね、よをそむきてをくら山の  麓3  住1   頃2          亊柄4  ふもとにすまれけるころ、まかりたりけるに、こと        幽2 哀3  からまことにいうにあはれなりけり、風のけしきさ      悲2       書1  へことにかなしかりけれは、かきつけける やま】 〔お〕 嵐3 〔お〕      何時2 山をろすあらしのをとのはけしさをいつならひける君かすみかそ  0747:7740       住所3訪1  あはれなるすみかとひにまかりたりけるに、この歌     書1  をみてかきつけける                【同2】    【局3】                 同2      局3                 おなし院の兵衞のつほね 憂2       風2 誘2     出1       見1 うき世をはあらしのかせにさそはれて家をいてにしすみかとそみる  0748:7741                 【あまの2】                 〔あまの2〕 住1  小倉3 住1捨1     麓3    まうす1  をくらをすみすてて、高野のふもとあまと申山にす       同2     局3  都3  外2  まれけり。おなし院の帥のつほね、みやこのほかの            【かてか2】 〔お〕  住所3訪1  【は:ナシ】   分1  すみかとひ申さては、いかかとて、わけをはしたり             歸2   粉河3 〔ゐ〕  ける、ありかたくなん。かへるさにこかはへまいら       お1  出1        導3  れけるに、御山よりいてあひたりけるを、しるへせ          具1まうし1  〔ゐ〕              粉河3  よとありけれは、くし申てこかはへまいりたりけり。     〔い〕  今2     【こと1】吹上4  かゝるつゐては、いまはあるましき亊なり。ふきあ   見1      具1        まうし1  けみんといふこと、くせられたりける人々申いてて、  吹上4 〔お〕       大雨4  ふきあけへをはしけり。道よりおほあめ風ふきて、 【きよう2】 〔興2〕          吹上4  行1  けふなくなりにけり、さりとてはふきあけにゆきつ                   社3  輿2  きたりけれとも、見所なきやうにて、やしろにこし    〔ゑ〕      【さ:脱】    据1       似1         苗代4  かきすへて、おもふにもにさりけり、能因か「なは      堰2     詠1  言1  傳2  しろ水にせきくたせ」とよみて、いひつたへられた       思2   社3  書1  るものをとおもひて、やしろにかきつけける 天2降2 名1吹上4         退1 あまくたるなをふきあけの神ならは雲はれのきてひかりあらはせ  0749:7742 苗代4  堰2     天2      神2 なはしろにせきくたされしあまの川とむるもかみのこゝろなるへし    書1           西2 風2吹2  かくかきつけたりけれは、やかてにしのかせふきか      忽3   雲2晴1  はりて、たちまちにくもはれてうら/\と日になり      末2 世1  にけり。すゑのよなれと、こゝろさしいたりぬる亊        灼3          まうし1信2  には、しるしあらたなりけることを人々申つゝ、し        吹上4 和歌2浦2      見1  んおこして、ふきあけわかのうらおもふやうにみて  かへられにけり。  0750:7743:新後撰十九            局3 許2  言1                    〔お〕  侍賢門院の女房堀河のつほねもとよりいひをくられ  ける      語2 〔お〕      死出2山路3 この世にてかたらひをかんほとゝきすしてのやまちのしるへともなれ  0751:7744  返し             語2   死出2 ほとゝきすなく/\こそはかたらはめしての山路に君しかゝらは  0752:7745:新古今十      〔ゐ〕   雨2 降1       まうす1  天王寺へまいりけるにあめのふりけれは、江口と申    宿2 借1    貸1  所にやとをかりけるに、かささりけれは 世1中2 厭2          假2    〔を〕  かな1 よのなかをいとふまてこそかたからめかりのやとりをおしむ君哉  0753:7746:新古今十  返し                    【な】 〔へ〕出1    聞1    宿2  〔な〕思2 いゑをいつる人としきけはかりのやと心とむるとおもふはかりそ  0754:7747     世1遁2  北2    籠2  ある人よをのかれてきた山てらにこもりゐたりとき     訪2            明2  ゝて、たつねまかりたりけるに、月のあかかりけれ  は 世1   谷2   住1       木1間1わく1 よをすててたにそこにすむ人見よとみねのこのまを分る月影  0755:7748:玉葉八            〔う〕    宮2     仕2  あるみやはらにつけつかふまつりける女房、よをそ      都3 離2  〔ほ〕     思2 立2  むきて、みやこはなれてとをくまからんとおもひた     〔ゐ〕    代2  ちて、まいらせけるにかはりて            馴1   厭2 都3  忍2 くやしきはよしなき君になれそめていとふみやこのしのはれぬへき  0756:7749  題2  たいしらす  〔ぬ〕   儚3   思2   =(空鳥)1 さらにたに世のはかなさをおもふ身にぬえなきわたるあけほのの空  0757:7750                     【矢ご】 鳥邊野4      分1 とりへのを心のうちにわけゆけはいふきの露にそてそそほつる  0758:7751    世1長2             亊2 いつのよになかきねふりの夢さめておとろくことのあらんとすらん  0759:7752 よのなか2見1       なほ1        かな1 世中を夢とみる/\はかなくも猶おとろかぬわかこゝろ哉  0760:7753:續後拾遺十八 亡1  在1     世1  眠2         見1 なき人もあるをおもふもよの中はねふりのうちの夢とこそみれ  0761:7754 來1方2     夢2      今2     心地3 きしかたの見しよのゆめにかはらねはいまもうつゝのこゝちやはする  0762:7755 亊2 無1今日2    明日2  變2     隙2   影2        暮1 こととなくけふくれぬめりあすもまたかはらすこそはひますくるかけ  0763:7756 越1   又2     歸2   死出2   悲2 こえぬれはまたもこの世にかへりこぬしての山こそかなしかりけれ  0764:7757:新續古今十六        【に】         命3  露2消1  邊1  〔お〕〔お〕 はかなしやあたにいのちのつゆきえて野へに我身やをくりをくらん  0765:7758 露2   消1  又2〔お〕 つゆの玉はきゆれはまたもをく物をたのみもなきは我身なりけり  0766:7759      頼2   哉2明日2     今日2言1 あれはとてたのまれぬかなあすはまた昨日とけふをいはるへけれは  0767:7760     枯2          世1儚3   淺茅生4 露2 秋の色はかれ野なからもあるものをよのはかなさやあさちふのつゆ  0768:7761:新古今十八 年2        〔お〕   昨日3   今日2亡1 とし月をいかてわか身にをくりけんきのふの人もけふはなき世に  0769:7762  范蠡長男の心を      命3         千々2黄金3 持1 すてやらていのちをこふる人はみなちゝのこかねをもてかへるなり  0770:7763  曉無常を        【ら】        入相4         曉4      知1 つきはてしそのいりあひのほとなさをこのあかつきにおもひしりぬる  0771:7764  かすみによせて2  寄霞無常を                  隔2 なき人をかすめる空にまかふるは道をへたつるこゝろなるへし  0772:7765    散1     並2  咲1       見1  花のちりたりけるにならひてさきはしめける櫻をみ  て 散1      咲1花2 匂3  〔お〕 先2  例3 ちると見れはまたさくはなのにほひにもをくれさきたつためしありけり  0773:7766  月前述懷         年2         我2 月をみていつれのとしの秋まてかこの世にわれかちきりあるらん  0774:7767:新千載十九         明2     船岡4  七月十五夜、月あかかりけるにふなをかにまかりて      今宵3        死出2     照2 いかてわれこよひの月を身にそへてしての山路の人をてらさん  0775:7768   心3 細2 哀3    〔を〕        聲2   近2  物こゝろほそくあはれなりけるおりしもきり/\すのこゑの枕にちか   聞2  くきこえけれは  〔を〕 蓬3            蟲2 音1 睦2 そのおりのよもきかもとの枕にもかくこそむしのねにはむつれめ  0776:XXXX  鳥邊3            煙3     夜1  とりへ山にてとかくのわさしけるけふりなかよりよ  更1 出1    哀3  ふけていてける月のあはれに見えけれは 鳥邊野4 鷲2 高嶺3          わけ1                        出1 とりへのやわしのたかねのすゑならんけふりを分ていつる月かけ  0777:7769  諸行無常の心を      過1     思2   今2     朝顏4 はかなくてすきにしかたをおもふにもいまもさこそはあさかほの露  0778:7770;千載九     はへり1          はへり1  同行に侍ける上人、例ならぬ亊大亊に侍けるに、月   明2          詠1  のあかくてあはれなりけれはよみける      眺2    秋2            悲2 もろともになかめ/\てあきの月ひとりにならんことそかなしき  0779:7771  侍賢門院、かくれさせおはしましにける御あとに、       年2      さふら1   南面6  人々またのとしの御はてまて候はれけるに、みなみ       散1  頃2      許2 まうし1                      〔お〕  おもての花ちりけるころ、堀河の局のもとへ申をく  りける 尋2   風2 傳2  聞1     散1    ゆく1                          〔へ〕 たつぬともかせのつてにもきかしかし花とちりにし君か行ゑを  0780:7772  返し 吹1風2 ゆく1        花2 散1 〔お〕      〔へ〕 ふくかせの行ゑしらするものならははなとちるにもをくれさらまし  0781:7773:玉葉十七            具1 〔ゐ〕     露2 深2  近衞院の御はかに人々くしてまいりたりけるにつゆのふかか  りけれは        住處3      邊1       悲2 みかゝれし玉のすみかを露ふかき野へにうつして見るそかなしき  0782:7774:新拾遺十    崩2  一院かくれさせおはしまして、やかての御所へわたしま  い〕   夜1    出1   〔ゐ〕  ゐらせけるよ、高野よりいてあひてまいりあひたりける、    悲2         後2                〔お〕  いとかなしかりけり。この、のちをはしますへき所御覽              供2     實能4  しはしめけるそのかみの御ともに、右大臣さねよし、大     まうし1         〔お〕  納言と申ける、候はれけり。しのはせをはしますことに      候3          供2 候3  て、又人さふらはさりけり。その御ともにさふらひける  亊2 思2 出1   〔を〕  今宵3 〔ゐ〕  ことのおもひいてられて、おりしもこよひにまいりあひ     昔今5    思2       詠1  たる、むかしいまの亊おもひつゝけられてよみける 今宵3     知1  淺2           身1 こよひこそおもひしらるれあさからぬ君にちきりのあるみなりけり  0783:7775:玉葉十七  納2 〔ゐ〕        〔ゐ〕  をさめまいらせける所へわたしまいらせけるに 道2   御幸3       かな1  旅2 みちかはるみゆきかなしきこよひ哉かきりのたひと見るにつけても  0784:7776  納2 〔ゐ〕  後2  供2  をさめまいらせてのち、御ともにさふらはれける人々、たと    方2  悲2     限3       歸2  へんかたなくかなしなから、かきりある亊なれはかへられに          亊2         候3   詠1  けり。はしめたることありて、あくるまてさふらひてよめる      思2     歎2   昔3 とははやとおもひよらてそなけかましむかしなからの我身なりせは  0785:7777:玉葉十七     きんよし2ふく1  母2亡1  右大將公能、父の服のうちにはゝなくなりぬときゝて、          まうし1  高野よりとふらひ申ける 襲2 着1藤2              染1 かさねきるふちのころもをたよりにて心の色をそめよとそ思ふ  0786:7778  返し                    【ま】               淺2   〔ま〕 ふち衣かさぬる色はふかけれとあさき心のしらぬはかなさ  0787:7779        はへり1 許2  同しなけきし侍ける人のもとへ           〔を〕 【や】     秋2   憂1     去年2今年3 君かためあきはよにうきおりなれとこそもことしも物思ひにて  0788:7780  返し      去年2時雨3        暗2       かな1 はれやらぬこそのしくれのうへにまたかきくらさるゝ山めくり哉  0789:7781  母2亡1    里2 籠2  ははなくなりて山さとにこもりゐたりける人を、程  經1思2 出1   問1  へておもひいてて人のとひたりけれは、かはりて    出1 情3    同2    〔を〕問1 おもひいつるなさけを人のおなしくはそのおりとへなうれしからまし  0790:7782  縁3      儚3  ゆかりありける人はかなくなりにけり。とかくのわ    鳥邊3  さにとりへ山へまかりて、かへりけるに      悲2     鳥邊3 亡1〔お〕  歸2 かきりなくかなしかりけりとりへ山なきをゝくりてかへる心は  0791:7784  親2    頼2     婿2  失1  歎3  おやかくれ、たのみたりけるむこなとうせて、なけ          程2  女3   〔お〕  きしける人の、又ほとなくむすめにさへをくれにけ  りときゝて、とふらひけるに 今度4  先々4 見1     覺1     悲2 このたひはさき/\みけん夢よりもさめすやものはかなしかるらん  0792:7785      果1 方2       墓2  五十日のはてつかたに、二條院の御はかに御佛供養       具1 〔ゐ〕       明2  しける人にくしてまいりたりけるに、月あかくてあ  はれなりけれは     死出2 路1  見1雲2 上2 こよひ君しての山ちの月をみてくものうへをやおもひいつらん  0793:7786      三河3   さふらひ1  御あとにみかはの内侍候けるに、九月十三夜、人に  かはりて        御影3           音1 泣1 かくれにし君かみかけの戀しさに月にむかひてねをやなくらん  0794:7787  返し               【ナシ】                内侍 我1君2        ゆふへ1        澄1                闇2 わかきみのひかりかくれし夕よりやみにそまよふ月はすめとも  0795:7788       【伝】        いふ1       詠1  寄紅葉懷舊と云亊を、寶金剛院にてよみける      戀1 涙3    似1袂3  散1 紅葉3 いにしへをこふるなみたの色ににてたもとにちるはもみちなりけり  0796:7789:新古今十七      【伝】       いふ1 常盤3    爲業4 詠1  故郷述懷と云亊を、ときはの家にてためなりよみけ  るに、まかりあひて    野1幾2  群2 わけ1    昔3  忍2 返2 しけきのをいくひとむらに分なしてさらにむかしをしのひかへさん  0797:7790               紅葉3見1  十月なかのころ、寶金剛院のもみちみけるに、上西   〔お〕   由2           おもひ1                      出1  門院をはしますよしきゝて、侍賢門院の御時思いて             〔お〕  られて、兵衞殿の局にさしをかせける              【衍】 紅葉3  若2 〔め〕 時雨2      秋2 もみちみてきみかたもとやしくるらんむかしのあきの色をしたひて  0798:7791  かへし     梢3     時雨2  舊1  亊2 懸1 色ふかきこすゑをみてもしくれつゝふりにしことをかけぬ日そなき  0799:7792           軒2   書1    古里4  周防内侍「われさへのきの」とかきつけけるふるさ        おもひ1  とにて、人々思をのへける              【もの1】      〔い〕 宿2     何2  今日2 いにしへはつゐゐしやともある物をなにをかけふのしるしにはせん  0800:7793:新古今八  陸奧2國2              常2  みちのくににまかりたりけるに、野の中につねより        塚2 見1      問1  もとおほしきつかのみえけるを、人にとひけれは、     御墓3 まうす1 亊2   まうし1           是2  中將のみはかと申はこれかことなりと申けれは、中             問1    實方4  將とは誰かことそと、又とひけれは、さねかたの御      まうし1  亊なりと申ける、いとかなしかりけり。さらぬたに                 【衍字2】  物2哀3  覺2    霜枯4    薄3  ものあはれにおほえけるにしもかれかれのすゝきほ               語2   言葉3  の/\見えわたりて、のちにかたらんもことはなき  やうにおほえて 朽1     名1   留2 おき1枯野3 薄3     見1 くちもせぬそのなはかりをとゝめ置きてかれのゝすゝき形見にそみる  0801:7794  縁3      住1         歸2  ゆかりなくなりてすみうかれにける古郷へかへりゐ      許2  ける人のもとへ 住1捨1   故郷4       昔3      地1 すみすてしそのふるさとをあらためてむかしにかへる心ちもやする  0802:7795:玉葉十六  親2〔お〕  おやにをくれてなけきける人を、五十日すくるまて  訪1                 怪2  とはさりけれは、とふへき人のとはぬ亊をあやしみ                思2  今2  て、人にたつぬときゝて、かくおもひていままて申       由2まうし1  ささりつるよし申てつかはしける人に、かはりて        歎2    數2 思2     言2 葉1哉2 なへてみな君かなけきをとふかすにおもひなされぬことのはもかな    思2    はへり1 まうし1  かくおもひて程へ侍にけりと申て、返亊かくなん。  0803:7796:新古今八         物思4  ゆかりにつけてものおもひける人のもとより、なと          恨2 遣2  かとはさらんと、うらみつかはしたりける返亊に 哀3             言1     問1 あはれとも心におもふほとはかりいはれぬへくはとひこそはせめ  0804:7797  儚3     年2經1       物2 中2  はかなくなりてとしへにける人の文を、もののなか     出1       はへり1 許2 見1  より見いたして、むすめに侍ける人のもとへみせに  遣2  つかはすとて      忍2         哀3  見1 水莖4  跡2 なみたをやしのはん人はなかすへきあはれにみゆるみつくきのあと  0805:7798:千載九     はへり1  終3   おもふ3  同行に侍ける上人、をはりよく思さまなりときゝて  まうし1  〔お〕  申をくりける                     寂然      終3 聞1       扨2     慰2 みたれすとをはりきくこそうれしけれさてもわかれはなくまねとも  0806:7799:千載九  かへし        逢1   悲2   勸2 この世にてまたあふましきかなしさにすゝめし人そ心みたれし  0807:7800        果1  後2     拾2   高野3  とかくのわさはてて、あとのことともひろひて、か     〔ゐ〕 歸2  うやへまいりてかへりたりけるに                     寂然 入1   拾2     殘2   歸2 いるさにはひろふかたみものこりけりかへる山路の友はなみたか  0808:7891  返し      思2 分2  過1     やまち2 地1                       ゆく1 いかにともおもひわかすそすきにける夢に山路を行心ちして  0809:7802         儚3      宵曉6  侍從大納言入道はかなくなりて、よひあかつきにつ      〔お〕  歸2     まうし1                  〔お〕  とめする僧をの/\かへりける日、申をくりける 行1散1 今日2別3          歎3     地1 ゆきちらんけふのわかれをおもふにもさらになけきやそふ心ちする  0810;7803  返し 臥1                歎2 ふししつむ身には心のあらはこそさらになけきもそふ心ちせめ  0811:7804      返2  外2 具1  この歌もかへしのほかにくせられたりける      昔3    形2         頼2 たくひなきむかしの人のかた見には君をのみこそたのみましけれ  0812:7805  返し             聞1      露2  墨2 いにしへのかたみになるときくからにいとゝつゆけきすみ染の袖  0813:7806  同2 〔おなし日3〕   許2 遣2  おなし、のりつなかもとへつかはしける 亡1跡2 今日2  〔ほ〕     明日2れかれ1             殘2 なきあともけふまてはなをのこりけるをあすや別をそへて忍はん  0814:7807  かへし      今日2    悲2       變1 おもへたゝけふのわかれのかなしさにすかたをかへて忍ふ心を         樣2變2 後2       まうし1  やかてその日、さまかへてのち、この返亊かく申た  りけり。いとあはれなり  0815:7808  同2 樣2         住1    妹4  おなしさまに世のかれて大原にすみ侍りけるいもう     儚3       哀3  との、はかなくなりにけるあはれとふらひけるに      君2     道2 入1 頼2     わかれ1 いかはかりきみおもはましみちにいらてたのもしからぬ別なりせは  0816:7809  返し                     寂然 頼2   道2  入1 行1          如何3  思2 たのもしきみちにはいりてゆきしかとわか身をつめはいかゝとそおもふ  0817:7810:玉葉十七       局3       後2  院の二位のつほねみまかりけるあとに、十首歌人々  詠1  よみけるに    ゆく1 玉2  泡沫4     水2 なかれ行みつにたまなすうたかたのあはれあたなるこの世なりけり  0818:7811 消1      雫3  思2 きえぬめるもとのしつくをおもふにも誰かはすゑの露の身ならぬ  0819:7812:新千載十九 お〕〔お〕     野邊2朝2    移2 をくりをきてかへりしのへのあさ露を袖にうつすは涙なりけり  0820:7813:玉葉十七 船岡4  裾野3 塚2   添1 ふなをかのすそののつかのかすそへてむかしの人に君をなしつる  0821:7814        今日2憂1   淺茅3 原2 見1 あらぬ世の別はけふそうかりけるあさちかはらをみるにつけても  0822:78l5               【は】    世1   契2  言2   忘2     形見3 のちのよをとへとちきりしことの葉やわすらるましきかたみなるへき  0823:7816 を〕   涙3  沈2 ふるさと2          見1                魂2 おくれゐてなみたにしつむ古郷をたまのかけにもあはれとやみん  0824:7817 跡2 訪1道2  君2 入1       死出2 あとをとふみちにやきみはいりぬらんくるしきしての山へかゝらて  0825:7818 なこり2程2  過1      七日3 數2 重2  〔かな1〕 名殘さへほとなくすきはかなし世になぬかのかすをかさねすも哉  0826:7819 跡2忍2                   散1   かな1 あとしのふ人にさへまたわかるへきその日をかねてちるなみた哉  0827:7820  後2 亊2  果1 散1  あとのことともはててちり/\になりけるに、成範、     涙3 流2  今日2    まうし1                      程2  脩憲、なみたなかしてけふにさへ又と申けるほとに、  南面6    櫻3  鶯4  みなみおもてのさくらにうくひすのなきけるをきゝ   詠1  てよみける 櫻3  散1     木1下2 名殘3〔を〕 さくら花ちり/\になるこのもとになこりをおしむうくひすのこゑ  0828:7821  返し                       脩憲4                     少將なかのり           【さ】   花2   來1       別3     巡2 ちるはなはまたこん春も咲きぬへしわかれはいつかめくりあふへき  0829:7822 【おな1】      くれ1       暗2 降1  同し日、暮けるまゝに雨のかきくらしふりけれは あはれしる空も心のありけれはなみたに雨をそふるなりけり  0830:7823  返し                     院少納言の局      〔ら〕    知1           涙3  今日2 あはれしるそとにはあらしわひ人のなみたそけふは雨とふるらん  0831:7824  ゆき1 〔又のあしたつかはしける〕   散1  行ちりてつかはしける  〔はナシ〕 今朝2   思2                 別2 けさはいかにおもひの色のまさるらん昨日にさへもまたわかれつゝ  0832:7825  返し                       脩憲4                     少將なかのり       わかれ1    慰3  方2          今日2 君にさへたち別つゝけふよりそなくさむかたはけになかりける  0833:7826:續後撰十八  兄2  あにの入道想空はかなくなりにけるをとはさりけれ  は、いひつかはしける                     寂然      わかれ1 とへかしな別の袖につゆしけきよもきかもとの心ほそさを  0834:7827 待1  〔お〕 先2  哀3 まちわひぬをくれさきたつあはれをも君ならてさは誰かとふへき  0835:7828 別2              恨2 わかれにし人をふたたひあとを見はうらみやせましとはぬ心を  0836:7829:風雅十七      後2          わかれ1行1                       〔へ〕 いかゝせんあとのあはれはとはすとも別し人のゆくゑたつねよ  0837:7830        深2 方2     淺2       かな1 中々にとはぬはふかきかたもあらん心あさくもうらみつる哉  0838:7831  返し わけ1 蓬3  露2 分いりてよもきかつゆをこほさしとおもふも人をとふにあらすや  0839:7832:續後撰十八       別3     誰2 よそにおもふわかれならねはたれをかは身より外にはとふへかりける  0840:7833 隔2   法2          蓮3 へたてなきのりのことはにたよりえてはちすの露にあはれかくらん  0841:7834:風雅十七 亡1        慰3       千度3 なき人を忍ふおもひのなくさまはあとをもちたひとひこそはせめ  0842:7835 御法3  言葉3    説1 聞1 深2 哀3 みのりをはことはなけれととくときけはふかきあはれはとはてこそ思へ  0843:7836     具1 遣2  これはくしてつかはしける 露2   野邊2  ゆく1           〔を〕 つゆふかきのへになり行ふるさとはおもひやるにも袖しほれけり  0844:7837         詠1  無常の歌あまたよみける中に              【ふ】 何處3  眠2    仆2        悲2  道芝4  露2 いつくにかねふり/\てたふれ伏さんとおもふかなしきみちしはのつゆ  0845:7838       思         長2       さむ1 おとろかんとおもふ心のあらはやはなかきねふりの夢も覺へき  0846:7839   荒2 磯2     蜑2ひと1   舟2  地1 かせあらきいそにかゝれるあま人はつなかぬふねの心ちこそすれ  0847:7840 大波4  引1      地1 助舟5    沖2 搖2 おほなみにひかれいてたる心ちしてたすけふねなきおきにゆらるゝ  0848:7841   跡2    知1  鳥邊3        塚2 なきあとをたれとしらねととりへ山おの/\すこきつかの夕暮  0849:7842 波2高2 世1漕1       船岡4 なみたかきよをこき/\て人はみなふなをか山をとまりにそする  0850:7843 死1 伏1 苔2            知1  岩陰4 しにてふさんこけのむしろを思ふよりかねてしらるゝいはかけの露  0851: 露2 消1 蓮臺野5  〔お〕〔お〕     名1 つゆときえはれんたいのにををくりをけねかふ心をなにあらはさん  0852:7845;風雅十五  那智2籠2  瀧2 にふたふ2               はへり1  なちにこもりてたきに入堂し侍けるに、このうへに      〔お〕       〔ゐ〕   まうす1  一二のたきをはします。それへまいるなりと申常住     はへり1具1 〔ゐ〕   花2 咲1  の僧の侍けるにくしてまいりけり。はなやさきぬら             〔を〕  んとたつねまほしかりけるおりふしにて、たよりあ   心地3    〔ゐ〕     瀧2  るこゝちしてわけまいりたり。二のたきのもとへま 〔ゐ〕         瀧2   まうす1 〔を〕  いりつきたる。如意輪のたきとなん申ときゝて、お            少2 打2傾3    樣2  かみけれは、まことにすこしうちかたふきたるやう   流2 下2   〔ふ〕 覺2  になかれくたりて、たうとくおほえけり。花山院の      跡2 はへり1   年2舊1            前2  御庵室のあとの侍けるまへに、としふりたりける櫻     はへり1    住處3      詠1  の木の侍けるをみて、「すみかとすれは」とよませ  たまひ1 思2 出1  給けんことおもひいてられて 木1   住1  跡2 見1  那智2高嶺3   たつね1 このもとにすみけるあとをみつる哉なちのたかねの花を尋て  0853:7846     はへり1          籠2  同行に侍ける上人、月のころ天王寺にこもりたりと     言1  きゝていひつはしける    如何2        影2 常2   異1 いとゝいかににしへかたふく月かけをつねよりもけに君したふらん  0854:7847:新古今二十           住1    〔ゐ〕  由2まうし1  堀河の局、仁和寺にすみけるに、まいるへきよし申                  經1  たりけれとも、まきるゝ亊ありて程へにけり。月の  ころ1  過1      言1    前2  比、まへをすきけるをきゝていひおくりける 西2 ゆく1      影2 にしへ行しるへとたのむ月かけのそらたのめこそかひなかりけれ  0855:7848:新古今二十  かへし              影2      空2 さしいらてくもちをよきし月かけはまたぬ心そそらにみえける  0856:7849      たんき2  寂超入道談義すときゝてつかはしける 弘2   法2  會1      名1聞1數2 入1 ひろむらんのりにはあはぬ身なりともなをきくかすにいらさらめやは  0857:7850  返し      流3     法2  汲1    深2 つたへきくなかれなりとものりの水くむ人からやふかくなるらん  0858:7851  定信4         堂2造2  けちえん2  さたのふの入道、觀音寺にたうつくるに結縁すへき  由2まうし1  よし申つかはすとて                     觀音寺入道生光 寺2       谷2              崩2 てらつくるこのわかたににつちうめよ君はかりこそ山もくつさめ  0859:7852  かへし 山2崩2        難2        添1 やまくつすそのちからねはかたくとも心たくみをそへこそはせめ  0860:7853  阿闍梨3       ほけきやう3                けちえん2  あさり勝命千人あつめて法花經結縁せさせけるに、  又の日つかはしける 列3          變2   思2         かな1 つらなりしむかしにつゆもかはらしとおもひしられし法のには哉  0861:7854    代2     遣2  人にかはりてこれもつかはしける      洩1     悲2   昨日3 庭2 いにしへにもれけんことのかなしさはきのふのにはに心ゆきにき  0862:7855  〔波羅1〕    ちきやうしや3  つのくに2まうす1                     和田2  六原太政入道、持經者千人あつめて津國わたと申       はへり1     〔い〕 まんとうゑ3  所にて供養侍けり。やかてそのつゐてに萬燈會しけ    夜1     燈3   消1     更1  り。よふくるまゝにともし火のきえけるを、おの/\  點2  ともしつきけるを見て 消1   法2 光3  燈火4      和田2泊3 きえぬへきのりのひかりのともしひをかゝくるわたのとまりなりけり  0863:7856      〔ゐ〕 龜2  天王寺へまいりてかめ井の水をみてよみける      契3    汲1   龜2    影2 あさからぬちきりの程そくまれぬるかめ井の水にかけうつしつゝ  0864:7857            〔衍字1〕                  〔ゐ〕  心さすことありて、あふへきを佛にまいらせけるに、                        紙2  院より給はりけるに、女房うけ給はりて、つゝみか    書1  みにかきつけられける      法2     風2     塵2 拂2 ありかたきのりにあふきのかせならは心のちりをはらへとそ思ふ  0865:7858  御返亊たてまつりける      疑3        法2     頼2 ちりはかりうたかふ心なからなんのりをあふきてたのむとならは  0866:7859  しんしやう2  いふ1      詠1    定3  心性さたまらすと云亊を題にて、人々よみけるに 雲雀3  荒野3〔お〕 姫百合4    着1     かな1 ひはりたつあらのにをふるひめゆりのなににつくともなき心哉  0867:7860  さんけこふしやう4       いふ2  懺悔業障と云亊を    〔ゝ〕 惑2   過1  方2 悔2   泣1     今日2怨2 まとひつるすきけるかたのくやしさになく/\身をそけふはうらむる  0868:7861  をしへにあひてりゆうけをまつ5        いふ2  遇教待龍花と云亊を 朝2   程2 闇2  迷2        影2 あさ日まつほとはやみにやまよはまし有明の月のかけなかりせは  0869:7862  寄藤花述懷 西2 待1  藤2 にしをまつ心にふちをかけてこそそのむらさきの雲をおもはめ  0870:7863       いふ1  見月思西と云亊を やまのは2              西2 入1    隱2 山端にかくるゝ月をなかむれはわれと心のにしにいるかな  0871:7864      いふ1  曉念佛と云亊を                  【ク】     鐘2       添1 十度3 御名2稱2   かな1 夢さむるかねのひゝきにうちそへてとたひのみなをとなへつる哉  0872:7865:續千載十  易往無人の文の心を   ゆく1 餘所2 西へ行月をやよそにおもふらん心にいらぬ人のためには  0873:7866     〔速〕  人命不停遇於山水の文の心を           聞1 迫1 命3     知1 山川のみなきる水の音きけはせむるいのちそおもひしらるゝ  0874:7867  菩提心論に乃至身命而不悋惜文を         覺3  返2         捨1 あたならぬやかてさとりにかへりけり人のためにもすつる命は  0875:7868  そのもん2  疏文に悟心證心々 惑2   悟2 得1         知1 まとひきてさとりうへくもなかりつる心をしるは心なりけり  0876:7869:新古今二十  くわんしん2  觀心 闇2     空2 澄1  西2    近2 やみはれて心のそらにすむ月はにしの山へやちかくなるらん  0877:7870:風雅十八  しよほん2  序品 散1   花2          光3  のり1    敷1                        蓆3 ちりまかふはなのにほひをさきたててひかりを法のむしろにそしく  0878:7871 花2 香1    袖2 吹1染1       散1 はなのかをつらなるそてにふきしめてさとれと風のちらすなりけり  0879:7872  しんちやく2       もん1  深着五欲の文 懲1   憂2  闇2        思2 こりもせすうき世のやみにまかふかな身をおもはぬは心なりけり  0880:7873  ひゆほん3  譬喩品 法2知1    今日2憂1   三2 車3 のりしらぬ人をそけふはうしと見るみつのくるまに心かけねは  0881:7874                        いつほん2  はかなくなりにける人のあとに、五十日のうちに一  品經供養しけるに  けしやうゆほん4  化城喩品      宿2     中空4  旅2     苦2 やすむへきやとをおもへはなかそらのたひもなににかくるしかるへき  0882:7875  五百弟子品 を〕   清2   磨2   玉2解1懸1 法2 知1 おのつからきよき心にみかかれてたまときかくるのりをしりぬる  0883:7878  たいはほん3  提婆品      玉2   磨2 いて1      覺3   得1 いさきよきたまを心にみかき出ていはけなき身にさとりをそえし  0884:7876      歳2積2              薪3 これやさはとしつもるまてこりつめし法にあふこのたきゝなりける  0885:7877      聞1亊2        徒2 思2  得1 いかにしてきくことのかくやすからんあたにおもひてえける法かは  0886:7879 〔勸〕  觀持品   雲2 晴1  空2    怨2     姨捨4 あまくものはるゝみそらの月影にうらみなくさむをはすての山  0887:XXXX:續千載十          袖2 宿2   出1難2 見1 いかにしてうらみしそてにやとりけんいてかたくみし有明の月  0888:7880:千載十九  壽量品 鷲2    入1  見1 わしの山月をいりぬとみる人はくらきにまよふ心なりけり  0889:7881    得1         鷲2 高嶺3 澄1  あり1 さとりえし心の月のあらはれてわしのたかねにすむにそ有ける  0890:7882  亡1        供養3  なき人のあとに一品經くやうしけるに、壽量品を人  にかはりて  晴1     山2     澄1 雲はるゝわしのみやまの月影を心すみてや君なかむらん  0891:7883            詠1  一心欲見佛の文を人々よみけるに 鷲2       見1          晴1 わしの山誰かは月をみさるへき心にかゝる雲しはれなは  0892:7884  しんりきほん3  神力品 ゆく1     説1 法2  末2 行すゑのためにととかぬのりならはなにか我身にたのみあらまし  0893:7885  普賢品 散1   花2 匂3  なこり3 立1 憂1    場2かな1 ちりしきしはなのにほひの名殘おほみたたまうかりし法のには哉  0894:7886  しんきやう2  心經      空2  法2    罪2        思2 なにこともむなしきのりの心にてつみある身とはつゆもおもはし  0895:7887  無上菩提の心をよみける       暗2   峯2       拂2 わしの山うへくらからぬみねなれはあたりをはらふ有明の月  0896:7888      けちえんのはしめ3          いふ1  和光同塵結縁始と云亊を      塵2       鏡3       淨2 いかなれはちりにましりてますかゝみつかふる人はきよまはるらん  0897:7889  ろくたう2  六道歌よみけるに地獄 罪2  〔め〕世1  燃1 火1薪3        悲2 つみ人のしぬるよもなくもゆるひのたきゝなるらんことそかなしき  0898:7890  餓鬼 朝2  子1       聞1 國2 あさ夕のこをやしなひにすときけはくにすくれてもかなしかるらん  0899:7891  畜生 神樂歌5  草2取1飼1      なほ1駒2      憂1           〔ふ〕 かくらうたにくさとりかうはいたけれと猶そのこまになることはうし  0900:7892  修羅      爭3     楯2   瞋3     結2 よしなしなあらそふことをたてにしていかりをのみもむすふ心は  0901:7893  人 有1難2       甲斐2     求2 ありかたき人になりけるかひありてさとりもとむる心あらなん  0902:7894  天 雲2 上2 樂3     甲斐2         住1 果1 くものうへのたのしみとてもかひそなきさてしもやかてすみしはてねは  0903:7895    思2  心におもひける亊を               何2 にこりたる心の水のすくなきになにかは月の影やとるへき  0904:7896      清2 雲2           影2 いかてわれきよくくもらぬ身になりて心の月のかけをみかゝん  0905:7897 逃3   〔ひ〕行1  道2    知1    過1 のかれなくつゐにゆくへきみちをさはしらてはいかゝすくへかりける  0906:7897 を〕   心3     任2   師1  亊2 おろかなるこゝろにのみやまかすへきしとなることもあるなる物を  0907:7899      【左】 野1   枝2    〔お〕   後2  知1 のにたてるえたなき木にもをとりけりのちの世しらぬ人の心は  0908:7900:新古今十八  五首述懷   憂1 思2 知1  罷1   背2 習3 身のうさをおもひしらてややみなましそむくならひのなき世なりせは  0909:7901:千載十七            【に】        隱2   厭2   憂1  深2 いつくにか身をかくさましいとひてもうき世にふかき山なかりせは  0910:7902   憂1 隱家4     里‘2      住1 身のうさのかくれかにせん山さとは心ありてそすむへかりける  0911:7903    知1           草2 庵3     契3 あはれしるなみたの露そこほれけるくさのいほりをむすふちきりは  0912:7904 浮2 出1      叶2    如何2   如何2 うかれいつる心は身にもかなはねはいかなりとてもいかにかはせん  0913:7905  高野より京なる人につかはしける 住1    柄2       高野3 物2      かな1 すむことは所からそといひなからたかのはもののあはれなる哉  0914:7905                いふ1詠1  たまひ1  仁和寺御室にて、道心逐年深と云亊をよまさせ給け  るに 淺2      水2      澄1ゆく1 深2 あさくいてし心のみつやたゝふらんすみ行まゝにふかくなるかな  0915:7907  閑中曉 嵐3       窓2〔お〕   明1    なこり2 あらしのみとき/\まとにをとつれてあけぬる空の名殘をそ思ふ  0916:7908        荒1寒2    頃2  ことのほかにあれさむかりけるころ、宮の法印高野       たまひ1   寒2        小袖3  にこもらせ給て、この程のさむさはいかゝとて、こ                まうし1  そて給はせたりける又のあした申ける 今宵3  憐3  厚2  地1    〔お〕 餘1                         そ1 こよひこそあはれみあつき心ちしてあらしのをとをよ所にきゝつれ  0917:7909   〔け〕〔笙〕窟3  〔ゐ〕       窟3  みたちより生のいはやへまいりけるに「もらぬいは         〔を〕思2 出1  やも」とありけんおりおもひいてられて     窟3  袖2 濡1   聞1     怪2 露もらぬいはやもそてはぬれけりときかすはいかゝあやしからまし  0918:7910  小笹3 泊3  まうす1露2 繁2  をさゝのとまりと申所にてつゆのしけかりけれは わけ1 小笹3 露2      干1     墨染4 分きつるをさゝのつゆにそほちつゝほしそわつらふすみそめの袖  0919:7911  阿闍梨3  世1         はへり1  あさり源賢、よをのかれて高野にすみ侍ける、あか          出1      〔ゐ〕  らさまに仁和寺へいてて、かへりもまいらぬことに  て、僧都になりぬときゝて、いひつかはしける 袈裟2  若紫6     染1  苔2 袂3 けさの色やわかむらさきにそめてけるこけのたもとをおもひかへして  0920:7912  秋ころ、風わつらひける人をとふらひたりける返亊に 消1       君2   言2 葉1  起1 きえぬへき露の命もきみかとふことのはにこそおきゐられけれ  0921:7913  かへし               〔き〕 吹1     罷1       秋2 野面3 ふきすくる風しやみなはたのもしみあきののもせの露の白玉  0922:7914:玉葉十八                伏1沈2  年2  院の小侍從、例ならぬ亊大亊にふししつみてとし月  經1  へにけりときこえて、とふらひにまかりたりけるに、            由2まうし1  聞1  わこん2  この程すこしよろしきよし申て、人にもきかせぬ和    手1     引1  琴のてひきならしけるをきゝて 琴2 音1    添1 流2   絶1        哀3 ことのねになみたをそへてなかすかなたえなましかはと思ふあはれに  0923:7915  返し 頼2          今日2  何2 掛2    緒1 たのむへきこともなき身をけふまてもなににかゝれる玉のをならん  0924:7916  風2患3    寺2 歸2       訪3  かせわつらひて山てらにかへりけるに、人々とふら             又2疾1 まうし1  各々4                   はへり1  ひて、よろしくなりなはまたとくと申侍けるに、お          思1  の/\の心さしをおもひて 定3    煩3  〔を〕     來1        世1 さためなし風わつらはぬおりたにもまたこんことをたのむへきよか  0925:7917    散1木1葉1      かな1                 風2 あたにちるこのはにつけておもふ哉かせさそふめる露の命を  0926:7918        里2  秋2   露2 われなくはこのさと人やあきふかきつゆをたもとにかけて忍はん  0927:7919             別3       宿2 さま/\にあはれおほかるわかれかな心を君かやとにとゝめて  0928:7920            慕2        添1 かへれとも人のなさけにしたはれて心は身にもそはすなりぬる  返2        聞1及2  かへしともありけり、きゝおよはぬはかゝす。  0929:7921      集2             常盤3  新院、歌あつめさせおはしますときゝて、ときはに  爲忠4    はへり1書1集2  〔ゐ〕  ためたゝか歌の侍けるをかきあつめてまいらせける   大原4   見1 遣2  をおほはらよりみせにつかはすとて                     寂超 諸共4  散1言2 葉1         袖2 濡2   かな1 もろともにちることのはをかくほとにやかてもそてのそほちぬる哉  0930:7922  かへし   經1 朽1 常盤3 言2     忍2   大原4  里2 としふれとくちぬときはのことの葉をさそしのふらんおほはらのさと  0931:7923    爲忠4    わか1 具1  弟4             書1   〔お〕  寂超ためたゝか歌に我歌かきくし、又をとうとの寂       取1具1     〔ゐ〕  然か歌なととりくして、新院へまいらせけるを、人     傳2  〔ゐ〕          兄2  にとりつたへてまいらせさせけりときゝて、あにに  はへり1  許2  侍ける想空かもとより 〔へ〕風2   許3          散1  無1 言2 葉1 いゑのかせつたふはかりはなけれともなとかちらさぬなけのことのは  0932:7924  返し 家2 風2   吹1  木1   今2     思2 言2 葉1 いへのかせむねとふくへきこのもとはいまちりなんとおもふことのは  0933:7925       召1   奉4         公能4  新院百首歌めしけるにたてまつるとて、右大將きん     許2  見1 遣2         まうす1  よしのもとよりみせにつかはしたりける、返し申と  て 家2 風2吹1傳2   甲斐2  散1言2 葉1     かな1 いへのかせふきつたへけるかひありてちることのはのめつらしき哉  0934:7926  返し に】 〔へ〕風2  傳2   和歌2浦2     言2 葉1   知1 いゑのかせふきつたふともわかのうらにかひあることのはにてこそしれ  0935:7927:玉葉六  題しらす 木枯4  木1  落1 山里4 こからしにこの葉のおつるやまさとはなみたこそさへもろくなりけれ  0936:7928 峯2              添1 聞2 みねわたるあらしはけしき山さとにそへてきこゆる瀧川の水  0937:7929        絶1   里2 淋2     住1憂1 とふ人もおもひたえたる山さとのさひしさなくはすみうからまし  0938:7930:千載十七          比2 鐘2〔お〕           聞1 あかつきのあらしにたくふかねのをとを心のそこにこたへてそきく  0939:7931:新古今十八 待1   入相4  鐘2〔お〕 なり1     聞1                  明日2 またれつるいりあひのかねのをとす也あすもやあらはきかんとすらん  0940:7932  風2        里2 淋2  添1      聲2 松かせの音あはれなる山さとにさひしさそふるひくらしのこゑ  0941:7933:玉葉十六 谷2       松2 たて1 我2  友2     思2 たにのまにひとりそまつも立りけるわれのみともはなきかとおもへは  0942:7934 入2   山2     知1     兼1〔お〕〔お〕 いり日さすやまのあなたはしらねとも心をかねてをくりをきつる  0943:7935 何2   汲1   澄1   岩2    影2 なにとなくくむたひにすむ心かないは井の水にかけうつしつゝ  0944:7936 水2〔お〕 淋2  庵2 友2   峯2     絶1間1 みつのをとはさひしきいほのともなれやみねのあらしのたえま/\に  0945:7938 鶉3 伏1刈田3   〔お〕出1     照1 三日2 影2 うつらふすかりたのひつちをひいててほのかにてらすみか月のかけ  0946:7937    越1峯2 木1間1わけ1              來1   清水3 あらしこすみねのこのまを分きつゝ谷のしみつにやとる月影  0947:7939 濁2   岩2         汲1 宿2    〔わ〕 にこるへきいは井の水にあらねともくまはやとれる月やさはかん  0948:7940    住1庵3    射1       邊1 ひとりすむいほりに月のさしこすはなにか山への友にならまし  0949:7941 たつね1       宿2 木1間1    射1 尋きてこととふ人のなきやとにこのまの月の影そさしくる  0950:7942 柴2 庵2 住1憂1亊2 しはのいほはすみうきこともあらましを友なふ月の影なかりせは  0951:7943   消1 端山3   洩1           見1 かけきえてはやまの月はもりもこす谷はこすゑの雪とみえつゝ  0952:7944     今宵3        厭2     晴1  〔ゑ〕 雲にたゝこよひの月をまかせてんいとふとてしもはれぬ物ゆへ  0953:7945            厭2   雲2  此處2 月を見るほかもさこそはいとふらめくもたゝこゝの空にたゝよへ  0954:7946 晴1間1      滿1    見1   思2 絶1 はれまなく雲こそ空にみちにけれ月みることはおもひたえなん  0955:7947 濡1    洩1       入1    思2        〔宿〕 ぬるれとも雨もる山のうれしきはいりこん月をおもふなりけり  0956:7948 れけ1           岩2  入1 分いりて誰かは人をたつぬへきいはかけ草のしける山路を  0957:7949  里2   懸樋3 絶1   水乞鳥6   聲2 山さとは谷のかけひのたえ/\にみつこひとりのこゑきこゆなり  0958:7950 番2   映2     友2   鴛鴦2    〔と〕             住1 つかはねはうつれはかけをともとしてをしすみけりな山川の水  0959:7951      風2       雁2     聲2 聞1   かな1 つらならてかせにみたれてなくかりのしとろにこゑのきこゆなる哉  0960:7952 晴1        埋2   苔2     霧2朽1 はれかたき山路の雲にうつもれてこけのたもとはきりくちにけり  0961:7953 葛3 這1端山3 下2      住1 如何2木暗2 つゝらはふはやまはしたもしけゝれはすむ人いかにこくらかるらん  0962:7954 熊2 棲1苔2 岩山4〔お〕            通2 くまのすむこけのいはやまをそろしみむへなりけりな人もかよはぬ  0963:7955 を〕   岩2     霰3       窓2 おとはせていはにたはしるあられこそよもきのまとの友となりけれ  0964:7956      物2     聞1   枯1  楢2  柴2 落葉3                     〔ならのしは6〕 あはれにそものめかしくはきこえけるかれたるならはのしはのおちはは  0965:7957 柴2圍2 庵3     旅2    〔お〕風2 しはかこふいほりのうちはたひたちてすとをるかせもとまらさりけり  0966:7958    戸1吹1   入1   何2 嵐3  窓2 谷風はとをふきあけているものをなにとあらしのまとたゝくらん  0967:7959     篠2 籬3  風2冱1    消1 信樂4  里2 春あさきすゝのまかきにかせさえてまた雪きえぬしからきのさと  0968:7976 水脈2  天2 川岸4         見1   淀2 みをよとむあまのかはきしなみたゝて月をはみるやさへさみのかみ  0969:7961      曇2         稻葉3    朝日子4 玉2 ひかりをはくもらぬ月そみかきけるいなはにかゝるあさひこのたま  0970:7962 磐余野4 萩2 絶1間1     兒手柏6   花2咲1 いはれののはきかたえまのひま/\にこのてかしはのはなさきにけり  0971:7963  手1    花2     袖2     萩2  摺2 衣てにうつりしはなの色かれてそてほころふるはきか花すり  0972:7964 小笹原5 葉末3   玉2 似1石2無1  ゆく1                         地1 をさゝはらはすゑの露はたまににていしなき山を行心ちする  0973:7965    割1   匠3  出1     すく1                      笠取4 まさきわるひたのたくみやいてぬらん村雨過るかさとりの山  0974:7966 河合4  眞木2裾山4 石2立1 杣2 如何2                       〔涼し3〕 かはあいやまきのすそやまいしたててそま人いかにすゝもかるらん  0975:7968 雪2解1 茂1  拉2 〔さ〕  道2行1   足柄4 ゆきとくるしみみにしたくからさきのみちゆきにくきあしからの山  0976:7969 嶺渡3      〔を〕立1   木挽3待1  越2 名香2 ねわたしにしるしのさほやたてつらんこひきまちつるこしのなか山  0977:7970 雲取4  志古2    〔お〕 小口3 原2 淋2 くもとりやしこの山路はさてをきてをくちかはらのさひしからぬか  0978:7971    ゆく1 如何2寒2      嶽2     舟2  〔に〕 ふもと行ふな人いかなさむからんくま山たけをおろす嵐に  0979:7972 折1掛1 波2 立1  見1 かな1  來1 鷺2  鳥2 をりかくるなみのたつかとみゆる哉さすかにきゐるさきの村とり  0980:7973         夜2 通2   隣3  傳2 畦2 細道4 わつらはて月にはよるもかよひけりとなりへつたふあせのほそみち  0981:7974 荒1   澤田3 畦2 苦參3    待1        かな1               〔おひ〕 あれにけるさはたのあせにくららをいて秋まつへくもなきわたり哉  0982:7975 傳2   打樋3 絶1            〔は〕 つたひくるうちひをたえすまかすれは山田は水もおもらさりけり  0983:7976     〔を〕〔お〕  變2         實1  憂1 身にしみしおきのをとにはかはれともしふく風こそけには物うき  0984:7977 小芹3摘1澤2 氷3  隙2       初1櫻井4  里2 こせりつむさはのこほりのひまたえて春めきそむるさくらゐのさと  0985:7978     峯2 霞3    立1   懸樋3    なり1 くる春はみねにかすみをさきたてて谷のかけひをつたふ也けり  0986:7979:風雅二 〔る〕  櫻3  枝2      花2          かな1 はたになるさくらのえたはなにとなくはななけれともむつましき哉  0987:7980 〔わ〕       吉野3 花2       見1 空はたる雲なりけりなよしの山はなもてわたる風とみたれは  0988:7981         くる1         花2 さらに又かすみに暮る山路かな春をたつぬるはなのあけほの  0989:7982      花2     見1過1          思2 雲もかゝれはなとをはるはみてすきんいつれの山もあたにおもはて  0990:7983     山2見1             馴1 睦2 わすれ1                    〔ゑ〕 雲かゝるやまみれはわれもおもひいてに花ゆへなれしむつひ忘す  0991:7984:玉葉十四  深2        柴2              聲2   〔ミ〕 山ふかきかすみこめたるしはの庵にこととふ物はうくひすのこゑ  0992:7986 鶯4         巣1   訛1  音1 鳴1 うくひすはゐなかの谷のすなれともたひたるねをはなかぬなりけり  0993:7987      聲2 悟3  得1   聞1 うくひすのこゑにさとりをうへきかはきくうれしきもはかなかりけり  0994:7985    ゆく1     羽風3 すきて行はかせなつかしうくひすになつさひけりな梅の立枝に  0995:7988     海2          波2       白2 山もなきうみのおもてにたなひきてなみの花にもまかふしら雲  0996:7989:風雅二       〔を〕咲1    花2見1夜半2絶間3 おなしくは月のおりさけ山さくらはなみるよはのたえまあらせし  0997:7990:新古今十七 古畑4  岨2   木1  鳩2  呼1   ふるはたのそはのたつきにゐるはとの友よふこゑにすこき夕暮  0998:7991 波2    磯囘3    荒神4  潮2踏1巫覡2待1  ある1 なみにつきていそわにいますあらかみはしほふむきねをまつにや有らん  0999:7992 潮風4  伊勢2濱2  伏1     潮波4       かな1          〔を〕 しほかせにいせのはまおきふせはまつほすしほなみのあらたむる哉  1000:7993 荒磯4  波2 磯馴2 這1松2 鶚3 あらいそのなみにそなれてはふまつはみさこのゐるそたよりなりける  1001:7994 浦2   枯1         波2〔お〕    借1    〔ミ〕 うらちかきかれたる松のこすゑにはなみのをとをや風はかるらん  1002:7995 淡路島5 瀬戸2波凝3 高2     潮2  〔お〕渡2 あはちしませとのなころはたかくともこのしほにたにをしわたらはや  1003:7996 潮路3ゆく1  艫艪3     渦2早2 瀬戸2 しほち行かこみのともろ心せよまたうつはやきせとわたる程  1004:7997 磯2   波2 險2  見1   沖2 波凝3 高  ゆく1 いそにをるなみのけはしくみゆるかなおきになころやたかく行らん  1005:7998      伊吹3颪3  風先4  朝妻舟6   會1 おほつかないふきおろしのかささきにあさつまふねはあひやしぬらん  1006:7999                 【に】 榑舟4  朝妻4    今朝2  伊吹3 嶽2  風卷2 くれふねよあさつまわたりけさなせそいふきのたけに雪しまくめり  1007:8000 近江路4 野路2旅2      野洲2    〔ほ〕 あふみちやのちのたひ人いそかなんやすかはらとてとをからぬかは  1008:8002     大幣4 小幣3  並1 馬形4 結2 野邊2 さと人のおほぬさこぬさたてなめてむまかたむすふのへになりけり  1009:8003       【見】          時2 いたけもるあまみかときになりにけりえそかけしまを煙こめたり  1010:8004 武士4  馴1     面立3      退2 鴨2 入首4 ものゝふのならすすさみはおもたたしあちそのしさりかものいれくひ  1011:8005 陸奧4  奧2          壺2 碑4     濱風4 むつのくのおくゆかしくそおもほゆるつほのいしふみそとのはまかせ  1012:8006                  原2 丘2 越1                        〔え〕 あさかへるかりゐうなこのむらともははらのをか山こゑやしぬらん  1013:8007    伏1こ1  下2 葛2    裏反3     風2     〔木〕          ふき1 すかるふすすくれかしたのくすまきを吹うらかへす秋の初かせ  1014:8008 諸聲4         聞2   言1合2      戀1 もろこゑにもりかきみかそきこゆなるいひあはせてやつまをこふらん  1015:8009 菫3 咲1横野3 茅花3咲1          通2 すみれさくよこののつはなさきぬれはおもひ/\に人かよふなり  1016:8010 紅4         蓼2 穗1辛2    眼1 立1 くれなゐの色なりなからたてのほのからしや人のめにもたてぬは  1017:8011 蓬生4           面2 烏扇6      茂2 よもきふはさまことなりや庭のおもにからすあふきのなそしけるらん  1018:8012 苅1殘2   眞菰3 隱2          鳴1蛙3 かな1 かりのこす水のまこもにかくろへてかけもちかほになくかはつ哉  1019:8013    原2  風2吹1      暑2  蝉2 聲2       〔かせ〕 やなきはらかはりてふかぬかけならはあつくやせみのこゑにならまし  1020:8014   〔おひ〕涼目3    蔭2   浪2  岸2  渡2 ひさきをいてすゝめとなれるかけなれやなみうつきしに風わたりつゝ  1021:8015     水銹3〔ゑ〕 思2   緑3       浮2 月のためみさひすへしとおもひしにみとりにもしく池のうき草  1022:8016      御生3 標2 引1鈴2       〔な〕 おもふことみあれのしめにひくすゝのかなはすはよもあらしとそ思ふ  1023:8017  熊野3 濱木綿4              年2 重2         〔お〕 みくまののはまゆふをふるうらさひて人なみ/\にとしそかさなる  1024:8018 石2 上2古2 住家3  入1   淺茅3             わけ1 いそのかみふるきすみかへ分いれは庭のあさちに露のこほるゝ  1025:8019             退1潮2 沈2   悲2 とをちさすひたのおもてにひくしほにしつむ心そかなしかりける  1026:8020 籬2 咲1花2 睦2  飛1〔ふ〕羨4 ませにさくはなにむつれてとふてうのうらやましくもはかなかりけり  1027:8021 移2 ゆく1    言2 葉1名1 徒2  露草4  花2 うつり行色をはしらすことのはのなさへあたなるつゆくさのはな  1028:8022 風2吹1 徒2 破1 芭蕉葉4        頼2           ゆく1 かせふけはあたにやれ行はせをはのあれはと身をもたのむへきかは  1029:8023    蓬3  宿2 何2   荒1ゆく1 古郷のよもきはやとのなになれはあれ行庭にまつしけるらん  1030:8024      見1   似1褪1      昔3   往1 ふるさとはみし世にもにすあせにけりいつちむかしの人ゆきにけん  1031:8025                      打1〔を〕 しくるれは山めくりする心かないつまてとのみうちしほれつゝ  1032:8026      落1 涙3           物2 悲2 はら/\とおつるなみたそあはれなるたまらすもののかなしかるへし  1033:8027      芹2 聞1       摘1     知1 なにとなくせりときくこそあはれなれつみけん人の心しられて  1034: やま人よ吉野のおくのしるへせよはなもたつねんまたおもひあり  1035:8029         似1 櫻3   風2身1 わひ人のなみたににたるさくらかなかせみにしめはまつこほれつゝ  1036:8030:新古今十七 吉野3    出1  思2   花2散1 よしの山やかていてしとおもふ身をはなちりなはと人やまつらん  1037:8031   來1  散1     花2 見1 人もこす心もちらて山かけははなをみるにもたよりありけり  1038:8032 風2   物2       染1   染1 かせの音にものおもふわれか色そめて身にしみわたる秋の夕暮  1039:8033 我2   風2     篠竹4  起1伏1物2 われなれやかせをわつらふしのたけはおきふしものの心ほそくて  1040:8034 來1              命3  惜1 こん世にもかゝる月をし見るへくはいのちををしむ人なからまし  1041:8035                     闇2 照2 この世にてなかめられぬる月なれはまよはんやみもてらささらめや  Book  山家集下  Subtitle  雜  1042:8036    〔月〕頃2夜1  北白川6          更1  八月、々のころよふけてきたしらかはへまかりけり。                【こと1】  由2  樣2    はへり1  〔お〕  よしあるやうなる家の侍けるに、ものをとのしけれ    立停4        折2〔は〕  は、たちとまりてきゝけり。をりあわれに秋風樂と  まうす1   樂2             淺茅3 露2  申かくなりけり。庭を見いれけれはあさちのつゆに    宿2  氣色3      添1 〔を〕  月のやとれるけしきあはれなり。そひたるおきの風              まうし1    染1         入1 〔ほ〕  身にしむらんとおほえて、申いれてとをりける         染1 秋風のことに身にしむこよひかな月さへすめる庭のけしきに  1043:8036  泉3  主2隱2     傳2       許2  いつみのぬしかくれて、あとつたへたりける人のも    罷2   泉3  對2  舊2     いふ1  とにまかりて、いつみにむかひてふるきを思ふと云       詠1  亊を、人々よみけるに 住1   汲1       昔3  如何2懷2 すむ人の心くまるゝいつみかなむかしをいかにおもひいつらん  1044:8038  ともにあひむかしをこふ4       いふ1  逢友戀昔と云亊も 今2   昔語5         怪2      〔を〕 いまよりはむかしかたりはこゝろせんあやしきまてに袖しほれけり  1045:8039  秋2 末2 しやくねん2   暮2   寄1             〔ゐ〕  あきのすゑに寂然高野にまいりてくれの秋によせて    述1  思をのへけるに 馴1來1   疎2 なり1     添1            果1 なれきにし都もうとく成はててかなしさそふる秋のくれかな  1046:8040:新古今九  相2知1           罷2     わかれのうた2  あひしりたりける人のみちの國へまかりけるに、別   詠1  歌よみけるに  往1  待1      遣1         暮2 君いなは月まつとてもなかめやらんあつまのかたの夕くれの空  1047:8041     りやうせん2     罷2      詠1        住1  大原に良暹かすみける所に人々まかりて、述懷歌よ        かきつけ2  みて、妻戸に書付ける        炭竈4       言1 おほはらやまたすみかまもならはすといひけん人を今あらせはや  1048:8042:新拾遺十九  〔覺〕           移2   跡2  大學寺の瀧殿の石とも、閑院にうつされてあともな              罷2  くなりたりときゝて、見にまかりたりけるに、赤染     今2       詠1  おもひいて2  か、「いまたにかゝり」とよみけん思出られて、あ  はれに覺えけれは 今2       言1 瀧1 瀬1 いまたにもかゝりといひしたきつせのそのをりまては昔なりけん  1049:8043       いふ1       詠1  深夜水聲と云亊を、高野にて人々よみけるに        【お】      窓2         更1  告1 まきれつるまとのあらしの聲とめてふくるをつくる水の音かな  1050:8044  竹風驚夢            散1   〔お〕 たまみかく露そまくらにちりかゝる夢をとろかす竹の嵐に  1051:8045      いふ1  山家夕と云亊を人々よみけるに みね1】     松2            添1  相2 鐘2 峯おろすまつのあらしの音に又ひゝきをそふる入あひのかね  1052:8046  暮山路 夕2   檜原3    越1ゆけ1      山鳩4 ゆふされやひはらのみねをこえ行はすこくきこゆるやまはとのこゑ  1053:8047    リよしゆくをかさぬ3  海邊重旅宿 波2       根1           今宵3 なみちかき磯の松かねまくらにてうらかなしきはこよひのみかは  1054:8048:續拾遺二十         籠2     具1    〔ゐ〕  俊惠、天王寺にこもりて、人々くして住吉にまいり    詠1   具1  て歌よみけるにくして                       【脱】 住吉4    根1  波2〔お〕     懸1 沖2 潮風4 すみよしの松かねあらふなみのをとをこすゑにかくるおきつしほかせ  1055:8049        〔ゐ〕  立歸4        遣2  寂然、高野にまいりて、たちかへりて、大原よりつ  かはしける 隔2 來1           名殘3       霧2 へたてこしそのとし月もあるものをなこりおほかる峯の秋きり  1056:8050  返し      名殘3         たち1 したはれしなこりをこそはなかめつれ立かへりにし峯の秋霧  1057:8051  常2    道2辿2  つねよりも、みちたとらるゝ程に、雪ふかゝりける  ころ1  〔ゐ〕          許2  比、高野へまいるときゝて、中宮大夫のもとより、        如何2おもひ1 都3   何時2            立1         いつ1  かゝる雪にはいかに思たつそ、みやこへはいつ出へ      まうし1  きそ、と申たりける返亊に 雪2分1    やまち2    年2       逢1 ゆきわけてふかき山路にこもりなはとしかへりてや君にあふへき  1058:8052  返し 分1    路1       疾1たち1 年2 比2                   歸2 わけてゆく山ちの雪はふかくともとく立かへれとしにたくへて  1059:8053  山籠4    はへり1 年2 込1 春2  やまこもりして侍けるに、としをこめてはるになり            霞2 渡2     〔お〕  ぬときゝけるからに、かすみわたりて、山河のをと  日頃3  似1  ひころにもにすきこえけれは 霞2   年2 内2  分1     告1 かすめともとしのうちはとわかぬまに春をつくなる山河の水  1060:8054  年2 内2 春立3   雨2 降1  としのうちにはるたちて、あめのふりけれは 春2   〔お〕       雨2  年2 はるとしもなをおもはれぬ心かなあめふるとしのこゝちのみして  1061:8055      數多3はへり1 何2      問1  野に人のあまた侍けるを、なにする人にかととひけ     莱1 者2   答2     年2 内2      摘1  れは、なつむものなりとこたへけれは、としのうち        春2     若菜3  然1 おもひ1  にたちかはるはるのしるしのわかなか、さはと思て  詠1  よめる                    〔けら:板本 〕若立4 年2 早2      越2   宜2摘1  〔ゑく:板本 〕 としははや月なみかけてこえにけりむへつみはへししはのわかたち  1062:8056  春立3  詠  はるたつ日よみける            聞1         吉野3 山2 なにとなく春になりぬときく日より心にかゝるみよしののやま  1063:8057       雨2降1  正月元日にあめふりけるに 何時2  初2 雨2 降1   野邊2若菜3 生1 いつしかもはつ春さめそふりにけるのへのわかなもおひやしぬらん  1064:8058   深1 住1はへり1立1  山ふかくすみ侍ける春たちぬときゝて     雪2 下2 解1     空2 山路こそゆきのした水とけさらめ都のそらは春めきぬらん  1065:8059  深山不知春  わけ1    外1 谷2           告1 雪分てと山かたにの鶯はふもとの里に春やつくらん  1066:8060  嵯峨2罷2       雪2       見1  さかにまかりたりけるに、ゆきふかゝりけるをみお      【、】    遣2    出1      まうし1  きていてしことなと、申つかはすとて         數2 經1   嵯峨野3  消1 おほつかな春の日かすのふるまゝにさかのの雪はきえやしぬらん  1067:8061  返し                     靜忍法師         <クル>  返2    訪1  まつ1   消1   野邊2淡2 立ちかへり君やとひくと待ほとにまたきえやらすのへのあは雪  1068:8062  鳴1絶1    鶯4    住1はへり1  聲2                     谷1  なきたえたりけるうくひすの、すみ侍けるたににこ  ゑのしけれは    果1 古巣3 歸2   旅2 塒3  住1憂1 おもひはててふるすにかへる鶯はたひのねくらやすみうかりつる  1069:8063  春2  明1       未2  櫻3  はるの月あかゝりけるに、花またしきさくらの枝を、  風2 搖2     見1  かせのゆるかしけるをみて  見1 風2   枝2   花2  告1  地1 月みれはかせに櫻のえたなえてはなよとつくる心ちこそすれ  1070:8064  國々4 巡2 囘2         吉野3 方2  くに/\めくりまはりて、春かへりて、よしののか    〔ゐ〕            程2 何處3  たへまいらんとしけるに、人の、このほとはいつく    跡2     まうし1  にかあととむへきと申けれは   見1          吉野3   住1 花をみしむかしの心あらためてよしのの里にすまんとそ思ふ  1071:8065       まうし1          端3〔者〕 齡2高2    樣變3  みやたてと申けるはした物の、としたかくなりてさ          縁3  就1  吉野3 住1はへり1  まかへなとして、ゆかりにつきて、よしのにすみ侍     思2    樣2        述1 料2  けり。おもひかけぬやうなれとも、供養をのへんれ       菓2  遣2          まうす1  うにとて、くた物をつかはしたりけるに、花と申も    はへり1見1遣2  のの侍けるをみてつかはしける         菓2         人2 おもひつゝはなのくた物つみてけり吉野のひとのみやたてにして  1072:8066  かへし                     みやたて      深2 運2       悟2 開2    比2 こゝろさしふかくはこへるみやたてをさとりひらけん春にたくへよ  1073:8067               〔に〕  櫻3  並2  立1        散1  さくらにならひてたてりける柳は、花のちりかゝり    【み】  けるを見て ふき1       見1        あをやき2 吹みたる風になひくとみる程に春をむすへる青柳の絲  1074:8068     紅葉3 盛2     〔ゐ〕 出1  寂然、もみちのさかりに高野にまいりていてにけり。  又2 年2   折2 まうし1  またのとしの花のをりに申つかはしける    見1高野3 峯2     頼2    待1 もみちみしたかののみねの花さかりたのめぬ人のまたるゝやなに  1075:8069  かへし                     寂然 友〕見1峯2                おもひいて2 共にみしみねのもみちのかひなれや花のをりにも思出ける  1076:8072      〔ゐ〕        鷺2 居1  天王寺へまいりたりけるに、松にさきのゐたりけるを、    〔かり〕見1詠1  月のひしゆにみてよめる 庭2   鷺            積1 にはよりはさきゐる松のこすゑにそ雪はつもれる夏の夜の月  1077:8070:玉葉十四      〔ゐ〕    岩田3 まうす1                    涼2  夏熊野へまいりけるに、いはたと申所にすゝみて、         付1        許2 遣2  下向しける人につけて京へ西住上人のもとへつかは  しける 松2 根1岩田3    涼2 まつかねのいはたの岸の夕すゝみ君かあれなとおもほゆるかな  1078:8071  葛城4 過1 はへり1〔を〕     紅葉2  かつらきをすき侍けるに、おりにもあらぬもみちの            問1    正木3   まうし1  見えけるを、なにそととひけれは、まさきなりと申     きき1  けるを聞て              似1餘所2    緑3   かな1 かつらきやまさきの色は秋ににてよそのこすゑはみとりなる哉  1079:8073      出1      覺堅5     聞1  高野よりいてたりけるに、かくくゑん阿闍梨きかぬ  樣2      菊2 遣2  さまなりけれは、きくをつかはすとて 汲1    通2  問1   出1 くみてなと心かよははとはさらんいてたるものをきくの下水  1080:8074  返し                     覺堅                     かくくゑん 谷2深2 住1      問1   うらみ1                     結2 たにふかくすむかとおもひてとはぬまに恨をむすふ菊の下水  1081:8075  旅2罷4      相2  たひまかりけるに、入あひをきゝ      くれ1    〔お〕 おもへたゝ暮ぬときゝし鐘のをとは都にてたにかなしかりしを  1082:8076:續拾遺九    〔ほ〕   はへり1 程2經1 所3  秋、とをく修行し侍けるに、ほとへけるところより、          許2 まうしおくり2  侍從大納言成通のもとへ申送ける     【れ】    ふく1     峯2 木1葉1伴2      浮1 あらし吹みねのこのはにともなひていつちうかるゝ心なるらん  1083:8077  返し 何2   落1 木1葉 ふく1 散1  方2 知1              風2 なにとなくおつるこのはも吹かせにちりゆくかたはしられやはせぬ  1084:8078          籠2  たまひ1      出1  宮の法印、高野にこもらせ給て、おほろけにてはい     おもふ1       由2語2  たまひ1  てしと思に、修行のせまほしきよしかたらせ給けり。    果1  御嶽3 〔ゐ〕 たまひ1 遣2                   言1  千日はてて、みたけにまいらせ給て、いひつかはし  ける 憧2         導3     伴2     なり1 あくかれしこゝろを道のしるへにて雲にともなふ身とそ成ぬる  1085:8079  返し 山2 端1      知1     空2    見1 やまのはに月すむましとしられにき心のそらになるとみしより  1086:8080  年頃4 まうし1      〔ほ〕    由2  としころ申なれたりける人に、とをく修行するよし  まうし1    罷2      名殘2多2  立1  申てまかりたりけり。なこりおほくてたちけるに、  紅葉3       見1      待1  甲斐2  もみちのしたりけるをみせまほしくて、まちつるか          まうし1 木1下2 立1寄1  ひなく、いかにと申けれは、このもとにたちよりて  詠1  よみける 心3   深2 紅葉3   染1 別2  行1 散1 なる1 こころをはふかきもみちの色にそめてわかれてゆくやちるに成らん  1087:8081  駿河3 國2久能2 寺2     見1詠1  するかのくにくのの山てらにて、月をみてよみける 涙3          旅2       見1   澄1 なみたのみかきくらさるゝたひなれやさやかにみよと月はすめとも  1088:8082  題不知    染1 〔らけ〕 氣色3  哀3  責1  〔お〕 身にもしみ物あはれなるけしきさへあはれをせむる風のをとかな  1089:8083     〔お〕   澄1   草2  靡2 嵐3 いかてかはをとに心のすまさらんくさ木もなひくあらしなりけり  1090:8084  風2    常盤3   染1 分1 寂2  夕暮4  空2 松かせはいつもときはに身にしめとわきてさひしきゆふくれのそら  1091:8085:續後撰十九  〔ほ〕   おもひ1   〔遠〕 わかれ1           はへり1      いふ1  とをく修行に思たち侍けるに、出行の別と云亊を、    詣1來1詠1はへり1  人々まてきてよみ侍しに 程2經1 同2 都3  内2          問1 ほとふれはおなしみやこのうちたにもおほつかなさはとはまほしきを  1092:8086  年2久2  相2頼2        離2  としひさしくあひたのみたりける同行にはなれて、  〔ほ〕    歸2     おもひ1何2  とをく修行してかへらすもやと思ける、なにとなく  哀2  あはれにて 定2   幾年4   馴1   別2  今日2思2 さためなしいくとせ君になれ/\てわかれをけふはおもふなるらん  1093:8087  年頃4   渡2       初2   まうし1                        歸2  としころきゝわたりける人に、はしめて對面申てか      朝3  へりけるあしたに 別2          重2   過1  方2 今宵3 わかるともなるゝおもひやかさねましすきにしかたのこよひなりせは  1094:8088          <タリ>       勢1罷2       頃2都3 おもひいて2  修行して伊せにまかりけるに、月のころみやこ思出  られて                    【井】 都3        影2   同2 雲2    見1 みやこにも旅なる月のかけをこそおなしくもゐの空にみるらめ  1095:8089:玉葉二十      〔ゐ〕仕2 奉2   慣2     遁2  そのかみまいりつかうまつりけるならひに、世をの     後2 賀茂2〔ゐ〕   齡2高2  かれてのちもかもにまいりけり。としたかくなりて、     方2          歸2 〔ゐ〕 亊2  四國のかたへ修行しけるに、またかへりまいらぬこ                  〔ゐ〕  〔ゐ〕  ともやとて、仁安二年十月十日の夜まいり、幣まい       内2          棚尾3 社3  らせけり。うちへもいらぬ亊なれは、たなうのやし    取1    〔ゐ〕  ろにとりつきて、まいらせ給へとて、心さしけるに、  木1間1       常2  このまの月ほの/\に、つねよりも神さひ、あはれ        詠1  におほえて、よみける 畏3   四手2          何時2  思2 〔は〕 かしこまるしてになみたのかゝるかな又いつかはとおもふあわれに  1096:8090:續後撰十九  播磨3    〔ゐ〕      清1 見1  はりまの書冩へまいるとて、野中のし水をみける亊  一昔5         年2經1後2  ひとむかしになりにけり。としへてのち修行すとて  〔ほ〕    同2 樣2  變2  とをりけるに、おなしさまにてかはらさりけれは      野中3 清1       影2   おもひいつ2 むかし見しのなかのし水かはらねはわかかけをもや思出らん  1097:8092:新後撰七       具1 罷2        都3  歸2  四國の方へくしてまかりたりける同行、みやこへか  へりけるに                離2 難2 かへりゆく人のこゝろを思ふにもはなれかたきは都なりけり  1098:8093:玉葉八     見1   歸2 罷2       哀2     〔お〕  ひとりみをきて、かへりまかりなんするこそあはれ    何時2都3   歸2      まうし1  に、いつかみやこへはかへるへき、なと申けれは   庵2 暫時3    歸2   思2 柴のいほのしはしみやこへかへらしとおもはんたにもあはれなるへし  1099:8094  旅2  詠1  たひの歌よみけるに   旅1   〔お〕          見1 草枕たひなる袖にをく露をみやこの人や夢にみゆらん  1100:8095 越1來1  隔2      果2     きえ1 こえきつる都へたつる山さへにはてはかすみに消ぬめるかな  1101:8096:千載八    原2遙2    隔2 來1  出1    見1 わたのはらはるかに波をへたてきて都にいてし月をみるかは  1102:8097:玉葉五          隱2          厭2 わたの原波にも月はかくれけりみやこの山を何いとひけん  1103:8098:新千載十八            罷2 はへり1美豆野3まうす1  西の國の方へ修行してまかり侍けるにみつのと申所   具1        はへり1 親2  者2  にくしならひたる同行の侍けるか、したしきものの       はへる1          具1  例ならぬ亊侍とてくせさりけれは 山城4      草2 繋2   駒2物憂3  見1  かな1 やましろのみつのみくさにつなかれてこまものうけにみゆる旅哉  1104:8099:風雅六   峯2 〔ん〕  まうす1  見1詠1  大みねのしむせんと申所にて月をみてよみける 深2   澄1 ふかき山にすみける月を見さりせは思出もなき我身ならまし  1105:8100 峯2 上2 同2    照2     柄2 みねのうへもおなし月こそてらすらめ所からなるあはれなるへし  1106:8101:玉葉五  澄1 谷2  雲2      峯2ふき1 月すめはたににそくもはしつむめるみね吹はらふ風にしかれて  1107:8102  をはすてのみねと申所のみわたされて、思なしにや、  異2  月ことに見えけれは      信濃3    何處3   澄1峯2     あり1 をはすてはしなのならねといつくにも月すむみねの名にこそ有けれ  1108:8103  小池3 まうす1       宿2  こいけと申すくにて 如何2  梢3  隙2  求2 得1小池3 今宵3 いかにしてこすゑのひまもをもとめえてこいけにこよひ月のすむらん  1109:8104  篠2 宿2  さゝのすくにて 庵3   草2 枕3 〔伴1〕       宿2 いほりさすくさのまくらに友なひてさゝの露にもやとる月かな  1110:8105  倍伊知3まうす1   見1   梢3    袂3       宿2  へいちと申すくにて月をみけるに、こすゑの露のた  もとにかゝりけれは 梢3 洩1        〔へし1〕 具1 こすゑもる月もあはれをおもふてひかりにくして露のこほるゝ  1111:8106  東屋4  まうす1 時雨3 後2  見1  あつまやと申所にて、しくれののち月をみて    時雨3晴1            〔ね〕澄1 神無月しくれはるれはあつまやの峯にそ月はむれとすみける  1112:8107     谷2    時雨2   澄1  秋2 かみな月たににそ雲はしくるめる月すむ峯はあきにかはらて  1113:8108  古屋3 まうす1       宿2  ふるやと申すくにて    時雨3    澄1  曇2  影2 頼2   かな1 神無月しくれふるやにすむ月はくもらぬかけもたのまれぬ哉  1114:8109  行尊僧正也            卒塔婆3 紅葉3 散1  平等院の名かゝれたるそとはに、もみちのちりかゝ      見1  花2  外2      〔人2〕  りけるをみて、「はなよりほかの」とありけるひと 〔そ〕           詠1  むかしと、あはれにおほえてよめる      花2見1峯2 名1留1 紅葉3 今日2共2 あはれとてはなみしみねになをとめてもみちそけふはともにふりける  1115:8110   種2 嶽2  千くさのたけにて 分1 ゆく1                 染1 わけて行色のみならすこすゑさへ千くさのたけは心そみけり  1116:8111     【れ】  蟻2 門渡3  まうす1  ありのとわたりと申所にて                【脱】 笹2深2 霧2越1岫2 朝2立1 靡2 さゝふかみきりこすくきをあさたちてなひきわつらふありのとわたり  1117:8112        稚兒2    續2   宿2  行者かへり、ちこのとまり、つゝきたるすくなり、     伏2 屏風立6   まうす1                  平3   過1  春の山ふしはひやうふたてと申所をたひらかにすき     【はたた】         おもひ1  稚兒2      おもひ1  んことをかたく思て、行者、ちこのとまりにて、思  わつらふなるへし 屏風4     立1         還2 稚兒2泊2 ひやうふにや心をたてておもひけん行者はかへりちこはとまりぬ  1118:8113  みかさね2 拜2     殊2 〔ふ〕     瀧2  三重のたきををかみけるに、ことにたうとくおほえ    さんこふ2 洒2       罪2  て、三業のつみもすゝかるるこゝちしけれは   積1 言葉3 罪2 洗2   澄1 身につもることはのつみもあらはれ心すみぬるみかさねのたき  1119:8114   【ふり】                〔はミセケチ->イ〕        嶽2 まうす1  天ほうれんのたけと申所にて、釋迦の説法の座のい       拜2  しと申す所をかみて 此處2  法2説1      聞1悟2   得1 今日2 こゝこそはのりとかれける所よときくさとりをもえつるけふ哉  1120:8115       【を】罷2   折2   おもひ1                     隔2  修行して、とほくまかりけるをり、人の思へたてた      〔衍:やうなる〕   樣2    はへり1  るやうなるやうなる亊の侍けれは      幾重3     越1       隔2 よしさらはいくへともなく山こえてやかても人にへたてられなん  1121:8116:新古今十七  思2  〔る〕思2 立1由2聞2     許2  おもはすなに亊おもひたつよしきこえける人のもと       言1遣2  へ高野よりいひつかはしける 〔を〕  〔ほ〕深2 分1入1 憂1 聞1 しおりせしなを山ふかくわけいらんうき亊きかぬ所ありやと  1122:8117  鹽湯3 罷2                晦日4  しほゆにまかりたりけるにくしたりけるひと九月つ      前2 上2     遣2      代2  こもりにさきにのほりけれは、つかはしける人にか  はりて 秋2 暮1  都3  歸2 あきはくれ君はみやこへかへりなはあはれなるへき旅の空かな  1123:8118  返し                     大宮の女房 加賀  〔お〕 立1いつ1        暮1 君ををきてたち出る空の露けさに秋さへくるゝ旅のかなしさ  1124:8119  鹽湯3      歸2 詣1來1故郷4  花2  しほゆいてて、京へかへりまてきてふるさとのはな  霜枯3    哀2      急2 歸2  しもかれける、あはれなりけり。いそきかへりし人   許2   代2  のもとへ、又かはりて 〔お〕   小萩3 枯1   何處3   留1 露をきし庭のこはきもかれにけりいつら都に秋とまるらん  1125:8120  かへし                     おなし人 慕2     留1        急2  舟出3 したふ秋は露もとまらぬ都へとなとていそきしふなてなるらん  1126:8121:新拾遺九  陸奧2國2     罷2        關2  みちのくにへ修行してまかりけるに、白川のせきに  留2    所柄5    常2  とゝまりて、ところからにやつねよりも月おもしろ             【風】【吹】              風2 吹1  まうし1                        折2  くあはれにて、能因か「秋かせそふく」と申けんを   何時2    おもひ1   名殘3多2           出1  りいつなりけんと思いてられて、なこりおほくおほ       關屋3 柱3  書1付1  えけれは、せきやのはしらにかきつけける 白川4  關屋3   洩1影2     留1 なり1 しらかはのせきやを月のもるかけは人の心をとむる成けり  1127:8122  關2 入1  信夫3 まうす1    世1亊2              邊3  せきにいりて、しのふと申わたり、あらぬよのこと       哀2    都3 出1  數2思2  におほえてあはれなり。みやこいてし日かすおもひ  續2      霞3  共2   はへる1跡2  つゝけられて、「かすみとともに」と侍ことのあと  辿2 詣1來1   一2  おもひ1 詠1                 知1  たとりまてきにける心ひとつに思しられてよみける    出1 逢坂4 越1 折2           關2 みやこいててあふさかこえしをりまては心かすめし白川のせき  1128:8123  武隈4  松2 昔3           跡2  たけくまのまつもむかしになりたりけれとも、あと       見1罷2  詠1  をたにとてみにまかりてよみける 枯2      跡2 武隈4     言1  甲斐2 かれにける松なきあとのたけくまはみきといひてもかひなかるへし  1129:8124  【りり1衍】              【れ】  舊1  棚橋4  紅葉3 埋2      渡2  ふりたるたなはしをもみちのうつみたりける、わた                尋2  りにくゝてやすらはれて、人にたつねけれは、おも     橋2 まう1     まうし1  はくのはしと申すはこれなりと申けるをきゝて 踏1 憂1紅葉3 錦3 散1敷1   通2       橋2 ふままうきもみちのにしきちりしきて人もかよはぬおもはくのはし  信夫3 里2  奧2      入1   橋1  しのふのさとよりおくへ二日はかりいりてあるはしなり  1130:8126  名取3  渡2     岸2 紅葉3 影2 見1  なとり河をわたりけるに、きしのもみちのかけをみて 名取3 岸2     映2       錦3  底2   敷1 なとり河きしのもみちのうつるかけはおなしにしきをそこにさへしく  1131:8127        平泉5   罷2 着1  十月十二日、ひらいつみにまかりつきたりけるに、  雪2降1 嵐3 激2   殊2 外2 荒1  ゆきふり、あらしはけしく、ことのほかにあれたり           見1    罷2     見1  けり。いつしか衣河みまほしくてまかりむかひてみ     何2 岸2 着1  けり。かはのきしにつきて、衣河の城しまはしたる  亊柄4 樣2變2  物2 見1 地1   汀3  ことからやうかはりてものをみる心ちしけり、みき   凍2  取1  冱1           〔え〕  はこほりてとりわきさへけれは 取1分1   凍1 冱1 渡2   見1來1 今日2 とりわきて心もしみてさえそわたる衣河みにきたるけふしも  1132:8128    年2        越1  瀧2   まうす1  又のとしの三月に出羽國にこえて、たきの山と申山    はへり1 櫻3  常2   薄紅6  寺に侍けるに、さくらのつねよりもうすくれなゐの   濃1    並1立1     寺2  色こき花にて、なみたてりけるを、てらの人々も見 【きよう2】  興2  けうしけれは 類2   思2     櫻3 たくひなきおもひいてはのさくらかなうすくれなゐの花のにほひは  1133:8125       柴2 煙3  見1  下野國にてしはのけふりをみて       小野2原2 おもひいつ2         かな1 みやこちかきをの大はらを思出るしはのけふりのあはれなる哉  1134:8129:玉葉八  同2 旅2  おなしたひにて 風2荒2 柴2   常2   寢覺3 物2 悲2 かせあらきしはの庵はつねよりもねさめそものはかなしかりける  1135:8130           まうす1  待1  數2經1  津の國にやまもとと申所にて人をまちて日かすへけれは           〔ト〕      都3  方2 聞1空2睦2      眺2 なにとなくみやこのかたをきくそらはむつましくてそなかめられける  1136:8131    讚岐3          便2  付1  新院さぬきにおはしましけるに、たよりにつけて、     許2  女房のもとより 水莖4  書1流2   方2        汲1 知1 みつくきのかきなかすへきかたそなき心のうちはくみてしらなん  1137:8132  かへし 程2〔ほ〕通2        〔ほ〕 流2 水莖4                  書1 ほととをみかよふ心のゆくはかりなをかきなかせみつくきの跡  1138:8133      遣2  又、女房つかはしける      憂1     頼2   ちきり1導3 いとゝしくうきにつけてもたのむかな契し道のしるへたかふな  1139:8134                        【へ】             憂1        浮1 かゝりける涙にしつむ身のうさを君ならて又誰かうからん  1140:8135:玉葉八  かへし 頼2          一2 世1わかれ1 惑2 たのむらんしるへもいさやひとつよの別にたにもまとふ心は  1141:XXXX    いつ1 今日2沈2   浮1  末2 なほ2 なかれ出る涙にけふはしつむともうかはんすゑを猶思はなん  1142:8136:新古今九  〔ほ〕               前2  とをく修行する亊ありけるに、菩提院のさきの齋宮   〔ゐ〕        別2   仕2 奉2  にまいりたりけるに、人々わかれの歌つかうまつり  けるに       逢1   頼2   死出2 路1越1 別2 さりともと猶あふことをたのむかなしての山ちをこえぬわかれは  1143:8137  同2 折2 坪2 櫻3  散1   見1  おなしをり、つほのさくらのちりけるをみて、かく          まうし1  なんおほえ侍ると申ける           惜1      〔へ〕  わすれ1 この春は君にわかれのをしきかな花のゆくゑを思ひ忘て  1144:8138  返2      たまはり1   書1   出1             檜扇4  かへしせよとうけ給て、ひあふきにかきてさしいて  ける                     女房六角の局   往1 形見3       なこり2   誘2 君かいなんかたみにすへき櫻さへ名殘あらせす風さそふなり  1145:8139         罷2   折2 兒島3  西國へ修行してまかりけるをり、こしまと申所に、         給2      籠2  八幡のいはゝれたまひたりけるにこもりたりけり。  年2經1   社3           古木3  としへて又そのやしろを見けるに、松とものふるき          見1  になりたりけるをみて        老2  なり1 わか1經1 程2 知1                 年2 むかし見し松はおい木に成にけり我としへたるほともしられて  1146:8140     罷2  はへり1    〔を〕 紛2  山里へまかりて侍けるに、竹の風のおきにまかへて  聞1  きこえけれは  〔お〕  吹1風2 少3   比2  きけ1                       優2 竹のをとも荻ふくかせのすくなきにたくへて聞はやさしかりけり  1147:8141   遁2  嵯峨2住1    許2 罷2   後2  世のかれてさかにすみける人のもとにまかりて、の    世1〔お〕   勤2   由2まうし1                     歸2  ちのよの亊をこたらすつとむへきよし申てかへりけ       柱3        見1  るに、竹のはしらを立たりけるをみて 世々2         筋2 たて1節2 變2   經1 よゝふとも竹のはしらの一すちに立たるふしはかはらさらなん  1148:8142  題不知 荒2         寂2         訪1 あはれたる草のいほりのさひしさは風よりほかにとふ人そなき  1149:8143 哀2   〔り〕 知1 野1        馴1 住處3 あはれなりよも/\しらぬのの末にかせきを友になるゝすみかは  1150:8144     籠2            何亊4  高野にこもりたりける人を、京より、なにことか又  何時2出1   まうし1     その1〔は〕             由2  いつかいつへきと申たるよしきゝて、其人にかたり  て    何時2          細2     知1      出1 山水のいついつへしとおもはねは心ほそくてすむとしらすや  1151:8145    絶間3  僅3  松のたえまよりわつかに月のかけろひて見えけるを  見1  みて 影2薄2   絶問3 洩1來1  細2  三日月4 空2 かけうすみ松のたえまをもりきつゝ心ほそしやみかつきのそら  1152:8147  【蔭】       いふ1  詠1  木陰納涼と云亊を人々よみけるに 今日2   風2吹1岡2 行1 昨日3涼2  友2 逢1     〔松の1〕 けふもまた松かせふくをかへゆかんきのふすゝみしともにあふやと  1153:8148  入日3   隱2         窓2 射1入1  いりひのかけかくれけるまゝに、月のまとにさしい  りけれは 射1來1 窓2 入2  改3       變1  月夜3 さしきつるまとのいり日をあらためてひかりをかふる夕つくよかな  1154:8149         詠1  月蝕を題にて歌よみけるに 忌1 言1 影2 當2  今宵3  破1  見1名1立1 いむといひてかけにあたらぬこよひしもわれて月みるなやたちぬらん  1155:8150:新勅撰六         住1   遣2  寂然入道大原にすみけるにつかはしける    比良2高嶺3 近2   雪2     思2 大原はひらのたかねのちかけれはゆきふるほとをおもひこそやれ  1156:8151  かへし      都3      冱1 比良2高嶺3 おもへたゝみやこにてたに袖さえしひらのたかねの雪のけしきを  1157:8152     奧2   橋2 上2    明1  高野のおくの院のはしのうへにて、月あかゝりけれ    諸共4  眺2 明1     頃2  は、もろともになかめあかして、そのころ西住上人    出1         忘2 難2    同2  京へいてにけり。その夜の月わすれかたくて、又お    橋2   頃2      許2 言1遣2  なしはしの月のころ、西住上人のもとへいひつかは  しける 亊2    戀1渡2 橋2 上2 爭3 こととなく君こひわたるはしのうへにあらそふ物は月の影のみ  1158:8153  かへし                     西住 思2 遣1    見1 橋2   爭3 おもひやるこゝろはみえてはしの上にあらそひけりな月の影のみ  1159:8154      吉野3  麓3  住1   秋2  如何2  忍西入道よしの山のふもとにすみける、あきの花い             床2    まうし1                    遣2  かにおもしろかるらんとゆかしう、と申つかはした                折1集2  りける返亊に、いろ/\の花ををりあつめて 鹿2 音1              野邊2     かな1 しかのねや心ならねはとまるらんさらてはのへをみな見する哉  1160:8155  かへし 鹿2 立1野邊2錦3  切1端2 殘2 多2   地1 しかのたつのへのにしきのきりはしはのこりおほかる心ちこそすれ  1161:8156   數多3   一人3 隱2      樣2 言1  人あまたして、ひとりにかくして、あらぬさまにい       亊2 はへり1    詠1  ひなしけることの侍けるをきゝて、よみける 一筋4     杣2  揃2   僞3 ひとすちにいかてそま木のそろひけんいつはりつくる心たくみに  1162:8157      はへり1       端3〔者〕 まうし1         者2  陰陽頭に侍けるものに、ある所のはした物もの申け      思2              晦日4  り、いとおもふやうにもなかりけれは、六月つこも    遣2     代2  りにつかはしけるにかはりて   爲2                  祓2 棄1 わかためにつらき心をみなつきのてつからやかてはらへうてなん  1163:  縁3 有1        勘當4      許2  ゆかりありける人の、新院のかんたうなりけるをゆ    給1  由2まうし1           入1  るしたふへきよし申いれたりける御返亊に 最上3    引1  稻舟4  暫2  程2    下2    〔つなてひくとも〕 もかみ川なへてひくらんいなふねのしはしかほとはいかりおろさん  1164:8159  おんかへし2    奉4  御返たてまつりける 強2 引1綱手3 見1 最上3     舟2 つよくひくつなてとみせよもかみ川そのいなふねのいかりをさめて    まうし1  許2 給1  かく申たりけれはゆるしたひてけり。  1165:8160         詠1    海2 際2  幼3  屏風の繪を人々よみけるに、うみのきはに、をさな   賤2  者2  くいやしきもののある所を 磯菜3摘1海士2 乙女3   沖2    波2高2 いそなつむあまのさをとめ心せよおき吹く風になみたかくなる  1166:8161  おなし1苫2      〔お〕  同繪に、とまのうちに人の子をとろきたる所を 磯2 寄1波2   洗2   寢覺2    苫屋形5 かな1 いそによるなみに心のあらはれてねさめかちなるとまやかた哉  1167:       くし2      詠1         配2  庚申の夜、孔子くはりをして歌よみけるに、古今・            梅2 櫻3  山吹4  後撰・拾遺、これを、むめ・さくら・やまふき、に  寄1       詠1  よせたる題をとりてよみける       寄1  古今、梅によす             【る衍】      色2濃1梅2 折1     深2 香1 くれなゐのいろこきむめををる人の袖にはふかきかやとまるらん  1168:8163     櫻3  寄1  後撰、さくらをよす    ふき1        苦2  主2  〔は〕    〔お〕      〔せ〕 春風の吹をこさむに櫻花となりくるしくぬしやおもわん  1169:8164       吹2 寄1  拾遺に、山ふきをよす         【ゐ】 山吹4  花咲3  手1里2          思2 やまふきのはなさく井てのさとこそはやしうゐたりとおもはさらなん  1170:8165  祝3  いはひ 隙2   降1來1  脚2    限2     御代2                           かな1 ひまもなくふりくる雨のあしよりも數かきりなき君かみよ哉  1171:8I66     【もの1】 千1經1       集2     齡3  知1 ち世ふへき物をさなからあつむとも君かよはひをしらんものかは  1172:8167 苔2埋2 搖2  岩2 深2 根1  千歳3 固2 こけうつむゆるかぬいはのふかきねは君かちとせをかためたるへし  1173:8168 群1立1 雲2  鶴2 聲2     千歳3   見1 むれたちてくも井にたつのこゑすなり君かちとせや空にみゆらん  1174:8169 澤邊3  巣立2始2  鶴2 子1  枝2  移2 初1 さはへよりすたちはしむるつるのこは松のえたにやうつりそむらん  1175:8170 大海4  潮2干1山2        變2 おほうみのしほひてやまになるまてに君はかはらぬ君にましませ  1176:8172:新後撰二十     例3          變2 君か世のためしになにをおもはましかはらぬ松の色なかりせは  1177:8172   世1天2 空2  星2     知1 君かよはあまつそらなるほしなれや數もしられぬこゝちのみして  1178:8173               實1  〔代〕   なり1 ひかりさす三笠の山の朝日こそけによろつ世のためし成けれ  1179:8174    代1    引1 龜2  裾2    茂2 よろつよのためしにひかんかめ山のすそのの原にしける小松を  1180:8175 數2     下枝3   そめ1     住吉4 かすかくる波にしつえのいろ染て神さひまさるすみよしの松  1181:8176     平野3         八千代3  添1 若葉さすひらのの松はさらに又枝にやちよの數をそふらん  1182:8177        緑3  染1   幾代3    久2 竹の色もきみかみとりにそめられていくよともなくひさしかるへし  1183:8178  孫3 儲2  喜3      許2 言1遣2  むまこまうけてよろこひける人のもとへいひつかは  しける 〔代〕  二葉3   生1先2 見1 如何2嬉2   經1 千世ふへきふたはの松のおひさきをみる人いかにうれしかるらん  1184:8179  こえふ2  二葉3       はへり1 子1     下2  五葉のしたにふたはなる小松ともの侍けるを、ねの                  〔ゑ〕  日1當2     折櫃4    植1  ひにあたりける日、をりひつにひきうへて、京へつ  かはすとて 君2    〔ふ〕子1    かな1  千代2經1 きみかためこえうのねの日しつる哉たひ/\ちよをふへきしるしに  1185:8180     松2         松2 おもひ1                    あはする1                      まうす1  たゝのまつをひきそへて、このまつの思合亊申へく  なんとて 子1   野1     主2    〔ふ〕 ねのひするのへのわれこそぬしなるをこえうなしとてひく人のなき  1186:8181  世につかへぬへきゆかりあまたありける人の、さも          おもひ1    年越4  籠2             清水4  なかりけることを思て、きよみつにとしこしにこも        遣2  りたりけるにつかはしける   春1 枝々4    榮2   枯1 このはるはえた/\まてにさかゆへしかれたる木たに花はさくめり  1187:8182  これもくして      深2 誓2  頼2   清2 流2  底2汲1 あはれにそふかきちかひのたのもしききよきなかれのそこくまれつゝ  1188:8183        まうし1  白河殿6      蟲2           折2             〔しらかは3〕  八條院、宮と申けるをり、しらはとのにて、女房む   合2         代2  蟲2具1  取1  しあはせられけるに、人にかはりてむしくして、と   出2          映2   由2 作2  りいたしける物に、水に月のうつりたるよしをつく         詠1  りて、その心をよみける 行1末2    流2  常2    澄1 ゆくすゑの名にやなかれんつねよりも月すみわたる白川の水  1189:8184  <二條院>     貝合5        たまひ1   代2  内に、かひあはせせんとせさせ給けるに、人にかは  りて 風2         浦々4  小貝3 群1 拾2 かせたゝて波ををさむるうら/\にこかひをむれてひろふなりけり  1190:8185 難波潟5 潮干3 群1 いて1 白洲3 崎2 小貝3拾2 なにはかたしほひはむれて出たゝんしらすのさきのこかひひろひに  1191:8186 風2吹1 花2咲1波2   度2  貝2寄1三島江4 浦2 かせふけははなさくなみのをるたひに櫻かひよるみしまえのうら  1192:8087 波2洗2       貝2 水際3   疊2〔お〕 なみあらふ衣のうらの袖かひをみきはに風のたゝみをくかな  1193:8188 波2   吹上4  濱2 簾貝5     下2 急2 拾2 なみかくるふきあけのはまのすたれかひ風もそおろすいそきひろはん  1194:8189 潮2染1  〔ほ〕小貝3拾2   色2 濱2  言1 しほそむるますをのこかひひろふとていろのはまとはいふにやあるらん  1195:8190 波2   竹2 泊2  雀貝5  嬉2  世1 遇1 なみふするたけのとまりのすゝめかひうれしきよにもあひにけるかな  1196:8191 波2寄1 白良3 濱2 烏貝5  拾2 易2 なみよするしらゝのはまのからすかひひろひやすくもおもほゆるかな  1197:8192             蔽2     合1    無1世1  〔あ〕 かひよりなきみかみそてにおほはれて心にあはぬこともなきよは  1198:8193      〔大原に2〕         すみ1   かうや2遣2          はへり1  入道寂然、大原住侍けるに、高野よりつかはしける 山2深2     〔め〕聞2  〔お〕 やまふかみさこそあらぬときこえつゝをとあはれなる谷の川水  1199:8194                   【もの1】     眞木2葉1   影2 烈2    凄2 なり1         分1 山ふかみまきのはわくる月かけははけしき物のすこき成けり  1200:8195  深2 窓2     訪1   色2     黄櫨2立枝4 山ふかみまとのつれ/\とふものはいろつきそむるはしのたちえた  1201:8196     苔2 蓆3           啼1猿3 山ふかみこけのむしろのうへにゐて何心なくなくましらかな  1202:8197 山2   岩2 垂2   溜1     落1 橡2拾2 程2 やまふかみいはにしたるゝ水ためんかつ/\おつるとちひろふほと  1203:8198      近2 鳥2〔お〕    恐2        聲2 山ふかみけちかきとりのをとはせて物おそろしきふくろふのこゑ  1204:8199 山2   木暗3 峯2 梢3 やまふかみこくらきみねのこすゑよりもの/\しくもわたる嵐か  1205:8200     榾2伐1              斧2〔お〕 山ふかみほたきるなりと聞えつゝところにきはふをののをとかな  1206:8201 山2   入1 見1     皆2   催3  氣色3  かな1 やまふかみいりてみと見るものはみなあはれもよほすけしきなる哉  1207:8202:玉葉十六  深2 馴1      近2  世1〔ほ〕  程2 知1 山ふかみなるゝかせきのけちかさによにとをさかるほとそしらるる  1208:1203  かへし                     寂然          君2       暮2   大2  里2 あはれさはかうやときみもおもひやれ秋くれかたのおほ原のさと  1209:8204          清水3友2         大原4  里2 ひとりすむおほろのしみつともとては月をそすますおほはらのさと  1210:8205 炭竃4         ひと1         里2 すみかまのたなひくけふり一すちに心ほそきは大原のさと  1211:8206      露2 零2  秋2   引板2       里2                    引1 なにとなくつゆそこほるゝあきの田にひたひきならす大原のさと  1212:8207  〔お〕 枕3  落1      寢覺2       里2 水のをとはまくらにおつるこゝちしてねさめかちなる大原のさと  1213:8208 徒2     庵3       袖2 〔お]   里2 あたにふく草のいほりのあはれよりそてに露をく大原のさと  1214:8209 山風4  峯2   栗2       落1敷1 やまかせにみねのさゝくりはら/\と庭におちしく大原の里  1215:8210      爪木3 木通3  添1 くる1歸2    里2 ますらをかつまきにあけひさしそへて暮れはかへる大原のさと  1216:8211 葎3 這1   木1葉1埋2       來1 むくらはふかとはこのはにうつもれて人もさしこぬ大原の里  1217:8212 諸共4    山路3 深2   鹿2 悲2 もろともに秋もやまちもふかけれはしかそかなしき大原の里  1218:8214                〔ゐ〕  承安元年六月一日、院、熊野へまいらせ給ける跡に、  住吉4            廻2  すみよしに御幸ありけり。修行しまはりて、二日、      〔ゐ〕      住2 江1    仕立2                   新3  かの社にまいりたりけるに、すみのえあたらしくし                 御幸3   おもひいて2  たてたりけるを見て、後三條院のみゆき、神、思出  たまひ1    詠1  給けんとおほえてよみける 絶1     みゆき2    神2如何2  嬉2           待1 たえたりし君か御幸をまちつけてかみいかはかりうれしかるらん  1219:8215    下枝3 洗2   波2 古4   變2  松のしつえをあらひけんなみ、いにしへにかはらす  やとおほえて        下枝3 洗2       掛1   見1 いにしへの松のしつえをあらひけん波を心にかけてこそみれ  1220:8216          ころ1 祭3  歸2  齋院おはしまさぬ比にて、まつりのかへさもなかり      紫野5  けれは、むらさきのもとほるとて                片祭5    掛1 葵3 むらさきの色なき比の野へなれやかたまつりにてかけぬあふひは  1221:8217  北祭5   頃2 賀茂2〔ゐ〕      折2  きたまつりのころ、かもにまいりたりけるに、をり  嬉2           使3 〔ゐ〕   橋2  うれしくて、待たるゝほとそつかひまいりたり、は     着1     拜2  し殿につきてついふしをかまるゝまてはさる亊にて、  〔ひ〕 氣色3振舞4 見1世1亊2    ひと1  まい人のけしきふるまひみしよのことともおほえす、  東遊6    琴2 〔陪〕  あつまあそひにことうつ倍從もなかりけり。さこそ  末2 世1    如何2見1      恥1               給2  すゑのよならめ、神いかにみたまふらむと、はつか    心地3   詠1はへり1  しきこゝちして、よみ侍ける   代1變2                    なる1 神のよもかはりにけりと見ゆるかなそのことわさのあらす成にも  1222:8218  更1     御手洗4〔お〕神2   聞2  ふけけるまゝにみたらしのをとかみさひてきこえけ  れは 御手洗4 流2  何時2變2   末2          世1 みたらしのなかれはいつもかはらしをすゑにしなれはあさましのよや  1223:8219     罷2           〔ゐ〕  伊勢にまかりたりけるに、大神宮にまいりてよみける榊葉4    掛1 木綿2        佛3 なり1 さかきはに心をかけんゆふしてておもへは神もほとけ成けり  1224:8220   〔お〕  たまひ1 前2 過1      内2  齋院をりさせ給て本院のまへをすきけるに、人のう    入1    床2   〔え〕 具1  はへり1  ちへいりけれは、ゆかしくおほへて、くして見侍け     斯1       哀2      〔お〕  るに、かうやはありけんとあはれにおほえて、をり   座2        宣旨2 局3  許2 まうし1  ておはしましける所へ、せんしのつほねのもとへ申  遣2  つかはしける  住1 御内3 荒1    川2  姿3   映2   かな1 君すまぬみうちはあれてありすかはいむすかたをもうつしつる哉  1225:8221  かへし                      〔を〕      齋1來1  傳2   馴1 御内3 聞1 おもひきやいみこし人のつてにしてなれしみうちにきかん物とは  1226:8222  【せ】         年2經1       木立3  伊勢に齋王おはしまさて、としへにけり。齋宮、こ              築垣4  たちはかりさかと見えて、ついかきもなきやうにな  りたりけるを見て      齋3    齋3   注連2御内3 塵2 拂2 いつかまたいつきの宮のいつかれてしめのみうちにちりをはらはん  1227:8223  よのなか2出1來1   有1 樣2   〔お〕  世中に大亊いてきて、新院あらぬさまにならせをは       み1 下2        髮2  しまして、御くしおろして、仁和寺の北院におはし       〔ゐ〕  兼賢4 阿闍梨3 會1                   出1  ましけるにまいりて、けんけんあさりいてあひたり。   明1  詠1  月あかくてよみける    世1影2 變2  澄1  見1わか1                    身1 恨2 かゝるよにかけもかはらすすむ月をみる我みさへうらめしきかな  1228:8224  讚岐3       後2   いふ1    聞2  さぬきにおはしましてのち、歌と云亊のよにいとき             許2 言1  こえさりけれは、寂然かもとへいひつかはしける 言2 葉1情3 絶1     在1逢1   悲2 ことのはのなさけたえにし折節にありあふ身こそかなしかりけれ  1229:8225  かへし                     寂然 敷島4  絶1    泣1 しきしまやたえぬる道になく/\も君とのみこそ跡を忍はめ  1230:8226  讚岐3    心3 引1替1  後2 世1 勤2  さぬきにて、御こゝろひきかへて、のちのよの御つ    隙2    〔お〕           許2  とめひまなくせさせをはしますときゝて、女房のも    まうし1  もん1 具1            書1  とへ申ける。この文をかきくして 若人不嗔打、以  何修忍辱      背2便3       憂1     逢1 世の中をそむくたよりやなからましうき折ふしに君あはすして  1231:8227     序3  具1 〔ゐ〕  これもついてにくしてまいらせけれ 淺2   如何2 〔ゑ〕 〔い〕    亊2  ある1 あさましやいかなるゆへのむくひにてかゝることしも有世なるらん  1232:8228 存2   〔ひ〕住1     このよ2 なからへてつゐにすむへき都かは此世はよしやとてもかくても  1233:8229        現3  見1  目1合1     明1 まほろしの夢をうつゝにみる人はめもあはせてや世をあかすらん  1234:8230     後2   〔ゐ〕   付1 〔ゐ〕  かくてのち、人のまいりけるにつけてまいらせける その1 落1   形見3  思2      間1 其日よりおつる涙をかたみにておもひ忘るゝ時のまもなし  1235:8231  かへし                     女房 目1  〔は〕果1    憂1     流2   かな1 めの前にかわりはてにし世のうさに涙を君になかしける哉  1236:8232      海2 深2    蓮3     入1 松山の涙はうみにふかくなりてはちすの池にいれよとそ思ふ  1237:8233   立1  水2 鎭2   咲1 蓮3    待1かな1 波のたつ心のみつをしつめつゝさかんはちすを今はまつ哉  1238:8234            詠1  老人述懷と云亊を人々よみけるに    〔ゑ〕縋2  入1   〔お〕 恥1   かな1 山深みつえにすかりている人の心のをくのはつかしき哉  1239:8235:續拾遺十六          集2         遣2  左京大夫俊成、歌あつめらるゝと聞て、歌つかはす  とて 花2   言2 葉1 〔お〕          拾2 はなならぬことのはなれとをのつから色もやあると君ひろはなん  1240:8236:續拾遺十六  かへし                     俊成   捨1 いり1  言2 葉1        見1                        〔え〕 世をすてて入にし道のことのはそあはれも深き色もみへける  Subtitle  戀百十首  1241:8237         〔て〕 思2 餘2 言1いて1        程2 おもひあまりいひ出しこそ池水の深き心のほとはしられめ  1242:8238 無l   飾磨3 市2 立1     逢1初1 なき名こそしかまのいちにたちにけれまたあひそめぬ戀する物を  1243:8239          顯2   忍2 おもひ1  散l つゝめとも涙の色にあらはれてしのふ思は袖よりもちる  1244:8240         目1包2 間1強1  言1  盡1                〔ひ〕 わりなしや我も人めをつゝむまにしゐてもいはぬ心つくしは  1245:8241      忍2 氣色3 著2   〔ゝ〕   習2 なか/\にしのふけしきやしるからんかはる思ひにならひなき身は  1246:8242 氣色3  怪2    咎2   うち1   言1 けしきをはあやめて人のとかむとも打まかせてはいはしとそ思ふ  1247:8243    忍2     甲斐2  著2 心にはしのふとおもふかひもなくしるきは戀の涙なりけり  1248:8244   いて1     何時2        問1       答2 色に出ていつより物はおもふそととふ人あらはいかゝこたへん  1249:8245 逢1     已1       見1   有1 果1 あふ亊のなくてやみぬる物ならは今みよ世にもありやはつると  1250:8246 憂1       戀2 忍2     名立3 なり1 うき身とてしのははこひのしのはれて人のなたてに成もこそすれ  1251:8247:續拾遺十一  〔を〕      唐2       知1 みさほなる涙なりせはから衣かけても人にしられましやは  1252:8248 歎2 餘2       盡2         書1 なけきあまり筆のすさみにつくせとも思ふはかりはかかれさりけり  1253:8249   歎2      苦2           知1 わかなけく心のうちのくるしさも何にたとへて君にしられん  1254:8250 今2             歎2    おもひ1                       知1 いまはたゝしのふ心そつゝまれぬなけかは人や思しるとて  1255:8251              〔を〕 匂2  甲斐2 こゝろには深くしめとも梅の花おらぬにほひはかひなかりけり  1256:8252            見1   覺2    心地3 さりとよとほのかに人をみつれともおほえぬ夢のこゝちこそすれ  1257:8253:新勅撰十三 消1返2 暮2待1  〔を〕 きえかへりくれまつ袖そしほれぬるおきつる人は露ならねとも  1258:8254 如何2    五月雨4 名殘2     小止2   雫3 いかにせんそのさみたれのなこりよりやかてをやまぬ袖のしつくを  1259:8255   程2      あり1 行1   苦2 さるほとの契りは君に有なからゆかぬ心のくるしきやなそ  1260:8256 今2           果1   語2 いまはさはおほえぬ夢になしはてて人にかたらてやみねとそ思ふ  1261:8257 折1  手1 留1     誰1移2 香1 をる人のてにはとまらて梅の花たかうつりかにならんとすらん  1262:8258 假睡4    厭2  とこ1 今朝2    起1憂1                  如何2 うたゝねの夢をいとひし床の上にけさいかはかりおきうかるらん  1263:8259 引1替1 嬉2        憂1  亊2 わすれ1 ひきかへてうれしかるらん心にもうかりしことは忘さらなん  1264:8260 たなはた2    逢1 嬉2            憂1今宵3かな1 七夕はあふをうれしとおもふらん我は別れのうきこよひ哉  1265:8261 同2   咲1初1   占1    〔を〕              〔お〕 おなしくはさきそめしよりしめをきて人におられぬ花と思はん  1266:8262    濡1    乾1     夕立3 わか1 朝露にぬれにし袖をほす程にやかてゆふたつ我袂かな  1267:8263 待1     見1  微睡3  寢覺2奬2    上風4 まちかねて夢にみゆやとまとろめはねさめすゝむる荻のうはかせ  1268:8264 包2    知1     川2井堰3 隙2 潛2 つゝめとも人しる戀やおほゐかはゐせきのひまをくゝる白波  1269:8265:新古今十三 逢1        思2 〔は〕      わか1                悔2      こゝろ1 あふまての命もかなとおもひしにくやしかりける我心かな  1270:8266:玉葉十二                            〔し〕 今2   逢1    思2   後2憂1     任2〔てミセケチ〕 いまよりはあはて物をはおもふとものちうき人に身をはまかせて  1271:8267 何時2  答2  亊2 妬2   おもひ1 恨2 聞1                   知1 いつかはとこたへんことのねたきかな思しらすとうらみきかせは  1272:8268:續古今十一      目1   折2    〔を〕  わか1       知1          なり1 なみた1 袖の上の人めしられしをりまてはみさほ成ける我涙かな  1273:8269 生憎4   目1知1    〔へ〕  忍2 甲斐2 あやにくに人めもしらぬ涙かなたえぬ心にしのふかひなく  1274:8270  〔お〕  思2 我2            〔を〕 荻のをとは物おもふわれか何なれはこほるゝ露の袖におくらん  1275:8271  繁2 澤2 縫1  伏1鴫2 如何2 草しけみさはにぬはれてふすしきのいかによそたつ人の心そ  1276:8272 哀2       情3             歎2 あはれとて人の心のなさけあれな數ならぬにはよらぬなけきを  1277:8273 如何2  浮2   世1立1果1 おもひ1                    知1 いかにせんうき名をはよにたてはてて思もしらぬ人の心を  1278:8274 忘2          おもひ1      なる1 わすられんことをはかねて思にき何おとろかす涙成らん  1279:8275                憂1 變2  心地3 とはれぬもとはぬ心のつれなさもうきはかはらぬこゝちこそすれ  1280:8276 辛2    〔ゑ〕  恨2   おもひ1 かな1 つらからん人ゆへ身をはうらみしと思しことも叶はさりけり  1281:8277          咎2       濡1 今さらに何かは人もとかむへきはしめてぬるゝ袂ならねは  1282:8278            滿1        厭3 わりなしな袖になけきのみつまゝに命をのみもいとふ心は  1283:8279:續後拾遺十二         水上4    わすれ 色ふかき涙の川のみなかみは人を忘ぬこゝろなりけり  1284:8280 まち1 一人3 伏1 敷妙4   並2 待かねてひとりはふせとしきたへの枕ならふるあらましそする  1285:8281:續古今十五 問1   情3      爲2 憂1 とへかしななさけは人の身のためをうき我とても心やはなき  1286:8282 言2 葉1霜枯3    思2     情3 ことのはのしもかれにしにおもひにき露のなさけもかゝらましとは  1287:8283 夜1   恨2    湛2         聞2 よもすからうらみを袖にたゝふれは枕に波の音そきこゆる  1288:8284 存2     誠3           絶1 なからへて人のまことを見るへきに戀に命のたえんものかは  1289:8285   〔お〕   言1亊2 徒2    越1 たのめをきしそのいひことやあたなりし波こえぬへき末の松山  1290:8286 川2 瀬1  消1易2 かはのせによにきえやすきうたかたの命をなそや君かたのむる  1291:8287     〔お〕    おもひ1     わか1                      たもと1 かりそめにをく露とこそ思しか秋にあひぬる我袂かな  1292:8288            【思】 お〕     經1   思2   たのみ1 わか1                        いのち1 をのつからありへはとこそおもひつれ憑なくなる我命かな  1293:8289    厭2   辛2  歎2   おもひ1    ある1 身をもいとひ人のつらさもなけかれて思數あるころにも有かな  1294:8290                          【もの1】 菅2 根1長2         手向2   祈2 すかのねのなかく物をはおもはしとたむけし神にいのりし物を  1295:8291 打2解1 微睡3    唐2     返2 甲斐2ある1 うちとけてまとろまはやはから衣よな/\かへすかひも有へき  1296:8292 わか1       〔お〕    目1思2 我つらきことにをなさんをのつから人めをおもふ心ありやと  1297:8293                       【や】 亊2 言1 ことといへは5〕                      離2   氣色3  麗3   〔や〕 こととへはもてはなれたるけしきかなうらゝかなれる人のこゝろの  1298:8294      歎2       忍2 知1 物思ふ袖になけきのたけ見えてしのふしらぬは涙なりけり  1299:8295   葉1             〔お〕 草のはにあらぬたもとも物思へは袖に露をく秋の夕暮  1300:8296 逢1   無1病3    死1 あふことのなきやまひにて戀しなはさすかに人やあはれと思はん  1301:8297 如何2  言1遣1   方2         すく2                          ころ1 いかにそやいひやりたりしかたもなく物をおもひて過る比かな  1302:8298 我2    思2        唐土4    たつね1 われはかり物おもふ人や又もあるともろこしまても尋てしかな  1303:8299           我2       ちきり1     おもひ1               〔まなくも3〕 君にわれいかはかりなる契ありて二なく物を思そめけん  1304:8300            絶1 身1歎2    添1 なり1 さらぬたにもとの思ひのたえぬみになけきを人のそふる成けり  1305:8301 われ2      愛2   憐2       つけ1           〔ほ〕 我のみそわか心をはいとをしむあはれふ人のなきに付ても  1306:8302 うらみ1             すき1 恨しとおもふ我さへつらきかなとはと過ぬる心つよさを  1307:8303 何時2      冨士2     うち1  浮2  原2                   臥1 いつとなきおもひはふしのけふりにて打ふす床やうき島かはら  1308:8304    皆2     言1           なり1 これもみな昔のことといひなからなと物おもふ契り成けん  1309:8305          〔ゑ〕      〔しも1〕〔お〕 なとかわれつらき人ゆへ物をおもふ契りを霜はむすひをきけん  1310:8306 紅4    〔ぬ〕 濃1  焦1      〔ナミ夕カ〕 くれなゐにあらふ袂のこき色はこかれて物をおもふなりけり  1311:8307 堰1   然1  流2   瀬1湧1白1 せきかねてさはとてなかす瀧つせにわくしら玉は涙なりけり  1312:8308 歎2   包2  ころ1     任2 なけかしとつゝみし比の涙たにうちまかせたるこゝちやはせし  1313:8310          訪2     憂1亊2 思2 知1 今はわれ戀せん人をとふらはん世にうきこととおもひしられぬ  1314:8309 詠2   憂1  癖2 なり1  暮2  〔を〕〔わかれね〕 なかめこそうき身のくせに成はてて夕くれならぬおりもせらるれ  1315:8311 思2   思2 甲斐2      おもひ1   思2                    知1 おもへともおもふかひこそなかりけれ思もしらぬ人をおもへは  1316:8312 綾2捻2     小蓑3衣2 着1    凌 あやひねるさゝめのこみのきぬにきん涙の雨もしのきかてらに  1317:8313    斯1亊2新3     問1われ1  古1 なそもかくことあたらしく人のとふ我物おもふふりにし物を  1318:8314 死1    思2   後2       憂1亊2   聞1 しなはやと何おもふらんのちの世も戀はよにうきこととこそきけ  1319:8315      何時2    果2      おく1身1                       わか1 わりなしやいつをおもひのはてにして月日を送る我みなるらん  1320:8316 愛2        幼3   魂切3        かな1  〔ほ〕 いとをしやさらに心のをさなひてたまきれらるゝ戀もする哉  1321:8317  慕2      乳兒2   脆2 君したふ心のうちはちこめきて涙もろくもなるわか身かな  1322:8318 懷2       色2      散1    包2 なつかしき君か心のいろをいかて露もちらさて袖につゝまん  1323:8319:玉葉十一                  【おも1】 幾2程2 存2              經1  〔かな1〕 いくほともなからふましき世の中に物を思はてふるよしも哉  1324:8320 何時2  塵2積1  拂2    來1 たの1  待1 いつかわれちりつむ床をはらひあけてこんと憑めん人をまつへき  1325:8321                  瀧2 落1 よたけたつ袖にたゝへて忍ふかな袂のたきにおつる涙を  1326:8322 憂1   〔ひ〕くち1    盡1 うきによりつゐに朽ぬる我袖を心つくしに何しのひけん  1327:8323:玉葉十八                苦2     なり1 こゝろから心に物を思はせて身をくるしむる我身成けり  1328:8324 一人3着1    纏2 唐2 〔を〕    泣1濡1 ひとりきてわか身にまとふから衣しほ/\とこそなきぬらさるれ  1329:8325 言1立1 恨2  如何2     思2  憂1 いひたててうらみはいかにつらからんおもへはうしや人の心は  1330:8326 歎2        苦2     知1    語2 なけかるゝ心のうちのくるしさを人のしらはや君にかたらん  1331:8327  知1   咽2 夕暮4    被2   うち1                       臥1 人しれぬ涙にむせふゆふくれはひきかつきてそ打ふされける  1332:8328 思2   斯2    いり1 避1方2             初1 おもひきやかゝる戀路に入そめてよくかたもなき歎きせんとは  1333:8329         【ね】 危2    目1          角2踏1岸險2         〔ね〕 あやふさに人めそつゐによかれける岩のかとふむほきのかけ道  1334:8330 知1     餘2       暇2    絞2 しらさりき身にあまりたる歎きしてひまなく袖をしほるへしとは  1335:8331 ふく1   溜2 葛2 葉1裏2返2 吹風に露もたまらぬくすのはのうらかへれとは君をこそ思へ  1336:8332      藻1住1蟲2 名1〔お〕       うらみ1 われからともにすむむしのなにしをへは人をはさらに恨やはする  1337:8333 空2   已1     空蝉4         おもふ1                          なけき1 むなしくてやみぬへきかなうつせみのこの身からにて思歎は  1338:8334 包2      外2 零2 出1 後3      なり1 つゝめとも袖よりほかにこほれいててうしろめたきは涙成けり  1339:8335      疑3        〔ゑ〕   絞2 われなからうたかはれぬる心かなゆへなく袖をしほるへきかは  1340:8336             忍2    何時2  〔を〕                          なる1 さることのあるへきかはとしのはれて心いつまてみさほ成らん  1341:8337 取2殘2 思2      拂2 とりのこしおもひもかけぬ露はらひあなくらたかのわれか心や  1342:8338   染1    深2   匂2        なり1 君にそむ心の色のふかさにはにほひもさらにみえぬ成けり  1343:8339       目1   なり1   樣憎4    雫3        思2   果1 さもこそは人めおもはす成はててあなさまにくの袖のしつくや  1344:8340           【ね】   濯2   小芹3   白2 清2    思2 かつすすく澤のこせりの根をしろみきよけに物をおもはすもかな  1345:8341 如何樣4 思2     恨2   偏3 いかさまにおもひつゝけてうらみましひとへにつらき君ならなくに  1346:8342:玉葉十一 恨2   慰3              逢1                      〔は〕 うらみてもなくさめてまし中々につらくて人のあわぬと思へは  1347:8343:玉葉十二   絶1   逢1 如何2      同2 世1   經1 うちたえて君にあふ人いかなれやわか身もおなしよにこそはふれ  1348:8344:玉葉十三      厭2     世1     住1  惹1 とにかくにいとはまほしきよなれとも君かすむにもひかれぬるかな  1349:8345 何亊4      世1 厭2         今日2嬉2 なにことにつけてかよをはいとはましうかりし人そけふはうれしき  1350:8346:千載十四 逢1 見1  夜1  覺1    長2 眠3  憂1 あふとみしそのよの夢のさめてあれななかきねふりはうかるへけれと            變2  この歌、題も又、人にかはりたることともも、あり        書1  けなれとも、かかす。                語2  隨3  この歌とも、やまさとなる人のかたるにしたかひて、  書1        僻亊4     昔3 今2  かきたるなり。されはひかことともや、むかしいま   亊2  集2     時2折節4 違2  のこととりあつめたれは、ときをりふしたかひたる  こととも。  1351:8347    【ふ】  此1集2 見1返1  このしうをみてかへしけるに                           局                     院の少納言のつほね     【たま1】 卷2毎2   聲2  玉章4  類3    あり1 まきことに玉のこゑせしたまつさのたくひは又も有けるものを  1352:8348  かへし      光3     玉2 言1 言葉3 塵2 よしさらはひかりなくともたまといひてことはのちりは君みかゝなん  1353:8349  讚岐3 詣2   松山4  津1まうす1  さぬきにまうてて、まつやまのつと申所に、院おは        跡2尋2     形2 無1  しましけん御あとたつねけれと、かたもなかりけれ  は 松2  波2 流2  來1舟2    空2  なり1 かな2 まつ山のなみになかれてこしふねのやかてむなしく成にける哉  1354:8350 松2  波2 景色3 變2   形2無1 まつ山のなみのけしきはかはらしをかたなく君はなりましにけり  1355:8351  白峯4  まうし1 み1  はへり1〔ゐ〕             墓2  しろみねと申ける所に御はかの侍けるにまいりて    君2昔3  玉2 床2     よしやきみむかしのたまのゆかとてもかゝらん後は何にかはせん  1356:8352  同2 國2    〔お〕      邊3  おなしくにに、大師のをはしましける御あたりの山    庵3 結2  住1       明1  に、いほりむすひてすみけるに、月いとあかくて、  海2 方2曇2 無1  うみのかたくもりなく見えけれは 曇2      海2  見1 島2 氷3  絶1間1 くもりなき山にてうみの月みれはしまそこほりのたえまなりける  1357:8353  住1      庵3   哀2  すみけるまゝに、いほりいとあはれにおほえて              〔にミセケチそ〕 今2   厭2      〔そ〕  住1  哀2   知1 いまよりはいとはし命あれはこにかゝるすまひのあはれをもしれ  1358:8354:玉葉十六  庵3  前2  松2 立1    見1  いほりのまへに、まつのたてりけるをみて 久2 經1    世1   松2 忍2       身1 ひさにへてわか後のよをとへよまつ跡しのふへき人もなきみそ  1359:8355      我2住1憂1 浮1   松2 獨3 こゝをまたわれすみうくてうかれなはまつはひとりにならんとすらん  1360:8356  雪2 降1  ゆきのふりけるに 松2 下2 雪2  折2     みな1 見1  路1                   しろたへ2 まつのしたはゆきふるをりの色なれや皆白妙にみゆる山ちに  1361:8357  積1   分1 咲1    常盤3   見1 なり1 雪つみて木もわかすさく花なれやときはの松もみえぬ成けり  1362: 花2   梢3     冱1     方2   心地3 はなと見るこすゑの雪に月さえてたとへんかたもなきこゝちする  1363:8359 紛2 色2 梅2   見1過1     花2  香1 まかふいろはむめとのみみてすきゆくに雪のはなにはかそなかりける  1364:8360:玉葉十四 折2    嬉2    埋2    籠2        路1 をりしもあれうれしく雪のうつむ哉かきこもりなんとおもふ山ちを  1365:8361    谷2 細道4 埋2 雪2      通2 中々にたにのほそみちうつめゆきありとて人のかよふへきかは  1366:8362     玉2 簾3  懸1   縋2 垂氷3 軒2 閉1 谷の庵にたまのすたれをかけましやすかるたるひののきをとちすは  1367:8363  花2〔ゐ〕   折2   折敷3 霰3  散1  はなまいらせけるをりしも、をしきにあられのちり  けるを 樒3〔お〕閼伽2折敷3 縁2無1         散1 しきみをくあかのをしきのふちなくは何にあられの玉とちらまし  1368:8365 岩2 堰1閼伽2      〔は〕澄1  宿2  かな1 いはにせくあか井の水のわりなきに心すめともやとる月哉  1369:8364     生1   たまひ1   廻2  仕1                      廻2  大師のむまれさせ給たる所とて、めくりのしまはし      標3  松2 立1    見1  て、そのしるしにまつのたてりけるをみて 哀2   同2 野1 立1      標3  ちき1 あはれなりおなしの山にたてる木のかゝるしるしの契りありける  1370:8366  又ある本に  曼陀羅寺5 きやう1   登2   世1         道2所3  まんたらしの行たうところへのほるは、よの大亊に      立1  樣2         書1 埋2  て、手をたてたるやうなり。大師の、御經かきてう           山2 峯2   坊2 外2  つませをりましたるやまのみねなり。はうのそとは         壇2築1 建1  一丈はかりなるたんつきてたてられたり。それへ日  毎2 登2  ことにのほらせおはしまして、行道しをりましける    まうし1   巡2      樣2  壇2     傳2  と、申つたへたり。めくり行道すへきやうに、たん                      【ふ】      築1廻2     登2 程2 危2  も二重につきまはされたり。のほるほとのあやうさ  殊2      構2  這1    着1  ことに大亊なり。かまへてはひまはりつきて           【り衍】 廻2 逢1 亊2 契2  あり1 嚴2    誓2 見1             〔タノモシ〕 めくりあはんことのちきりそ有かたききひしき山のちかひみるにも  1371:8367                 逢1〔ゐ〕  やかてそれか上は、大師の御師にあひまいらせさせ        峯2  をりましたるみねなり。わかはいしさと、その山を                     まうし1  は申すなり。その邊の人はわかはいしとそ申ならひ  【る】 文字2 捨1      筆2    名1  たり、山もしをはすてて申さす。又ふての山ともな  付1   〔ほ〕 見1 筆2 似1  つけたり。とをくてみれはふてににて、まろ/\と    峯2 先2 尖2   樣2    まうし1                     慣2  山のみねのさきのとかりたるやうなるを申ならはし                構2      登2  たるなめり。行道ところより、かまへてかきつきの      峯2 〔ゐ〕        〔お〕  ほりて、みねにまいりたれは、師にあはせをはしま       標3   塔2 建1            〔ふ〕  したる所のしるしに、たうをたておはしましたりけ    塔2 礎4   計2   大2    〔ふ〕  り。たうのいしすゑ、はかりなくおほきなり。高野    塔2         塔2 跡2 見1 苔2    〔ふ〕        〔ふ〕  の大たうなとはかりなりけるたうのあととみゆ。こ    深2 埋2      石2大2    露3  けはふかくうつみたれとも、いしおほきにしてあら       筆2 山2 まうす1              名1  はに見ゆ。ふてのやまと申なにつきて 筆2     登2   見1   苔2 下2    氣色3 ふての山にかきのほりてもみつるかなこけのしたなる岩のけしきを         みえい2 側2  善通寺の大師の御影には、そはにさしあけて、大師     書1具1          手1 〔お]  の御師かきくせられたりき。大師の御てなともをは           額2  破1 大方4  違2  しましき、四の門のかく少々われておほかたはたか      はへり1         末2  はすして侍き。すゑにこそいかゝなりなんすらんと           はへり1  おほつかなくおほえ侍しか  1372:8368       こしま2  渡2       糠蝦2          まうす1  備前國に、小島と申島にわたりたりけるに、あみ〔と〕  まうす1    採1  〔お〕  別々4 占1  長2  申物とる所は、をの/\われ/\しめて、なかきさ 〔を〕袋3  付1 立1渡2      〔を〕立1  ほにふくろをつけてたてわたすなり。そのさほのた   始2     〔を〕 名付2   中2 齡2  てはしめをは一のさほとそなつけたる。なかにとし  高2 海士2 立1初1    立1   まうす1  たかきあま人のたてそむるなり。たつるとて申なる  詞3   はへり1 涙3 零2   まうす1  ことはきゝ侍しこそ、なみたこほれて、申はかりな        詠1  くおほえて、よみける 立1初1 糠蝦2 浦2 初2〔を〕罪2 中2  優2  〔かな〕        採1 たてそむるあみとるうらのはつさほはつみのなかにもすくれたるこひ  1373:8369  日比2澁川4      〔か〕     方2  ひひ・しふかはと申す方へまはりて、四國のかたへ  渡2         惡1        澁川4  わたらんとしけるに、風あしくてほとへけり。しふ     浦2 まうす1    者2   數多3物2           〔を〕  かはのうらと申所に、おさなきものとものあまたも    拾2    問1       まうす1                     拾1  のをひろひけるをとひけれは、つみと申物ひろふな    まうし1  りと申けるをきゝて お〕立1 浦田3 拾2 海士2子1    罪2 習2 をりたちてうらたにひろふあまのこはつみよりつみをならふなりけり  1374:8370  眞鍋3 まうす1   商2    下2   樣々4  まなへと申島に、京よりあき人とものくたりて、や      積載2物2  商3     〔わ〕  う/\のつみのものともあきなひて、又しはくの島   渡2  商3     由2まうし1  にわたり、あきなはんするよし申けるをきゝて 眞鍋3  〔わ〕 通2 商2ひと1        なり1 まなへよりしはくへかよふあき人はつみをかひにて渡る成けり  1375:8371  串2 刺1    商3      何2  問1  くしにさしたる物をあきなひけるを、なにそととひ      蛤3   乾1 はへる1まうし1  けれは、はまくりをほして侍なりと申けるをきゝて 同2   〔き〕 刺1 乾1    蛤4     名1 おなしくはかにをそさしてほしもすへきはまくりよりはなもたよりあり  1376:8372  牛窓4  瀬戸2海人2出1        まうす1  うしまとのせとにあまのいていりて、さたえと申も    採1 舟2 入1      見1  のをとりてふねにいれ/\しけるをみて    棲1瀬戸2 壺2求2 出1 急2  海人2氣色3なる1 さたえすむせとの岩つほもとめいてていそきしあまのけしき成かな  1377:8373  沖2  岩2 着1  海人2  鮑3 採1  おきなるいはにつきて、あまとものあはひとりける  所3  ところにて    根1       並1浮1 鮑3  潛2 海人2 いはのねにかたおもむきになみうきてあはひをかつくあまのむらきみ  1378:8374  題不知  【ひ】 小鯛3引1網2 浮子繩4寄1來1 憂1〔わ〕  鹽崎4  浦2 こたいひくあみのうけなはよりくめりうきしはさあるしほさきのうら  1379:8375 霞3 敷1波2 初花4       鯛2釣1  海人2 かすみしくなみのはつはなをりかけて櫻たひつる沖のあま舟  1380:8376 海2    〔く〕           蛤4  寄居蟲3         歸2                 細螺4 あま人のいそしてかへるひしきものはこにしはまくりかうなしたゝみ  1381:8377 磯菜3摘1 今2  初1 若布海苔5海松布3  鹿尾菜3        〔お〕           神馬草3  石花菜5 いそなつまんいまをひそむるわかふのりみるめきはさひしきこゝろふと  1382:8378 【伊】  伊勢2答志3 まうす1 小石3 白2 限2 はへる1  いせのたふしと申島には、こいしのしろのかきり侍      黒2     混2   對2  菅島4  濱にて、くろはひとつもましらす。むかひてすかし    まう1黒2 限2 はへる1  まと申すはくろのかきり侍也 菅島4  答志3 小石3分1替1 黒2白2混1    風2 すかしまやたふしのこいしわけかへてくろしろませよ浦の濱かせ  1383:8379      小石3 白2 高2  答志3   うち1 さきしまのこいしのしろをたか波のたふしの濱に打よせてける  1384:8380       濱2 小石3     白2 混2  菅2  黒2 からすさきのはまのこいしと思ふかなしろもましらぬすか島のくろ  1385:8381 合1   鷺2 烏3  碁1打1 答志3菅2 黒2白2 濱2 あはせはやさきとからすとこをうたはたふしすか島くろしろのはま  1386:8382 【伊】  伊勢2二見3 浦2    樣2  女1童3  いせのふたみのうらに、さるやうなるめのわらはと    集2                蛤4  ものあつまりて、わさとのこととおほしく、はまく      集2    〔い〕甲斐2 蜑2  りをとりあつめけるを、ゆふかひなきあま人こそあ              まうし1 貝合4  らめ、うたてきことなりと申けれは、かひあはせに          たまひ1 選1  採1   まうし1  京より人の申させ給たれは、えりつゝとるなりと申  けるに 今2 知1二2み1       貝合4    覆2 いまそしるふた見の浦のはまくりをかひあはせとておほふなりけり  1387:8383  伊良胡3渡2     〔い〕  まうす1                   蛤4  いらこへわりたりけるに、ゐかひと申はまくりに、  阿古屋3           取1  殼2 高2  あこやのむねと侍るなり。それをとりたるからをた    積1       見1     〔お〕  かくつみをきたりけるをみて 阿古屋1〔い〕  殼2 積1   寶3  跡2 見1              〔お〕 あこやとるゐかひのからをつみをきてたからのあとをみするなりけり  1388:8384  沖2 方2    惡1    鰹3  まうす1                      魚2釣1  おきのかたより風のあしきとて、かつをと申いをつ     舟2   歸2  りけるふねとものかへりけるに 伊良胡崎5 鰹3 釣1舟2並2 浮1〔ろ〕    浮1    寄1 いらこさきにかつをつりふねならひうきてはかちの波にうかひつゝそよる  1389:8385  二2     鷹2  伊良胡3      まうし1                渡2  ふたつありけるたかの、いらこわたりをすると申け                 【き】     一2  鷹2 留2      末2 掛2  るか、ひとつのたかはとゝまりて、木のすゑにかゝ    はへる1      まうし1  りて侍と申けるをきゝて 巣鷹3渡2 伊良胡3崎2 疑3   〔ほ〕 歸2  歸2                     木1 すたかわたるいらこかさきをうたかひてなをきにかへる山かへりかな  1390:8386   鷹2        古1   据1    あり1 世1                         難2 はしたかのすゝろかさてもふるさせてすゑたる人の有かたのよや  1391:8387   【川2】  宇治川  下2   舟2  金突4  まうす1                        持1  うちかはをくたりけるふねの、かなつきと申物をも   鯉2 下2  突1   見1  てこひのくたるをつきけるをみて 宇治2 早瀬3落1舞1〔ふ〕         鯉2              舟2 うち川のはやせおちまふれうふねのかつきにちかふこひのむらまけ  1392:8388               【下2】  〔え〕  沼2 入江3 藻1下2  漬1   柴2    集2               〔お〕 こはへつとふぬまのいりえのものしたは人つけをかぬふしにそありける  1393:8389 種2漬1 壺2    引1末2 江鮒3集2  落合4  淀2 たねつくるつほ井の水のひくすゑにえふなあつまるおちあひのわた  1394:8390      小鮎3引1  下2 瀬1  設2   小目2敷網4 しらなはにこあゆひかれてくたるせにもちまうけたるこめのしきあみ  1395:8391 見1 憂1 鵜繩3 逃1 魚類4  遁2        持網4 みるもうきはうなはににくるいろくつをのからかさてもしたむもちあみ  1396:8392  風2 鱸3 釣1舟2走2   その1   名殘3慕2 秋かせにすゝきつりふねはしるめり其ひとはしのなこりしたひて  1397:8393         方2 罷2       島2 舟2  新宮より伊勢のかたへまかりけるに、みきしまにふ    沙汰2      黒2 髮2 一筋4  ねのさたしける浦人の、くろきかみはひとすちもな       呼1寄1  かりけるをよひよせて 年2經1 浦2 海士2言問3    潛2  幾世3すき1 としへたるうらのあま人こととはん波をかつきていくよ過にき  1398:8394                   【て衍】 黒髮4  過1  見1       果1     知1海人2 くろかみはすくるとみえし白波をかつきはてたる身にはしれあま  1399:8395  小鳥3   歌2詠1  ことりとものうたよみける中に 聲2   色2濃1          芽1 〔わ〕 鳥2                     食1 こゑせすはいろこくなるとおもはまし柳のめはむひはの村とり  1400:8396 桃園4    紛2  照鷽4  群1立1折2 散1 もゝそのの花にまかへるてりうそのむれたつをりはちるこゝちする  1401:8397 並2   友2 離2       塒3  たのむ1 枝2                       〔ひ〕 ならひゐてともをはなれぬこからめのねくらに憑しゐの下えた  1402:8398     【かも2】    夜1   〔ゐ〕 詠1はへり1  月のよ、賀茂にまいりてよみ侍ける   澄1〔お〕川1  冱1   〔ほ〕         はら1       立1 月のすむみをやか原に霜さえて千鳥とをたつ聲きこゆなり  1403:8199                 【みね1】  熊野3 〔ゐ〕    七越4      見1  くまのへまいりけるに、なゝこしの峯の月をみて  詠1  よみける たち1        消1  重2       峯2 立のほる月のあたりに雲きえて光かさぬるななこしのみね  1404:8400  讚岐3國2  罷2      まうす1                  津1着1  さぬきのくにへまかりてみのつと申つにつきて、月  明1   〓2 手1通2  程2  〔ほ〕  〓(竹/洪)  あかくて、ひゝのてもかよはぬほとに、とをく見え  渡2       水鳥4  〓2 手1付1 飛1  〓(竹/洪)  わたりたりけるに、みつとりのひゝのてにつきてと   渡2  ひわたりけるを 敷1渡2   氷3  疑3   〓2 手1  味鴨2群鳥4  〓(竹/洪)                     〔は〕 しきわたす月のこほりをうたかひてひゝのてまわるあちのむらとり  1405:8401          塵2据1 見1甲斐2    眺2 いかてわれ心の雲にちりすゑてみるかひありて月をなかめん  1406:8402 眺2 居1   影2  世1  〔スム1〕   なり1 なかめをりて月のかけにそよをはみる住もすまぬもさ成けりとは  1407:8403  晴1   愁3             影2 見1 雲はれて身にうれへなき人の身そさやかに月のかけはみるへき  1408:8404      袂3  影2 宿2   〔わ〕    眺2 さのみやはたもとにかけをやとすへきよはし心よ月ななかめそ  1409:8405   恥1   いて1    眺2    影2 宿2 月にはちてさし出られぬ心かななかむか袖にかけのやとれは  1410:8406    見1 毎2 苦2        取1所3 心をはみる人ことにくるしめて何かは月のとりところなる  1411:8407 露2   憂1    癖2    見1咎2 負2 つゆけさはうき身の袖のくせなるを月みるとかにおほせつるかな  1412:8408 眺2 來1 如何2  忍2     世1雲2 外2 なかめきて月いかはかりしのはれんこのよしくものほかになりなは  1413:8409 何時2    世1空2 隔2   哀2      思2 いつかわれこのよのそらをへたたらんあはれ/\と月をおもひて  1414:8410      返2    おもひ1    見1 朝顏4  花2             知1 露もありつかへす/\も思しりてひとりそみつるあさかほのはな  1415:8411 一2   都3  捨1 出1   巡2   〔ほ〕  懸橋4 ひときれはみやこをすてていつれともめくりてはなをきそのかけはし  1416:8412 捨1   隱2  住1      なほ1   似1 なり1                   世1 すてたれとかくれてすまぬ人になれは猶よにあるににたる成けり  1417:1413 よのなか2 捨1得1     都3 離2  わか1    捨1                  身1                         なり1 世中をすててすてえぬこゝちしてみやこはなれぬ我み成けり  1418:8414 捨1 折2        改3   〔ナ〕   れかれ1                     世1   果1 すてしをりのこゝろをさらにあらためてみるよの人に別はてなん  1419:8415 思2 心3          恥1 然1     勇2 おもへこゝろ人のあらはや世にもはちむさりとてやはといさむはかりそ  1420:8416 呉2  節2繁2                出1 くれ竹のふししけからぬよなりせはこの君はとてさしいてなまし  1421:8417 惡2善2 思2 分1  苦2               身1 あしよしをおもひわくこそくるしけれたゝあらされはあられけるみを  1422:8418 深2 いる1〔ゑ〕       憂1世1    吉野3                    忍2 ふかく入は月ゆへとしもなきものをうきよしのはんみよしのの山  1423:8419  嵯峨野3 見1世1 變2  さかのの、みしよにもかはりてあらぬやうになりて、  〔い〕        見1  人ゐなんとしたりけるをみて     嵯峨2御狩3 跡2      果1 褪1變2 この里やさかのみかりのあとならん野山もはてはあせかはりけり  1424:8420  〔覺〕    立1  石2 見1  大學寺の金岡かたてたるいしをみて   岩2 目立2        廉2  樣2 たて1                         〔お〕 庭のいはにめたつる人もなからましかとあるさまに立しをかすは  1425:8421  瀧2 邊3  木立3   亊2  たきのわたりのこたちあらぬことになりて、松はか   並2立1     見1  りなみたちたりけるをみて 流2 見1岸2 木立3 褪1果1 なかれみしきしのこたちもあせはてて松のみこそは昔なるらめ  1426:8422  龍門4  〔ゐ〕  りうもんにまいるとて            【れ】 瀬1早2 宮瀧川6   渡2 ゆけ1 底2 澄1 せをはやみみやたきかはをわたり行は心のそこのすむこゝちする  1427:8423    いて1  〔とめて2〕來1入1山道4      誰2    分1 おもひ出てたれかはとてわけもこんいるやまみちの露の深さを  1428:8424     幾2  〔お〕伏1 庵3  窓2 上1下2 呉竹の今いくよかはをきふしていほりのまとをあけおろすへき  1429:8425   筋2 入1   何2    目1   世1包2                  思2 そのすちにいりなは心なにしかも人めおもひてよにつゝむらん  1430:8426 緑3   松2 重2       衣2   覆2 みとりなるまつにかさなる白雪は柳のきぬを山におほへる  1431:8427 盛3          咲1    思2    わく1道2 さかりならぬ木もなく花のさきにけるとおもへは雪を分る山みち  1432:8428      雪2 分1  漕1  木曾2懸橋4 底2 波と見ゆるゆきをわけてそこき渡るきそのかけはしそこも見えねは  1433:8429 眞名鶴4 澤2   鏡3   千歳3 影2    成1 まなつるはさはの氷のかゝみにてちとせのかけをもてやなすらん  1434:8430 澤2 解1 摘1     留2   目1 溜2 〔ゑ〕 草2莖2 さはもとけすつめとかたみにとゝまらてめにもたまらぬえくのくさくき  1435:8431 君2 住1岸2 岩2  出1   絶1      汲1 きみかすむきしのいはよりいつる水のたえぬ末をそ人もくみける  1436:8432 田代3見1 池2 堤3  嵩2添1 湛2      夜1 たしろみゆるいけのつゝみのかさそへてたゝふる水や春のよのため  1437:8433 庭2 流2 清水3   堰1   門田3                     養3 にはになかすしみつの末をせきとめてかとたやしなふ心にも有哉  1438:8434 伏見3過1 岡2 屋1〔ほ〕        行1 駒2              止2           〔試〕 ふしみすきぬをかのやになをとゝまらし日野まてゆきてこま心みん  1439:8435   色2 風2 野1   敷1  時雨3      聞1              〔わ〕 秋のいろはかせそのもせにしきりたすしくれは音を袂にそきく  1440:8436    初1  花園山6   くれ1   色2 改3                 錦3 しくれそむるはなそのやまに秋暮てにしきのいろをあらたむるかな  1441:8437   勢1磯2    錦3     磯囘3 紅葉3       〔へミセケチつ〕  伊せのいそのへちのにしきの島に、いそわのもみち   散1  のちりけるを 波2 敷1紅葉3   洗2 〔ゑ〕錦3  島2 言1  ある1 なみにしくもみちの色をあらふゆへににしきのしまといふにや有らん  1442:8438  陸奧2國2 平泉5   向2   〔は〕  みちのくににひらいつみにむかひて、たわしねと申     はへる1   少3  樣2 櫻3  限3        異2  す山の侍に、こと木はすくなきやうにさくらのかき   見1  花2 咲1     見1詠1  りみえて、はなのさきたりけるをみてよめる      〔は〕 山2 櫻3  吉野3 外2 きゝもせすたわしねやまのさくら花よしののほかにかゝるへしとは  1443:8439 奧2 なほ1   散1    尋2  入1      見1 おくに猶人みぬ花のちらぬあれやたつねをいらん山ほとときす  1444:8440 茅花3拔1北野3 茅原3褪1        生1                     〔そお1〕                     〔をミセケチそ〕 つはなぬくきたののちはらあせゆけは心すみれをひかはりける  1445:8441  例2                梨2 花2  れいならぬ人の大亊なりけるか、四月になしのはな   咲1        梨2 欲1 由2 願2  のさきたりけるを見て、なしのほしきよしをねかひ      若1    尋2     枯1  柏3  けるに、もしやと人にたつねけれは、かれたるかし   〔つつ1〕梨2    一2 遣2  はにつみたるなしを、たゝひとつつかはして、これ       まうし1  はかりなと申たりける 花2 折2柏3  包2 信濃梨5   〔つミセケチり〕 はなのをりかしはにつつむしなのなしはみとつなれともあかしのみと見ゆ  1446:8442  讚岐3          折2 御幸3  さのきの院におはしましけるをりのみゆきのすゝの  奏2    詠1  そうをきゝてよみける 舊1     御幸3〔す〕 奏2 如何2    絶1 聞1 ふりにけり君かみゆきのまゝのそうはいかなる世にもたえすきこえて  1447:8443    入1鼓3  如2  日のいるつゝみのことし    〔お〕 鼓3  紛2      影2 打1 搖1 浪のうつをとをつゝみにまかふれは入日のかけのうちてゆらるゝ  1448:8444  題不知          松2 末2     來1      かな1                      居1 山里の人もこすゑのまつかうれにあはれにきゐるほとゝきす哉  1449:8445 並2              待1得1 宵2 ならへける心はわれかほとゝきす君まちえたるよひの枕に  1450:8446  筑紫3  腹赤3 まうす1釣2    一日4            魚2  つくしに、はらかと申いをのつりをは十月ついたち   下2    師走3 引1上1     上2  におろすなり。しはすにひきあけて、京へはのほせ  はへる1釣2 繩2 遙2  〔ほ〕引1渡2  侍、そのつりのなは、はるかにとをくひきわたして、  〔ほ〕舟2   〔は〕當2      喞2 掛2  とをるふねのそのなわにあたりぬるをは、かこちか            まうし1   はへる1  ゝりてかうけかましく申てむつかしく侍なり。その    詠1  心をよめる 腹赤3釣1大曲崎6     繩2      過1 はらかつるおほわたさきのうけなはに心かけつゝすきんとそ思ふ  1451:8447               〔ふ〕 イセ〕ミヤ〕イルゝ〕   爭2 波2    思2       海人2 はらかつるおし〔 〕つきてすまうなみにけことおほゆるいりとりのあま  1452:8448 磯菜3摘1       過1   鰐2 住1  大磯4  根1 いそなつみて波かけられてすきにけるわにのすみけるおほいそのねを  Subtitle  百首  1453:8449  花十首 吉野3   散1  木1下2 留1      待1 よしの山花のちりにしこのもとにとめし心はわれをまつらん  1454:8450     高嶺3 咲1初1        花2 薄雲4 吉野山たかねの櫻さきそめはかゝらんものかはなのうすくも  1455:8451     吉野3   いり1        止1 人はみなよしのの山へ入ぬめり都の花にわれはとまらん  1456:8452 尋2 いる1 見1 たつね入人にはみせし山櫻われとを花にあはんと思へは  1457:8453   咲1     見1     爭3 山櫻さきぬときゝてみにゆかん人をあらそふこゝろとゝめて  1458:8454 山2 程2  見1      盛2    待1 やま櫻ほとなくみゆるにほひかなさかりを人にまたれ/\て  1459:8455    雪2庭2 積1  跡2付1 門2  宿1 言1散1 花のゆきのにはにつもるにあとつけしかとなきやとといひちらさせて  1460:8456      朝3      面2   雪2敷1 なかめつるあしたの雨の庭のおもに花のゆきしく春の夕くれ  14618457 吉野3 麓3  瀧2 流2     積1    下2 よしの山ふもとのたきになかす花や峯につもりし雪のした水  1462:8458 根1歸2  〔お〕  吉野3    〔ひ〕いり1                        いて1 ねにかへる花ををくりてよしの山夏のさかゐに入て出ぬる  1463:8459  郭公十首 鳴1 聲2 散1    なこり2   ま1       かな1 なかんこゑやちりぬる花の名殘なるやかてまたるゝほとゝきす哉  1464:8460 春2暮1 聲2 花咲3            待1 變2 はるくれてこゑにはなさくほとゝきす尋ぬることもまつもかはらぬ  1465:8461 聞1 待1 思2知1 ほとときす2  なほ1                      待1 きかてまつ人おもひしれ郭公きゝても人は猶そまつめる  1466:8462 所3   聞1難2        里2 1  また1 ところからきゝかたきかとほとゝきすさとをかへても待んとそ思ふ  1467:8463 初聲4      後2      まつ1 頼2   かな1 はつこゑをきゝてののちはほとゝきす待も心のたのもしき哉  1468:8464                  【井】 五月雨4 晴2間1           傳2  聞2         尋2 さみたれのはれまたつねてほとゝきす雲ゐにつたふ聲きこゆなり  1469:8465         聞1  似1   古2  邊1曉4   聲2 ほとゝきすなへてきくにはにさりけりふるき山へのあかつきのこゑ  1470:8466      深2  邊1住1甲斐2梢3  續2 聲2 聞1 ほとゝきすふかき山へにすむかひはこすゑにつゝくこゑをきくかな  1471:8467 夜2 床2 泣1浮1           問1 來1 よるのとこをなきうかさなん郭公物おもふ袖をとひにきたらは  1472:8468              端1出1  聲2 歸2 入1 ほとゝきす月のかたふく山のはにいてつるこゑのかへりいるかな  1473:8469  月十首 伊勢島4     狹日鹿3 明石3  似1影2 澄1 いせしまや月の光のさひか浦はあかしにはにぬかけそすみける  1474:8470 池2   清2      波2 氷3  敷1渡2 いけ水に底きよくすむ月影はなみにこほりをしきわたすかな  1475:8471   見1    浦2 いつ1 彼2 月をみてあかしのうらを出る舟はなみのよるとやおもはさるらん  1476:8472 離2   白良3 濱2 沖2 石2 碎2  洗2 はなれたるしららのはまのおきのいしをくたかてあらふ月の白波  1477:8473 思2 解1 千里3 影2 數2   到2  隈2 おもひとけはちさとのかけもかすならすいたらぬくまも月にあらせし  1478:8474 大方2  秋2    包2   ふき1      かな1                  綻3 おほかたのあきをは月につゝませて吹ほころはす風の音哉  1479:8475 何亊4  此世3 經1 思2   問1      教2 なにことかこのよにへたるおもひ出をとへかし人に月ををしへん  1480:8476    知1 世1 隈2  影2     目1曇2 おもひしるをよにはくまなきかけならすわかめにくもる月の光は  1481:8477 憂1   思2 〔お〕〔お〕     澄1  久方4  空2 うき世ともおもひとをさしをしかへし月のすみけるひさかたのそら  1482:8478   夜1  友2     何處3   知1   住處3教2 月のよやかてともとをなりていつくにも人しらさらんすみかおしへよ  1483:8479  雪十首 信樂4  杣2     止2     降1 しからきのそまのおほちはとゝめてよ初雪ふりぬむこの山人  1484:8480 急2         止1    邊1    侍1 いそかすは雪にわか身やとめられて山への里に春をまたまし  1485:8481    知1   分1來1    降1埋2 あはれしりて誰かわけこん山里の雪ふりうつむ庭の夕暮  1486:8482 湊3  苫2 〔き〕     〔ひ〕〔こそ1〕                     夜1明1 みなと川とまにゆくふく友舟はむやいつゝんよをあかしけれ  1487:8483 筏士4  波2 沈2        〔つみ1〕  なり1                       下2 いかたしのなみのしつむと見えつるは雪をみつゝくたる成けり  1488:8484 溜2   梢3          如何2 たまりをるこすゑの雪の春ならは山里いかにもてなされまし  1489:8485 大原4   〔ふ〕       四方2   通2 おほはらはせれうを雪の道にあけてよもには人もかよはさりけり  1490:8486 晴1   二村4       比良2吹雪3 名殘2 はれやらてふたむら山にたつ雲はひらのふゝきのなこりなりけり  1491:8487 雪2凌2 庵3       添1  尋1 來1  止2 ゆきしのくいほりのつまをさしそへて跡とめてこん人をとゝめん  1492:8488 悔2   雪2  山2 分1入1 麓3     年2 積1 くやしくもゆきのみやまへわけいらてふもとにのみもとしをつみける  1493:8489  戀十首                             【る】 古2 妹2 園2 植1  唐2薺3 誰2     生2           〔ゑ〕                〔ツ〕 ふるきいもかそのにうへたるからなつなたれなつさへとおほしたてらん  1494:8490 紅4   餘所2   知1   筆2     染1 くれなゐのよそなる色はしられねはふてにこそまつそめはしめつれ  1495:8491 樣々4  歎2     積1   何時2              〔お〕 さま/\のなけきを身にはつみをきていつしめるへきおもひなるらん  1496:8492           【へ衍】 君2    細2  結1 滋目結4 立1 離2  並2   見1 きみをいかてこまかにゆへるしけめゆひたちもはなれすならひつゝみん  1497:8493 戀2    〔を〕  言1     隨3 こひすともみさほに人にいはれはや身にしたかはぬ心やはある  1498:8494                         【た】 思2 出1 御津2濱松4 餘所2  志賀2浦2    袂3                立1 おもひいてよみつのはままつよそたつとしかのうら波たゝんたもとを  1499:8495 疎2       變2         〔お〕 うとくなる人は心のかはるともわれとは人に心をかれし  1500:8496   憂1 眺2     思2     夜1   影2   見1 月をうしとなかめなからもおもふかなそのよはかりのかけとやはみし  1501:8497     返2   着1小夜2着1寢1   思2 出1 我はたゝかへさてをきんさよ衣きてねしことをおもひいてつゝ  1502:8498                           【もの1】  風2 千鳥3鳴1  冬2 夜1 川かせにちとりなきけんふゆのよはわかおもひにてありける物を  1503:8499  述懷十首      盛2 思2  程2    藐姑射3峯2   睦2 いささらはさかりおもふもほともあらしはこやかみねの花にむつれし  1504:8500                          【ね】  深2       〔お〕      憂世3 いて1 山ふかくこゝろはかねてをくりてき身こそうきよを出やられとも  1505:8501      昔3  亊2 語2   影2 添1  たち1                           離2 月にいかてむかしのことをかたらせてかけにそひつゝ立もはなれし  1506:8502 憂2   思2     過1 うき世としおもはても身のすきにける月の影にもなつさはりつゝ  1507:8503                      止1 雲につきてうかれのみゆく心をは山にかけてをとめんとそ思ふ  1508:8504 捨1 後2 紛2  方2 すててのちはまきれしかたはおほえぬを心のみをは世にあらせける  1509:8505 塵2付1 歪2  道2 〔ほ〕         世1繼1 ちりつかてゆかめるみちをなをくなしてゆく/\人をよにつかへはや  1510:8506       思2            然1  大幣4 ひとしまんとおもひも見えぬ世にあれは末にさこそはおほぬさのそら  1511:XXXX     苔2  岩2 疊2 上1 舊1     納2 深き山はこけむすいはをたゝみあけてふりにしかたををさめたるかな  1512:8507 經1      〔ほ〕   〔お〕     世1思2 ふりにける心こそなをあはれなれをよはぬ身にもよをおもはする  1513:8506  無常十首 儚3  〔ちとせ2〕 昔3   夢2     すき1        思2 はかなしな千世おもひしむかしをもゆめのうちにて過にける代は  1514:8509 細小蟹4 絲2 貫2    玉2 懸1 飾2 ささかにのいとにつらぬく露のたまをかけてかされる世にこそありけれ  1515:8510 現3   現3     思2              〔へ〕 うつゝをもうつゝとさらにおもえねは夢をも夢と何かおもはん  1516:8511                   〔を〕       跡方4    分1     徒2  言1〔お〕 さらぬこともあとかたなきをわきてなと露もあたにもいひもをきけん  1517:8512 燈火4  掲2 力3  無1   止1 光3  まつ1 ともしひのかゝけちからもなくなりてとまるひかりを待わか身かな  1518:8513                      【いろ1】                      〔色〕 水2   池2  〔ほ〕滴3     頼2  類2 誰2 みつひたるいけにうるをふしたゝりを命にたのむ魚くつやたれ  1519:8514 水際3近2 引1寄1   大網4  幾瀬3     籠2 みきはちかくひきよせらるゝおほあみにいくせのものの命こもれり  1520:8515                            【ふ】                            〔ふ〕      死1     思2 解1      然1 答2 うら/\としなんするなとおもひとけは心のやかてさそとこたゆる  1521:8516 言1捨1    〔へ〕   いて1 然1如何2浦島4  筥2 いひすてて後のゆくゑをおもひ出はさてさはいかにうらしまのはこ  1522:8517 世1  亡1    聞1度2 思2  知1 愚3 よの中になくなる人をきくたひにおもひはしるをおろかなる身に  Subtitle  神祇十首  1523:8518  神樂二首            【井】      朝倉4       慕2 いて1明星4  影2 めつらしなあさくら山の雲ゐよりしたひ出たるあかほしのかけ  1524:8519 名殘2如何2返2    惜1     駒2 立1神樂3舍人3 なこりいかにかへす/\もをしからしそのこまにたつかくらとねりは  1525:8520  賀茂二首 御手洗4  菜1         捧2  御戸2        濯1              開2 みたらしに若なすゝきて宮人のまてにさゝけてみとひらくめる  1526:8521 九月4  力合4    勝1          強2 頼2 なかつきのちからあはせにかちにけりわかかたをかをつよくたのみて  1527:8522  男山二首 今日2駒2 美豆2   〔お〕   敵3        〔ほ〕 けふのこまはみつのさうふををひてこそかたきをらちにかけてとをらめ  1528:8523  放生會 御輿長5  聲2先立3  下2         〔神の宮人1〕 みこしをさのこゑさきたててくたりますをとかしこまる人  1529:8524  熊野二首  熊野3 空2 〔こと1〕             歩2           〔ア歟〕         〔コ〕 みくまののむなしきとはよらしかしむしたれいたのはにふあゆみは  1530:8525      熊野3詣2  靈驗3  氷3  垢離2得1 なり1 あらたなるくまのまうてのしるしをはこほりのこりにうへき成けり  1531:8526  御裳濯4  みもすそ二首 初2  隈2  照2 影2 見1 〔ま〕知1御裳濯4 岸2 はつ春をくまなくてらすかけをみて月にみつしるみもすそのきし  1532:8527 御裳濯4 岸2    代1罩1 固2 立1   柱3 みもすそのきしの岩ねによをこめてかためたてたる宮はしらかな  1533:8528  釋教十首  訖粟枳王5 夢2 中2  きりきわうのゆめのうちに 三首 或2     誰2 忘2             憂1かな1  〔ひ〕 まといてし心をたれもわすれつゝひかへらるなることのうき哉  1534:8529 引1    〔め〕   思2              衣2 ひき/\にわかうてつるとおもひける人のこゝろやせはまくのきぬ  1535:8530                 塵2 混1   かな1 末の世の人の心もみかくへき玉をもちりにませてける哉  1536:8531  無量義經 三首 悟2 廣2  〔ノリ1〕説1おき1二2     言1極2 さとりひろきこの法をまつとき置きてふたつなしとはいひきはめける  1537:8532   蕾2            籠1 霞2 なり1 山櫻つほみはしむる花の枝に春をはこめてかすむ成けり  1538:8533      燃1 思2  消1        煽2 身につきてもゆるおもひのきえましや涼しき風のあふかさりせは  1539:8534  千手經 三首       似1   くち1       根1 枯1             果1 花まては身ににさるへし朽はてて枝もなき木のねをなからしそ  1540:8535 誓2    願2  國2 ゆく1 西2 門2  悟2 開2 ちかひありてねかはんくにへ行へくはにしのかとよりさとりひらかん  1541:8536       【こころ3】           誓2   南無2言葉3 總2   かな1 さま/\にたな心なるちかひをはなものことはにふさねたる哉  1542:8537  また一首この心を  揚梅4  春2 匂3 遍吉4  功徳3  やうはいのはるのにほひへんきちのくとくなり  紫蘭3     ふけんほさち6               眞相4  しらんの秋の色は普賢菩薩のしんさうなり        匂2 〔お〕靡1  染1  悟2 野邊の色も春のにほひもをしなへて心そめけるさとりにそなる  1543:8538  雜十首 澤2 面2 更1  鶴2  聲2          鳴1 さはのおもにふけたるたつの一こゑにおとろかされて千鳥なくなり  1544:8539 友2    同2 湊3  いてふね2  知1 漕1別2                  〔へ〕 ともになりておなしみなとを出舟のゆくゑもしらすこきわかれぬる  1545:8540 瀧2落1 吉野3 奧2      見1  慕2 たきおつるよしののおくの宮川の昔をみけん跡したははや  1546:8541   園2 岡邊3 立1 ひとつまつ2見1 〔お〕                友2  〔ゝも1〕 わかそののをかへにたてる一松をともとみつゝをいにけるかな  1547:8542                  傳2    くれ1 さま/\のあはれありつる山里を人につたへて秋の暮ぬる  1548:8543  賤2 すみ1見1 邊3   冬2 褪l  靜原4 山かつの住ぬとみゆるわたりかなふゆにあせゆくしつはらの里  1549:8544 山2      惑2    ふき1      かな1                白2 やま里の心の夢にまとひをれは吹しらまかす風の音哉  1550:8545     眺2   浮1 いて1    〔たゝよふ2〕               闇2 月をこそなかめは心うかれ出めやみなる空によしやなそ  1551:8546 波2高2 蘆屋3〔お〕 〔へる〕       世1過1   思2                舟2 なみたかきあしやのをきをかくれふねのことなくてよをすきんとそおもふ  1552:8547          【く】 細小蟹4   世1〔く〕過1     人2  手1 さゝかにのいとよをかしてすきにける人のひとなるてにもかゝらて  Description  以上歌數千五百五十三首  本云一千五百七十二首云々                        〔證〕  凡此書本落字僻字太多之、又不審歌繁多也。〓可授語本。(〓:二/心)  今山家集之外又有山家心中抄、被畧拔此集内書出者也。  End:  親本::   著名:  陽明文庫所蔵六家集本  底本::   著名:  日本古典文学大系29 山家集 金塊和歌集   校注者: 風巻 景次郎        小島 吉雄   発行所: 株式会社岩波書店   発行:  昭和36年04月05日 初版発行        昭和49年01月25日 第15-2刷発行  入力::   入力者: 新渡戸 広明(info@saigyo.net)   入力機: Sharp Zaurus igeti MI-P1-A   編集機: IBM ThinkPad s30 2639-42J   入力日: 2002年12月19日-2003年11月08日  校正::   校正者:   校正日: $Id: sanka_kazamaki.txt,v 1.8 2020/01/20 00:07:46 saigyo Exp $