Title  梅園叢書 上  Description  劣れる者は見わけやすく勝れたる者は見わけがたしといふ説 ・・・・我より劣れるものは見やすかるべし。われよりまされるものは見がたし。蟷螂の臂をはりて車に向ふは自のちからをはからざればなり。高雄文覺、西行がふるまひをきゝてかたはらいたく思ひ、その法師來らばしたゝかに打べしなどつね/\罵りけるに、或とき西行高野に至りけるに、文覺これをむかへてける。文覺が弟子など定て例の荒氣、よも唯亊にはあらじと思ひけるに、さはなくて、むかしより知れる人に逢たる如く、こと%\しく色代して遠く送りて別ける。弟子等不審に思ひ、其亊を文覺にとへば、いやとよ西行は我にうたるべき者にあらず、動すれば我をこそ打べき氣色あれと云しとかや。されば人此所に暗して、みづからまされる人の上にたゝんとす。或は其及ばざる亊を知るといへども、及ずとすることを忌憚りて、その人の過をたづねてそしり、我能をかぞへてかざりほこり、尚甚しきは怨みそねみ、はては害心を起すなり。人各聖人にあらざれば、其非を見付ていはんには、誰かあやまちなかるべき。  Note ばいえんそうしょ ばいゑん— 【梅園叢書】 随筆。三巻。三浦梅園著。1855年刊。儒学者の立場から、人情・世態に関する所感および訓言を平易に説く。 みうら-ばいえん —ばいゑん 【三浦梅園】 (1723-1789) 江戸中期の思想家。豊後の人。名は晋(すすむ)、字(あざな)は安貞。儒学と洋学の思想を調和させて宇宙の構造を説明する条理学を提唱。その論ずるところは哲学・宗教・歴史・文学・経済をはじめ、天文・医学など自然科学にも及んだ。著「玄語」「贅語(ぜいご)」「敢語」など。 とうろう たうらう 【蟷螂・螳螂】 カマキリの漢名。[季]秋。《かりと—蜂の貌を食む/山口誓子》 ——が斧(おの)を取りて隆車(りゆうしや)に向かう 〔「隆車」は高く大きな車〕「蟷螂の斧」に同じ。 ——の斧(おの) 〔カマキリが前脚をあげて大きな車に向かってきたという「荘子」などの故事から〕自分の弱さを かえりみず強敵に挑むこと。はかない抵抗のたとえ。 かまきり 【〈螳螂〉・〈蟷螂〉・鎌切・〈杜父魚〉】 (1)カマキリ科の昆虫。体長75ミリメートル内外。体は細長く、緑または褐色。前肢が鎌状の捕獲肢(ほかくし)になり、小昆虫を捕食する。頭は三角形で複眼が大きく、触角は糸状で短い。後ろばねは薄い膜状で前ばねの下に畳まれる。海綿状の卵嚢(らんのう)(おおじがふぐり)中に多数の卵を産む。本州・四国・九州と中国大陸に分布。トウロウ。イボムシ。イボジリ。イボツリムシ。《螳螂・蟷螂・鎌切》 [季]秋。《かりかりと—蜂の皃(かお)を食む/誓子》 (2)(「鎌切」「杜父魚」の文字を当てる)カサゴ目の淡水魚。全長30センチメートルほど。カジカの一種で体形もカジカに似る。鰓(えら)に上向きに曲がったとげがあり小魚を掛けて食べる。冬食用にして美味。秋田県と神奈川県以南の河川に分布。アユカケ。アラレウオ。アラレガコ。カクブツ。 大辞林 第二版  End  底本::   著名:  西行全集 第二巻   校訂:  久曾神 昇   発行者: 井上 了貞   発行所: ひたく書房   初版:  1981年02月16日 第 1刷発行  入力::   入力者: 新渡戸 広明(info@saigyo.net)   入力日: 2001年03月29日  校正::   校正者:   校正日: $Id: baien.txt,v 1.6 2020/01/06 03:45:05 saigyo Exp $